Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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14 巻, 11 号
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Editorial
総説
  • 黒木 浩史
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1346-1353
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    側弯症学校検診は1963年にアメリカのミネソタ州で開始され,その後,世界中に側弯症学校検診モデルが拡散した.2018年までに出版された文献をもとにした調査で,側弯症学校検診の実施が確認できた国は本邦を加え23ヶ国で,うち4ヶ国(イギリス,ノルウェー,カナダ,オーストラリア)では,現在中止されていた.検診方法の多くは前屈テストであり,スコリオメーター,モアレ,シルエッターでの評価を単独であるいは併用し実施している国々もあった.各国の検診の有効性に関する考え方については,肯定が16ヶ国,否定が4ヶ国,合意なしが3ヶ国であった.国家レベルでの検診の法制化に関し,本邦以外で確認が取れた国はなく,検診実施国であっても自治体ごとで違いがあるなど,国ごとに状況は様々であると推測された.以上より,検診意義に関する意見の統一がなされていない中,各国独自に,検診の導入を判断し,それぞれのシステム,方法で検診事業を運営している現状が明らかとなった.またここ最近,これまで側弯症学校検診に関する報告のなかったロシアからも側弯症学校検診に関する総説が発刊されており,側弯症学校検診に対する国際的な方向性は前向きであると考えられる.

  • 新井 貞男
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1354-1359
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    2016年から,運動器検診が開始された.運動器検診は,成長発達の過程にある児童生徒等の脊柱・胸郭・四肢・骨・関節の疾病及び異常を早期に発見することにより,生涯にわたる健康づくりに結び付けることが目的である.運動器検診は,運動器に関心を持ってもらうよう家庭での運動器検診保健調査票の記入から始まる.その調査票を参考にして学校医による運動器検診が行われ,運動器の異常が疑われる場合は整形外科受診勧告が行われる.

    運動器検診の結果を見ると,整形外科受診勧告理由で最も多いのが,側弯症の疑いである.しかしながら,学校医の主体が運動器の専門でない内科・小児科医であり,脱衣の問題もあり過度の負担をかけている可能性がある.整形外科医が学校医として参加できるようにすることや,モアレ等の補助検査機器の導入を行い学校医の負担を軽減するなどの検討が必要であると思われる.また,受診勧告されても未受診例も多く,検診体制にも工夫が必要と思われる.

原著
  • 河邉 有一郎, 中村 直行, 大庭 真俊, 百瀬 たか子, 町田 治郎
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1360-1365
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:神経筋性側弯症(Neuromuscular scoliosis:NMS)に対する脊椎固定術の有益性が言われるが,高い合併症率が問題であり,特に手術部位感染(Surgical site infection:SSI)は避けたい合併症の一つである.今回,当科症例でのSSIリスク因子を検討した.

    対象と方法:2017年3月から2022年3月までに,当科で脊椎後方固定術を施行されたNMS手術患者129例を対象とした.手術時年齢は中央値14.3歳,BMIは14.2 kg/m2,術前主Cobb角は92度,Spino-pelvic obliquity(SPO)は22度であった.原疾患は脳性麻痺が101例で最多を占めた.併存疾患として,てんかんは93例,胃ろうは45例に認めた.SSIの有無で,これらの術前患者データ,周術期データを比較した.

    結果:5例にSSIが発生していた.術前SPO,麻酔導入時間,骨盤固定の有無,V flap法利用に統計学的有意差を認めた.しかし,過去報告されているてんかん,胃ろう,気管切開,GMFCS,低BMI,術前変形の重症度,術中出血量,手術時間,術中低体温や変形矯正率には有意差を認めなかった.

    結語:骨盤固定を必要とする患児にはやはりSSIリスクがあると言わざるを得ず,また,麻酔導入に長時間を要する児は,更なるリスクが示唆される.

  • 三澤 晶子, 本郷 道生, 工藤 大輔, 若林 玲奈, 木村 竜太, 島田 洋一, 宮腰 尚久
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1366-1371
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本県では1984年からモアレ法による学校検診を行っており,運動器検診開始後も継続している.今回,秋田市教育委員会のデータ提供により,運動器検診の結果とモアレ法による側弯症検診の結果を比較した.

    対象と方法:2017~2020年度に運動器検診で脊柱に所見ありとされ二次検診を受診した1,442例と,モアレ検診で所見ありとして二次検診を受診した474例を対象とし,X線撮影によるCobb角10°以上の陽性率を算出した.

    結果:陽性適中率は運動器検診で39%,モアレ検診では60%であった.中学生の陽性適中率に限ると,運動器検診で57%とモアレ検診と同程度だったが,診断された13%が運動器検診で新規に陽性,87%が継続して陽性であり,大多数の症例がモアレ検診で側弯症の診断を受けていた.

    結語:本研究の結果から,改めて運動器検診との対比においてモアレ検診の有用性が明らかになった.検診を進めるにあたり,検診後のフォローアップ体制の充実も必要と考えられた.また,検診結果のフィードバックのため,個人情報保護の問題等解決に向け,検診の発展には教育委員会や医師会への働きかけと連携が必要である.

  • 塚中 真佐子, 谷田 司明, 二見 徹
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1372-1376
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:側弯症検診は2016年より運動器学校検診の一部として実施されている.滋賀県では質問票と視触診により行われている.本研究の目的は,側弯症診断における検診の役割について検討することである.

    対象と方法:2017年4月からの2年間に,側弯症またはその疑いで当院を受診した症例を対象とした.初診時年齢,Cobb角,診断,検診が受診の契機であるかについて調査した.本研究では側弯症をCobb角が10度以上の症例と定義した.

    結果:対象は137名.初診時平均年齢は12.8歳(0~22歳).側弯なしが6名,特発性119名,先天性6名,症候性6名.初診時平均Cobb角は27.5(5~79)°.検診からの診断は63名46%.検診が契機の症例とその他の間で,初診時平均年齢(12.6±3.1歳,12.9±3.8歳,p=0.99)および初診時平均Cobb角(25.4±14.4°,29.3±12.5°,p=0.27)に有意差は見られなかった.

    結語:側弯症の約半数は検診を機に診断されていたが,早期診断との関係はみられなかった.早期診断のためには,質問票および視触診だけに基づく検診では不十分である可能性がある.

  • 若林 玲奈, 本郷 道生, 三澤 晶子, 木村 竜太, 工藤 大輔, 島田 洋一, 宮腰 尚久
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1377-1382
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯に対する装具治療は,一般に骨成熟が終盤と評価されるRisser sign grade 4以上には積極的推奨はされていない.しかし,Risser sign grade 4でもCobb角が進行する症例をしばしば経験する.

    対象と方法:対象は2016年から2020年に当院を初診し,Risser sign grade 4を呈する思春期特発性側弯症のうち1年以上経過観察した42例であった.Cobb角の変化,患者背景,身体所見,放射線学的評価を,進行群と非進行群に分け比較検討した.

    結果:進行群8例,非進行群34例で,進行群ではCobb角が初診時28.7°が経過観察時35.8°となり,平均7.1°増加した.初潮から初診までの経過期間は非進行群24.2ヶ月に対し進行群9.7ヶ月と有意に短く(P=0.003),身長変化は非進行群が1.8 cm増加したのに対し,進行群が2.9 cm増加と有意に大きかった(P=0.02).その他では差を認めなかった.

    結語:Risser sign grade 4の思春期特発性側弯症の約2割で側弯の進行を認めた.進行群では,初潮から初診までの経過期間が短く,身長の伸びが大きかった.初潮から初診までの経過期間と身長変化により,進行が危惧される場合は装具治療も考慮する必要がある.

  • 圓尾 圭史, 有住 文博, 木島 和也, 吉江 範親, 楠川 智之, 橘 俊哉
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1383-1389
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    背景:成人脊柱変形手術の術後腰痛が改善するか後ろ向きに検討した.

    方法:成人脊柱変形で胸椎から5椎間以上の矯正固定術を行い2年以上経過観察した63例を対象とした.臨床成績はJapanese Orthopaedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire(JOABPEQ),visual analog scale(VAS),Oswestry Disability Index(ODI)を術前,最終経過観察時に調査した.レントゲンパラメータを術前,術直後,最終経過観察時に計測した.腰痛VAS50 mm以上を遺残性腰痛として年齢,性別,手術関連因子,レントゲンパラメータ,臨床成績を2群で比較した.遺残性腰痛の有無を従属変数,患者背景因子,手術関連因子,レントゲンパラメータを説明変数としてロジスティック回帰分析を行った.

    結果:腰痛は平均VAS71.4 mmから36.6 mmに有意に改善し,ODIは52.5%から35.2%に有意に改善した.JOABPEQは腰痛機能障害以外ですべての項目が有意に改善していた.遺残性腰痛群は33%(21例)に認め2群間の比較では患者背景因子,手術関連因子で有意差は認めなかった.術前後の腰痛VAS,ODIは遺残性腰痛群で有意に高く,JOABPEQのすべての項目で遺残性腰痛群が有意に低かった.ロジスティック回帰分析では遺残性腰痛の独立予測因子を認めなかった.

    結語:成人脊柱変形術後の腰痛は71.4 mmから36.6 mmに有意に改善し,遺残性腰痛は33%に認めた.

  • 新戸部 陽士郎, 和田 簡一郎, 熊谷 玄太郎, 浅利 享, 石橋 恭之
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1390-1395
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:思春期特発性側弯症(AIS)において骨代謝が重症度と関連するかは明らかではない.本研究の目的は骨代謝が椎体楔状化,Cobb角の重症度と関連するか検討することである.

    対象と方法:対象は矯正固定術を施行したAIS患者のうち,メジャーカーブが主胸椎カーブである女性28例である.調査項目はBone alkaline phosphate(BAP),N-terminal telopeptides of collagen type 1(NTx),頂椎の椎体楔状化,主胸椎カーブのCobb角とした.

    結果:BAPは椎体楔状化と相関を認めなかったが(ρ=0.35),Cobb角とは正の相関を認めた(ρ=0.55).NTxは椎体楔状化とCobb角の両方と正の相関を認めた(ρ=0.46,ρ=0.62).椎体楔状化はCobb角と正の相関を認めた(ρ=0.46).重回帰分析で椎体楔状化の有意な因子はNTx(p=0.002)のみだった.

    結語:高いNTxが頂椎の高度椎体楔状化ならびにCobb角の重症度と有意に相関しており,骨吸収亢進がAISの重症度に関連する可能性が考えられた.

  • 須賀 佑磨, 重松 英樹, 川崎 佐智子, 池尻 正樹, 撫井 貴弘, 田中 康仁
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1396-1401
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脚長差には大腿骨頭の頂部の高さの左右差を示す機能的脚長差と大腿骨長と脛骨長差からなる解剖学的脚長差の2つがある.本研究の目的は,思春期特発性側弯症(AIS)患者における機能的・解剖学的脚長差を評価し,どのような症例に解剖学的脚長差が有する可能性があるか明らかにすることである.

    対象と方法:本研究は後ろ向き研究である.2007年1月1日から2021年8月31日までにAISにて当院を受診した患者269例を対象とした.右高位を正,左右差が10 mm以上ある場合を脚長差ありとし,統計学的検討を行った.

    結果:対象は215症例で,女児が90.2%(男:女=21:194),平均年齢は16.3歳であった.機能的脚長差は10例(4.6%),解剖学的脚長差は13例(6.0%)で認めた.解剖学的脚長差と機能的脚長差の間に有意差はみられず(p=0.13),解剖学的・機能的脚長の2群間の間には高い相関関係がみられた(r=0.882,p<0.01).

    考察:過去の報告では,AIS患者では機能的脚長差を認めるが,解剖学的脚長差は認めないという報告が多い.しかし,本研究での結果は,機能的脚長差と解剖学的脚長差の間に高い相関関係を認め,機能的脚長差が大きい場合は解剖学的脚長差を有している可能性があると考える.

症例報告
  • 井上 雅俊, 鳥飼 英久
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1402-1407
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:先天性ミオパチーなどの筋原性疾患に対する側弯症手術は侵襲が大きい.他方,早期発症側弯症では複数回手術を要し,様々な合併症が報告されている.セントラルコア病等の先天性ミオパチーは全身麻酔により悪性高熱症(malignant hyperthermia:MH)を発症することは以前から知られ,RYR1(リアノジンレセプター1)遺伝子は先天性ミオパチーとMHの原因遺伝子である.

    症例:症例は8歳,女児.RYR1遺伝子変異がある早期発症側弯症患者に対し,装具治療を行うが10歳で側弯はT3-11-L5 66度,79度に進行.Risser-Cotrel Cast法を行い,完全静脈麻酔によりMHを発症しないことを確認しながら,側弯の進行を抑えた.12歳半,Closed Triradiate Cartilageとなった時点で,側弯矯正手術を行った.術後2年で側弯はT3-11-L5 29度,31度に維持され,crankshaft現象はみられなかった.

    結語:早期発症した先天性ミオパチー患者の側弯症手術を安全に行うことができた.たとえ患者にRYR1遺伝子変異があっても完全静脈麻酔であればMHの発症を抑えられる可能性がある.

  • 横田 亮介, 奥田 貴俊, 野尻 英俊, 尾原 裕康, 原 毅, 高野 弘充, 石島 旨章
    2023 年 14 巻 11 号 p. 1408-1412
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:割髄症はまれな疾患であり,特に骨性中隔を伴う場合はその部分で脊髄係留を起こす可能性がある.割髄症を伴う先天性側弯症に対し,矯正固定術を行う際は,矯正操作により脊髄損傷を起こす可能性があり先ず割髄に対する処置を行うことが多い.今回我々はType 1割髄症を伴う先天性側弯症の1例を経験したので報告する.

    症例:11歳女児.11歳時に学校側弯検診にて側弯症を指摘された.自覚症状はなく,身体学的所見は筋力,知覚共に異常はなかった.画像診断にてCobb角T1-T4-L1:19°,44°の側弯を認めた.またT10からL1の左右椎弓根間の拡大,T9とT10の癒合椎,T11からL1の椎弓形成不全といった形態異常を認めた.CTとMRI検査ではL1に骨性中隔によって二分された脊髄を認めた.以上より割髄症を伴う先天性側弯症の診断とし,一期的に手術を行った.手術は脊髄を二分している骨性中隔切除を行い,次に側弯症に対し矯正固定術を行った.手術時間6時間39分,出血50 ml術中術後合併症なく,Cobb角T1-T5-L2:10°,8°に矯正された.

    結語:①骨性中隔を伴った割髄症を合併した先天性側弯症の1例を経験した.②Type 1割髄症を合併した先天性側弯症でも神経症状がなく,矯正角度が小さい場合は,骨性中隔切除のみにとどめることで,一期的に側弯症手術を低侵襲に行える症例があると思われた.

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