Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
17 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 坂口 達馬, 梶山 徹, 三宅 麻文, 片山 俊郎
    2022 年 17 巻 2 号 p. 43-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
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    【目的】ヒドロモルフォン持続皮下投与法によるタイトレーション(以下,本法)の有効性と安全性を検討した.【方法】2020年2月から2021年10月まで,中等度から高度のがん疼痛に対して本法を適応した症例を後方視的に解析した.【結果】計37例中,オピオイド・ナイーブは1例(2.7%).タイトレーション開始時,完了時のヒドロモルフォン投与量は各1.92 mg/日,2.40 mg/日(いずれも中央値),3日以内のタイトレーション完了は33例(89%).著効(Numerical Rating Scale [NRS]≥66%改善)は33例(89%),有効(NRS≥33%改善)は3例(8.1%),無効(NRS<33%改善)は1例(2.7%)であった.有害事象は眠気が3例(8.1%),血圧低下が1例(2.7%)であった.【考察】本法は簡便かつ安全で,中程度から高度のがん疼痛に迅速かつ効果的な鎮痛が得られた.

  • 熊井 正貴, 加藤 信太郎, 小柳 遼, 敦賀 健吉, 伊藤 陽一, 山田 武宏, 武隈 洋, 菅原 満, 川本 泰之, 小松 嘉人
    2022 年 17 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/15
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    電子付録

    【目的】緩和ケアに携わる医療提供者のターミナルケア態度の実態とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.【方法】がん治療医と緩和ケア医を含む緩和ケアに携わる医療提供者を対象にFrommelt Attitude Toward Care Of Dying Scale Form B日本語版(FATCOD B-J)を用いて質問紙調査を実施した.【結果】解析対象は223例であった(回収率42.2%).FATCOD B-J総得点を目的変数とした重回帰分析の結果,偏回帰係数は年代で40代と比較して30代以下が低く(−3.8),業務から得られる満足感を感じているほうが高く(+5.7),緩和ケアへの関心が強いほうが高かった(+6.2).【考察】緩和ケアへの関心と業務から得られる満足感がターミナルケア態度の涵養に重要である可能性がある.

短報
  • 白石 朝子, 安髙 久美子, 木村 恵, 鍋島 直美, 伊藤 誉人, 井手 飛香, 近藤 貴子, 尾崎 彩子, 塚田 順一
    2022 年 17 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/13
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    電子付録

    COVID-19蔓延下の面会制限で入院療養への影響,患者・家族のニーズの把握は重要である.産業医科大学病院 緩和ケアセンターに紹介された担がん患者,家族(以下,患者家族),当該患者のプライマリーナース(以下,PNs.)を対象とし,無記名自記式の質問紙調査を行った.統計解析にはEZRを用い,p<0.05を有意差ありとした.患者31例(男性9例,女性22例,年齢中央値65歳(30~85歳)),患者家族25例,PNs.26例の回答を得た.「面会制限があることで気持ちが落ち込むことがあるか」という質問では患者よりも有意に患者家族への影響が強かった(p<0.05).面会手段に関しては患者と比較して患者家族は直接面会を希望する傾向にあった(p<0.05).面会制限の影響は患者よりも患者家族に大きく,面会制限下では家族ケア・サポートがより重要であると考えられた.

症例報告
  • 滝本 佳予
    2022 年 17 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/17
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    【緒言】アセトアミノフェン(APAP)の過量もしくは長期投与による肝障害は知られているが,治療推奨用法・用量の範囲内でのAPAPによる急性肝不全は稀である.今回われわれは,推奨用法・用量のAPAP注射剤を用い,急性肝不全に陥ったものの回復した1例を経験したので報告する.【症例】患者は56歳の肺がんstage IV,肝機能正常な女性.摂食不振とがん性疼痛のために入院し,胸膜・肋骨転移の鎮痛のためにAPAP注射剤1回1 gを6時間ごとに使用したところ,11 g使用後にAST/ALTが3104/1212 IU/Lと上昇した.血液吸着療法,血漿交換を実施し,N-アセチルシステインの内服を開始して,速やかに肝機能は改善した.【考察】APAP注射剤は緩和ケア領域で用いられることも多いが,推奨使用量でも経口摂取が不十分な担がん症例では体内のグルタチオン枯渇により肝不全が生じる可能性があり,使用時には常に念頭におく必要がある.

活動報告
  • 宮川 裕美子, 伊藤 怜子, 升川 研人, 宮下 光令, 山極 哲也
    2022 年 17 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/24
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    【目的】日本バプテスト病院ホスピス病棟において,チャプレンの司会により行っている「お別れ会」の実際を報告し,お別れ会に対する遺族の感想を記述する.【方法】遺族84名に対して,お別れ会の感想を質問紙票にて調査し,自由記述の内容分析を行った.【結果】回答者40名のうち,お別れ会を経験した遺族は15名であった.お別れ会の内容でよかった点として,[祈祷(祈り)],[スタッフの参加]などが抽出され,遺族はお別れ会を行うことによって,[区切り],[気持ちの平安],[心身の癒し]を感じ,[振り返りの機会]や,[心に残る特別な思い出]を得ていた.【考察】お別れ会は,遺族の気持ちの平安や喪失感の軽減の助けとなり,死別後の遺族の悲嘆の軽減につながる可能性が考えられた.本調査から得られた遺族の声をもとに,遺族の思いに寄り添った,より質の高い遺族ケアの実施や,今後のさらなる研究につなげていきたい.

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