【目的】日本語版「集中治療室(ICU)での意思決定に関する倫理的風土の調査票」(Ethical Decision-making Climate Questionnaire: EDMCQ)の作成と信頼性・妥当性の検討を行うことである.【方法】英語版EDMCQを翻訳し,日本語版を作成した.ICU看護師を対象に郵送法にて調査を実施し,14日後に再テストを行った.【結果】25施設の439名に配布し,204名の回答を分析対象とした(有効回答率:46.5%).尺度全体のCronbackα係数は0.91であり,級内相関係数は0.80であった(n=101, 有効回答率:23.0%).確認的因子分析におけるモデル適合度の指標はCFI: 0.836, GFI: 0.783, AGFI: 0.741, RMSEA: 0.071であった.【結論】日本語版EDMCQは,倫理的風土の評価指標として本邦で実用可能な尺度であるといえる.
【目的】一般病院の看護師が経験した非がん疾患患者へのエンドオブライフケア(EOLC)の実践の自己評価に関連する要因を明らかにする.【方法】一般病院の看護師1,161名を対象とした質問紙調査.【結果】がん648例,非がん306例の看取り事例を比較すると,非がんは,EOLC実践の自己評価(10段階)が低く,意向・希望の聴取,EOLCに関するチームでの話し合いの実施も少なかった(p<0.001).疾患別には,肺炎,心疾患で評価が低かった.EOLC実践の自己評価には,がん・非がんとも,意向・希望の聴取(がんβ=0.21, 非がんβ=0.16),チームでの話し合い(がんβ=0.25, 非がんβ=0.35)が関連していた.【結論】一般病院看護師による非がんのEOLC実践の自己評価はがんに比べ低く,患者の意向や希望を聞く技術の向上や,チームでの話し合いを実施するケア体制の整備を強化する必要がある.
院内病棟型の緩和ケア病棟を持つ当院は,完全独立型の旧病院同様,正面玄関からの死亡退院を案内しているが,それが与える遺族感情への影響を,独立型・病棟型の違いで比較・検討した.患者が退院する際に抵抗感や違和感を感じた遺族は独立型13%,病棟型23%と病棟型で多かった.他患者の退院に遭遇した際の違和感は独立型52%,病棟型28%と病棟型で少なかった.記述意見として正面退院への肯定的な意見は多く挙げられたが,一般病院での気兼ねない退院実施には医療側の十分な配慮が必要であることも示唆された.現在は配慮・工夫の徹底に加え,要望に応じた退院口(正面玄関以外の選択)を導入するに至っている.