Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
9 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 田尻 和人, 安川 由紀子, 古沢 祥, 窪田 恭子, 近岡 信悟, 河合 健吾, 峯村 正実, 安村 敏, 高原 照美, 杉山 敏郎
    2014 年 9 巻 1 号 p. 101-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    【目的】わが国において, 肝硬変を合併した肝細胞がんに対するオピオイドの投与方法に明確なガイドラインは存在せず, 実臨床においては, その投与方法に苦慮することも多い. 【方法】当院 第三内科でオピオイドを投与された肝硬変合併進行肝細胞がん症例について, その現状や問題点について後方視的に検討を行った. 【結果】オピオイドの投与期間は約2カ月程度であったが, 肝予備能が保持され, 肝細胞がん治療を行えた症例では, オピオイドの投与期間が比較的長期となることが示された. オピオイド開始時に肝性脳症の予防対策を行っていた症例は10%強にすぎず, オピオイド開始後に肝性脳症を認めた症例が40%弱にみられた. また, オピオイドローテーションの際に疼痛管理不良となる例がみられた. 【考察】肝硬変合併肝細胞がんに対するオピオイド治療においては, 薬剤の選択・投与法や肝性脳症予防対策について検討の余地があると思われた.
  • 新城 拓也, 清水 政克, 小林 重行, 濱野 聖二, 岡野 亨, 中村 宏臣, 石川 朗宏, 関本 雅子, 槇村 博之, 本庄 昭, 神戸 ...
    2014 年 9 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/04
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は, 神戸市内の医師が感じている, 在宅医療に関する困難・負担感の実態を調査することである. 【方法】神戸市内の医療機関を対象に, 2013年7月に質問紙を発送した. 【結果】神戸市内の医療機関1,589施設に発送し, 899施設から返答を得た (返答率 57%). 主調査項目に対して, 返答のあった807施設(51%)を解析対象とした. そのうち, 在宅医療に対する困難・負担感は「かなり感じている」(30%), 「少し感じている」 (31%)であった. 困難の決定因子として, 医師の年齢が80歳以上(P=0.05), 在宅医療に関しての困難として「特定の医療処置」(P=0.036), 「他医療機関・介護職との連携」(P=0.002), 「時間と人員の確保」(P<0.001)が分かった. 【結論】過半数の医療機関で在宅医療に困難・負担感を感じていることが分かった.
  • 阿部 泰之, 森田 達也
    2014 年 9 巻 1 号 p. 114-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/19
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は, 地域における医療介護福祉の連携の良さを評価する尺度の信頼性・妥当性を検証することを目的に行われた. 【方法】在宅で過ごす患者に関わる医療福祉従事者を対象とした「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」(森田ら, 2013)を広範な職種, 疾患に適応可能となるよう改変し, 26項目からなる「医療介護福祉の地域連携尺度」を作成した. 362名の医療介護福祉従事者を対象として, 信頼性・妥当性を検証した. 【結果】内的一貫性は良好であった. 探索的因子分析でもともとの尺度と同じ因子構造が抽出された. Palliative care Difficulties Scaleの地域連携に関する困難感と有意な逆相関が認められた. 地域連携の全般的評価, 多施設多職種対象の集まりへの参加回数, 困った時に助けになってくれる人の数との間に有意な関連があった. 【結論】「医療介護福祉の地域連携尺度」は, 地域の医療介護福祉の包括的な連携を表す指標として有用である.
  • 大園 康文, 福井 小紀子, 川野 英子
    2014 年 9 巻 1 号 p. 121-128
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】終末期がん患者の在宅療養継続を促進・阻害する出来事を経時的に分類し, 死亡場所に与えた影響をパターン分類することを目的とする. 【方法】訪問看護師17名に半構造化面接を行った. 在宅死した事例と病院死した事例について, 在宅療養中に入院を希望した経緯やその時の対応を尋ねた. 【結果】在宅死に至った事例では, (1)最初から在宅死を望み最期まで継続できた, (2)促進する出来事と阻害する出来事を経験しながら最期まで継続できた, (3)副介護者の強い希望で在宅死した, 事例の3つに分けられた. 病院死に至った事例では, (1)在宅療養継続を望んでいたが症状が増強し入院した, (2)阻害する出来事が重なり入院をした, (3)家族が介護に消極的で症状増強や医師の意向に従って入院した, 事例の3つに分けられた. 【結論】在宅療養継続を促進・阻害する出来事を経時的に分類することで, パターンに応じた適切な対応策について示唆を得ることができたと考える.
短報
  • 小林 友美, 村上 真基, 山本 直樹, 佐藤 裕信
    2014 年 9 巻 1 号 p. 301-307
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/04
    ジャーナル フリー
    【目的】看取り間近の終末期がん患者の外出・外泊を支援することの意義について検討した. 【方法】2011年1月から2012年12月の間に当院緩和ケア病棟において, 外出・外泊を行ってから15日以内に死亡した27名を対象として, 診療録の後ろ向き調査と遺族へのアンケートを行った. 【結果】患者の年齢は29~91歳, 内訳は外出/外泊: 10/17名, 行き先は自宅/その他: 24/3名であった. 目的は, 用事を済ませたい/家を見たい・帰りたい: 11/9名などであり, 帰院後の感想は肯定的/否定的: 15/6名であった. 遺族調査は18名から回答を得た. 家族の不安と苦労は, 外泊中の急変とその対応, ついで機器・移動・介護などへの援助方法であった. 【結論】看取り間近の終末期がん患者の外出・外泊支援は, 患者・家族にとって有益であった. 急変時の対応について, 具体的な対策を構築して外出・外泊を支援することが家族の安心感につながると考えられた.
  • 光行 多佳子, 阿部 まゆみ, 安藤 詳子
    2014 年 9 巻 1 号 p. 308-313
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/25
    ジャーナル フリー
    【目的】「キャンパス型緩和デイケア・サロン」に参加するがんサバイバーの体験を質的に調べた. 【方法】サロン利用者10名に半構成的面接を行い, 内容分析した. 【結果】参加動機から【心の支えを求める】【生きる術を学びたい】, 参加した印象から【安心して感情表現できる場】【自由に活動する場】【本音で交流する場】【専門的助言を受け, 活力を得る場】, 参加後の変容から【適正な生活への変化】【再発や最期の時に対するイメージの好転】【家族や周囲との関係性の好転】【行動拡大と役割意識の高揚】の10カテゴリーが得られた. 【考察】がんサバイバーは生きるための支援を必要とし, サロンで感情表出して, がん体験を本音で語り, 互いに受容し合っていった. そして, 内的気づきを通して, 肯定的に現状を捉え直し, 生きる態度を変えていった. この変容には, 大学での自由な活動と心身の安全の保証, 変容の方向性を示すファシリテートが関与したと考えられる.
症例報告
  • 畑中 知笑美, 間瀬 広樹
    2014 年 9 巻 1 号 p. 501-504
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/17
    ジャーナル フリー
    【緒言】オキサリプラチンは, 結腸・直腸がんに対して有効な白金系抗がん剤である. しかしながら, 半数近くの患者に急性および蓄積性の末梢神経障害が生じ, 日常生活に及ぼす影響は甚大である. 末梢神経障害への対処は重要であるにもかかわらず, いまだ確立された方法はない. 【症例】60歳代, 女性. 再発大腸がんに対してSOX療法が施行されたが, 治療当初より末梢神経障害が発現した. ピリドキサールリン酸エステル水和物や牛車腎気丸を継続服用したが無効であったため, 患部へ1.35% l-メントール含有軟膏を1日3回, 1回につきおおむね0.5~1 gを両足裏に塗布するよう, 薬局で服薬指導した. 塗布開始当日より症状のすみやかな消失が認められ, その後SOX療法終了までの1カ月間塗布を継続したが症状の再発はみられなかった. 【結論】1.35% l-メントール含有軟膏の塗布は, オキサリプラチン誘導末梢神経障害の改善に効果的である可能性が示唆された.
活動報告
  • 堀籠 淳之, 阿部 泰之
    2014 年 9 巻 1 号 p. 901-905
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/03
    ジャーナル フリー
    【目的】地域包括ケアシステムに対応すべく, 顔の見える多職種連携を目指した取り組みが全国各地で活発化しているが, 職種の偏在や開催方法, 運営資金, 継続性などの抱えている問題は少なくない. これらの問題を克服する方法を開発する. 【方法】ケア・カフェは, 哲学や社会学などの理論をベースにワールド・カフェの方法論を応用したものである. 地域でケアに関わる人々が顔の見える連携と, 日頃の困りごとを相談する場としてケア・カフェが定期的に開催されている. 【結果】旭川市で毎月開催され, これまで9回の開催で延べ約700名を動員した. また, すでに日本全国16カ所にもこの方法が広がり, 延べ29回開催され, 実際の多職種連携や問題解決につながった事例などが報告されている. 【結論】ケア・カフェは, 旭川発の取り組みで, 顔の見える多職種連携を育むために有用な手法となりつつある. すでに全国に広がっており, さらなる顔の見える連携創造が期待される.
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