Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
13 巻, 1 号
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Editorial
原著
  • 西村 行政
    2022 年 13 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:これまであまり注目されなかったL1/2椎間孔部狭窄の臨床所見を調査した.

    対象と方法:当院にて加療した腰椎変性疾患患者9,138例のうち,片側性の腰殿部痛を訴え,MRIでL1/2椎間孔部狭窄が認められ,L1神経根ブロックによって症状の消失がみられた16例(0.175%)であった.男性12例,女性4例,平均年齢が61歳で,外側ヘルニアが9例あった.これらについて臨床症候と神経学的所見,画像所見を検討した.

    結果:後方腸骨稜部に認める腰痛が特徴的で全例でみられた.鼡径部痛を10例(63%)に,大転子外側部痛と大腿前面中枢部の痛みをそれぞれ6例(38%)で認めた.大腿遠位部や下腿の痛みはなかった.3例は鼡径部痛のために内科的検査も受けていた.神経学的異常はほとんど認められず,Kempテストで9例(56%)に疼痛の増強がみられた.X線像で変性側弯が7例(44%)にみられた.外側ヘルニア例ではMRI冠状断像で椎間孔部に腫瘤様陰影を認めた.

    結語:L1/2椎間孔部狭窄は片側の比較的強度の後方腸骨稜部の腰痛を呈し,鼡径部痛や時に大転子外側痛,大腿前面中枢の痛みを伴った.Kempテストで疼痛の増強が半数以上でみられた.腰痛には本症に由来するものもあるため注意をはらう必要がある.

  • 尾ノ井 勇磨, 金山 修一, 楠瀬 正哉, 篠原 一生, 平田 裕亮, 金村 在哲
    2022 年 13 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年,フレイル(虚弱性)と脊椎領域疾患との関連性には注目が集まっているが,頚髄症の長期治療成績に関する報告はまだ少ない.今回,フレイルと頚椎椎弓形成術術後10年以上の長期成績との関連性について調査したので報告する.

    対象と方法:頸椎椎弓形成術術後10年以上追跡可能であった103例(男性73例,女性30例,平均61.0歳,CSM 78例,OPLL 25例)を調査した.5-item modified frailty index(mFI-5)を用いて,健康群(術前mFI-5 = 0),フレイル予備群(= 1),フレイル群(≧2)の3群に分け,JOAスコア,JOAスコア改善率を評価した.

    結果:健康群では術後1年で改善したJOAスコアが10年以上経過後も維持されたが,フレイル予備群,フレイル群では術後1年で改善したJOAスコアが10年以上経過後には低下していた.

    結語:術前のフレイルを評価することは,頚髄症患者の術後成績を予測するために有意義であると考えられた.

  • 竹内 陽介, 角南 貴大, 清水 知明, 猪股 兼人, 会田 育男
    2022 年 13 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当院では胸腰椎化膿性脊椎炎の手術加療として後方instrumentationを併用した前方掻破骨移植術を第一選択としている.

    対象と方法:2015年4月から2020年3月まで本法で加療した連続16例を対象とした.男性12例,女性4例,平均年齢69(12~60)歳,平均経過観察は35(12~60)ヶ月だった.罹患高位はT5/6~L5/Sであった.併存症は糖尿病が10例と最多だった.主たる手術適応は骨破壊,難治性疼痛であった.Radicalな前方掻破と自家腸骨移植を行い,後方固定は経皮的椎弓根screwを主に使用した.患者背景因子,手術関連因子と臨床成績を調査した.統計学的検討を行いP<0.05を有意差ありと定義した.

    結果:入院後平均22日で再建術が行われた.術前CRPは平均2.9 mg/dlと入院時に比べて有意に低下した(P<0.001).起因菌は15例に同定された.再建順序は前方後方が12例と最も多かった.腰痛VAS,障害老人自立度判定基準を用いたADLは術後有意に改善し(P<0.001),最終観察時13例(81%)に実用性歩行が獲得できていた.全例で感染は治癒し,15例(94%)で骨癒合が得られた.罹患椎体screwは13例(81%)に使用したが,臨床的問題を生じなかった.罹患椎体screwを使用した例は,しない例に比べて有意に後方固定椎間数が短かった(P<0.001).

    結語:本法により良好なADLの改善と感染治癒が期待できる.

  • 村本 拓磨, 宮城島 一史, 石田 和宏, 百町 貴彦, 柳橋 寧, 安倍 雄一郎
    2022 年 13 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,自在曲線定規を用いた腰椎前弯角評価の信頼性・妥当性を検証することである.

    対象と方法:対象は,健常成人10例と腰椎椎間板ヘルニア(LDH)患者39例とした.測定は自在曲線定規を用い,腰椎に密着させ方眼紙に曲線をトレースし,腰椎前弯角を算出した.LDH患者は立位X線側面像にて腰椎前弯角を算出した.

    結果:検者内信頼性ICC(1.1)は0.92(95%CI:0.79~0.98),検者間信頼性ICC(2.1)は0.66(95%CI:0.32~0.89)であった.LDH患者の自在曲線定規とX線画像の腰椎前弯角では正の相関関係を認めた(r=0.73,p<0.05).自在曲線定規とX線画像での回帰式はX線画像角度=0.828×自在曲線角度+16.351であった.

    結語:自在曲線定規を用いた腰椎前弯角評価は日本人においても高い検者内信頼性および妥当性を認めた.自在曲線定規を用いた腰椎前弯角測定は経時的な評価を可能とするとともに,回帰式を用いることでX線画像角度を想定して評価,検討することも可能である.

  • 伊藤 不二夫, 伊藤 全哉, 柴山 元英, 中村 周, 山田 実, 吉松 弘喜, 倉石 慶太, 星 尚人, 三浦 恭志
    2022 年 13 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:高齢化社会につれ腰部脊柱管狭窄症は増加傾向にあり,低侵襲・小切開としつつも,作業腔の太い内視鏡が望まれていた.我々は韓国内視鏡専門医と意見交換し,ドイツMaxmore社でのPercutaneous Stenoscopic Lumbar Decompression(PSLD)開発事業に参加してきた.

    対象と方法:片側進入両側除圧法のPSLD内視鏡は,外筒9.5 mm,作業腔5.5 mmで,1~5.0 mm径のKerrison,同径ダイアモンドバー,ノミ,鋭匙等が使用できる.高周波で軟部組織・黄色靭帯浅層を手早く処理し,4 mmバーで椎弓を荒削り後,深部は2.5~3 mmバーで慎重に骨削開する.黄色靭帯はケリソンで椎弓深部から遊離除圧し,浮上したら中央で縦裂きし一塊として摘出する.

    結果:77名の腰部脊柱管狭窄症1~3椎間に対しての結果はMacnab基準で優・良が85.7%であり,硬膜損傷は5例であった.

    結語:PSLDシステムにより観血手術類似器具を使用し,骨削開・黄色靭帯切除・椎間板摘出等がスムーズに行えた.1皮切で3椎間除圧までが可能であった.

  • 寺口 真年, 延與 良夫, 米良 好正, 原田 悌志, 北山 啓太, 北裏 清剛, 中川 幸洋
    2022 年 13 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は増加しており早期介入は必須である.本研究はOVF受傷から診断までの期間,経皮的椎体形成術(BKP)までの期間が術後成績に及ぼす影響について検討した.

    対象と方法:OVFと診断しBKP施行した118例.腰痛発生から診断までの期間,BKPまでの期間の2項目を説明変数,術後3ヶ月目腰痛Numerical Rating Scale(以下NRS),術翌日X線画像と比較し椎体変形がある画像的隣接椎体骨折,疼痛を伴う隣接椎体骨折,矯正損失を目的変数として統計解析を施行した.

    結果:7日以内の早期診断群は診断遅延群に比較して術後3ヶ月目の腰痛NRSは低く(0.62 vs 1.46,p<0.05),画像的隣接椎体骨折も少なかった(11.8% vs 34.0%,p<0.005).BKPまでの期間が28日以内の早期BKP群はBKP待機群に対して3ヶ月目の画像的隣接椎体骨折が少なかった(12.5% vs 39.5%,p<0.005).

    結語:OVFの早期診断と早期BKPが画像的隣接椎体骨折の頻度が少なく良好な術後成績を呈していた.

  • 松田 陽子, 対馬 栄輝, 葉 清規, 大石 陽介, 村瀬 正昭
    2022 年 13 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究目的は産後腰痛・骨盤帯痛患者の健康関連QOL(以下,HRQOL)に影響を与える患者特性と日常生活動作について探索することである.

    対象と方法:産後腰痛・骨盤帯痛患者37例に対して,リハビリ初回時にHRQOLの指標としてSF-8 Health Surveyの身体的健康度(以下,PCS)と精神的健康度(以下,MCS)を評価した.また,同時に調査した患者特性および,日常生活動作の指標としてOswestry Disability Index(以下,ODI)の9つのサブスケールを用いて,HRQOLの国民標準値との比較と日常生活動作との関連について解析した.

    結果:対象者のうち,PCSは89%,MCSは65%が国民標準値未満であった.PCSには,ODIの物を持ち上げること,座ること,社会生活,身の回りのこと,年齢が関連していた.

    結語:産後腰痛・骨盤帯痛患者のPCSには,高年で,腰部への屈曲負荷が生じると考える日常生活動作が関連していた.

  • 高橋 真治, 寺井 秀富, 星野 雅俊, 中村 博亮
    2022 年 13 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)は高齢者の多くが罹患する骨折であり介護費用に与える影響が懸念される.一方でBalloon kyphoplasty(BKP)はOVFに対して広く行われている治療の一つである.本研究目的は過去の報告をもとに介護費用及び介護者の生産性損失を含めた保存治療およびBKPの費用を推計することである.

    対象と方法:OVF後のADL分布は,新規にOVFを発症した受傷後2ヶ月以内の65歳以上の者を対象としてBKPあるいは保存治療を実施した6ヶ月間の多施設前向き研究のデータを使用した.介護費用の推計やインフォーマルケア費用の推計について,主に厚生労働省が公表しているデータを基に推計した.

    結果:介護費用は,治療実施6ヶ月後時点のADL分布と要介護度と日常生活自立度の分布を基に算出した.治療実施6ヶ月後時点の要介護度別の1人あたり介護費は,BKP群39,497円/月,保存療法群58,298円/月,差分18,801円/月であった.インフォーマルケア費用の比較として,治療実施6ヶ月後時点の要介護度別の1人あたりインフォーマルケア費用は,BKP群で35,722円/月,保存療法群で44,102円/月,差分は8,380円/月であった.

    結語:BKPによるADLの改善が,介護費用および介護者の生産性損失を削減する可能性がある.

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