はじめに:パーキンソン病(PD:Parkinson's disease)において首下がり症候群(DHS:dropped head syndrome)は0.4~6%に発症すると報告されているが,疫学,全脊椎アライメントや予後の違いは不明である.
対象と方法:DHS患者168例(男41例,女127例,平均74.1歳を対象として,退行性変化により発症したINEM(idiopathic neck extensor myopathy)-DHS患者,パーキンソン病と診断されたPD-DHS群,薬剤性のパーキンソン症候群と診断されたDIP(drug induced Parkinson's disease)-DHS患者について比較検討した.
結果:INEM-DHSは116例(69.0%),PD-DHSは13例(7.7%),DIP-DHS 6例(3.6%),その他33例であった.3群ともに女性が多く,PD-DHS,DIP-DHSは発症年齢が低かった.PDの診断は,DHSの初診時検査で診断されたのは3例(1.8%),PD診断から1年未満でDHS発症は4例(2.3%),1年以上は6例(3.6%)であった.脊椎矢状面アライメントは,PD-DHS,DIP-DHSにおいて後弯変形が強かった.臨床症状は,PD-DHSで重症例が多く予後は劣っていた.
結語:DHS患者におけるパーキンソン病の合併率は7.7%,首下がりを契機にパーキンソン病の診断がされた症例は1.8%であった.PD-DHSの特徴はINEM-DHSと比較して頚椎後弯変形が強く,発症時臨床症状は連続前方注視歩行困難例,予後不良な例が多かった.
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