【目的】意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する家族の関わり行動とその支援について,医療者と家族の視点から明らかにすることである.【方法】緩和ケアに従事する医療者15名と遺族5名に対して,患者に対して家族が行った関わり行動と医療者が提供した支援について,インタビュー調査を実施した.得られたデータをもとに内容分析を行った.【結果】患者に対する関わり行動は〈従来の患者に対する関わりの継続〉〈患者の安心・安楽への働きかけ〉など三つの大カテゴリーが抽出された.関わり行動に対する支援としては〈関わり方の提案〉〈関わりに対する家族へのフィードバック〉など九つの大カテゴリーが抽出された.【考察】家族に対する支援として,家族自身が関わり方を選択し実行できるよう医療者が働きかける内容が示された.具体的には,関わり方をわかりやすく提案する,家族にフィードバックをする等が挙げられた.
【目的】放射線療法後の頭頸部がんサバイバーにおける晩期有害事象と社会的困難との関連を明らかにする.【方法】照射後1年以上が経過した頭頸部がんサバイバーの症状を既存の疾患特異的QOL尺度の一部で評価した.分析は記述統計を行い,社会的困難と晩期有害事象および基本的属性との関連を検討した.【結果】対象者は73人(回収率70.8%)であった.晩期有害事象は口腔乾燥の有症率および重症度が最も高かった(79.5%).また,社会的困難は会食時の困難の有症率が最も高く(87.7%),会話困難の重症度が最も高かった.照射後5年以上経過した群は症状の重症度が高く,社会的困難と晩期有害事象には有意な正の相関がみられた.社会的困難は嚥下障害と唾液異常,手術歴と関連していた.【結論】頭頸部がんサバイバーは長期にわたり複数の晩期有害事象と社会的困難を有していた.今後は外来にて包括的なアセスメントとケアを行う必要がある.
【目的】緩和ケアチームで介入する患者の栄養学的問題点を明らかにし,緩和ケアチームにおける管理栄養士介入の効果を調査する.【方法】緩和ケア診療加算・個別栄養食事管理加算を算定した症例を後ろ向きに調査し,①介入時の栄養学的問題点と介入内容,②Verbal Rating Scale(VRS)で評価した介入前後の食に関する苦悩,③エネルギー摂取量を調査した.【結果】患者年齢(中央値)66歳,①介入時の栄養学的問題点は「エネルギー摂取量不足」56例,介入内容は「食事形態変更」53例と最も多く,②食に関する苦悩はVRS(中央値)3から2へ改善し,③エネルギー摂取量は753 kcal±552 kcalから926 kcal±522 kcal/日と有意に増加(p<0.01)した.【考察】緩和ケアチーム管理栄養士の介入は,食事に関する苦悩を軽減させ,エネルギー摂取量を増加させる一つの要素になる可能性が示唆された.
【目的】(1)認知症患者の終末期における積極的治療の選好に関して遺族,医療者間での違い,(2)終末期医療の選好の関連要因を明らかにする.【方法】認知症患者の遺族(618名)と,医師(206名),看護職(206名),介護職(206名)の医療者に2019年10月にインターネット調査した.【結果】認知症患者の遺族は終末期に「食べられなくなった際の胃ろう;49%」(p<0.01),医療者は「大きな病気になった際の手術:39%」(p<0.01)を希望した.多変量解析で代理意思決定者を望む遺族は点滴(OR: 1.62, p=0.02),内服の継続(OR: 1.74, p<0.01)を,医療者はよい看取りの要件で人との関係性が重要な人ほど,手術(OR: 2.15, p<0.01),延命治療(OR: 2.00, p=0.01)を希望した.【結論】医療者と家族の間で,終末期の治療に関する選好が必ずしも一致しないため,治療選択時に配慮する必要がある.
【目的】心不全患者と医療者の間で行われる人生の最終段階を意識した対話(EOLd)の現状と関連要因を明らかにする.【方法】京都大学医学部附属病院循環器内科で2015年4月から2020年3月に死亡した患者を対象に診療記録調査を行い,「予後説明」と「人生の最終段階の医療の話し合い」の有無と関連要因を検討した.【結果】109名中,予後説明は40名(36.7%),人生の最終段階の医療の話し合いは25名(22.9%)に実施されていた.予後説明の実施には,年齢(若年)・入院回数の多さ・緩和ケアチームの介入・人生の最終段階の医療の話し合いの実施が関連していた.人生の最終段階の医療の話し合いの実施には,性別(男性)・入院回数の多さ・心不全入院歴があること・緩和ケアチームの介入・予後説明の実施が関連していた.【結論】心不全患者のEOLdは重症および末期心不全患者を中心に行われている現状が示唆された.
【目的】当院では,心不全患者の病診連携の強化,およびシームレスな支援体制を目指して多職種Webカンファレンスを実施している.この取り組みについて報告する.【方法】Web会議ツールを用いた多職種カンファレンスの開催概要を後ろ向きにデータを収集しその概要を記述する.【結果】主な対象者は,独居で介護力が不十分,かつ,再入院の予防目的に多職種介入ニードの高い症例とした.多職種Webカンファレンスでは,匿名性に配慮し,退院における課題と問題解決のための方策を共有していた.開催時期は退院が具体化する前段階とし,開催頻度と時間は週1回30分とした.参加職種は循環器内科医,看護師,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,緩和ケア医,およびプライマリ・ケア医(以下,PC医)である.循環器スタッフは,患者の病態や診療方針を共有しつつ,多面的なチェックシートを用いて,課題の明確化を行う.緩和ケア医は,価値観に基づいた療養計画や意思決定支援について,PC医は,再入院予防に必要な在宅サービス,薬剤調節,生活指導について提案している.【考察】今後は現行の多職種Webカンファレンスの実施方法に改良を加えることや,同カンファレンスの意義についての客観的評価を行うことが課題である.