厚労科研脊柱靭帯骨化症研究班所属の20施設より収集された,頚椎単純X線側面像で頚椎OPLLと診断された有症状患者の中で,全脊椎CT矢状断像と基礎データとが揃う234例を対象とする後ろ向き研究を行った.ほぼ全頚椎に広がるような頚椎OPLL重度骨化群は約2割に認められ,重症群は有意に高齢であった.今回の分類基準に基づいた調査では,性別やBMI,糖尿病罹患の有無は重症度に有意な影響を及ぼしていなかった.
Balloon kyphoplasty(BKP)後に隣接椎体骨折が生じることはよく知られているが,その危険因子や予測については報告が限られている.また,その臨床的意義も報告により異なる.我々は隣接椎体骨折が及ぼす影響およびその発生を予測する因子を受傷後2ヶ月以内にBKPを実施した症例で検討した.本著ではその研究を中心に,隣接椎体骨折が臨床的に及ぼす影響,またその予測に関して文献をレビューした.
はじめに:Lenke 1,2 A-Rに対する矯正固定術後distal adding-on(DA)を評価した.
対象と方法:術後2年以上の34例を対象とし各パラメータ,臨床成績を検討した.
結果:DAは29.4%に発生し,LIVがLSTVより近位設置例で発生率が高かった.臨床成績はDA発生群で低かった.
結語:Lenke 1,2 ARではLIVをLSTV以遠に設置しDAを予防しうる.
はじめに:成人脊柱変形(以下ASD)術後PJK対策として1.胸椎部PPSによる背筋群の温存,2.UIV-PPSの尾側方向への刺入,3.Rod胸椎部の後弯化,4.過矯正の回避,の有用性を検討した.
対象と方法:LIFとPPSを用いて矯正固定術を行ったASD患者53名のうち,対策導入後28名(X群)と対策導入前25名(C群)を比較検討した.
結果:各種パラメーターにおいては二群間に有意差を認めずPJK発生率及び再手術率においてはX群で有意に低かった.
結語:上記4対策によりPJK発生を低減できた.
はじめに:頚椎後縦靱帯骨化(OPLL)の有無が頚椎機能に及ぼす影響を明らかにすることである.
対象と方法:一般住民538名の頚椎X線と日本整形外科学会頚部脊髄症評価質問表を評価した.
結果:OPLL群,非OPLL群とも頚椎機能,上肢機能,下肢機能は経年的に減少し,OPLL群では各機能の変化量は有意に相関していた.
結語:OPLLの頚椎機能低下に,上肢機能,下肢機能の低下が関連する可能性がある.
はじめに:姿勢変化による骨盤後傾の小さい症例の特徴を明らかにする.
対象と方法:腰痛で受診した外来患者84例を対象として,立位および座位全脊柱単純X線側面像を撮影した.
結果:骨盤後傾の小さい群(立位から座位のSS変化が5度以下)は,骨盤後傾の大きい群と比較して,座位時におけるLLの減少が小さく(P<0.01),SVAが増加していた(P<0.05).
結語:骨盤後傾の小さい症例は,立位から座位姿勢にて腰椎前弯減少が小さく,体幹前傾にて代償して座位姿勢を維持した.
はじめに:転移性脊椎腫瘍の原発検索に有用な腫瘍マーカーはいまだに不明である.
対象と方法:初診時原発不明240例で測定した17項目の腫瘍マーカーの予測能をROC曲線を用いて検討した.
結果:Tg(甲状腺癌),PSA(前立腺癌),尿・血清免疫電気泳動(多発性骨髄腫)ついでCA19-9(膵・胆管癌・消化器癌),SLX(肺癌),およびCEA(胃・大腸癌,すべての癌)の予測能が高かった.
結語:上記の選択で費用対効果に優れた原発検索が期待できる.
はじめに:Thoracolumbar injury classification and severity score4点の胸腰椎破裂骨折(以下TLICS4)では治療方針の決定が難しい.
対象と方法:TLICS4に対して保存治療を行った6例と手術治療を行った9例の治療成績を後ろ向きに比較検討した.
結果:手術治療群では臥床期間が有意に短く,前方圧縮率の損失も有意に少なかった.その他の調査項目については両群で有意な差は認められなかった.
結語:TLICS4は早期離床,損傷椎体の整復保持には手術治療が有利であった.
はじめに:頚椎症性脊髄症に対する椎弓形成術後の後弯進行に関与する術前危険因子を明らかにした.
対象と方法:術後2年間追跡できた57例を中間位ΔC2-7 Cobb角≧5°と<5°の2群間比較し,後弯進行の危険因子の感度・特異度を算出した.
結果と結語:後弯進行は11例(19.3%)で生じた.術前C7 slopeが低値であるほど術後の後弯が進行しやすく,そのカットオフ値は26.5°(感度67.4%,特異度72.7%),オッズ比9.3(95%信頼区間:1.78~48.50,p値=0.008)であった.
はじめに:頚椎損傷に対する後方固定術の合併症には,ヘルニアや血腫,インプラント設置不良などが知られている.
症例:70歳代男性の神経症状のないC4-5頚椎損傷に後方固定をした.術直後に対麻痺があり,MRIで黄色靭帯のたわみによる脊髄圧迫がみられた.速やかに椎弓切除して麻痺は回復した.
結語:術後の麻痺は,速やかな画像評価と理学所見によって適切な術式を選択する必要がある.
はじめに:腰椎高度すべり症に対し低侵襲後方椎体間固定術を行ったので報告する.
症例:80歳女性で,L5/Sに高度すべり症を認め,JOAスコアは11点であった.Pelvic incidence-Lumbar lordosisミスマッチは軽度であったのでIn situで後方椎体間固定術を行った.手術はTransdiscal screw(以下TDS)を用い,S1 TDSの骨孔から骨移植を行った.術後2年でJOAスコアは26点に改善し,骨癒合が得られた.
結語:この手術は低侵襲で有用な方法であった.
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