はじめに:1,2椎間の腰椎椎体間固定術で考慮すべき点は低侵襲,確実な骨癒合,隣接椎間障害,脊柱骨盤パラメータへの影響であるが脊柱骨盤パラメータとの関係に関する報告は少ない.当科で施行した腰椎椎体間固定術における局所前弯角と脊柱骨盤パラメータとの関係を後ろ向きに調査した.
対象と方法:2016年から2019年に当院でmini-openの1,2椎間TLIF/PLIFを行い1年以上経過観察した106例(141椎間)を対象とした.平均年齢は69.9歳で女性65例,男性41例であった.検討項目は患者因子(年齢,性別),ケージ因子(高さ,前弯角,設置位置),レントゲンパラメータ(LL,PI-LL,PT,SVA,TPA)と固定椎体の局所前弯角(SLA,椎間板高,椎間角)を調査した.臨床成績はODI,JOABPEQを調査した.さらにSLA変化量(ΔSLA)が6度以上減少した群をA群,0~5度減少した群をB群,1~5度増加した群をC群,6度以上増加した群をD群として4群間で上記を比較検討した.
結果:全体の平均SLAは術前15.4度から術後17.4度へ有意に増加していた(P=0.002).LL,PT,PI-LL,SVA,TPAも術後有意に改善していた.ΔSLAはA群11%,B群31%,C群28%,D群30%であった.4群間の比較において患者背景因子とケージ因子では有意差を認めなかった.術前LL,SLAは4群間で有意差を認め術前LL,SLAが低値であるほどΔSLAが増加していた.術後LLは4群間で有意差を認めD群では平均34.6度でPI-LLミスマッチも平均15度と局所前弯が増加しても不十分であった.術後SVA,TPA,PTは4群間で有意差を認めなかった.術前SLAとΔSLAは負の相関を認めた(r=-0.488).1年でのODI,JOABPEQでは4群間では有意差を認めなかった.
結語:術前LL,SLAが低値の症例で術後SLAが増加していたがPI-LLミスマッチが残存し前弯獲得は不十分であった.ΔSLAは全脊柱骨盤パラメータや臨床成績に影響していなかったが,長期成績を考えると術前PI-LLミスマッチがある症例ではより前弯獲得を意識する必要がある.
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