Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 10 号
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Editorial
原著
  • 坂野 友啓, 大和 雄, 長谷川 智彦, 吉田 剛, 有馬 秀幸, 大江 慎, 三原 唯暉, 井出 浩一郎, 松山 幸弘
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1107-1113
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:VCA(Vertebral Coplanar Alignment)は凸側に設置した椎弓根スクリューを使用して椎体を同一平面上に戻す3次元的な側弯の矯正法である.本研究の目的は,VCA法と従来の凹側からのrod rotationを主とした矯正法の治療成績を比較することである.

    対象と方法:2018年7月から2021年3月までに当科で手術を施行した思春期特発性側弯症(adolescent idiopathic scoliosis:AIS)Lenke type 1,2患者54例(女性46例,平均年齢16.6歳)を対象とした.2019年9月まではrod rotationを主とした従来法で,以降はVCA法で矯正を行った.X線学的評価として立位単純X線及びCTを用いて術前,術直後のCobb角,胸椎後弯角(T5~12 thoracic kyphosis:TK),頂椎回旋角(apical vertebral rotation:AVR)を計測した.VCA群と従来群に分けて比較した.

    結果:VCA群21例,従来群33例であり,両群間の患者背景や側弯の分類,手術関連因子に差はみられなかったが,VCA群でimplant densityが高かった.近位・主胸椎カーブにおいて,VCA群で有意に術後Cobb角が小さく,矯正量/矯正率が高かった.VCA群で有意に術後TK値が大きく,矯正量も大きかった.一方で,AVRに関しては両群間で差がみられなかった.

    結語:VCA法は従来法と比較して冠状面の矯正率が高く,胸椎後弯の形成にも優れていた.一方で回旋変形に関しては,従来法とともに残存する傾向にあり今後の課題である.

  • 山路 晃啓, 辰村 正紀, 長島 克弥, 江藤 文彦, 竹内 陽介, 船山 徹, 山崎 正志
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1114-1119
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎変性側弯症では側弯の凹側に骨棘を伴うことが多く,椎体間及び椎間関節が骨性に癒合している例もある.椎体間及び椎間関節が骨性に癒合している例に対してLIFを行う前には骨性癒合を解離する必要がある.腰椎変性側弯症において椎体間及び椎間関節が骨性癒合している症例に対して事前に椎間関節の解離を行わず,前方から単独で椎体間の骨性癒合の解離を行い,LIFケージを挿入した.冠状面椎体間楔状変形の矯正角度,終板損傷及び椎弓根骨折の合併症を調査した.

    対象と方法:椎体間及び椎間関節が骨性に癒合している症例に対してLIFを行った3症例,4椎間を対象とした(男1例,女2例,平均62.6歳).側弯の凸側からアプローチし,骨性架橋をノミで離断してLIFケージを挿入した.解析項目は罹患高位,CT画像での術前・術後の冠状面椎体間楔状角,冠状面椎体間楔状変形の矯正角度,終板損傷もしくは椎弓根骨折の有無とした.

    結果:罹患高位はL3/4が3例,L4/5が1例.冠状面椎体間楔状変形の矯正角度は-1~9度,平均3.7度であった.合併症は4椎間中で終板損傷1例,椎弓根骨折1例がみられた.

    結語:椎体間が骨性に癒合している腰椎変性側弯症に対するLIFでは終板損傷や椎弓根骨折の合併症を起こす可能性もあるが,低侵襲に矯正可能であり有用である.

  • 安田 達也
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1120-1124
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:脊椎固定術では安定性を得られる反面,脊椎可動性を失うことが問題である.下位胸椎~腰椎での脊椎可動性は各椎間でどのようになっているか調査を行った.

    対象と方法:腰椎変性疾患にて手術を施行した患者を対象とした.脊椎固定術の既往,DISH,術前腰椎機能撮影のない症例は除外した.術前腰椎機能撮影はT11まで含み坐位で前屈位・後屈位で撮影した.前屈/後屈でのT11/12~L5/S1までの各椎間の可動性を計測し解析を行った.

    結果:114例で解析を行った.T11~S1全体で可動域は33.6°で各椎間の割合は,L5/S1:13.8%,L4/5:15.4%,L3/4:20.0%,L2/3:19.7%,L1/2:15.6%,T12/L1:12.2%,T11/12:3.4%であった.下位L4~S1:29.2%,中位L2~4:39.7%,上位T11~L2:31.2%と中位での可動域が最も大きかった.

    結語:脊椎固定広範囲固定などで下位固定端をL4までにすることや,上位固定端をL2までにすることでそれぞれ30%ほどの可動域を保持できる可能性があり,指標になりえるデータと考えられた.

  • 井上 太郎, 吉原 永武
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1125-1130
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
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    はじめに:O-arm-based navigation system(以下O-arm NAVI)を用いた頚椎椎弓根スクリュー(以下CPS)刺入精度を刺入部へのアプローチ別に検討した.

    対象と方法:当院にてO-arm NAVIを用いてC3~7にCPSを刺入した67名,262本を対象とした.刺入部へのアプローチ別に正中切開群(49名,187本)と外側切開群(18名,75本)の2群に分けてCPSの術中再刺入,術後逸脱の頻度,特徴について検討した.

    結果:術中再刺入は12名(17.9%),16本に施行された.1本を除き全て正中切開群であった.逸脱は17名(25.4%),21本(8.0%)に認められ,すべて正中切開群であった.再刺入,逸脱ともにC4において有意に多くみられた.刺入角度は外側切開群で有意に大きかった.

    結論:後外側からのアプローチによりCPS刺入精度をより高くすることができた.

  • 柴山 元英, 倉石 慶太, 伊藤 全哉, 中村 周, 李 光華, 伊藤 不二夫
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1131-1138
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
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    はじめに:腰椎すべり症や腰仙椎部椎間孔狭窄などのL5/S1病変に対しPLIFやTLIFの椎体間固定術は良い成績が期待できるが,侵襲が大きくなりやすい.低侵襲を目指し後側方進入で,脊柱管除圧をしない脊椎内視鏡下椎間孔外腰椎椎体間固定術(mELIF)を33例に行ったので報告する.

    対象と方法:L5/S1にmELIFを行い半年以上経過観察できた30例を対象にした.男14,女16例,平均61.5歳.病名は椎間孔狭窄と分離すべり症が各14例と多かった.手術は片側の正中約5 cm側方から椎間板外側ヘルニア切除の進入法を用い,脊椎内視鏡を椎間関節上に設置.椎間孔を部分切除し椎間板へ達し切除,内視鏡下にケージと移植骨を挿入.両側の経皮的椎弓根スクリュー,ロッドで固定する.

    結果:平均24ヶ月で,臨床成績は大幅に改善した.JOAスコアは11.4点が24.4点に,腰痛NRSは6.4が2.1に,下肢痛は5.2が1.1に改善した.Macnab評価では優,良が90%であった.臨床的な合併症はなかった.1年での骨癒合率は70%であった.

    結語:L5/S1の単椎間固定術は,分離すべり症や椎間孔狭窄が多いので脊柱管除圧は必ずしも必要でなく,mELIFは理論的にも適している.内視鏡下手術で安全性が高く低侵襲で,良好な結果が得られた.

  • 岩沢 太司, 小原 徹哉, 田内 亮吏, 瀧村 浩介, 細川 佑太, 竹市 陽介
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1139-1145
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
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    はじめに:成人脊柱変形へのPedicle subtraction osteotomy(PSO)は,骨切り部において高率にRod折損が生じることが報告されている.当科ではRod折損予防のために,原則骨切りした椎体に2期的に前方椎体置換術を追加する方針としている.今回,PSO高位での前方椎体置換術の有用性に関して検討を行った.

    対象と方法:当院で2012年1月から2018年12月までに,成人脊柱変形に対して20歳以上でPSOを1椎体以上,5椎間以上の固定を行い,2年以上経過観察が可能であった63例を後ろ向きに検討した.

    結果:PSO高位でRod折損をきたした症例は2例/63例(3.2%)であり,前方椎体置換術が施行されていた45例にはRod折損症例は無く,前方椎体置換術を施行しなかった18例中2例にRod折損を生じていた.

    結語:PSO高位に前方椎体置換術を施行することはPSO高位でのRod折損予防に有用であると考えられる.

  • 井野 正剛, 清水 敬親, 笛木 敬介, 登田 尚史, 小野 真稔
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1146-1150
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
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    はじめに:腰椎椎間関節症は腰痛を呈する代表的疾患のひとつであるが,下肢痛やシビレを合併する場合も少なくない.画像にて腰部脊柱管狭窄所見をみとめないにもかかわらず下肢症状を呈した腰椎椎間関節症の治療を経験したので報告する.

    対象と方法:対象は下肢症状を伴った腰椎椎間関節症で以下の項目を満たした9例であった.1)MRIもしくは脊髄造影にて腰部脊柱管狭窄の所見をみとめない,2)脊髄障害を合併しない,3)当該椎間関節ブロックで腰痛のみならず下肢痛・シビレも一時的に消失した.

    結果:男性5例,女性4例,平均年齢46歳.有症椎間はL4/5が5例,L5/Sが3例,L3/4/5の2椎間が1例であった.下肢症状は片側6例,両側3例で,下腿以遠までみとめたものが7例であった.1例は腰痛を伴わず下肢痛のみであった.軽快した1例を除き後枝内側枝熱凝固を施行し,再燃した3例に腰椎固定術を施行した.

    結語:画像にて腰部脊柱管や椎間孔に狭窄所見がないにもかかわらず下肢痛・シビレを合併している場合,選択的椎間関節ブロックにて除痛効果を確認し,関連痛の可能性を探ることが重要と考える.

  • 都井 政和, 圓尾 圭史, 有住 文博, 木島 和也, 楠川 智之, 橘 俊哉
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1151-1156
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
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    はじめに:1,2椎間の腰椎椎体間固定術で考慮すべき点は低侵襲,確実な骨癒合,隣接椎間障害,脊柱骨盤パラメータへの影響であるが脊柱骨盤パラメータとの関係に関する報告は少ない.当科で施行した腰椎椎体間固定術における局所前弯角と脊柱骨盤パラメータとの関係を後ろ向きに調査した.

    対象と方法:2016年から2019年に当院でmini-openの1,2椎間TLIF/PLIFを行い1年以上経過観察した106例(141椎間)を対象とした.平均年齢は69.9歳で女性65例,男性41例であった.検討項目は患者因子(年齢,性別),ケージ因子(高さ,前弯角,設置位置),レントゲンパラメータ(LL,PI-LL,PT,SVA,TPA)と固定椎体の局所前弯角(SLA,椎間板高,椎間角)を調査した.臨床成績はODI,JOABPEQを調査した.さらにSLA変化量(ΔSLA)が6度以上減少した群をA群,0~5度減少した群をB群,1~5度増加した群をC群,6度以上増加した群をD群として4群間で上記を比較検討した.

    結果:全体の平均SLAは術前15.4度から術後17.4度へ有意に増加していた(P=0.002).LL,PT,PI-LL,SVA,TPAも術後有意に改善していた.ΔSLAはA群11%,B群31%,C群28%,D群30%であった.4群間の比較において患者背景因子とケージ因子では有意差を認めなかった.術前LL,SLAは4群間で有意差を認め術前LL,SLAが低値であるほどΔSLAが増加していた.術後LLは4群間で有意差を認めD群では平均34.6度でPI-LLミスマッチも平均15度と局所前弯が増加しても不十分であった.術後SVA,TPA,PTは4群間で有意差を認めなかった.術前SLAとΔSLAは負の相関を認めた(r=-0.488).1年でのODI,JOABPEQでは4群間では有意差を認めなかった.

    結語:術前LL,SLAが低値の症例で術後SLAが増加していたがPI-LLミスマッチが残存し前弯獲得は不十分であった.ΔSLAは全脊柱骨盤パラメータや臨床成績に影響していなかったが,長期成績を考えると術前PI-LLミスマッチがある症例ではより前弯獲得を意識する必要がある.

症例報告
  • 長本 行隆, 髙橋 佳史, 奥田 眞也, 松本 富哉, 古家 雅之, 岩﨑 幹季
    2022 年 13 巻 10 号 p. 1157-1162
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー

    症例1:79歳男性.L4椎体骨折後の後側弯変形に対してT7から骨盤までの前後方矯正固定術を施行.術後9ヶ月で右S2 alar iliac(S2AI)スクリューネック部での折損が判明,腸骨スクリューを左右2本ずつ追加し再固定した.

    症例2:72歳女性.T12椎体骨折後の後弯変形に対してT6から骨盤までの後方矯正固定術を施行.術後2ヶ月で両S2AIスクリューネック部での折損が判明,両側S2AIスクリューの再挿入と右S1よりSacral alar iliac screwスクリューを1本追加し再固定した.

    症例3:77歳男性.腰椎複数回手術に対してT8から骨盤までの前後方矯正固定術を施行.術後1年半で両側のS2AIスクリューのセットスクリュー脱転が判明,SAIスクリューの再挿入と両S1スクリューを追加し再固定した.

    結語:脊椎インプラントには,骨癒合が得られるまでインプラント連結部の最脆弱部分に応力が集中する.太径で長いS2AIスクリューでも破損を生じうることを認識する必要がある.

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