Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
4 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 羽多野 裕, 津田 真, 前林 佳朗, 志真 泰夫, 河瀬 雅紀, 福居 顯二
    2009 年4 巻1 号 p. 101-111
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    【目的】緩和ケアの充実および緩和ケア専門医の育成が急務であるが, その中で精神的苦痛緩和の重要性が認識されるようになってきている. そこで, 緩和ケアに求められる知識・技術, 特に精神医学的知識・技術の必要性と自己評価を明らかにし, 緩和ケア教育での精神科研修のあり方を探るため, 調査を行った. 【対象・方法】全国の緩和ケア病棟およびがん診療連携拠点病院の緩和ケアチームで専従もしくは専任の勤務経験が3年以内の医師および看護師を対象としアンケート調査を行った. 【結果】チーム医療, 患者・家族とのコミュニケーション, 痛みの全人的理解, 傾聴などで必要性が高かった. 精神医学的知識・技術についても必要性は高かったが, 自己評価は全般に低かった. 【結語】緩和ケア教育の一環として, 精神症状の診断・治療, コミュニケーションスキルを身につけるためのコンサルテーション・リエゾンを中心とした精神科研修が必要と考えられる. Palliat Care Res 2009; 4 (1): 101-111
短報
  • 川崎 優子, 井沢 知子, 伊藤 由美子, 橋口 周子, 荒尾 晴惠, 成松 恵, 黒木 みちる, 長田 正子, 内布 敦子
    2009 年4 巻1 号 p. 201-206
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/18
    ジャーナル フリー
    【目的】治療期にある通院中のがん患者を対象に, セルフケア能力を向上させる看護独自の介入プログラムを開発することを目的とした.【方法】参加者15名を対象に, 4週連続の複合的グループ療法を実施し効果検証を行った.【結果】参加者の概要は, 平均年齢56.86±11.52歳, 現病歴平均28.6±18.14カ月であった. 介入前後で, EORTC QLQ-C30 Global health status (p<0.023)とSTAIの状態不安(p<0.022)の2項目で有意な改善がみられた. 逐語録の分析結果からは, 「がん療養生活への取り組み方の変化」と「プログラムへの反応」に関するカテゴリが抽出された.【結論】参加者は, セルフケア能力が元々高く意欲的な集団であったため, 介入前後のESCA得点に変化が現れなかったが, 参加者に起こった内的変化からはセルフケア能力が向上していることが読みとれた. Palliat Care Res 2009; 4(1): 201-206
  • 西田 希久代, 遠山 幸男, 久野 久美, 平野 茂樹, 出口 裕子, 松田 唯子, 渡辺 貴志, 山関 知恵, 板倉 由縁, 斎藤 寛子, ...
    2009 年4 巻1 号 p. 207-213
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/15
    ジャーナル フリー
    がん患者は複雑な痛みをさまざまな言葉で表現する. こうした表現から薬剤の効果を推測することができ, 適切な疼痛緩和へつながると考え, 本調査を行った. がん性疼痛のある患者164名から, 529語(108種類)の痛みの表現を収集し, 使用頻度の高い痛みの表現に対するオピオイドおよび非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の効果を評価した. その結果, 「重い」や「どーん」という表現はオピオイドが効きやすく, 「しびれ」や「ぴりぴり」はオピオイドが効きにくい表現であることが推測された. 医療従事者は, 患者の言葉に耳を傾け, 患者の痛みを把握することが重要であり,このことが良好な疼痛緩和につながると考える.Palliat Care Res 2009; 4(1): 207-213
  • 川村 郁人, 川合 甲祐, 佐野 吉嗣, 久保川 直美, 寺町 真理, 水井 貴詞, 遠山 幸男, 斎藤 寛子, 長谷川 高明
    2009 年4 巻1 号 p. 214-227
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/01
    ジャーナル フリー
    医療用麻薬の不安解消は疼痛緩和の第一歩である. ガイドラインにおいて印刷物の使用が推奨されているが, 実際に使用している医療者は少ない. 愛知県病院薬剤師会オンコロジー研究会では, 医療用麻薬全般の不安解消に焦点をしぼった, 読み手の負担が少ない「医療用麻薬パンフレット」(以下, OPA)を作成した. また, 医療者による指導状況の報告がないため, 県内の緩和医療に携わる医師・薬剤師・看護師を対象に, 指導状況とOPAの有用性の評価を調査した. 医療用麻薬について相談を受けたことがある薬剤師・看護師は多く, 中毒についての相談が最も多かった. 常に能動的に患者教育を行っている薬剤師は6割, 看護師は3割と少なく, 印刷物を利用している医師・看護師は2割, 薬剤師は4割と少なかった. ガイドラインに沿って内容を吟味したOPAは, 看護師の受けた相談の99%を網羅し, 医療者から内容, 情報量ともに良好な評価を受けたことから利用価値が高いと考えられる. Palliat Care Res 2009; 4(1): 214-227
症例報告
  • 神谷 浩平
    2009 年4 巻1 号 p. 301-306
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    がん性疼痛治療において積極的なオピオイドの使用は原則であるが, 重篤な副作用の出現により, 増量が好ましくない場合も存在する. 今回, 上位頸椎原発の多発性骨髄腫による頸髄圧迫があり, オピオイドによる呼吸抑制が疑われるエピソードを持つ症例のがん治療早期からの緩和ケアを担当した. 症例は60歳代の女性. 初診時, 第2頸椎から頭蓋底におよぶ腫瘍により強い項部痛と頭痛を訴え, 塩酸モルヒネの持続静注が行われていたが鎮痛は不十分であった. 患者のモルヒネに対する不安が強かったこと, 神経障害性疼痛の混在が疑われたことから, モルヒネの増量は行わず, ガバペンチン900mg/日より開始し, アミトリプチリンとアセトアミノフェンを併用することで安全かつ有効な鎮痛が得られた. 頸椎浸潤による神経障害性疼痛が疑われる症状に対し, ガバペンチンなどの鎮痛補助薬を早期から併用することが有効と考えられた. Palliat Care Res 2009; 4(1): 301-306
  • 吉野 和穂, 塚田 美智子, 櫛野 宣久, 山本 壮一郎, 井上 宏司, 生越 喬二
    2009 年4 巻1 号 p. 307-311
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/01
    ジャーナル フリー
    【はじめに】フェンタニル貼付剤(以下, FP)は副作用が少ないことから, がん性疼痛患者に頻用されている. 一方, 増量しても十分な除痛が得られない症例が報告されている. 塩酸モルヒネ持続静注へのオピオイドローテーションすることで, 胃がん進行による腹痛に対し良好な除痛が得られた症例を報告する. 【症例】60歳代, 男性. 原発は胃がん, 消化管閉塞による内臓痛と考える腹痛を呈していた. 病気の進行に伴い経口摂取が困難となり, 腹痛に対しオピオイドをFPに変更し増量していったが除痛が得られなかった. 一部を塩酸モルヒネ持続静注にオピオイドローテーションしたところ, 腹痛が緩和できた. 【考察】腹痛がやわらいだ理由は, モルヒネの消化管運動抑制が除痛効果として現れた可能性がある. 先行オピオイドで十分な除痛が得られない場合は, オピオイドローテーションを考慮すべきである. また, オピオイドローテーションは段階的に行う必要があると考える. Palliat Care Res 2009; 4(1): 307-311
  • 杉山 克郎, 石川 暁, 渡辺 正, 高橋 すみ江, 寺島 富美子, 大江 奈美子, 後藤 美紀子
    2009 年4 巻1 号 p. 312-316
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/01
    ジャーナル フリー
    がん性腹膜炎に伴い高度の嘔気・嘔吐があり, 通常の制吐薬でもコントロールが困難で, せん妄をきたした患者にハロペリドールとミダゾラムの持続静注を併用し, 奏効した症例を経験したので報告する. 症例は57歳の女性で, 原発不明のがん性胸腹膜炎で化学療法を施行したが無効となり, 大量の腹水が貯留した. 機械的腸閉塞はなかったが, 激しい嘔気・嘔吐が出現し, 制吐薬, オクトレオチドなどの薬物治療は奏効せず, せん妄状態となったため, ハロペリドールとミダゾラムの持続静注を併用したところ, 嘔吐回数が減少し, せん妄も改善した. いずれの薬剤も最大1.87mg/時の速度で投与したが, 重大な有害事象はなかった. これらの薬剤の併用投与は, 症例を選択して注意深く行えば安全に投与でき, 症状のコントロールに有効である可能性が示唆された. Palliat Care Res 2009; 4(1): 312-316
  • 太田 周平, 小川 賢一, 新堀 博展, 原田 紳介, 畑 千秋, 後藤 隆久
    2009 年4 巻1 号 p. 317-320
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/17
    ジャーナル フリー
    【目的】大量の全身オピオイド投与から持続くも膜下オピオイド投与に移行した2症例を経験した. 段階的に投与経路を移行することにより鎮静, 疼痛悪化, 退薬症状などを引き起こすことなく管理できたので報告する. 【症例】モルヒネ500mgの静注下で右側胸部痛に苦しみながらも眠気が著明となった1例と経口モルヒネ換算760mgで在宅での疼痛緩和に支障が出てきた1例に対して, 持続くも膜下オピオイド鎮痛法を行った. 大量の全身オピオイドから段階的にくも膜下投与へ切り替え, 有害事象を生じることなく疼痛管理が可能であった. くも膜下オピオイド鎮痛では眠気の軽減が得られ, QOL向上をもたらした. 【結論】全身オピオイド投与からくも膜下鎮痛への移行に関する具体的なガイドラインはないが, 大量にオピオイドが投与されている場合は, 有害事象の出現を防ぐために段階的なオピオイド投与経路の切り替えを考慮すべきである. Palliat Care Res 2009; 4(1): 317-320
feedback
Top