Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
15 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 今井 芳枝, 雄西 智恵美, 板東 孝枝
    2020 年15 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/01/29
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    本研究は,終末期がん患者を受け持った看護学生の体験を明らかにすることを目的とした.高齢者看護学実習にて終末期がん患者を受け持った看護学生3年生15名に面接調査を実施した.終末期がん患者を受け持った学生の体験は【苦しんでいる患者がいるのに何もできず情けない】【終末期と怖気づかずに非力ながらも自分から関わっていく】【日常生活のなかで生死を目の当たりにする】【患者が生きている今日1日をしっかりと支えていく】【クリティカルな状態にある患者を看るにはまだまだ不十分さが残ると自覚する】【最期まで患者らしく人生を生き切れるようにする】のカテゴリーで構成された.学生の体験は,終末期にあるがん患者の状況から,自身のケアのあり方に対峙し,患者らしさを引き出す大切さを学ぶ体験となっていた.患者の持つその人らしさの視点を広げることは,対象の持つ特性を加味した終末期ケアを促すことになることが推察された.

  • 池尻 佑美, 大下 恭子, 中村 隆治, 濱田 宏, 林 優美, 倉田 明子, 岡本 泰昌, 河本 昌志, 堤 保夫
    2020 年15 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/06
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    【緒言】慢性神経障害性疼痛患者をスクリーニングする目的で開発された神経障害性疼痛スクリーニング質問票(以下質問票)のがん性神経障害性疼痛における妥当性について検討した.【方法】2014年5月~2015年12月に当院緩和ケアチーム介入時にスクリーニングを行った患者104名を対象に,質問票の合計点と専門医による診断を比較した.妥当性についてはROC曲線を用いて評価した.【結果】合計点と感度,特異度でのROC曲線下面積は0.82と中等度の診断精度が確認された.カットオフ値は合計点3点の場合が最良であり(感度79%,特異度82%),カットオフ値に神経障害性疼痛の診断基準である合計点9点を用いると大幅に感度が低下した(感度40%,特異度97%).【結論】がん性疼痛で質問票は中等度の診断精度を持つが,カットオフ値は慢性痛の場合より低く,合計点が3点以上で神経障害性疼痛を疑うことが望ましい.

  • 大野 栄治
    2020 年15 巻1 号 p. 21-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/06
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    【目的】造血器腫瘍患者は固形腫瘍患者に比べて緩和ケア病棟を利用することは少ない.この研究では,緩和ケア病棟に入院した造血器腫瘍患者の臨床的特徴を明らかにした.【方法】われわれの緩和ケア病棟で5年間に死亡した造血器と固形腫瘍患者の,症状の重症度および有病率,最後の治療から死亡までの期間を比較した.【結果】560人のがん患者のうち56人(10%)が造血器腫瘍の患者であった.造血器腫瘍患者は固形腫瘍患者と同じ程度の症状重症度であり,症状では倦怠感(52% vs. 32%; p=0.004)と発熱(45% vs. 21%; p=0.0004)を多く認めていた.治療終了から死亡までの期間の中央値は造血器腫瘍で69.0日,固形腫瘍で94.5日であった(p=0.031).【結論】緩和ケア病棟に入院した造血器腫瘍患者は,固形腫瘍患者と同程度の症状重症度があり,同様のホスピスケアが必要である.

  • 高橋 理智, 村上 義孝, 大庭 真梨, 中村 陽一, 島田 英昭
    2020 年15 巻1 号 p. 35-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/18
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    【目的】一般病院での緩和ケア体制を明らかにし,緩和ケア体制の違いがオピオイド消費量の施設間格差に及ぼす影響を検討する.【方法】東京都区南部・区西南部の一般病院を対象とした郵送調査を実施し,オピオイド消費量,緩和ケア体制,医師の緩和ケアに関する項目を調査した.またオピオイド消費量を目的変数,調査項目を説明変数とした重回帰分析から,オピオイド消費量の関連要因を探索した.【結果】今回調査した一般病院の35%には緩和ケアチームがなかった.重回帰分析では,緩和ケアに関する資格を持つ薬剤師数,研修会受講医師数,医師への緩和ケアに関する設問の正解数がオピオイド消費量の増加に有意に関連していた.【結語】オピオイド消費量と緩和ケアの知識を持つ医療スタッフ数といった人的資源との関連が明らかになった.一般病院において緩和ケアスタッフを配備することが,オピオイド消費量の施設間格差の縮小につながる可能性が示唆された.

  • 安田 俊太郎, 西川 まり絵, 高田 博美, 石木 寛人, 木内 大佑, 清水 正樹, 里見 絵理子, 清水 研, 山口 正和
    2020 年15 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/26
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    電子付録

    国立がん研究センター中央病院における終末期鎮静の施行状況を後方視的に調査した.2015年4月〜2016年3月に死亡退院した431例中75例(17.4%)に鎮静が施行された.患者背景は男/女48/27例,年齢61(5〜83)歳,原発巣は肺/膵/血液/骨軟部/その他18/11/11/8/27例と若年・希少がんが多く,対象症状は呼吸困難(38例)とせん妄(30例)が多かった.72例でミダゾラムが使用された.死亡時には61例で持続的深い鎮静が実施されており,鎮静開始後の生存期間は2(0〜54)日であった.緩和ケアチーム(PCT)介入群は非介入群と比べて低年齢(58 vs. 62.5, P=0.048),ミダゾラム開始量が均一(5-12 vs. 9.6-25.2 mg/日)であり,PCT介入の有無で鎮静施行状況が異なる可能性が示唆された.

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