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Nishikawa Masahiro, Imai Hiroyuki
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603
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
A recent report has indicated that heterotrimeric G-proteins are downstream elements in the sphingosine 1-phospate (S1P) signaling pathway that mediates an ABA regulation of stomatal function. Thus controlling the levels of S1P is likely to be an important event in plant cellular processes. S1P is resolved into ethanolamine phosphate and C
16-fatty aldehyde, which is catalyzed by sphingosine phosphate lyase (SPL). In this study, we isolated and characterized a SPL gene from
Arabidopsis thaliana. Using the human SPL amino acid sequence (NM_003901), we identified a putative
A. thaliana SPL sequence. Alignment of the deduced amino acid sequences of different SPL proteins shows the sequence from
A. thaliana shares 43% and 40% identity with those from human and
S. cerevisiae, respectively. We also found that
A. thaliana SPL contains a predicted pyridoxal 5'-phosphate binding site, which is conserved in human and
S. cerevisiae SPL.
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辻 紀子, 佐藤 典裕, 児玉 遊, 都筑 幹夫
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604
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
1-acylglycerol-3-phosphate acyltransferase (LPAAT)はグリセロ脂質合成の初期に働くacyltransferaseであり、 lyso-phosphatidic acid (LPA)からphatidic acid (PA )を合成する反応に関与している。ラン藻
Synechocystis sp. PCC6803の
sll1848は
E.coliのLPAATをコードする
plsC遺伝子のホモログである。そこで、PCC6803で
sll1848を破壊した株を作製し、その性質を調べた。その結果、
sll1848破壊株は野生株に比べて脂質の種類に関係なく、炭素数16の脂肪酸の割合が減少し、炭素数18の脂肪酸の割合が増加していた。この結果から
Synechocystis sp. PCC6803の
sll1848が脂肪酸の炭素鎖の長さの決定に関与していることが明らかとなった。一般にグリセロール骨格の
sn-2位へのアシル基転移をLPAATが触媒すること、PCC6803では
sn-2位が主に炭素数16の脂肪酸であることなどを考慮すると、
sll1848にコードされるタンパク質がLPAATの機能を持つ可能性が高まった。また、少なくとも破壊株では
sn-2位へのアシル基転移に他の遺伝子も関与していると考えられた。
sll1848破壊株は野生株に比べて増殖が遅く、低温に対する感受性が高まっていた。
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Yasuyo Yamazaki, David Lightfoot
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605
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
Metabolomics is the best measurement of the global effects of protein activity, which results from differences in the genome, and environmental effects on an organism. We have transformed tobacco plants with a bacterial gene that encodes NADP dependent glutamate dehydrogenase (GDH), an enzyme that can assimilate ammonium. We describe here the metabolic changes in leaf and root of transgenic tobacco using Fourier Transform Ion Cyclotron Mass Spectrometry (FTMS), GC-MS and LC-MS/MS metabolite analysis technologies. FTMS analysis led to the detection of over 2200 12C masses that are representative of at least as many metabolites. Primary metabolites were quantified by GC-MS or LC-MS/MS. The comprehensive metabolic analysis of transgenic tobacco provided new information about how changes in the proteome resulting from the insertion of a new gene affect the metabolome. Relationships between metabolites were investigated with statistical cluster analysis. Several findings by these techniques will be discussed.
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吉田 和正, 平出 政和, 西口 満, 菱山 正二郎, 加藤 厚
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606
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
スギ(
Cryptomeria japonica D. Don)の心材にはノルリグナンと総称されるC
6-C
5-C
6構造をもつフェノール性成分が含まれる。ノルリグナンは心材形成に伴って合成され、心材色の生成に関与していると想定されているが、その生合成酵素や遺伝子は単離されておらず、生合成経路も推定の域を出ていない。スギ丸太の乾燥過程において辺材中にノルリグナンが生成する現象が報告されている。この現象をノルリグナンの生合成機構を調べる実験系として利用できるのではないかと考え、丸太の乾燥過程において辺材で生成するノルリグナンの組成を、含水率の変化に着目して分析した。スギを伐採後、丸太を室内に放置し、伐採当日、10、20、41および70日後にそれぞれ試料を採取し、ノルリグナンおよび含水率の経時変化を調べた。辺材内方においてある種のノルリグナンが次第に増加し、含水率が伐採当日の移行材と同程度まで低下した41日後に最多となった。このノルリグナンはガスクロマトグラフィー-質量分析によりアガサレジノールと同定された。これらの結果は、乾燥過程における辺材でのノルリグナンの生成が、その生合成機構を研究するうえで有用な実験系であることを示している。
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大木 宏之, 中村 博之, 金廣 暢子, 橋本 隆
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607
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
タバコが蓄積するニコチンはPMT(putrescine
N-methyl transferase)を初発酵素としてプトレッシンから生合成される。PMTと機能未知の還元酵素A622の両遺伝子の発現は同じ組織・細胞特異性とジャスモン酸誘導性があり、ニコチン生合成特異的調節遺伝子座
NICにより同様の制御を受けている。今回、PMTとA622遺伝子のプロモーターのジャスモン酸応答領域を限定するため、蛍ルシフェラーゼをレポーターとし、タバコBY-2プロトプラストを用いた一過的な発現系でプロモーター解析を行った。
PMTプロモーターに関しては24bpの最小領域にまで狭め、この最小領域の4コピータンデムをCaMV35Sの最小プロモーターにつなぐとBY-2プロトプラストでジャスモン酸応答性を示した。このコンストラクトを
Nicotiana tabacum cv. SR1 に導入し、植物体の各組織におけるジャスモン酸応答性を調べている。また、ニコチン生合成関連遺伝子の発現を制御する因子を探索するためにBY-2細胞を用いたアクティベーションタギングを試みているので、この実験系についても紹介する。
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北村 智, 鹿園 直哉, 田中 淳
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608
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
フラボノイド化合物は植物の生育に必須でない二次代謝産物であるが、色素や紫外線防護物質などの様々な生体内機能を有する。これらフラボノイドの生合成については徐々に明らかになりつつあるが、細胞質で生合成されるフラボノイドが液胞へ輸送・蓄積される過程についてはほとんど明らかになっていない。我々はイオンビームにより誘発したシロイヌナズナ新規突然変異体
tt19より、原因遺伝子
TT19を単離した。
TT19はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)様タンパク質をコードしており、アントシアニンの液胞蓄積に必須であることを明らかにした。TT19タンパク質のN末端にGFPを融合させたGFP-TT19タンパク質を
tt19変異体で発現させ、アントシアニン蓄積の復帰した形質転換体におけるGFPシグナルの様相を調査した。根においては、融合タンパク質およびコントロール(GFPタンパク質のみ)との間で違いは認められず、ともに細胞質領域でGFPシグナルが検出された。一方、ロゼット葉から単離したプロトプラストでは、コントロールGFPは細胞質に均一に存在しているのに対して、GFP-TT19融合タンパク質は細胞質に存在していたものの、顆粒状に局在しているように観察された。
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茂理 保平, 富田-横谷 香織, 加藤 貴子, 岩科 司, 長谷川 宏司
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609
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
サボテン科植物ピタヤ(
Hylocereus undatus)の果実は半年以上無農薬で生産することができる。これまでに数多くのアレロパシー物質が知られているが、ピタヤ果実を特に対象とした生物活性物質やポリフェノール類の詳細な研究の報告はまだ少ない。そこで、この果実における生物活性を有する物質について探索を試みた。一方で、ある種のフラボノイドがアレロパシー機能を有することが知られているが、これまでピタヤにおけるフラボノイドの分析はなされていない。そこで、今回、ピタヤに含まれるフラボノイドと生物活性を有する物質の単離と、そのアレロパシー作用についてHira-ei line A 果実を用いて調べた。その結果、3種類のフラボノイドを単離・同定し、数種類の生物活性物質の存在を明らかにした。アレロパシー機能としての役割を調べるために、ケイトウ下胚軸伸長試験とアカパンカビ発芽試験を行ったところ、植物と糸状菌への効果が著しく異なる活性を有する物質の複数の存在を確認した。これらのアレロパシー機能について考察した。
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鈴木 利貞, 岩井 昭子, 片山 健至
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610
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
リグナン類は2つのフェニルプロパン単位(C6-C3)が側鎖同士で結合したC6-C3-C3-C6骨格を持つ化合物である。そのほとんどはキラルで光学活性を示し、生理活性物質として医薬の分野で注目されているものもある。しかしながら、植物におけるリグナン類の生合成及び樹木生理学的役割については解明されていないものが多い。本研究では、リグナン類が多く含まれているトチュウ(
Eucommia ulmoides Oliv.)を実験材料として用い、細胞培養系を確立し、リグナン類の生合成を誘導することを目的とした。
香川大学圃場で育成したトチュウの頂芽、形成層及び葉を採取し、固体培地上でカルス誘導を行った。培地には、B5培地用塩類と2,4-D、BAP等の植物ホルモンを組み合わせた寒天培地を用いた。最適な条件下で誘導されたカルスを同条件下で継代培養し、形成層組織から黄色カルスと緑色カルスを得た。各々のカルスをMeOH抽出し、二層分配及びSep-Packにより精製後、リグナン類(ピノレジノール、メジオレジノール及びシリンガレジノール)をHPLC-PDAにより分析した。両カルスのクロマトグラムには3種のリグナンに対応するピークは認められたが、それらの含有量は微量であった。現在、トチュウ培養細胞に前駆体及び各種エリシター処理を行い、どのような培養条件下でリグナン類が効率良く生産されるのかについて検討している。
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加藤 貴子, 富田-横谷 香織, 小瀬村 誠治, 長谷川 宏司
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611
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は、これまでにヒマワリの種子水滲出物から、雑草(オオイヌノフグリ)の成長を抑制する生物活性を有する物質のひとつとして、4,15-dinor-3-hydroxy-1(5)-xanthene-12,8-olide (sundiversifolide)をすでに単離・同定した。Sundiversifolideはヒマワリ種子吸水時の水滲出物中に含まれるが、その量は種子吸水開始から1日目が最も多く、その後日数の経過にともない減少する。これまでに、この物質が、ヒマワリ種子の果皮に存在することを確認した。一方、暗所及び明所で生育させた6日齢のヒマワリ芽生えの70%アセトン抽出物中のsundiversifolideはHPLC、LC-MSを用いた分析において検出限界以下であった。Sundiversifolideの、種子発芽後の生育過程における動態とヒマワリにおける機能を明らかにするために、この物質のヒマワリの成長に及ぼす効果と、成熟したヒマワリ個体の花、蕾、葉、茎、根の各器官における分布を調べた。HPLC分析レベルにおいて、葉と蕾にその存在を確認した。Sundiversifolideは、成熟個体で生産されヒマワリ種子の発芽時に生育環境中に放出される可能性が示唆された。
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福田 篤徳, 中村 敦子, 田中 喜之
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612
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
液胞膜型Na
+/H
+アンチポーターは、液胞膜を介したpH勾配をエネルギー源として利用し、細胞質に存在するNa
+を液胞内に輸送する対向輸送体である。そのため、以前から本輸送体が植物の耐塩性に重要な働きをすることが指摘されてきた。当研究室では、イネの液胞膜型Na
+/H
+アンチポーター遺伝子(
OsNHX1)を高発現したイネが、野生型より高い耐塩性を示すことを確認している(Fukuda et al., 2004
Plant Cell Physiol., in press)。また、OsNHX1が、Na
+以外にK
+を輸送することを確認しており、耐塩性以外にも様々な生理現象に関与する可能性を指摘してきた。今回、イネの鉄欠乏耐性への
OsNHX1の関与を示唆する結果が得られたので報告する。まず、OsNHX1を高発現したイネカルスでは、野生型より鉄含量が増加することを見出した。また、鉄欠乏下のカルスでは、増殖が低下するとともに
OsNHX1遺伝子の発現量が増加した。さらに、OsNHX1を高発現したイネ幼植物では、鉄欠乏による葉のクロロシスがわずかながら野生型より抑制された。本発表では、イネの鉄吸収におけるOsNHX1の関与を考察する。
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岡崎 芳次
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613
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
汽水産シャジクモ類シラタマモ(
Lamprothamnium succinctum)の節間細胞は外液の浸透圧の変化に対して細胞浸透圧を増減させて膨圧を一定に保つ(膨圧調節)機構を備えている。液胞浸透圧は主にK
+、Na
+、Cl
-によって維持され、膨圧調節の際にはそれらの濃度が増減して液胞浸透圧が変化する。本報告では、膨圧調節の結果として増減する液胞内イオン濃度がその後の膨圧一定条件下で変化するかどうかを検討した。液胞液の無機イオン濃度は個々の節間細胞から液胞内灌流によって液胞液を直接単離し、イオンクロマトグラフ法によって測定した。
低張処理に伴う膨圧調節の終了直後では、液胞内のNa
+濃度は変化しておらず、K
+とCl
-濃度のみが減少していた。その後、膨圧一定下でK
+濃度は増加して元のレベルまで回復する一方でNa
+濃度は減少した。また、高張処理に伴う膨圧調節の間は液胞内のK
+とNa
+濃度がほぼ同じように増加して膨圧の回復に寄与した。そして膨圧が回復した後でもその変化したNa
+とK
+濃度はそのままに保たれた。以上のことは、低張処理に伴う膨圧調節では液胞K
+の流出が優先するものの、その後はNa
+を放出することによって膨圧を一定に保ちながら外液からK
+を吸収して、液胞内の減少したK
+濃度を元のレベルまで戻すイオン調節機構の存在を示唆している。
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中川 祐子, 片桐 健, 篠崎 一雄, 戚 智, 岸上 明生, 古市 卓也, 辰巳 仁志, 曽我部 正博, 佐藤 修正, 加藤 友彦, 田畑 ...
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
出芽酵母(
Saccharomyces cerevisiae)の
MID1遺伝子はCa
2+透過性伸展活性化陽イオンチャネルをコードしている。この遺伝子に変異をもつ
mid1変異株は、性フェロモンの作用によるCa
2+流入に欠損をもつため死に至る。我々はこの変異を相補するシロイヌナズナ(
Arabidopsis)のcDNAを1つ単離した。このcDNA (以下
AtMID1A)は
mid1変異株の低下したCa
2+取込み能を顕著に上昇させた。植物における機能解析を行うため、シロイヌナズナに
AtMID1Aを高発現させた。
AtMID1A高発現株は矮小化し、地上部が黄化した。この高発現株の矮小化と黄化は培地のCa
2+の濃度を高くすることで顕著になり、Ca
2+の濃度を低くすることで回復した。エクオリンを用いて
AtMID1A高発現株の細胞内Ca
2+の動態を解析した。その結果、
AtMID1A高発現株では野生株に比べ、低浸透圧ストレスにより細胞内Ca
2+濃度が顕著に上昇した。また、この細胞内Ca
2+濃度の上昇は、チャネルブロッカーやCa
2+キレート剤により抑制された。さらに膜の張力を変化させるとされるトリニトロフェノールの刺激に対しても
AtMID1A高発現株では野生株に比べ細胞内Ca
2+濃度が顕著に上昇した。これらのことは、
AtMID1Aが細胞膜の伸展によるCa
2+取込みに関与している可能性を示唆する。
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松田 史生, 宮沢 春奈, 山田 哲也, 宮川 恒, 若狭 暁
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615
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
【目的】
OASA1D遺伝子は、イネ由来のアントラニル酸合成酵素 (AS) 遺伝子を、トリプトファン (Trp) からのフィードバック阻害に非感受性に改変したものである。バレイショにこの遺伝子を導入するとTrp含量が上昇する。本研究では
OASA1Dの導入がバレイショの代謝生理に起こす変化を明らかにすることを目的に、AS活性、代謝プロファイリング、IAA含量について検討を加えた。
【方法と結果】 野生株および
OASA1D導入バレイショの葉と塊茎から粗酵素液を調製し、AS活性を測定した。野生株に比べ、OASA1D導入バレイショのAS活性量は変化しなかったが、Trpからのフィードバック阻害に対して有意に非感受性に変化していた。また、葉および塊茎抽出物を逆相系HPLC(グラディエント溶出、検出:UV 280nm)で分析し、代謝物プロファイルを比較しても、
OASA1Dの導入によるTrp以外の成分の顕著な変動を見いだすことはできなかった。組織中遊離IAA含量の定量はLC/MS/MSを用いて行った。その結果、遊離IAA含量はバレイショ茎頂部で数倍程度増加していることが明らかになった。
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矢野 大輔, 森田(寺尾) 美代, 田坂 昌生
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616
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は花茎重力屈性の分子機構を理解するため、シロイヌナズナの重力屈性変異体の解析を進めている。これまでの研究から、花茎内皮細胞層が重力感受細胞であり、この細胞に含まれるアミロプラストと呼ばれる色素体が重力方向に沈降することが花茎重力屈性に重要であることが示されている。花茎の重力屈性能が低下した劣性変異体
sgr6 (
shoot gravitropism 6)は正常なアミロプラストの沈降を示し、光屈性も正常である。Map-based cloningを行ったところ、
SGR6は1703アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。しかし、その中に機能を予測できる既知のドメインはほとんど見出せなかった。次に内皮細胞特異的な
SCRプロモーターを用いて
sgr6-1変異体内で
SGR6 cDNAを発現させたところ、重力屈性能の回復が見られた。これらのことは未知の機能を持つ新規タンパク質SGR6が、内皮細胞内における重力感受あるいはその後比較的早く起こるシグナル伝達に関与する可能性を示唆している。現在、この新規タンパク質の機能解析を進めている。
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高橋 あき子, 小林 啓恵, 柿本 洋子, 藤井 伸治, 高橋 秀幸
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617
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
水分屈性は、根が水分勾配を感受し、高水分側に屈曲する現象であるが、その分子機構に関する研究は遅れている。われわれはシロイヌナズナの根の水分屈性実験系を確立して、水分屈性の欠損・低下した突然変異体 (
root hydrotropism;
rhy) を 14 株単離し、それらの特性および突然変異遺伝子を解析している。これまで、
rhy1 は水分屈性を欠損するが、野生型と同様な重力屈性、光屈性、波形成長、伸長成長を示すこと、
rhy2 と
rhy3 は水分屈性の低下だけでなく、波形成長あるいは重力屈性、光屈性に異常のある突然変異体であることを明らかにした。本研究では、新たに
rhy4 と
rhy5 が正の水分屈性を欠損すること、また、
rhy4 は時間の経過とともに水ポテンシャルの低い側に屈曲することが明らかになった。
rhy4 は波形成長における波形の振幅が小さく、
rhy5 は波型成長時における伸長成長の低下した突然変異体であった。さらに、突然変異遺伝子のマッピングを行い、
rhy1 および
rhy4 の変異原因遺伝子の座乗する染色体を決定した。
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清水 美順, 鈴木 圭太, 藤井 伸治, 高橋 秀幸
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618
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
種子を水平に置き発芽させたキュウリの芽ばえは,発芽直後に胚軸と根の境界領域 (Transition zone, TR領域) の下側にペグと呼ばれる突起状組織を形成する.TR領域は2個のペグを形成する能力を持ちながら,重力刺激により上側のペグ形成が抑制され,下側にのみペグが形成される.これを我々は重力による形態形成のネガティブコントロールという概念で説明してきた.このネガティブコントロールを担う分子の同定を目的として,蛍光ディファレンシャルディスプレイ (FDD) 法を行い,TR領域の上側で発現の多い遺伝子をコードすると予想される部分的cDNAを単離した.得られた部分的cDNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングした結果,グリシン残基に富む繰り返し配列を持つ,典型的なglycine-richタンパク質 (GRP) をコードする623 bpのcDNAを単離した.そこで,本遺伝子を
CsGRP1と命名した.ノーザン解析により,ペグ形成が開始される21時間齢のキュウリ芽ばえでは,横になったTR領域の下側に比べ上側で
CsGRP1 mRNAが多いことを確認した.一方,横倒しにした72時間齢の芽ばえの胚軸では,偏差的な
CsGRP1 mRNAの蓄積は認められなかった.したがって,
CsGRP1はペグ形成開始期に偏差的に発現する遺伝子であり,ペグ形成の抑制に関与する可能性がある.
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富田-横谷 香織, 馬場 啓一, 藤井 義晴, 橋本 博文, 山下 雅道
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619
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
マメ科植物のムクナ(
Mucuna pruriens L.)は、他植物の根の生長を著しく抑制する強いアレロパシー活性を有することが、実験的な研究により検証されている。我々は、現在の地球環境に存在しない環境を人工に創り出した場合には、その環境内で生育される生物の挙動の他、生命活動に関連する化学種の生成や伝達・消滅の過程は、地上でのそれらとは異なる部分があると予想している。ムクナの強いアレロパシー活性は根から滲出されるL-DOPAが主たる要因であると推定されているが、L-DOPAは酸化すると速やかに重合しメラニン色素が生じるため、組織内に色素沈着が確認される。これまでに、3D-クリノスタットを用いた疑似微小重力下と地上とでは、異なるアレロパシー活性が認められることを示してきた。そこで、現在、ムクナを材料としてL-DOPAを中心としたアレロパシー物質の産生、放出、輸送、感受の一連の過程のどれが重力に依存するのかを体系的に検索している。今回、地上対称と疑似微小重力環境におけるムクナの根について、組織学的および組織化学的な検討を詳細に行った。現在までの結果から、疑似微小重力環境におけるアレロパシー活性の低下に根の先端が重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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大津(大鎌) 直子, 藤原 徹, 内藤 哲
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
O-アセチルセリン(OAS)は、硫黄栄養応答性遺伝子の正の制御物質である。OAS濃度は、培地のS/N比に応じて変動し、システイン合成系酵素の発現を人為的に変化させることによっても変化するが、その他の要因は分かっていない。また、OASがどのように遺伝子発現を制御するのかについても明らかになっていない。本研究は、硫黄応答性遺伝子の発現が変化した変異株を単離、解析することにより、これらを明らかにすることを目的としている。
ダイズ種子貯蔵タンパク質βコングリシニンのβサブユニット遺伝子は硫黄栄養応答性遺伝子のひとつであるが、この応答をGFPの蛍光として可視化した形質転換したシロイヌナズナNOB株を作成した。そしてNOB株の種子をEMS処理した後代から、GFP蛍光強度を指標にして変異株を単離した。GFP蛍光が親株であるNOB株よりも強い株のうち1株について詳細に解析したところ、内在性の硫黄応答性遺伝子
Sultr2;2,
APR1の発現も強くなっていた。またOAS濃度が増加していたため、
osh1-1 (
OAS high accumulation)と命名した。マッピングにより、原因遺伝子を30 kbの領域に狭めたが、この領域に塩基配列の変異はなかった。しかしこの領域内にあるひとつの遺伝子が、
osh1-1において脱メチル化されており、mRNA量が増加していた。現在この遺伝子と、表現型との関連を解析中である。
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柴田 庸介, 長谷山 陽平, 吉野 由佳, 鈴木 健裕, 亀井 綾子, 池内 昌彦, 太田 尚孝, 榎並 勲
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
ラン色細菌の酸性ストレスに対する応答機構を解明する目的で
Synechocystis sp. PCC 6803をpH 3.0とpH 8.0の培地で30分~4時間培養した細胞からRNAを精製し、DNAマイクロアレイを用いて両者の遺伝子発現の違いを網羅的に比較した。その結果、酸性ストレス特異的に発現が誘導される遺伝子を30個見出した。その中で酸性ストレスで発現が4時間まで増加し続ける遺伝子、
slr0967、
sll0939の遺伝子破壊株を作成し、作成した欠損株と野生株をpH 3のGly-HClを含んだ酸性BG-11プレート上にまき生存限界を調べた結果を以前報告した。しかし、この条件では酸性条件が厳しくpHの変動も大きかったので、今回はpHをより安定に保つことができるより温和な酸性条件として、pH 5.5~pH 6のMES-NaOHで緩衝させたBG-11プレートを用いて調べた。 pH 5.5とpH 6で一週間培養した結果、これら遺伝子破壊株は野生株に比べ明らかに増殖が抑えられ死滅した。この2つの遺伝子欠損株に加え、酸性ストレス応答遺伝子の欠損株をさらに7株作成し同様な実験をした結果、その内3株は酸性ストレス処理により増殖が抑えられたが、他の4株は影響を受けなかった。さらに、これらの遺伝子破壊株の光合成特性や他ストレスでの発現量などを比較し、得られた特徴について合わせて報告する予定である。
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井上 晴彦, 樋口 恭子, 高橋 美智子, 中西 啓仁, 森 敏, 西澤 直子
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
ニコチアナミン(NA)は全ての高等植物に存在し、金属イオンと安定な錯体を形成するキレート物質である。イネ科植物においては、NAはムギネ酸生合成の前駆体として重要な役割を果たしている。
イネの三種のニコチアナミン合成酵素遺伝子(
OsNAS1、
OsNAS2、
OsNAS3)は、すべてが鉄の長距離輸送に関与する細胞で発現していた。またその鉄栄養による発現の制御は分子種によって異なっていた。
ノーザン解析の結果、
OsNAS1、
OsNAS2は、鉄十分の根において弱く発現し、鉄十分の地上部では発現していなかった。一方、鉄欠乏では、地上部、根ともに発現が著しく増大した。
OsNAS3は鉄十分の地上部、根で弱く発現していた。鉄欠乏によって、
OsNAS3は地上部で発現が抑制され、根では誘導された。
さらにプロモーターGUS実験によって、三種の
OsNASの組織局在を解析した。
OsNAS1と
OsNAS2の発現部位は共によく似ており、鉄十分の根の師部伴細胞、原生導管に隣接する内鞘細胞で発現していた。鉄欠乏では、発現は根の全体であった。
OsNAS3は、鉄十分の地上部の伴細胞、根の伴細胞と内鞘細胞で観察された。鉄欠乏により地上部の発現は抑制され、根では若干誘導された。これらの結果は、イネのNAS遺伝子が、鉄欠乏に応答するムギネ酸の分泌に機能するだけでなく、鉄の長距離輸送にも関与することを支持している。
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寺西 美佳, 岩松 優, 日出間 純, 熊谷 忠
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623
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
日本型栽培イネ品種のUV-B感受性は品種によって異なる。日本型イネ (
Oryza sativa L.) のうち、育種の過程で近縁関係にあるササニシキのUV-B抵抗性は強いが農林1号は弱い。また、ササニシキのcyclobutane pyrimidine dimer (CPD) 光回復酵素活性は農林1号に比べて高く、ササニシキのCPD光回復酵素の506個のアミノ酸配列のうち126番目はグルタミンであるのに対し、農林1号ではアルギニンであることをこれまでに見出してきた。本研究では、ササニシキと農林1号のUV-B感受性の差異、CPD光回復酵素遺伝子の変異が、これらの品種が育種されてきた過程のどの品種で起こったのか、他の日本型イネ品種ではどうなっているのかを明らかにするために、ササニシキ、農林1号の先祖 (朝日、銀坊主、愛国、亀の尾) とその後代世代、その系統とは異なる2、3の日本型品種のCPD光回復酵素のアミノ酸配列、CPD光回復酵素活性を比較検討した。その結果、日本型イネは、ササニシキと同じアミノ酸配列を持ち、高い酵素活性を示すササニシキ型と、農林1号と同じ配列を持ち、低い酵素活性を示す農林1号型の2つのグループに分けられることが明らかとなった。
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坂本 綾子, Lan Vo, Vichai Puripunyavanich, 田中 淳
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624
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は、高等植物における紫外線応答機構の解明を目指し、イオンビームを変異原として紫外線感受性変異株の単離と解析を行ってきた。これまでに、誤りがち損傷乗り越え複製機構の欠損した
suv1 (
rev3-1) 変異株 (Sakamoto
et al., 2003)や、ヌクレオチド除去修復機構の欠損した
suv3変異株 (Vo
et al., unpublished) の単離に成功した。今回は、UVB、ガンマ線及びマイトマイシンCに対して感受性を示す
suv2変異株について報告する。マッピングの結果、
suv2変異は第5染色体の下腕部と強くリンクしていることがわかった。そこで、この位置に該当するP1クローンを用いてサザンブロットを行い、さらにTAIL-PCRで解析を行った結果、
suv2ではDNA断片の重複と挿入を含む大きな構造変化が起きていることが明らかになった。DNA断片の挿入によって1つの遺伝子(MRA19.1)が破壊されており、これが
suv2変異の原因遺伝子と予想されたが、既知のDNA修復酵素とは全くホモロジーがみられなかった。一方で、T-DNAの挿入によりMRA19.1が破壊されたラインでも、
suv2と同様に紫外線感受性がみられた。以上の結果から、MRA19.1は損傷修復又は損傷トレランスに関わる新しい遺伝子であることが示唆された。
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三枝 尚洋, 中村 直樹, 薮田 行哲, 吉村 和也, 石川 孝博, 重岡 成
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625
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
高等植物の各オルガネラに局在するアスコルビン酸ペルオキシダーゼ (APX) アイソザイムは、個々に発現調節を受け、活性酸素の消去および細胞内酸化還元レベルの調節に機能している。細胞質型APX(cAPX)は強光ストレスに対して特異的に誘導されることが明らかになっている。そこで今回、cAPX発現調節機構を明らかにするためにプロモーターの解析を行った。ホウレンソウcAPXプロモーター領域を5'側より欠失させGUS遺伝子と連結した融合遺伝子をアラビドプシスに導入し、強光応答に関与するシスエレメントの同定を試みた。その結果、強光照射(1,600 μE/m
2/s)により-1753 bpもしくは-1325 bpのcAPXプロモーターを導入した植物体では、正常条件下(100 μE/m
2/s)でのGUS活性と比べ約2.4、2.5倍の増加が認められた。一方、-860~-139 bpを導入した植物体では顕著な誘導は認められなかった。そこで、-1325~-860 bpの領域を-139 bpの最小プロモーターの上流に連結した融合遺伝子をアラビドプシスへ導入した。その結果、形質転換植物体では正常条件に比べ強光条件下で約2.5倍高いGUS活性を示した。このことからcAPXの強光応答に関与するシスエレメントは-1325~-860 bpの領域に存在することが明らかとなった。
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森本 ゆかり, 黒瀬 郁子, 澤 嘉弘, 柴田 均, 重岡 成, 石川 孝博
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
環境ストレス応答の初期段階で生成する活性酸素種は、レドックスシグナル分子として作用しさまざまな環境応答機構の発現を引き起こす。我々はこれまで、細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(cAPX)の形質転換により、植物細胞内レドックス状態の改変が可能なことから、レドックスによる応答機構解析の良いモデル実験系となることを示してきた。今回、cAPXを発現抑制および過剰発現させた植物培養細胞(タバコBY-2細胞、シロイヌナズナT87細胞)を用い、細胞内レドックス状態と環境ストレス応答性の関連について検討を行った。cAPX発現抑制により細胞内酸化レベルが増大したBY-2細胞は、37℃の熱ストレス、400 mM NaClによる塩ストレス、100 mM H
2 O
2 による酸化ストレスに対して耐性能の増加が認められた。cAPX抑制細胞では定常条件下において、HSPなどの熱ストレス耐性関連遺伝子群およびNDPK、NPK-1などストレスシグナル伝達関連遺伝子の発現量に増加が認められることから、ストレス耐性能の増加には遺伝子発現レベルで関与することが示唆された。一方、cAPXを過剰発現させたT87細胞は、熱ストレスに対して感受性を示した。細胞内レドックス状態とストレス応答性には密接な関連性のあることが示唆された。現在、ストレス応答に関与する他のレドックス応答遺伝子の探索も試みている。
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宇梶 徳史, 原 登志彦
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627
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
細胞内レドックス状態の変化は、抗酸化作用を通じた直接的なストレス防御機構に加えて、植物の様々なライフサイクル制御に関与することが近年報告されている。特に北方圏に生育する植物は、気温の低下により吸収した光エネルギー利用効率が減少し葉緑体内が過還元化する、というレドックス状態の変化を受け易い。私たちは、北方圏に生育する植物は、細胞内レドックス状態の変化をそのライフサイクルを制御する情報として用いているのではないかと考えている。この仮説を実証する一環として、北方林樹木であるイチイ葉における強光・低温誘導性遺伝子の網羅的同定を行っている。
4月に野外に生育するイチイ枝を採取し、700μE m
−2 s
−1・4℃で24時間、強光・低温処理を施した。採取した葉を材料としてcDNAライブラリーを作製し、ランダムにピックアップした400bp以上のインサートを有する1,000クローンについて、5‘側から塩基配列の決定を行った。同定した遺伝子の約1/5は光合成に関連する遺伝子であり、特に光化学系Iをコードする遺伝子が多く同定された。また、グルタチオン合成を制御する遺伝子群、花芽形成促進因子であるFT遺伝子、AP2/EREBPモチーフを有する遺伝子などが単離・同定された。今後、更なる遺伝子の単離・同定を進め,北方林樹木のライフサイクル制御機構の解明につなげたいと考えている。
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伊藤 寿, 岩渕 雅樹, 小川 健一
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628
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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グルタチオンは細胞内にもっとも多量に存在するチオール化合物であり、様々な環境要因によってその酸化還元状態は変化する。植物が環境変化に適応するとき、細胞内の酸化還元状態を認識すると考えられる。酸化還元状態の変化による特定のタンパク質へグルタチオンの結合や解離、およびその結果によるタンパク質の機能変化を通じて、細胞は酸化還元状態の変化を認識すると我々は考えた。そこで、アラビドプシスの培養細胞へビオチン標識したグルタチオンを取り込ませることにより、グルタチオンが結合するタンパク質を精製した[Ito et al. (2003) Plant Cell Physiol. 44: 655]。アミノ末端のアミノ酸配列分析から、その一つはTranslationally Controlled Tumor Protein (TCTP)と相同なものであることが明らかとなった。TCTPは動物の腫瘍細胞に 多量に蓄積するタンパク質として同定されたものであり、その機能の詳細は不明だが 、細胞分裂にかかわっていると考えられている。TCTPへのグルタチオンの結合を確認するために、アラビドプシスのTCTPを大腸菌で発現し、酸化型グルタチオンをin vitroで処理したところ、TCTPへグルタチオンが結合することが分子量の増加より確認された。現在このタンパク質の機能解析を進めている。
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潮見 直織美, 逸見 健司, 河瀬 朋華, 矢崎 潤史, 岸本 直己, 菊池 尚志, 岩渕 雅樹, 小川 健一
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629
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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H
2O
2はイネ、ダイズ、ヒャクニチソウ等において種子発芽から花成までの成長を調節するが、その分子メカニズムは明らかになっていない。我々は、その分子メカニズムを解明すべく、イネおよびシロイヌナズナをモデルとして研究を行っている。
H
2O
2処理および水処理したイネにおいてマイクロアレイ解析、RT-PCRの結果、発現量に変化が認められた遺伝子群の中にグルタチオン
S-トランスフェラーゼ (
GST)があった。私たちはグルタチオンが成長制御に深く関わることを見い出していることから、この
GSTの生理機能に注目した。GSTはオーキシンの結合タンパク質として知られている。そこで、シロイヌナズナにおいて、イネ
GSTの高発現体を作出し、その過剰発現体と、オーキシン誘導性であるシロイヌナズナ
GSTのノックアウト植物を用いて、根の重力屈性を調べた。高発現体では重力に対する過剰な応答が認められ、2つのノックアウト植物のうちの1つでは重力屈性の低下が認められた。このことから、
GSTはオーキシンが関与する重力感受のシグナル伝達系に関与すると示唆される。
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池上 陽紀, 増田 建, 本橋 健, 久堀 徹, 高宮 建一郎
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630
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
Mg-キラターゼはクロロフィル合成の第一段階であるポルフィリン環へのMg
2+の配位を触媒する酵素であり、CHLI, CHLD, CHLHの3つのサブユニットから構成される。Mg-キラターゼの反応にはCHLIによるATP加水分解が必要であり、反応の律速段階である。最近、チオレドキシン(Trx)標的蛋白質のプロテオーム解析により、CHLIが候補として見出された(Balmer et al. PNAS 2003)。CHLIは保存されたシステイン残基を持ち、そのATPase活性がTrxによって制御される可能性がある。そこで、私たちはTrxによるMg-キラターゼのレドックス制御機構を明らかにすることを目指して、シロイヌナズナCHLI1のATPase活性に対するTrxの効果を調べた。
CHLIにHis-tagを付加した組換え蛋白質を、CuCl
2による酸化処理、あるいはDTTにより還元後、SH基修飾試薬AMSを加え、SDS電気泳動で分析した。その結果、還元に伴うCHLI蛋白質のバンドシフトが認められた。Trxを加えるとより低濃度のDTTでバンドシフトが見られた。CHLIのATPase活性は、DTTに依存して上昇し、さらにTrxの添加により、低DTT濃度での活性増加が認められた。以上の結果から、CHLIはTrx標的蛋白質であり、そのATPase活性がTrxによるレドックス制御を受けることが示された。
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八丈野 孝, 射場 厚
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631
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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植物が病原菌に感染した場合、活性酸素(O
2-、H
2O
2)の生成を端緒とした一連の抵抗性反応が生じる。O
2- の生成はNADPHオキシダーゼにより行なわれるが、その活性調節機構の全容は明らかにされていない。我々は、本学会2003年度年会において、NADPHオキシダーゼの活性調節にトリエン脂肪酸(TA)であるリノレン酸(LA)が関わることを報告した。TAは、生体膜脂質を構成する主要な不飽和脂肪酸である。シロイヌナズナにおいて、TA合成を触媒するω-3脂肪酸不飽和化酵素は、小胞体型FAD3、葉緑体型FAD7、FAD8の3つが同定されている。葉緑体型が欠失した
fad7fad8変異体において、
Pseudomonas syringae pv.
tomato DC3000 (
avrRpm1)(
Psm (
avrRpm1))に対する抵抗性反応を調べた結果、野生株や小胞体型が欠失した
fad3変異体と比較してH
2O
2の生成が低下した。
Psm (
avrRpm1) 接種後の野生株において、1時間から遊離したLA含量が増加し、H
2O
2が生成される時間と一致した。さらに、葉緑体膜脂質由来のTAが、細胞膜や小胞体膜に存在する脂質に転移することを示唆する結果を得た。これらの知見から、葉緑体膜から遊離したLAが細胞膜に局在するNADPHオキシダーゼの活性調節に関わることが考えられた。
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能年 義輝, 伊藤 卓也, 保浦 徳昇, 篠崎 一雄
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632
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は、湿度低下により生育阻害を示す劣性の
Dsトランスポゾン挿入シロイヌナズナ変異体
slh1(
sensitive to low humidity 1)を単離した。これまでの解析により、葉身上に死細胞とカロース、自家蛍光物質の蓄積が観察され、また抵抗性、酸化的ストレス、プログラム細胞死に関連する遺伝子群の湿度低下に伴う発現誘導が認められた事から、
slh1は自発的に病原体抵抗性反応と細胞死を示す変異体であり、高湿度が表現型を抑えるということが明らかとなった。
NahG遺伝子の導入により
slh1表現型は部分的に抑圧され、サリチル酸依存的な抵抗性遺伝子発現経路の活性化が示された。
Dsは5番染色体下腕
RPS4遺伝子を含む約50kbに渡る
R-geneクラスター内に挿入していた。この領域は、約30kbに渡ってエコタイプ間で多型を示し、
Dsはその中の一つの
R-geneに挿入していた。
Dsラインから取得できた二つのallelesが表現型を示さなかったことと、破壊遺伝子の導入では表現型が相補されなかったことから、
Ds挿入は原因ではないことが判明した。ポジショナルクローニングに向けたマッピングを行ったところ、
slh1変異は
Ds近傍83.6kbp以内に位置づけられた。この領域中に、
Ds転移の際に生じる典型的なフットプリントと考えられる3bpの挿入変異をもつ遺伝子を同定したので、現在相補試験を行っている。
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熊谷 浩高, 梅原 洋佐, 佐藤 修正, 金子 貴一, 田畑 哲之, 河内 宏
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633
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
ミヤコグサ胚軸由来のカルスから再生個体群を得て、その後代から無効根粒を着生する変異体56Mを単離した。56Mの根粒は根粒菌感染後2-3週で白色ないしは緑色を呈し、この時点で根粒菌感染領域における細胞内構造の崩壊が観察された。窒素固定条件で栽培すると56Mは窒素欠乏症状を呈し、アセチレン還元活性もほとんど検出されなかった。それに対して、窒素源を添加した栽培条件での生育、窒素固定条件での根粒数、根粒数を指標にした硝酸塩に対する感受性、いづれも野生株と同様であった。以上の結果から、56Mは正常な根粒菌感染過程の後、感染した根粒菌との共生が早期に破綻する変異体であると考えられる。
F2個体群における表現型の分離を調べた結果、56Mの変異形質は劣性一遺伝子支配であると考えられた。そこで、マップベースクローニング法を用いて原因遺伝子の同定を試みた。目的の領域を5番染色体上の約70Kbpに絞った後、遺伝子予測により検出された5遺伝子について変異体の塩基配列を調べた。その結果、一つのエクソンに読み枠のずれを検出した。現在、相補試験、RNAiによる解析で原因遺伝子の確定を行っている。
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高井 亮太, 蔡 晃植, 磯貝 彰
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634
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
植物は微生物由来の多様な分子を認識し、様々な防御反応を誘導する。我々は、単子葉植物を宿主とする植物病原細菌
Acidovorax avenaeのイネ非親和性菌株から精製したべん毛構成タンパク質フラジェリンがイネ培養細胞に対して活性酸素発生や抵抗性関連遺伝子の発現などの防御応答を特異的に誘導することを明らかにしてきた。本研究では、植物におけるフラジェリン認識機構を明らかにするため、数種類の植物においてフラジェリンタンパク質のどの部位が防御反応誘導活性を有するのか検討した。様々な部位を有するフラジェリン断片を作製し、イネ培養細胞に処理したところ、フラジェリンのC末端部分の断片に防御反応誘導活性があり、アラビドプシスにおいて防御反応誘導活性を持つことが知られているフラジェリンN末端部分の保存された配列より作られたペプチド(flg22)は全く活性を示さないことが明らかになった。また、アラビドプシスにも同様に処理したところ、flg22部分を含むN末端側の断片だけに活性があり、C末端断片には活性が存在しないことが明らかになった。以上の結果から、植物におけるフラジェリン認識機構には植物種間における多様性が存在していることが示された。現在、その他の植物種についても検討している。
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増田 大祐, 仲下 英雄, 山口 和男, 西内 巧
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635
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は、麦類赤カビ病菌のFusarium属などが産生し、植物への感染過程で病原性因子として働くトリコテセンの植物での作用機構を解析する過程で、その1種であるT-2 toxinによって、AtNF-X1遺伝子が顕著な発現誘導を示すことを見出し、逆遺伝学的な解析を進めている。AtNF-X1は、ヒトのclassII MHC遺伝子のリプレッサーである転写因子NF-X1のホモログで、マウス、線虫、酵母、イネなど多様な生物種に存在し、1個のRing finger domainと7-9個のNF-X1 typeと呼ばれるZn-finger domainを有している。AtNF-X1遺伝子のT-DNA挿入変異株は、通常の栽培条件下では顕著な表現型を示さないが、T-2 toxinに対して高感受性になることを見出した。この変異株では、野生株に比べて、DNA結合domainであると思われるC末側の配列を欠いた短い転写産物が安定して発現しており、またT-2 toxinによる蓄積の増加も見られた。また、マイクロアレイを用いてT-2 toxin存在下における野生型と変異株の遺伝子発現の比較を行ったところ、AtNF-X1変異株では野性株と比較して、signal transduction(ex. receptor kinase), transcription(ex. WRKY), cell rescue, defense(ex. NBS-LRR)など防御応答に関わる遺伝子の発現に顕著な増加が見られ、AtNF-X1はこれらの 発現制御に関わるリプレッサーとして機能し、T-2 toxinにより引き起こされる防御応答の制御に関与している可能性が示唆された。
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仲下 英雄, 安田 美智子, 浅見 忠男, 吉田 茂男
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636
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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これまでに我々はブラシノライド(BL)処理が植物の病害抵抗性(BDR; brassinosteroid-mediated disease resistance)を誘導することをタバコ、イネ、アラビドプシスで明らかにした。アラビドプシスにおける作用機構の解析から、BDRは全身獲得抵抗性(SAR)の下流で働くNPR1タンパク質を介して誘導されることが示された。しかし、BL処理ではSARマーカー遺伝子の発現は誘導されず、BDRはSARとは異なる機構で誘導されていることが明らかとなった。
Pseudomonas syringae pv.
tomato DC3000の感染はPR-1の発現を誘導するが、BL処理により促進された。これは、BLが植物のprimingを誘導していることを示している。また、BDRはecotype Col-0とLandsbergには誘導されるが、エチレン非感受性ecotype WS-0とRLDには誘導されず、primingの効果も認められなかった。また、エチレンの生合成阻害剤AVGとAgNO
3を処理することにより、priming効果が抑制された。以上の結果から、BDRの発現にはエチレンが重要な機能をしていることが示された。
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梅原 洋佐, 陳 文莉, Md.Shakhawat Hossain, 前川 隆紀, 林 正紀, 小島 知子, 大友 量, 林 誠, 原田 久 ...
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637
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
マメ科植物は土壌細菌である根粒菌と相互作用を行って根粒という特殊な器官を形成し、共生窒素固定を行う。その過程を支配する植物側の因子を明らかにするため、マメ科のモデル植物ミヤコグサを用いて、培養細胞からの再生個体より、根粒菌との共生変異体の単離を行った。各変異体について戻し交雑後、遺伝分析を行ったところ18系統において3:1の分離比を示したことから、1遺伝子支配の劣性変異であることが明らかとなった。各系統について、目視による根粒形成の有無の観察に加えて、lacZラベル根粒菌を用いた感染過程及び、菌根菌感染の観察を行った。また、GifuとMiyakojima間の交配を行い、かずさDNA研で開発されたDNAマーカーを用いて遺伝地図上への位置づけを行った。近傍に位置づけられた変異体同士は相補性試験を行って、遺伝子座の関係を判断した。その結果、現在までのところnod-myc-1遺伝子座1系統、nod-myc+1遺伝子座4系統、fix-あるいはhist-myc+4遺伝子座8系統が確認された。
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加藤 丈幸, 吉崎 文質, 小林 一成
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発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々は、低分子量Gタンパク質NtRac3過剰発現タバコ(OE-Rac3)では、SA感受性の増高および病原菌(
Pseudomonas syringae pv
tabaci)接種により迅速なサリチル酸(SA)蓄積およびPR-1遺伝子発現が誘導されることを既に示した。NtRac3の機能をさらに検討するため、ドミナント・ネガティブNtRac3形質転換体(DN-Rac3)に病原菌を接種し、PR-1遺伝子の発現と病原菌の増殖を経時的に検討した。この結果、DN-Rac3ではPR-1遺伝子発現が遅延するとともに、有意に速い細菌増殖が認められた。以上のことから、NtRac3はSAの下流におけるシグナル伝達を調節する制御因子であると考えられた。さらに、下位葉に非病原菌(
P. s. glycinea)を接種し、上位葉におけるSA蓄積および酸性PR遺伝子の発現を経時的に調べ、OE-Rac3におけるSAR誘導を野生型のSR-1と比較した。この結果、SR-1には接種96時間後までいずれの応答も認められなかったのに対し、OE-Rac3では接種24時間後には既に上位葉におけるSAの蓄積およびPR-1遺伝子の発現が確認された。このことからOE-Rac3では、SAR応答が増高していると考えられた。現在、OE-Rac3のSAR応答増高が単にSA感受性に依存するのか、あるいは他の全身因子を介しているのかを検討中である。
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Mari Narusaka, Yoshihiro Narusaka, Motoaki Seki, Junko Ishida, Maiko N ...
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639
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
We examined the transcripts that showed changes among the ca.7000
Arabidopsis full-length cDNAs under biotic and abiotic stresses. The expression of 894 and 1554 genes was induced under biotic and abiotic stresses, respectively. Furthermore, the transctript levels of 541 genes commonly increased in
Arabidopsis plants treated with biotic and abiotic stresses. After inoculation with
A. alternata,
A. brassicicola and
C. higginsianum to induce a biotic stress, the transcript levels of 118, 858 and 142 genes increased in
Arabidopsis plants, respectively. By contrast, the expression of 740, 438, 605, 290 and 672 genes was induced by dehydration, cold, high-salinity, UV-C and CuSO
4 treatments for abiotic stress. We also examined the transcripts that showed changes among the ca.7000
Arabidopsis full-length cDNAs under ABA, SA, JA, ET (ethephon), paraquat and rose bengal-treatments. The results show that full-length cDNA microarray analysis is a powerful tool for identifying multiple stress-responsive genes.
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佐藤 真純, 荷村(松根) かおり, 千葉桜 拓, 吉川 博文
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640
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
我々はシアノバクテリア
Synechococcus sp. PCC7942株に
dnaK相同遺伝子を3つ(
dnaK1,dnaK2,dnaK3 )見い出している。これら3つの相同遺伝子のうち、
dnaK2, dnaK3遺伝子が共に必須遺伝子である事や、各蛋白質の細胞内の局在性の違い、熱ショックに対する応答の違いなどから、これらのDnaK蛋白質は細胞内で特異的な機能を担っている事が示唆されていた。今回、我々は各
dnaK の発現調節機構を解析する目的で、レポーター遺伝子を用い各種ストレス下での発現を調べた。その結果、強光、塩(NaCl)ストレスに対して
dnaK2 の発現量のみが一過的に増加するという応答が見られた。さらに
dnaK2 のノーザンブロッティングによる解析の結果、
dnaK2 転写産物の蓄積量は強光、熱ストレスに対して15以内に最も増加する一方、塩ストレスでは遅く、複数段階にわたる応答が観察された。またプライマー伸長法による解析の結果、
dnaK2の転写開始点は複数存在する可能性が示唆された。これらの開始点から予想されるプロモーター配列は大腸菌の主要シグマ因子や熱ショックシグマに認識される配列とはいずれも異なっていた。
dnaK2の上流には既に知られている熱ショック応答に働くDNAシスエレメントが見つかっていない。これまでに熱ショック応答への関与が示唆されている因子の破壊株を用いた実験結果も含め、この発現調節機構について考察する。
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下 哲平, 田中 仁, 吉川 卓, 荷村(松根) かおり, 吉川 博文
p.
641
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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シアノバクテリア
Synechococcus sp. PCC7942株には、3つの
dnaKホモログ(
K1,K2,K3)と、4つの
dnaJホモログ(
J1,J2,J3,J4)が存在している。DnaJはDnaKのパートナータンパク質で、4つある
dnaJホモログの中で
dnaJ3は
dnaJ1とともに必須遺伝子であり、
dnaK3とオペロンを形成している。また、DnaK3とDnaJ3はチラコイド膜結合型ポリソームに局在していることを当研究室で見出している。これらのことから、DnaJ3はDnaK3とともに、特異的な機能を持つことが示唆される。今回、我々はこのDnaJ3の機能的特異性を探ることを目的として変異解析を行った。DnaJ3の基質との相互作用に関与すると考えられているC末端非保存領域にPCRを用いてランダムに変異を導入した結果、制限温度である42℃で生育できない温度感受性変異株として、193番目のPheがLeuに置換したF193L株を取得した。さらにこの温度感受性変異株から複数の抑圧変異株を得ることができた。この抑圧変異株のマッピングの結果、PNPase(Polynucleotide phosphorylase)に抑圧変異がマップされている変異株を複数個得ることができた。現在この変異がDnaJの温度感受性を抑圧するメカニズムについて解析を行っている。
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津田 元, 小野 清美, 原 登志彦
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642
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
植物は生育するために光を必要とするが、過剰な光は光合成の低下や、延いては色素の破壊などを引き起こす。この原因となるのは、光合成や熱放散などの光防御で消費できなかった過剰エネルギーであると考えられている。
ミズナラ(
Quercus crispula)は北方林の主要構成種で、極相を形成する落葉樹である。林冠にギャップができるまでは林床の弱光条件下に適応して低木のまま成育し、ギャップができ日光が十分に得られる環境になると林冠まで成長する。このため、ミズナラは生育過程で劇的な光環境の変化を短時間で体験することになる。急激な強光の照射に対しては、Water-Water cycleやキサントフィルサイクルによる熱放散が過剰エネルギーの消去に機能していると考えられるが、ミズナラにおいてはいまだに明らかにされていない。また、北方林で生育するため展葉から落葉までの期間において、日中でも10℃以下の低温にさらされる可能性がある。
今回の実験では、当年生ミズナラ実生を人工気象器内で2段階の光強度(700μE、100μE)と2段階の温度(25℃、10℃)の組み合わせで生育させ、展葉から落葉までの光合成速度、過剰エネルギー量、カロチノイド含量、t-APXとs-APXの活性の変化を測定し、ミズナラ実生が強光かつ低温という過酷な環境下にどのように適応しているのかについて調べた結果を報告する。
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小野 清美, 江藤 典子, 原 登志彦
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643
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
植物の葉の老化の早さは、植物個体が生育している場所の光、窒素供給量などの環境要因によって異なっている。また、展開中の葉や実のように活発に成長している部分(シンク)は、葉の老化の早さに影響を与える。このように窒素や炭素のような資源が、個体にどれだけ取り込まれ、成長に利用されていくのかということは、葉の老化を考えるうえで重要である。強光低窒素になると葉に光合成産物の蓄積が見られ、このような条件では葉の老化が早くなる。一方、強光低温になると、光が過剰になり光ストレスによって、葉の老化が早くなると考えられる。ある一定の生育光が葉の老化に与える影響を考えるときに、生育温度や窒素供給量とのバランスを考慮する必要がある。 今回の実験では、北方林を構成する樹種で、一斉展葉を行うミズナラ(
Quercus crispula)を用いた。 2段階の生育温度(25℃、15℃)および2段階の生育光(100μmol m
-2 s
-1、700μmol m
-2 s
-1)を組み合わせた条件で種子から生育させ、老化の指標として、光合成活性や窒素量を、また、光ストレスの指標として最大量子収率および活性酸素消去系の酵素活性の測定を行い、同時に個体の乾燥重量の変化を調べた。個体の成長や光ストレスが、葉の老化にどのように影響を与えているのか調べた結果を報告したい。
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尾崎 崇一, 河野 尚由, Ghazi Hamid Badawi, 芦口 篤広, 山内 靖男, 田中 浄
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644
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
二酸化硫黄(SO
2)は化石燃料の燃焼によって発生する主要な大気汚染である。植物の葉によって吸収されたSO
2はアポプラストの水層に溶解し、亜硫酸イオン(SO
32-)が生成する。亜硫酸イオンには強い細胞毒性があり、RuBisCOの拮抗阻害、酵素のチオール基の化学修飾により、炭酸固定系などの代謝阻害を引き起こす(直接毒性)。亜硫酸イオンは葉緑体に侵入し、光化学系でSulfite-mediated chain reactionにより、自身は比較的無害な硫酸イオンに酸化されるが、その過程で大量の活性酸素を生成し、植物に強い障害を及ぼす(間接毒性)。ここでは、亜硫酸イオンを硫酸イオンに酸化させる亜硫酸酸化酵素cDNAをラット肝臓からクローニングし、植物に遺伝子導入し、二酸化硫黄無毒化植物の作出を試みた。
方法:ラット肝臓から亜硫酸酸化酵素の全長cDNAを単離し、植物高発現ベクターpBE2113にサブクローニングし、アグロバクテリウムを介して、タバコに遺伝子導入した。細胞質発現型と葉緑体発現型(RuBisCO small subunitのtransit peptide遺伝子を利用)の2種の形質転換体を作出した。
結果と考察:形質転換体のSOX活性を測定したところ、コントロールと比較して高い活性が得られた。また、亜硫酸耐性を検定したところ、コントロールの致死濃度以上の濃度下においても、形質転換体は生存した。
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早川 孝彦, 渡辺 美生, 肥塚 千恵, 宮坂 均
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645
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
私たちは、遺伝子組換えにより重金属高蓄積性植物を作出し、これを植物を利用した環境浄化(phytoremediation)へ応用することを目指している。ここでは、重金属ストレスに対して高い耐性を示す海産性緑藻(
Chlamydomonas sp.W80)由来カドミウム耐性遺伝子(
Cd404)のシロイヌナズナへの導入を報告する。
Cd404は、
Chlamydomonas sp.W80のcDNAを含むベクターで大腸菌を形質転換した中からカドミウム抵抗性を指標にして単離された。263個のアミノ酸からなる分子量29kDaのタンパク質をコードし、HisやAsp等の荷電アミノ酸の連なった特徴的な領域を持つ。35Sプロモーターで制御した
Cd404遺伝子をシロイヌナズナに導入し、
Cd404遺伝子発現個体を得た。これらの系統(T2)をカドミウム100~200μMを含むMS培地で生育させたところ、野生株に比べて明らかに強い耐性を示した。さらに、ホモ系統(T3)を選抜し、200μMのMS培地で30日間生育させたものについてカドミウム含有率と蓄積量を調べたところ、野生株に比べて3倍以上のカドミウム蓄積量を示す系統も見られた。これらの結果を踏まえて、遺伝子組換え植物を用いたphytoremediationの可能性について言及する。
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竹中 靖浩, 中野 早智子, 田茂井 政宏, 深溝 慶
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646
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
植物キチナーゼは、病原菌に対する溶菌作用をもつことから生体防御タンパク質としての研究が行われてきた。しかし、植物にはいくつかのキチナーゼアイソザイムが存在しており、その全てが生体防御に関与しているとは考えにくい。そこで本研究では、植物キチナーゼの生理機能を明らかにすることを目的として、シロイヌナズナの生育段階、器官、ストレス条件下における3種類のキチナーゼアイソザイム(
AtChiA、
AtChiB、
AtChiV)の発現様式を、活性およびmRNAレベルで比較した。シロイヌナズナは通常条件下で栽培し、各生育段階の各器官を用いてキチナーゼ活性の測定および全RNA抽出を行った。莢形成時の根と莢では、他の器官より高いキチナーゼ活性が確認された。さらに、アロサミジンにより、開花時の根、ロゼット、茎のキチナーゼ活性が一部阻害されたことから、これらの器官ではfamily18キチナーゼも発現していると考えられる。また、それぞれに特異的なプライマーを用いてRT-PCRを行った結果、
AtChiBは発芽時と莢形成時に、
AtChiVはすべての生育段階で多く発現していた。一方
AtChiAは通常の栽培条件下ではいずれの時期、器官においても発現が認められなかったが、傷害処理、エテフォン処理、NaCl処理、パラコート処理により発現が誘導されたことから、
AtChiB、
AtChiVとは異なる生理機能を有すると考えられる。
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若山 正隆, 上野 修, 大西 純一
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648
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
イネ科のC
4植物トダシバの葉身では、葉肉細胞(MC)と、通常のクランツ細胞である維管束鞘細胞(BSC)に加えて、葉肉組織の中に孤立したクランツ細胞としてdistinctive cell(DC)と呼ばれる光合成細胞が存在する。本研究では葉身以外の緑色組織にもDCが分化しているのか、またそれらの組織でC
3,C
4酵素がどのように発現しているのかを検討した。
葉鞘、稈、小穂軸の緑色組織でも葉身のように3種の光合成細胞が分化しており、DCの形態は1細胞のみが孤立したものから、複数のDCが集合したものまで多様であった。成熟したこれらの組織ではPEPCはMCの細胞質に、RubiscoはBSCとDCの葉緑体に、PPDKは主にMCの葉緑体に蓄積していた。しかし葉身に比べこれらの組織では各酵素の蓄積量が低かった。葉鞘、小穂軸ではBSCまたはDCから2層以上離れたMCが存在していたが、MC各層での光合成酵素の蓄積や葉緑体の構造には差がなかった。一方、直接光を受けない発達中の葉鞘の基部では、BSCだけでなくMCにもRubiscoが蓄積しており、MCのRubiscoは葉鞘の上部に向かうとともに減少し、反対にMCにおけるC
4酵素の蓄積が起こり始めた。以上から、発達中の若い葉鞘組織はC
3的な酵素発現パターンを示し、分化初期からRubiscoがBSCとDCに特異的に発現する葉身の場合と異なることが明らかになった。
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新谷 考央, 野口 航, 寺島 一郎
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649
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
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葉に非構造性炭水化物(TNC)が蓄積すると葉の光合成速度が低下することが知られている。現在、TNCの蓄積による光合成速度の低下は、葉に蓄積したグルコースにより光合成系遺伝子の発現が抑制されることが原因と考えられている。個体レベルでの糖の動きを考えると、成熟葉は光合成を活発に行い、光合成産物の余剰分を他の器官へと送り出している。一方、葉の発生初期はその構成、維持コストに見合うだけの光合成を行なうことができないので、他の光合成器官から送られる光合成産物に依存している。従って、葉の糖利用の変化にともないTNCが光合成に与える影響も異なっているはずである。Furbank(1997)の方法を改良し、初生葉が様々な発生段階にあるインゲンに5日間糖を与えることで初生葉のTNC含量を増加させ、光合成機能の変化を調べた。
糖を与える処理により、初生葉のTNC含量は約2倍に上昇した。葉の発生段階により葉に蓄積する主なTNCはグルコースからデンプンへと変化した。葉の発生初期には、糖を与えた処理個体と対照個体で光合成速度に差が見られなかった。一方、葉の展開途中から完全展開後にかけては、糖を与えた処理個体の光合成速度は、対照個体と比較して減少した。Rubisco含量も同様の傾向を示した。この結果は葉がシンクの時にはTNCによる光合成抑制はおこらず、ソースの時に光合成抑制をおこることを示唆している。
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須藤 恵美, 牧野 周, 前 忠彦
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650
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
トウモロコシではイネよりもCF
1、Cyt
fといった電子伝達因子の量が高かったが、C
4植物の電子伝達系はRuBP再生産とC
4 cycleの両方に機能する。そこで、トウモロコシにおいてRuBP再生産に機能する電子伝達因子の量を調べた。電子伝達因子が維管束鞘細胞(BS)ではRuBP再生産に、葉肉細胞(MC)ではRuBP再生産とC
4 cycleに機能することから、RuBP再生産に機能する電子伝達因子の割合を(BSに分配される電子伝達因子の割合)+{(MCに分配される電子伝達因子の割合)×(MCに分配されるNADP-G3PDH活性の割合)}とした。このとき、(MCの電子伝達因子のRuBP再生産、C
4 cycleへの分配比)=(MCのNADP-G3PDH、NADP-MDHによるNADPH消費量比)=(BSとMCのNADP-G3PDHの活性比)と仮定した。葉肉葉緑体と維管束鞘を分離、解析した結果、NADP-G3PDH活性はMC、BSに45:55、CF
1はそれぞれ44:56、Cyt
fはそれぞれ58:42の割合で見られた。これらの値から、トウモロコシの全CF
1、Cyt
f量のそれぞれ76、68%がRuBP再生産に機能すると計算された。それらを葉面積あたりの値で表す(CF
1R、Cyt
fR)と、CF
1R量、Cyt
fR量あたりのCO
2飽和の光合成速度は、それぞれイネにおけるCF
1量、Cyt
f量あたりのそれよりも高かった。以上より、トウモロコシの高いRuBP再生産能力は、RuBP再生産に機能する電子伝達因子の量からは単純には説明されず、さらに効率の高いものであると考えられた。
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三原 裕子, 寺田 彰子, 古本 強, 松村 浩由, 甲斐 泰, 泉井 桂
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651
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
PEPCはC
4光合成における初期炭酸固定を触媒する酵素である。トウモロコシPEPC(ZmPEPC)はL-リンゴ酸(MA)やL-アスパラギン酸(Asp)によってフィードバック阻害を受けることが知られている。今回我々は、部位特異的変異導入を用いて、アロステリック阻害を受けにくくなっている変異型酵素の作製に成功した。これまでの大腸菌PEPC(EcPEPC)のX線結晶解析の結果から、4つのアミノ酸残基がAsp結合部位であると推定されていた。本研究ではそれに対応するZmPEPCのLys835とArg894をGlyに置換した酵素を作製し(K835GとR894G)、活性測定を行った。その結果、K835G、R894GともにMAおよびAspに脱感作しており、最大でも30%程度しか阻害を受けないことがわかった。変異型酵素の最大活性や活性化因子の効果など、そのほかの性質は野生型とほぼ同じであった。このことから、ZmPEPCのLys835およびArg894はMAやAspによるアロステリック阻害に関与している残基であるということが明らかとなった。現在はZmPEPCのLys835およびArg894に相当するEcPEPCの残基(Lys773、Arg832)を同様にGlyに置換した変異型酵素を作製し、同様に阻害因子に対する感受性を測定することを試みている。
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田茂井 政宏, 森本 憲太郎, 宮崎 崇, 深溝 慶, 重岡 成
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652
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
[目的]これまでラン藻カルビン回路調節因子の一つとしてCP12に注目し、その分子特性を明らかにしてきた。その結果、高等植物など他の生物由来のCP12にはPRKおよびGAPDHとの結合に関与するループ構造形成に必要なシステイン残基が4つ存在するが、
Synechococcus PCC7942 CP12にはN末端側の2つが欠失していた。本研究では、この様な特異な構造の
S. 7942 CP12の分子特性および細胞内での生理機能の解明を目的とした。
[方法・結果]
S. 7942 CP12遺伝子をもとに、C末端ループ形成に必要な2つのCys(61, 70)をSerに変えたCP12変異体を作製し、野生型CP12とともにGAPDH, PRKに対する相互作用を検討した。野生型CP12は0.1 mM NAD
+存在下でPRK, GAPDHと結合したが、CP12変異体は同条件下でPRKとのみ結合した。このことからScCP12は他生物由来CP12とは異なる様式でPRKと結合していると考えられる。また、ScCP12遺伝子を破壊した
S. 7942変異株は、連続光照射下では野生株と同等の成育速度を示したのに対し、12h/12hの明暗条件下では明らかに成育遅延が認められた。さらに、変異株では暗条件下にRuBPの蓄積が見られたことから、CP12が暗条件下での炭素代謝制御に機能していることが示唆された。
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坂本 敏夫, 堀口 法臣, 石田 健一郎, 和田 敬四郎
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653
発行日: 2004/03/27
公開日: 2005/03/15
会議録・要旨集
フリー
陸棲ラン藻
Nostoc commune(イシクラゲ)は2つの特徴を持つ。ひとつは陸上での生活に適応し乾燥と直射日光の照射に耐えて生命を維持できること、もうひとつは、その学名が示すとおり、コスモポリタンとして南極大陸や中国の砂漠地帯などの極限環境を含めた地球上の広い地域に分布していることである。本研究では
N. communeの遺伝的多様性と生理的多様性について調べた。16S rDNAの塩基配列解析により、日本国内における
N. communeは、金沢型、大阪型および明石型の3つの遺伝子型に大別された。ラン藻のゲノム中に見られる反復配列をプライマーとして用いたRAPD(random amplified polymorphic DNA)解析によって増幅されたDNAのバンドパターンは、金沢型では採集地が異なっても同一であったのに対して、大阪型では一致しなかった。この結果は、金沢型は遺伝的に均一であるのに対して、大阪型はさらに細分化されることを示唆する。
N. communeの培養法を検討をした。南極産のSO-42株は液体培地で生育した。IAM M-13株は酵母エキスを添加した液体培地で生育させることができた。金沢型のKU002株は寒天培地でのみ生育し、寒天に含まれる成分が生育に必要であることが示唆された。
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