Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
12 巻, 1 号
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原著
  • 村上 真基, 大石 恵子, 綿貫 成明, 飯野 京子
    2017 年 12 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/19
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    【目的】緩和ケア病棟(PCU)を併設している療養病棟における緩和ケアの意義や普及可能性を探求するため,その実態と課題を明らかにする.【方法】PCU併設の療養病棟24施設の病棟責任者に対して無記名自記式質問紙調査を行った.質問内容は,医療用麻薬(麻薬)管理,スタッフ体制,がん患者受け入れ,PCUとの連携,緩和ケアに対する困難感等とした.【結果】18施設(75%)から回答を得た.療養病棟で麻薬を使用可能14施設,麻薬をPCUと同様に使える10施設,緩和ケアか麻薬処方に詳しい医師の配置10施設,緩和ケア経験看護師の配置11施設であった.がん患者は全18施設で受け入れ,病状変化によるPCU転棟は17施設で実施していた.困難感は,人員配置不足,専門性・教育の不足,麻薬管理の問題等であった.【結論】調査対象の療養病棟では,いずれもがん患者の緩和ケアを実施していた.解決を要する課題の存在も明らかとなった.

  • 金剛 圭佑, 稲角 利彦, 大音 三枝子, 北田 徳昭, 安藤 基純, 李 美於, 橋田 亨
    2017 年 12 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/09
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    本研究では,がん疼痛に対する経口トラマドール(TD)の導入オピオイドとしての有用性を検討した.TD初回導入群(TD群),TD後のオキシコドン徐放性製剤(OXC)導入群(TD→OXC群)およびOXC初回導入群(OXC群)で,疼痛管理と副作用発現の状況を比較した.オピオイドの使用状況に幅広い多様性が見られたが,TD群ではOXC群に比し,疼痛管理不良を理由とした早期処方変更例が多かった.しかし,眠気発現数や制吐剤非併用例での悪心・嘔吐発現数はTD群で有意に少なかった.また,TD→OXC群のOXC開始後も眠気・悪心・嘔吐の発現数はOXC群より少なかった.OXC群ではOXC導入直後の副作用例が多数であったが,TD→OXC群ではOXC開始直後や,それ以降でほとんど副作用発現が見られなかった.以上よりTDを導入オピオイドとした疼痛管理法により副作用の発生を抑制できる可能性が示唆された.

  • 菅野 雄介, 野畑 宏之, 岩田 愛雄, 比嘉 謙介, 佐山 七生, 内村 泰子, 大谷 清子, 豊永 香奈, 宮下 光令, 小川 朝生
    2017 年 12 巻 1 号 p. 116-124
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/14
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    超高齢社会を迎え,認知症をもつがん患者が増えている.本研究では,がん診療連携拠点病院における認知症ケアの整備体制を明らかにすることを目的とした.2015年2月に,がん診療連携拠点病院を対象に郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,英国のaudit調査をもとに,研究者間で選定した.188施設より回答があった(回答率48.3%).認知症患者の療養・退院支援やBPSD(行動・心理症状)に関するマニュアルを整備している施設は5.3%であった.プライマリ・チームによる認知症アセスメントを実施している施設は50%程度であった.認知症に関する研修体制を整備している施設は29.3%であった.本研究により,がん診療連携拠点病院における認知症の整備体制の実態が明らかにされ,基本的な認知症ケア・支援体制に関する普及啓発の必要性が示唆された.

  • 中島 涼子, 小林 真理子, 高橋 都
    2017 年 12 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/14
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    【目的と方法】本研究では,母親ががん治療をした家庭における父親の家事や子育ての困難を明らかにすることを目的とした.母親のがん診断時,0〜15歳の子どものいた家庭の父親7名に対し,1対1の半構造化面接によるインタビューを実施した.【主な結果】父親の経験した家事や子育ての困難として〈家事の負担〉〈義父母と生活するストレス〉〈学校との連絡〉の3つが抽出された.困難さを左右する関連要因は「妻の病気以前の家事経験の有無」「妻の病気以前からの義父母との同居の有無」「両実家の協力の程度」「義父母との信頼関係構築の程度」「妻の事前の手配の有無」が考えられた.よって困難さを感じやすい関連要因をもつ父親へ,家事や子育てのサポートに関する情報や,同じ境遇の父親同士で情報交換する場を提供することが検討できる.

  • 五十嵐 尚子, 青山 真帆, 佐藤 一樹, 森田 達也, 木澤 義之, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2017 年 12 巻 1 号 p. 131-139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/02
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    電子付録

    【緒言】多施設遺族調査の参加施設での調査報告書の活用の実態を把握する.【方法】全国175施設を対象とした遺族調査であるJ-HOPE3研究によるケアの質の評価,遺族の悲嘆・うつについて全国平均との比較および各施設の対象者からの自由記載を各施設にフィードバックした.4カ月後,その活用状況について自記式質問紙の郵送調査を行った.【結果】有効回答率は74%(129施設)であった.フィードバックをスタッフが閲覧した施設は90%,カンファレンスを実施した施設は54%,病院全体に報告した施設は65%であった.約8割の施設が「自施設の強みや弱みを理解できてよかった」などフィードバックに対して肯定的な評価をしていた.48%の施設が何らかのケアの改善に取り組んでいた.【考察】調査結果の活用の実態が明らかになった.緩和ケアの質の向上のために遺族調査でのフィードバックの継続やカンファレンスの促進の必要がある.

  • 大道 雅英, 鴻池 紗耶, 山田 祐司, 髙橋 陽, 成田 昌広, 青沼 架佐賜, 宗像 康博, 山本 直樹, 杉本 典夫
    2017 年 12 巻 1 号 p. 140-148
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
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    電子付録

    【目的】進行がん患者の生物学的予後スコアBiological Prognostic Score(BPS)2版,3版を開発し,予測精度を確かめた.【方法】がん治療を終了または差し控えた進行がん患者で血液検査値,performance status(PS),臨床症状,年齢,性別,がん種を変数とするパラメトリック生存時間解析を行い,BPS2,BPS3を開発した.次に,前向きにBPS2,BPS3とPalliative Prognostic Index(PPI)の精度を比較検証した.【結果】開発群589例よりBPS2,BPS3を開発した.前者はコリンエステラーゼ,血中尿素窒素,白血球数から算出し,後者はBPS2,ECOG PS,浮腫から算出した. 検証群206例で3週,6週生存予測の全体正診率は,BPS2,BPS3がPPIより有意に優れていた.【結論】BPS2,BPS3の有用性が示唆された.

  • 佐藤 一樹, 菊地 亜里沙, 宮下 光令, 木下 寛也
    2017 年 12 巻 1 号 p. 149-158
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/29
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    【目的】終末期高齢者の望ましい死の達成を認知症併存の有無で比較し関連要因を調べた.【方法】がん・心疾患・脳血管疾患・肺炎のため死亡した高齢者の遺族を対象にインターネット調査を行った.望ましい死の達成はGood Death Inventory (GDI)を用いた.【結果】認知症併存群163名,非併存群224名の有効回答を得た.GDI総合得点は併存群4.2±1.0,非併存群4.4±0.9 (Adj P=0.053)で,ドメイン別では,希望や楽しみ,家族と友人をよい関係,自分のことが自分でできる,で併存群が有意に低かった.併存群での多変量解析の結果,高齢,自宅死亡,家族の精神健康やソーシャルサポート良好でGDIは有意に高かった.【考察】認知症併存の有無で終末期高齢者のGDIにあまり違いはみられなかった.認知症併存の終末期高齢者には症状緩和や尊厳の尊重に加え家族の心理的ケアが重要となる.

  • 佐藤 一樹, 芹澤 未有, 宮下 光令, 木下 寛也
    2017 年 12 巻 1 号 p. 159-168
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/29
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    電子付録

    【目的】終末期高齢者の介護体験の遺族評価を認知症併存の有無で比較し,関連要因を調べた.【方法】65歳以上のがん・心疾患・脳血管疾患・肺炎による死亡者の遺族を対象にインターネット調査を行った.終末期の介護体験はCaregiver Consequence Inventoryにより評価した.【結果】認知症併存群163名,非併存群224名の有効回答を得た.終末期の介護体験評価は,介護負担感,介護達成感,介護後の成長感の全ドメインで認知症併存の有無で有意差はなかった.認知症併存群での多変量解析の結果,患者に配偶者がなく,家族が頻回に付き添い,精神的健康状態が良好であると有意に介護達成感が高く,患者が高齢で,配偶者がなく,医師と患者が終末期について話し合い,家族に治療の希望があると介護を通した成長感は有意に高かった.【結論】終末期高齢者の介護体験評価は認知症併存の有無で同程度であった.

  • 丸田 望, 丸田 豊明, 高橋 稔之, 和田 徹也
    2017 年 12 巻 1 号 p. 169-174
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/30
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    【目的】末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter: PICC)留置症例をがん患者と非がん患者で比較し,安全性の検討を行った.【方法】PICCを留置した患者で留置目的・留置期間・合併症の有無などを後ろ向きに比較した.【結果】がん患者は88例,非がん患者は69例であった(以下,がん患者vs.非がん患者).留置目的は高カロリー輸液投与が45 vs. 51例,末梢静脈路確保困難が40 vs. 12例であった(p=0.0022).留置期間は15(6-39) vs. 21(12-40)日であった(p<0.0001).PICC留置に伴う合併症を認めたのは8 vs. 9例で有意差はなかったが,カテーテル関連血流感染は非がん患者で多かった(0.9 vs. 2.0件/1000カテーテル日,p=0.041).【考察】PICCによる合併症発生率はどちらも低く,PICCの安全性が示された.

短報
症例報告
  • 小川 真生, 道渕 路子, 我妻 孝則, 西川 美香子, 川﨑 康弘, 土田 英昭, 寺口 奏子
    2017 年 12 巻 1 号 p. 501-505
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
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    【緒言】終末期の難治性せん妄が数日間の持続的な深い鎮静後に改善した事例を経験した.【症例】脳実質浸潤を伴った57歳女性の頭頸部がん患者の異常行動を伴ったせん妄が,急激に悪化した.オピオイドスイッチや薬物治療などを行ったが,異常行動は改善しなかった.難治性の終末期せん妄と診断され,家族は鎮静を希望した.ミダゾラムによる間欠的鎮静を開始し,さらに持続的鎮静へと移行した.その数日後,家族の鎮静継続への葛藤を認め,10日後に鎮静を中止した.覚醒後,患者の異常行動は消失し,軽度の意識障害はあったが,家族とのコミュニケーションを保ちながら2カ月後に死亡した.【考察】鎮静に伴う多種類の薬剤の中止はせん妄改善の原因の一つと考えられる.緩和医療学会のガイドラインにおいて家族の気持ちの確認以外の持続鎮静中止の基準は明確ではなく,よりエビデンスレベルの高い鎮静中止の基準が必要であると考えられる.

  • 吉川 善人, 松田 良信, 岡山 幸子, 二村 珠里, 土井 美奈子, 永田 しのぶ
    2017 年 12 巻 1 号 p. 506-510
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
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    【緒言】転移性肝がんに伴う閉塞性黄疸による掻痒症患者に,選択的κ受容体作動薬のナルフラフィン塩酸塩(以下,ナルフラフィン)を投与し,改善を認めた症例を経験したので報告する.【症例】70歳,女性.S状結腸がん術後,転移性肝腫瘍による黄疸に伴い,掻痒症が出現.抗ヒスタミン薬やSSRIでは改善しなかった.中枢性掻痒と考えてナルフラフィンを投与し,掻痒はNRSで 9から 3まで改善した.【考察】蕁麻疹,アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に比べて,慢性腎不全,肝疾患などの全身性疾患に伴う掻痒症は,既存の治療薬が奏功しないことが多い.慢性肝疾患に伴う掻痒は難治性かつ中枢性であるがナルフラフィンに止痒効果が確認されている.本症例では中枢性および末梢性の機序による掻痒が混在したが,中枢性掻痒が優位と考えられた.閉塞性黄疸に伴う掻痒症に対してナルフラフィンは有効な治療薬になりうると考えられた.

活動報告
  • 西 智弘, 小杉 和博, 柴田 泰洋, 有馬 聖永, 佐藤 恭子, 宮森 正
    2017 年 12 巻 1 号 p. 901-905
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/19
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    2015年8月から,他院で化学療法中の患者を緩和ケアとして併診する目的で,早期からの緩和ケア外来(EPC外来)を開設.2015年8月~2016年1月に,EPC外来を受診した患者について,初診診察時間,診察の内容,入院・死亡までの期間などについて,診療録から後ろ向きに調査を行い,同時期に腫瘍内科を受診した患者と比較検討した.結果,EPC外来群19名,腫瘍内科外来群11名が,それぞれ延べ80回および117回外来受診.初診外来での診察時間中央値は各45分(10〜106),38分(23〜60)であった(p=0.17).診察の内容は,症状緩和,コーピングなどについてはEPC外来群が有意に多かった.EPC外来群では初診から60日以内死亡が5名(26%)であった.EPC外来で初診に要する時間は腫瘍内科外来と同程度であった.紹介されてくる時期が遅い患者も多く,今後の啓発と継続した実践が重要である.

  • 日下部 明彦, 野里 洵子, 平野 和恵, 齋藤 直裕, 池永 恵子, 櫁柑 富貴子, 結束 貴臣, 松浦 哲也, 吉見 明香, 内藤 明美 ...
    2017 年 12 巻 1 号 p. 906-910
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
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    死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.

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