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竹内 愛, 高 峰美, 田村 敦子, 尼崎 正路, 上田 宏隆
2017 年 12 巻 4 号 p.
717-722
発行日: 2017年
公開日: 2017/11/14
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がん患者のせん妄改善を目的として,院内でクエチアピン坐剤を製剤し,その有用性について検討した.2011年4月から2014年10月までに,緩和ケア病棟に入院した患者のべ644例のうち,クエチアピン坐剤を使用した108例の,後方視的診療録調査を行った.患者背景・投与状況・せん妄による興奮症状の改善度〔Agitation Distress Scale(以下ADS)による過活動型せん妄の改善度の評価〕・副作用について検討した.全体群・クエチアピン坐剤単独投与群・他剤併用群いずれも,ADS値は坐剤投与前後で有意な低下を認め(p<0.0001),せん妄改善に貢献する可能性が示唆された.副作用についてはクエチアピン内服と同等程度であり,また,坐剤という剤型ゆえの問題も認めず,簡便かつ安全に使用可能と判断した.以上より,がん患者のせん妄に対して,クエチアピン坐剤が有用であると考えられた.
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下西 みずえ, 久宗 真理, 松井 美帆
2017 年 12 巻 4 号 p.
723-730
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/26
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【目的】看護師が実践している心不全終末期患者の症状アセスメント・症状緩和のための非薬物療法による対応およびターミナルケア態度に関連する要因を明らかにする.【方法】循環器病棟看護師180名に質問紙調査を実施した.【結果】症状アセスメントは14症状全てにおいて8割近くが実施していた.症状緩和のための対応では日常生活の調整,体位・生活動作の工夫,環境整備が多く実施されていた.緩和ケア院外研修受講経験あり群で,ターミナルケア態度の死にゆく患者へのケアの前向きさおよび総得点が有意に高かった.終末期ケアに対する困難感の看護職の知識・技術は,ターミナルケア態度の死にゆく患者へのケアの前向きさの得点が高い程,有意に低かった.【結論】心不全の緩和ケアに関する研修・教育を行うことにより,看護師のターミナルケア態度を高め,緩和ケアに関する実践を図っていく必要がある.
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鈴木 梢, 森田 達也, 田中 桂子, 鄭 陽, 東 有佳里, 五十嵐 尚子, 志真 泰夫, 宮下 光令
2017 年 12 巻 4 号 p.
731-737
発行日: 2017年
公開日: 2017/11/10
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電子付録
本調査は広い概念での補完代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)の使用実態や家族の体験を知り,がん患者とのコミュニケーションに活かすことを目的とし,緩和ケア病棟の遺族への自記式質問用紙調査(J-HOPE2016)の一部として実施された.調査の結果,がん患者の54%がCAMを使用し,内容はサプリメントのほか,運動やマッサージなど多岐に渡っていた.多くはがん治療や経済面に影響のない範囲でCAMを用いていたが,一部でがん治療や経済面への影響も懸念され,医療者からCAMについて話題にする姿勢が重要と考えられた.また,CAM使用との関連要因として若年患者,遺族が高学歴であることが抽出され,さらに,CAMの使用は家族の心理面に影響を及ぼしている可能性が示唆された.CAM使用歴のある患者家族の心理面・精神面にも注意を向ける必要がある.今後,CAMの内容別,緩和ケア病棟以外で死亡した患者についても調査を進めることが求められる.
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清藤 佐知子, 宮内 一恵, 池辺 琴映, 清水 弥生, 山下 夏美, 谷水 正人
2017 年 12 巻 4 号 p.
739-746
発行日: 2017年
公開日: 2017/11/10
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【目的】がん患者および家族のセクシュアリティに対する医療者の認識と支援の実態を明らかにする.【方法】2014年5月に四国がんセンターの医療者538名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.【結果】457名(84.9%)より有効回答を得た.セクシュアリティに関する支援経験があるのは29.8%で,67.0%が支援必要性を認識していた.支援経験や勉強会参加経験がある群では,支援必要性「認識群」の割合が有意に多かった.「認識群」が支援にためらいや困難を感じる理由では,患者から相談される機会がない93.5%,患者が介入を必要としているかどうかわからない89.2%,知識不足89.2%,スキル不足88.9%が多かった.「認識群」で知識や情報を得る方法として最も希望が多かったのは,患者や家族に紹介できる本やパンフレット96.4%だった.【結論】今後は医療者全体で支援必要性を認識し,取り組んでいく必要がある.
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堀 哲雄, 平本 秀二, 菊地 綾子, 吉岡 亮, 玉木 朋子
2017 年 12 巻 4 号 p.
747-752
発行日: 2017年
公開日: 2017/11/10
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進行がん患者の終末期における入院後早期死亡患者の実態についてはあまり知られていない.2011年8月〜2016年8月に死亡した進行がん患者を対象とし後方視的に検討した.入院後3日以内に死亡した患者は83例あり全死亡510例の16.3%であった.入院後3日以内に死亡した患者(早期死亡群)と4日以上で死亡した患者(非早期死亡群)の終末期症状(せん妄,疼痛,呼吸困難感,悪心嘔吐,倦怠感)について比較したところ有意差は見られなかった.治療介入では平均輸液量・平均オピオイド使用量は早期死亡群が非早期死亡群より有意に多く,持続的鎮静は早期死亡群で非早期死亡群より有意に少なかった.入院後早期死亡リスク因子を解析したところ年齢,性別,臨床病期,組織型,状態悪化時の化学療法,合併症では有意差はなかった.がん種,転移個数,入院時意識レベル,入院時PSは早期死亡におけるリスク因子として関連が示唆された.
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塩﨑 麻里子, 三條 真紀子, 吉田 沙蘭, 平井 啓, 宮下 光令, 森田 達也, 恒藤 暁, 志真 泰夫
2017 年 12 巻 4 号 p.
753-760
発行日: 2017年
公開日: 2017/11/28
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【目的】本研究の目的は,がん患者の家族が,終末期における治療中止の何に,どのような理由で後悔をしているか記述的に明らかにすることである.【方法】がん患者の遺族37名を対象に,意思決定当時と現在の2時点にかけての心理的プロセスに関する半構造化面接を行った.結果は,内容分析によって整理した.【結果】約40%の遺族に何らかの後悔についての発話がみられた.後悔の内容は,8カテゴリーに分類され,決定当時の4カテゴリーから,現在は7カテゴリーに多様化した.後悔に関連する理由は43カテゴリーに分類された.後悔がない理由は,患者や家族の要因や医療者との関係といった当時の状況に関するものが多かった.後悔がある理由は,意思決定のプロセスや選択肢,心理的対処といった意思決定の仕方と医療者との関係が多かった.【結論】後悔の性質と機能的な心理的対処の関連を理解することで,遺族の後悔制御方略を提案できる可能性が示唆された.
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伊藤 怜子, 清水 恵, 内藤 明美, 佐藤 一樹, 藤澤 大介, 恒藤 暁, 森田 達也, 宮下 光令
2017 年 12 巻 4 号 p.
761-770
発行日: 2017年
公開日: 2017/12/05
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質の高い緩和ケアを普及するための対策を検討するにあたり,症状緩和の具体的な目標値を設定するためには,一般市民の自覚症状の実態を把握する必要がある.しかし,これまでに本邦の一般市民における自覚症状の実態を調査した大規模な研究はない.そこで,全国から無作為に抽出した20〜79歳までの一般市民2400人を対象に,郵送による自記式質問紙調査を実施し,Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)を用いて身体,精神症状を多面的に調査した.分析対象は978部(41.1%)で,有症率,症状の強度,苦痛度を性別・年齢階級別に示し,症状の強度とSF-8™による健康関連quality of life(QOL)スコアとの関連を検討した.痛みが46.1%と最も有症率が高く,身体的QOLスコアと相関がみられた(ρ=−0.55).本研究結果は,本邦の一般市民における自覚症状の実態を示した有用な基礎データとなるであろう.
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廣瀬 規代美, 中西 陽子, 神宮 彩子, 二渡 玉江
2017 年 12 巻 4 号 p.
771-779
発行日: 2017年
公開日: 2017/12/11
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【目的】緩和ケア病棟に初めて従事する看護師が,緩和ケアの実践を通して捉える問題状況を面接調査により明らかにし今後の教育支援の示唆を得る.【方法】看護師4名を対象に半構造化面接を計3回実施し,Krippendorff Kの内容分析を参考に分析した.【結果】病棟開設後の問題状況は[緩和ケアにおける理解不足の自覚と対応に対する模索][緩和ケアにおける一般病棟の経験知の活用可能性と相違に対する不安]等,10カ月後では[命の期限と向き合う傾聴の重みと傾聴技術の限界の自覚][ケア方針の相違に対する困難さとジレンマ]等,1年半後では[患者の意思確認不足によるケアの判断の困難さ][患者・家族との関係形成の重要性の自覚]等であった.【結論】初めて緩和ケア病棟に従事する看護師の教育支援は,初期の傾聴技術の強化に加え,対人援助や生命倫理の知識の確認および事例検討を組み合わせ,段階的かつ継続的な実施が必要である.
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熊谷(木俣) 有美子, 田口 奈津子, 小川 恵子, 岡本 英輝, 並木 隆雄
2017 年 12 巻 4 号 p.
781-787
発行日: 2017年
公開日: 2017/12/28
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【目的】倦怠感はがん終末期に多くの患者が経験するが,それに対する鍼治療(接触鍼)の有用性につき検討を行った.【方法】2010年8月~2012年3月に当院緩和ケア病棟に入院,あるいは緩和ケアチームに紹介された患者のうち,16例を対象に介入を行った.通常治療に加えて3回/2週の鍼治療が行われ,主要評価項目として研究開始前後のCancer Fatigue Scale(CFS),副次的評価項目として研究開始前後と治療期間中における倦怠感と疼痛のNumerical Rating Scale(NRS),唾液中のアミラーゼ測定を調査した.【結果】13例が鍼治療を完遂し,倦怠感のNRSでは鍼治療後に改善が得られ,唾液中のアミラーゼ測定でも改善が得られたが,CFSでは有意差が得られなかった.副作用は認めなかった.【考察】終末期の倦怠感に対し,鍼治療は安全で有用な可能性のある介入であることが示唆された.
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長岡 広香, 坂下 明大, 濵野 淳, 岸野 恵, 岩田 直子, 福地 智巴, 志真 泰夫, 木澤 義之
2017 年 12 巻 4 号 p.
789-799
発行日: 2017年
公開日: 2017/12/28
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緩和ケア病棟への転院に関する障壁を明らかにすることは,がん患者が望んだ場所で療養できる体制の整備を通して,quality of lifeへの寄与が期待できる.本研究では,がん終末期患者の緩和ケア病棟転院の障壁を明らかにすることを目的に,がん拠点病院424施設のソーシャルワーカー・退院調整看護師を対象に自記式質問紙調査を行った.探索的因子分析により,緩和ケア病棟への転院の障壁11因子が同定された.病状・予後に関して医師から患者に十分説明を行うこと,適切な時期に気持ちの配慮をしながら多職種で意思決定し緩和ケア病棟に紹介すること,がん拠点病院と急性期病院,緩和ケア病棟,在宅等の地域の医療機関との緩和ケア連携体制を整備すること,緩和ケア病棟への入院が必要な患者を適切に評価する仕組みを作ることは,ソーシャルワーカー・退院調整看護師から見た緩和ケア病棟転院の障壁を軽減する可能性があると考えられた.
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矢木 健太郎, 井手 睦
2017 年 12 巻 4 号 p.
801-806
発行日: 2017年
公開日: 2017/12/28
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本研究はホスピスをはじめとする緩和ケア病棟に入院している患者の希望について,希望の種類や希望のうち外出・外泊についてどのくらいの患者が可能であったかを調査すること,患者の離床耐久性(離床可能時間)と予後予測スコア(Palliative Prognostic Index score:PPI値)との関係性を明らかにし,離床可能な時間やその時期についての参考値を検討することを目的とした.対象者は76名であり,半数の患者で外出や外泊希望があり,その7割の患者が外泊もしくは外出できた.また,延べ480週分のPPI値と離床時間を収集し分析した結果,PPI値と離床耐久性には負の相関関係を認め,相関係数は−0.62であった.Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いてカットオフ値を推定した結果,PPI値3.5以下で60分以上の離床を目指すことが可能,4.5以下で30分以上の離床を目指すことが可能,5.5以下では少しでも離床練習が可能,6以上となると離床自体が難しくなってくるという結果を得た.
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