Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
14 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 小瀬 英司, 安 泰成, 吉川 明彦
    2019 年 14 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/04
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】短時間作用型オピオイド(short-acting opioid: SAO)と即放性オピオイド(rapid-onset opioid: ROO)に関する認識について検討した.【方法】自記式質問紙を用いて,がん突出痛の定義やROO製剤の使用方法,SAO製剤との相違に関する質問を医師・看護師・薬剤師に行った.【結果】回収率は72.7%であり,医師35名,看護師102名,病院薬剤師171名から有効回答を得た.SAO製剤とROO製剤の相違の認識の程度を0〜10の11段階で評価したところ,全体で平均3.8であった.また,ROO製剤の使用方法で「開始用量」,「開始用量は定時投与しているオピオイド鎮痛薬の1日量に依存しない」は,回答者間で認知度がばらついている傾向がみられた.【考察】本研究結果を基に,今後は各職種がROO製剤の使用方法に関する内容を再確認し,適正使用に努めていく必要があると考える.

  • 福井 里美, 吉田 みつ子, 守田 美奈子, 奥原 秀盛, 遠藤 公久
    2019 年 14 巻 2 号 p. 79-88
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/27
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】患者会やピアサポートの活動を継続している長期がんサバイバーは,ピアサポート活動を続ける意味をどのように捉えているかを明らかにする.【方法】研究参加者は診断後10年以上のがんサバイバーでピアサポート活動に参加している18名である.半構造化面接を用いて療養経過,患者会等に参加した契機,活動経過と内容,継続する理由等を尋ねた.分析は,質的帰納的に分析した.【結果】サポート活動を長期に継続する意味として,〔長期生存者・証言者としての使命〕〔がん体験者の思いを共有する重要性の確信〕〔出会った人が元気になっていくことが生きがいやライフワークになる〕〔医療者とのつながりの継続〕〔ピアサポートと「がん相談」の違いの認識〕〔今後の活動への模索〕が見出された.【結論】長期サバイバーが捉えている使命感や生きがい,医療者との繋がりや政策提言を志向していることを尊重した連携が必要である.

  • 飯岡 由紀子, 中山 祐紀子, 渡邉 直美, 田代 真理, 榎本 英子, 髙山 裕子, 廣田 千穂, 秋山 正子
    2019 年 14 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/03
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    本研究の目的は,看護師を対象にEnd-of-Life Careの実践を支援するリフレクションプログラムを開発し,その効果と実現可能性を検討することである.ファシリテーター主導リフレクションプログラム(FRP)と,カードを用いたリフレクションプログラム(CRP)を開発した.緩和ケアに関する知識・態度・困難感尺度と自己教育力尺度の平均得点をプログラム前・直後・3カ月後で測定し,得点の変化をFRPとCRPで比較した.倫理審査委員会の承認を得て行った.FRPは9名,CRPは15名のデータを分析した.FRPはCRPと比較して緩和ケアに関する困難感が有意に低下し,知識が有意に上昇した.また,FRPの群内においても同様の結果が得られた.FRPもCRPもプログラム評価は高く実現可能性は高いと考えられた.今後は,アウトカム指標の検討,サンプル数を増加し,効果をより明確にする必要がある.

  • 玉井 なおみ, 木村 安貴, 西田 涼子, 神里 みどり
    2019 年 14 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】乳がんサバイバーの運動実施の状況と関連要因を明らかにする.【方法】乳がんサバイバーを対象に運動の実施状況,運動効果の知識,運動支援のニーズについて質問紙調査を実施した.運動実施の関連要因は二項ロジスティック回帰分析を行った.【結果】有効回答293名(有効回答率84.2%)を分析対象とした.運動している者は58.4%,乳がん診断後の活動低下は41.3%であった.運動支援を91.9%が希望しており,医療者の支援を望んでいた.運動効果の知識は,睡眠の改善など一般的な効果は約70%知られているが,乳がんに関連した効果は50%以下であった.運動実施の関連要因として「年齢」「仕事」「化学療法」などの7要因が抽出された.【結論】年齢が若く有職者で化学療法中の者は運動実施が低かった.乳がんサバイバーへの運動効果の啓発と継続でき,かつ治療や体調の影響を考慮した医療者による運動支援が必要である.

  • 千葉 詩織, 佐藤 冨美子, 佐藤 菜保子
    2019 年 14 巻 2 号 p. 113-126
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】医療用麻薬服薬中の外来進行がん患者のがん疼痛セルフマネジメントと痛みの関連を明らかにする.【方法】56人に先行研究より演繹的に抽出したがん疼痛セルフマネジメントとthe Japanese version of the Brief Pain Inventoryによる質問紙調査を実施した.【結果】がん疼痛セルフマネジメントのうち医療用麻薬の定時服薬者は「痛みの及ぼす生活への支障」が有意に低かった.切れ目の痛みを我慢する者は「最も強い痛み」,「平均の痛み」および「痛みの及ぼす生活への支障」が有意に高かった.痛みが出たときにレスキュー薬を服薬する者は「睡眠」への支障が有意に高かった.服薬以外に痛み緩和方法を行う者は「気分情緒」への支障が有意に高かった.【結論】痛みの緩和には医療用麻薬服薬を基本とし,良質な睡眠を確保できる疼痛治療,全人的なケアを含めたセルフマネジメント獲得支援の重要性が示唆された.

  • 飯野 京子, 長岡 波子, 野澤 桂子, 綿貫 成明, 嶋津 多恵子, 藤間 勝子, 清水 弥生, 佐川 美枝子, 森 文子, 清水 千佳子
    2019 年 14 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】がん治療を受ける患者に対する看護師のアピアランス支援の実態と課題および研修への要望を明らかにすること.【方法】がん診療連携拠点病院等の看護職2,025名に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は支援94項目,研修への要望等について多肢選択式,自由記述にて回答を求めた.分析は,記述統計量の算出,「支援の種類の多さ」に影響する因子のロジスティック回帰分析を行い,自由記述は質的記述的に分析した.【結果】分析対象は726名(35.9%),平均年齢42.5(24〜62) 歳であった.94項目中93項目の支援を提供していた.支援の種類の多さに影響する因子は,多様な情報収集および支援への自信などであった.アピアランス支援の課題・研修への要望は17項目生成され,「アピアランス支援の標準化」等,多様であった.この結果をもとに,医療従事者の研修プログラムの構築を検討する予定である.

  • 安藤 千晶, 菅野 雄介, 鈴木 晶子, 高橋 文代, 小川 朝生
    2019 年 14 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー HTML

    訪問看護師が行っている,在宅で生活する認知症高齢者に対する疼痛マネジメントの内容を明らかにすることを目的とし,10名の訪問看護師を対象に半構造化インタビューを実施,質的帰納的に分析した.その結果24のサブカテゴリー,8のカテゴリーが得られた.訪問看護師は標準的な認知症高齢者の疼痛マネジメントに加え,在宅看護のヘルスアセスメントの特性から生活全体を視野に入れた疼痛マネジメントを実施していた.また自らの訪問時の情報に加え,家族や他職種から得た情報から,利用者の生活全体を想像し総合的にアセスメントする視点が重要であり,多職種でアセスメントの視点と情報を共有する工夫が求められていることが示唆された.さらに訪問看護師は疼痛の存在が明確でなくとも,疑われる場合は薬物・非薬物療法を実施し,平常時の日常生活の行動変化から疼痛評価を実施していた.今後全国調査により疼痛マネジメントの実際を明らかにする必要がある.

短報
  • 大坂 巌, 渡邊 清高, 志真 泰夫, 倉持 雅代, 谷田 憲俊
    2019 年 14 巻 2 号 p. 61-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    【目的】世界保健機関(WHO)による「緩和ケアの定義」について定訳の作成をデルファイ法により行った.【方法】18の学術団体から構成される緩和ケア関連団体会議(以下,会議)が母体となり,定訳案作成と各団体3名ずつの計54名の専門家によるデルファイ法で定訳の合意を図った.原文の主文と9つの副文について,「全く適切ではない」(1点)から「とても適切である」(9点)の評価を行った.中央値7点以上,最大と最小の差が5点以下の場合を合意基準とし,会議にて定訳を作成した.【結果】計3回のデルファイを行い,回答率は第1回 100%,第2回 93%,第3回 91%であった.事前に定めた合意基準に達した文章は30%であったため,会議において協議・検討し,定訳案とし,各学術団体からのパブリックコメントを経て確定に至った.【結論】緩和ケアに関連する学術団体が共同でWHOによる「緩和ケアの定義」の定訳を作成した.

  • 小林 成光, 池原 弘展, 友滝 愛, 賢見 卓也
    2019 年 14 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー HTML

    本研究の目的は,がん患者とその家族の仕事とお金に関する相談内容の特徴を明らかにすることである.ファイナンシャルプランナーと社労士による「仕事とお金の個別相談」に参加したがん患者の個別相談の相談内容をテキストマイニングの手法を用いて分析した.相談件数は125件(4施設)で,患者の平均年齢は54±10.1歳,女性70名(56%)であった.相談者の属性は,患者本人80名(64%),配偶者と本人19名(15.2%),配偶者13名(10.4%)であった.分析の結果,[頻出語]の上位5つと関連する主な共起語は,[月](共起語:休職,年),[傷病手当金](受給,休職),[現在](受給,収入),[仕事](内容,続ける),[治療](生活,収入)であった.相談者は,がん治療に伴うお金や生活への影響などに不安を抱えながらも,復職や離職・就労の継続などの働き方,傷病手当金などの休職時に利用できる公的制度について相談していることが明らかとなった.

症例報告
  • 髙橋 正裕
    2019 年 14 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー HTML

    【緒言】高アンモニア血症および意識障害をきたした膀胱がん末期症例を経験した.【症例】90歳の男性.腫瘍からの出血を繰り返し,尿道カテーテルを留置されていた.緩和ケア病棟入院中に,意識障害と高アンモニア血症を認めた.肝転移は認めなかった.尿検査にてアルカリ尿およびリン酸アンモニウムマグネシウム結晶を認めたため,尿素分解能を有する細菌によるアンモニア産生を疑った.レボフロキサシンは無効だったが,メトロニダゾールを投与したところ意識は改善,血中アンモニアは正常化,尿は酸性化,リン酸アンモニウムマグネシウム結晶は消失した.尿素分解能を有する細菌は同定できなかった.【考察】本症例のような進行・終末期膀胱がんでは,尿素産生能を有する細菌が産生するアンモニアによって,尿路の閉塞がなくても高アンモニア血症および意識障害をきたす可能性がある.

  • 佐藤 尚子, 橋本 淳
    2019 年 14 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー HTML

    【緒言】原発不明がんの多発骨転移と当院緩和ケア科へ紹介され,SAPHO症候群であった1例を経験した.【症例】74歳,男性,第11胸椎,第3腰椎を骨折,MRIを施行,胸椎,腰椎に多発骨病変を認めた.多発骨転移と考え,原発巣の検索をしたが,特定できず,原発不明がん多発骨転移と診断され,当院緩和ケア病棟へ転院となった.数年間,体調の変化はなく,再度精査を行った.CTでは胸肋鎖関節が肥厚,骨シンチでは,同部位に集積を認め,MRIの多発椎体病変は減少していた.臨床経過,検査結果より,SAPHO症候群の可能性を考え,当院整形外科にコンサルト,SAPHO症候群と診断された.【考察】SAPHO症候群は,掌蹠膿胞症や座瘡などの皮膚病変に骨関節病変を合併する稀な良性疾患であり,診断に難渋する場合もある.本症例のように,多発骨病変を有する場合,SAPHO症候群を鑑別に置く必要がある.

活動報告
  • 宮林 真沙代, 中村 千香子
    2019 年 14 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー HTML

    【背景】Do not attempt resuscitation(DNAR)の意思表示のあるがん終末期のCardiopulmonary arrest(CPA)患者の搬送は,現行消防法では全例蘇生を行いながら搬送される.現場で救急活動を行う消防職員(以下,消防職員)の気持ちを調査検討した.【方法】当地域の消防職員103名に,DNAR提示をしているがん終末期CPA患者を搬送したことがあるか,またその活動内容,および消防法がなかった場合の活動内容に対し,無記名式アンケートを行った.【結果】DNARの意思表示をしていても,消防法に従わざるを得ない現実があった.消防法がないと仮定しても,救命処置を行うと約半数が回答したが,その約半数は搬送を拒否したいとした.【考察】消防職員にとって蘇生行為は使命であり,搬送と意味の違いがあった.救急搬送に対する患者および家族の知識不足や事前の話し合いのなさが,DNAR患者搬送の大きな原因と考えられ,患者の意思を尊重するためにもACPの浸透と地域住民への教育が必要である.

  • 小嶋 リベカ, 高田 博美, 石木 寛人, 木内 大佑, 里見 絵理子
    2019 年 14 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー HTML
    電子付録

    子育て世代のがん患者には親役割に関連した特有の気がかりがあるが,患者・家族が求める子ども支援の実態報告は少ない.われわれはその支援の在り方を明らかにするために,当院緩和ケアチームによる子ども支援(2013年4月〜2015年9月)の実際について後方視的に検討した.対象症例患者は131例(男性/女性41/90例),平均年齢43.3歳だった.主な原発巣は消化器,肺・胸膜,乳腺で,進行再発例が約8割だった.子どもの総数は239人,平均年齢は9.6歳.相談は患者のみならず,患者の家族(配偶者など)からもされた.主な相談内容として「病状に対する子どもの理解と反応」,「親としての思い」,「病状の伝え方」の3つのカテゴリーが抽出された.がん患者および家族の子どもに関する相談内容は,病名告知の有無や子どもの年齢,反応に応じて多様である.よって,個別のニーズに応じて,多種職との連携を行いながら支援する必要がある.

feedback
Top