Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 5 号
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Editorial
原著
  • 川口 善治, 今釜 史郎, 高橋 寛, 高相 晶士, 相澤 俊峰, 大谷 晃司, 奥田 眞也, 加藤 仁志, 金村 徳相, 小西 宏昭, 酒 ...
    2023 年 14 巻 5 号 p. 748-752
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    日本の脊椎脊髄手術におけるwrong site spine surgery(WSSS)の発生頻度やその詳細を把握し,そのデータを基にWSSSを極力なくす具体的方策を検討することを目的として,日本脊椎脊髄病学会に属する脊椎脊髄外科医に対して,web形式による無記名のアンケート調査を実施した.その結果,「脊椎脊髄外科医」の約80%にWSSSの経験があることが分かった.WSSSの原因は術者要因,患者要因など様々であった.WSSSを起こさない対策として1)複数人での確認,2)執刀医以外の医師,スタッフが意見できる環境作り,3)基本的には棘突起にマーカー(メルクマール)を置いてX線撮影での確認,4)上記X線撮影での判定が不十分と判断されれば,2方向でのX線撮影,または2ヶ所のマーカー(メルクマール)の設置,またはX線透視の使用,以上4つの案が考えられた.また手術終了後麻酔中の再度の確認が必要である.

  • 大場 哲郎, 小田 洸太郎, 田中 伸樹, 勝 麻里那, 竹居 隼人, 波呂 浩孝
    2023 年 14 巻 5 号 p. 753-758
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形(ASD)の矯正手術に術中CTナビゲーションを使用したLLIFが併用される症例が増えているがナビゲーション精度の報告は少ない.そこで本術式におけるナビゲーションのずれの頻度とリスクファクターを検討した.

    対象と方法:L2~5の3椎間に術中CTナビゲーション下にLLIFを施行したASD 88例(全例女性)を対象とした.術中LLIFのケージを挿入後にナビゲーションの静止画を撮影し,術中CTとのずれを評価し,ずれのあった症例となかった症例の患者背景を比較検討した.

    結果:ナビとCT画像の間でケージの位置にずれがあった椎間は7/264(2.6%)で,すべて冠状断で2 mm未満のナビゲーションエラーであった.エラーの頻度は椎間による有意差はなかった.ナビゲーションエラーあり群はなし群と比較して有意に骨密度が低く,それ以外のパラメータに有意差はなかった.

    結語:リファレンスフレームは強固で,術野に干渉しない位置に設置することが重要である.さらに脊柱変形を有する症例では,矯正によりリファレンスフレームとLLIF施行椎間の位置関係が変わらない工夫が必要である.

  • 河野 修, 林 哲生, 益田 宗彰, 坂井 宏旭, 森下 雄一郎, 久保田 健介, 横田 和也, 前田 健
    2023 年 14 巻 5 号 p. 759-766
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:外傷後脊髄空洞症に対する,くも膜下腔-くも膜下腔バイパス手術(Subarachnoid-subarachnoid bypass:S-S bypass)の髄液還流改善による脊髄空洞縮小効果はすでに良好な成績が報告されている.我々は脊髄外傷以外の原因で生じる脊髄癒着性くも膜炎に対してもS-S bypass手術を行ったので,その効果を検討しS-S bypass手術の適応について考察した.

    対象と方法:くも膜病変により脊髄空洞症を生じた病態に対してS-S bypass手術を行った45例(外傷後脊髄空洞症28例,Arachnoid web 6例,それら以外の癒着性くも膜炎11例)を対象とした.臨床症状を,改善,不変,悪化の3段階で評価した.また髄液還流改善効果をMRIにおける空洞縮小の有無で評価した.

    結果:45例中36例(82%)で空洞縮小が認められた.臨床症状は,32例(71%)が改善,7例(16%)が不変,6例(13%)が悪化となっていた.

    結語:S-S bypass手術は大多数の症例で空洞の縮小を認めており髄液還流障害を改善させる効果があると考えられた.

  • 遠藤 健司, 西村 浩輔, 鈴木 秀和, 小西 隆允, 粟飯原 孝人, 山本 謙吾
    2023 年 14 巻 5 号 p. 767-772
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:パーキンソン病(PD:Parkinson's disease)において首下がり症候群(DHS:dropped head syndrome)は0.4~6%に発症すると報告されているが,疫学,全脊椎アライメントや予後の違いは不明である.

    対象と方法:DHS患者168例(男41例,女127例,平均74.1歳を対象として,退行性変化により発症したINEM(idiopathic neck extensor myopathy)-DHS患者,パーキンソン病と診断されたPD-DHS群,薬剤性のパーキンソン症候群と診断されたDIP(drug induced Parkinson's disease)-DHS患者について比較検討した.

    結果:INEM-DHSは116例(69.0%),PD-DHSは13例(7.7%),DIP-DHS 6例(3.6%),その他33例であった.3群ともに女性が多く,PD-DHS,DIP-DHSは発症年齢が低かった.PDの診断は,DHSの初診時検査で診断されたのは3例(1.8%),PD診断から1年未満でDHS発症は4例(2.3%),1年以上は6例(3.6%)であった.脊椎矢状面アライメントは,PD-DHS,DIP-DHSにおいて後弯変形が強かった.臨床症状は,PD-DHSで重症例が多く予後は劣っていた.

    結語:DHS患者におけるパーキンソン病の合併率は7.7%,首下がりを契機にパーキンソン病の診断がされた症例は1.8%であった.PD-DHSの特徴はINEM-DHSと比較して頚椎後弯変形が強く,発症時臨床症状は連続前方注視歩行困難例,予後不良な例が多かった.

  • 南出 晃人, 大江 真人, 種市 洋
    2023 年 14 巻 5 号 p. 773-778
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:高齢者骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対する経皮的椎体形成術(BKP)の早期介入の意義とQOLに与える影響について検討した.

    対象と方法:対象は胸腰椎移行部OVFに対し受傷4週以内に下記のいずれかの条件を満たす場合にBKPを施行:MRIで①T2強調像で広範囲低輝度または限局高輝度変化,②T1強調像で広範囲低輝度,③急速な圧潰,後弯の進行,④保存療法でADL障害である.検討項目は,腰背部痛(Numeric Pain Rating Scale;NPRS),日本語版EQ-5D-5Lであり,術前(受傷前含)と術後1ヶ月・6ヶ月・12ヶ月で比較検討した(p<0.05).

    結果:88例(男/女16/72例,平均80.7歳)追跡調査可能であり,T scoreは-2.90であった.受傷後平均15.4日でBKP介入,術後退院は16.1日,NPRSは有意に改善した(p<0.05).80歳以上の超高齢者では,QOLは術後1ヶ月から受傷前同様となり,その後も維持されていた(p>0.05).しかし,術後二次椎体骨折を認めた13例では,EQ-5D-5Lは受傷前よりも有意に低下していた(p<0.05).

    結語:OVFに対するBKPの早期介入による高齢者QOLに与える影響を調査した結果,80歳以上の高齢者でも早期社会復帰を可能とし,受傷前のQOLが獲得できていた.

  • 塚本 有彦, 高島 弘幸, 吉本 三徳, 宮下 賢, 大山 智充, 千葉 充将, 廣田 亮介, 黄金 勲矢, 家里 典幸, 寺本 篤史
    2023 年 14 巻 5 号 p. 779-785
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:MRI ultra-short TE法で椎間板髄核と椎体軟骨終板の変性を定量的に評価することと,両者の関連を調べることを目的とした.

    対象と方法:3.0テスラのMRI矢状断像でL2/3,L3/4,L4/5レベルの椎間板髄核と椎体軟骨終板を評価した.椎間板髄核の視覚的評価としてT2強調矢状断像でのPfirrmann分類,椎体軟骨終板の視覚的評価としてはT1強調像でのEnd Plate Classification and Score,両者の定量的評価としてultra-short TE法によるT2マッピングを用いて計測した.

    結果:椎間板髄核はPfirrmann分類のGradeが進むにつれてT2*値が短縮していた.椎体軟骨終板はEnd Plate Classification and Scoreで変性がGradeが2,3に進行するとT2*値が延長するが,Grade4,5,6と変性が高度になるとT2*値が短縮していた.椎間板髄核T2*値が短縮すると椎体軟骨終板T2*値は一旦延長するがその後短縮していた.

    結語:椎間板髄核と椎体軟骨終板の変性をT2*値を用いて定量的に評価した.今後定量的評価法を用いた縦断研究を進める事で,椎間板と椎体軟骨終板の変性がどちらが先に進行するかを解明できる可能性がある.

  • 岩前 真由, 寺井 秀富, 玉井 孝司, 星野 雅俊, 高橋 真治, 馬野 雅之, 小林 祐人, 勝田 紘史, 金田 国一, 島田 永和, ...
    2023 年 14 巻 5 号 p. 786-793
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:新鮮OVFのうちMRI予後不良因子(T2強調像で高信号限局型,低信号広範囲型)がないにも関わらず腰痛が遺残した症例について検討した.

    対象と方法:後ろ向きコホート研究.対象はOVFに対し保存加療を選択し,6ヶ月以上経過観察できた55例(平均年齢75.1歳,女性47例).MRIの予後不良因子を有する症例,馬尾・神経根の圧排を認める症例は除外した.6ヶ月時の腰痛VAS≧40の症例を腰痛遺残群(16例),その他を対照群(39例)に群分けした.評価項目は,初診時のX線動態撮影(座位・仰臥位側面)や全脊柱X線各種パラメーター,腰痛/臀部痛VAS,ODIを用いた.

    結果:単変量解析にて,初診時の臀部痛VAS(p=0.002),椎体可動角(p=0.047),TK(p=0.046),LL(p=0.031)に有意差があった.以上の有意な項目に年齢,性別,初診時腰痛VASを加えた多変量解析の結果,初診時の臀部痛VASが独立した腰痛遺残の危険因子であった(調整Odds比=1.526,p=0.019).

    結語:OVF受傷後6ヶ月時の腰痛遺残の危険因子は,初診時の臀部痛であった.

  • 塚本 有彦, 押切 勉, 吉本 三徳, 大山 智充, 宮下 賢, 廣田 亮介, 千葉 充将, 黄金 勲矢, 家里 典幸, 藤田 安詞, 寺本 ...
    2023 年 14 巻 5 号 p. 794-798
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ椎間板内注入療法において,早期に症状が改善する症例について,その予測因子をMRI ultra-short TE法による椎間板髄核T2*値を含めて検討した.

    対象と方法:対象は30例で平均年齢は58.2歳.治療後1週間の下肢痛VASが治療前の50%以上改善したものを早期改善群,改善しなかったものを非改善群とした.

    結果:罹病期間が早期改善群で短く,非改善群で長い傾向だった(P=0.08).また,早期改善群では治療前の椎間板髄核T2*値が高く,治療後の変化率が大きかった(p<0.05).ROC解析では治療前の椎間板髄核T2*値のカットオフ値は31.42 msだった(感度77.8%,特異度81.0%).

    結語:椎間板髄核T2*値は腰椎椎間板ヘルニアに対して,椎間板内酵素注入療法を選択する際の指標となる可能性があると考えられる.

  • 杉田 守礼, 藤原 正識, 森田 友安, 小木曽 左和子, 小山 卓摩, 穂積 高弘
    2023 年 14 巻 5 号 p. 799-802
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:術後感染の危険因子とされる脊椎転移に対する手術前の放射線治療の時期並びに総線量が術後感染に与える影響を調べる.

    対象と方法:脊椎転移に対し術前に局所への放射線治療歴があり,その後外科治療を受けた113名の患者を対象とした.術後に創部感染を合併した10名(感染群)と合併しなかった103名(非感染群)の2群に分け,術前放射線から手術までの期間および術前に照射された放射線の総線量を解析した.また対象を照射から手術までの期間が1週間以内(超早期群),1ヶ月以内(早期群),1ヶ月以上1年以内(晩期群),1年以降(超晩期群)に手術を行った4群にわけて群間で感染率の差を比較した.

    結果:放射線照射から手術の期間(中央値)は,両群間において感染群278日,非感染群360日と差は見られなかった.また術前照射の総線量についても差は見られなかった.さらに超早期群(7.7%),早期群(7.7%),晩期群(8.6%),超晩期群(9.6%)の間に感染率の差は見られなかった.

    結語:放射線照射の有無は術後感染のリスクファクターであったがそのタイミング,総線量では感染に差は生じなかった.

  • 泉 文一郎, 泉 恭博
    2023 年 14 巻 5 号 p. 803-809
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:運動器検診で指摘される姿勢異常において,側弯症以外に体の硬い前屈制限児も数多く認め,アライメント異常や脊椎変形が報告されている.本研究の目的は前屈制限児の頚椎後弯に対する胸椎後弯角の関連と年齢によるアライメント変化を明らかにすることである.

    対象と方法:運動器検診で前屈制限ありとして二次検診で当院を受診した前屈制限例(SLR<45度)105例を検討した.年齢は平均11.2歳(7~15歳),性別は女子48名,男子57名である.評価は全脊柱レントゲン(AeroDR system)での頚胸椎後弯角を年齢別,性別で検討した.

    結果:頚椎は平均で2.8度の前弯,胸椎は21.5度の後弯であった.頚椎後弯角と胸椎後弯角には相関を認め,年齢とともに頚椎の前弯は減少し平均では12歳以上で後弯となっていた.

    結語:頚椎は症例の86%が正常平均の前弯17度以下であり,胸椎も症例の97%が正常平均の後弯35度以下であった.この頚椎後弯化は年齢ともに顕著となっていた.胸椎後弯角と頚椎後弯角は逆相関しており,運動器検診で指摘される前屈制限児の胸椎後弯減少に注目し頚椎後弯アライメント異常を指摘できる可能性がある.

症例報告
  • 井上 大典, 重松 英樹, 松森 裕昭, 植田 百合人, 田中 康仁
    2023 年 14 巻 5 号 p. 810-816
    発行日: 2023/05/20
    公開日: 2023/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fractures;OVF)に対してHydroxyapatite(HA)顆粒を使用した経皮的椎体形成と後方固定術(Vertebroplasty with HA+Posterior Spinal fusion;VPHA+PSF)が報告されている.我々もOVFにVPHA+PSFを10例で施行したが,4例でimplant障害が生じ,再手術を行った.10例の詳細を報告し,文献的考察をふまえて検討した.

    代表症例:78歳男性.転倒で受傷,他院受診し,Th12 OVFと診断された.受傷後約2ヶ月で遅発性神経障害が出現し,約3ヶ月で当科に紹介,約4ヶ月で3 above 2 belowでVPHA+PSFを施行した.術前の局所後弯角は-34°だったが,術後は-2°まで改善した.歩行器歩行可能となったが,術後1ヶ月の腰椎単純X線写真でL1椎体骨折とscrew back outを認め,局所後弯角は-22°と悪化した.腰痛がつよく再度歩行困難となり,術後2ヶ月で再手術を施行した.再手術後腰痛は改善,現在独歩可能である.

    結語:VPHAは矯正角度が大きいと支柱安定まで固定力が維持できず再手術に至る.過度な矯正をしないか,もしくは実施する場合にはscrew以外の固定追加や別のscrew挿入法を考慮する必要がある.

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