動物の循環器
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56 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
症例報告
  • 草刈 雄登, 岩崎 健太郎, 姚 静雅, 青木 卓磨
    2023 年56 巻2 号 p. 69-73
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    1歳,体重1.1 kgのトイ・プードル,去勢雄が,失神および呼吸停止を主訴に夜間救急病院を受診したところ,第3度房室ブロックと診断され,ペースメーカー植込み術(PMI)を目的に麻布大学付属動物病院に来院した。ジェネレータの皮下への設置が不可能であることから,心外膜リードを選択し,ジェネレータを肝臓右側の肋骨に設置した。術後に虚脱や失神は消失したが,新たに嘔吐がみられるようになった。ジェネレータが腹腔内で変位した時点で嘔吐が解消したため,腹腔内に設置したジェネレータによる幽門の物理的圧迫が嘔吐の主因と考えられた。超小型犬におけるPMIの際には,ジェネレータが移動しないような固定方法や,胃の膨満を考慮した位置決定が必要と思われた。

  • 輪内 敬三, 吉武 重徳, 廣浦 学, 吉加江 凌矢, 酒井 康二, 藤岡 崇伯, 藁戸 由樹, 馬場 敬志, 井口 和人, 安藤 崇則
    2023 年56 巻2 号 p. 75-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    An 11-year-old female poodle weighing 2.4 kg was referred to our hospital for cardiogenic pulmonary edema caused by myxomatous mitral valve disease about 1 month prior, since when it had been in and out of the hospital repeatedly. After receiving the diagnosis of mitral regurgitation stage C from the American College of Veterinary Internal Medicine, the patient was admitted to the hospital for treatment. After intensifying the drug therapy, Mitral valve plasty was planned. Since the patient weighed less than 3 kg, the 8 French cannula was difficult to insert; therefore, we decided to use a 14 G dialysis needle catheter as a substitute. The total extracorporeal circulation time was 133 min, aortic cutoff time was 84 min, aortic cutoff rate was 63.2%, and minimum rectal temperature was 26.6℃. No increase in perfusion pressure was observed when the target perfusion volume was achieved at the minimum or maximum rectal temperatures. This case demonstrates that the 14 G dialysis needle can be used as a blood-feeding cannula in small dogs. It is available in Japan, so it is expected to be a useful alternative for blood-feeding cannulas in small dogs.

  • 岸田 康平, 小路 祐樹, 神田 拓野, 岸田 藍, 橋本 淳史, 大塚 真子, 川北 智子, 平尾 礼示郎, 大下 航, 小田 愛, 多田 ...
    2023 年56 巻2 号 p. 85-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    A 13-year-old spayed female domestic short-haired cat presented with sudden onset of right forelimb lameness and dyspnea. Thoracic radiography revealed an enlarged heart and pleural effusion, and congestive heart failure and thromboembolism of the right forelimb were suspected. Echocardiography showed marked dilatation of both atria and loss of A wave in the left ventricular inflow velocity waveform and right ventricular inflow velocity waveform, despite normal ventricular structure and motility. In addition, electrocardiography confirmed absence of P waves and junctional escape or idioventricular rhythm, leading to the clinical diagnosis of unclassified cardiomyopathy and persistent atrial standstill. Postmortem examination revealed that the cat had persistent atrial standstill caused by atrial myopathy.

臨床ノート
  • 岡田 卓, 内田 雄太, 廣中 大資
    2023 年56 巻2 号 p. 95-100
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    症例はトイ・プードル,去勢雄,10歳で,呼吸数の増加を主訴に来院した。聴診にて左側胸壁心尖部に収縮期雑音Levine IV/VIが聴取された。胸部X線検査にて,左心系の拡大と肺門部から肺後葉にかけての不透過性亢進が認められた。心エコー図検査では,僧帽弁に肥厚と変形(粘液腫様変性)を認め,僧帽弁逆流,左房および左室の拡張が確認された。以上の検査所見から,僧帽弁閉鎖不全症による急性心原性肺水腫と診断した。症例の性格を考慮して静脈ラインの確保は断念し,フロセミド,ピモベンダン,ブトルファノールを筋肉内投与した。また,飼い主に抱えてもらいながら,100%酸素をフローバイにて吸入させた。治療開始から6時間後の胸部X線検査において,肺水腫が軽減し,呼吸状態も改善傾向にあったため,内服による治療に移行した。本症例にはピモベンダンを筋肉内に投与したが,有害作用を引き起こすことなく急性心原性肺水腫から離脱させることができた。

  • 平尾 大樹, 末松 正弘, 末松 弘彰, 町田 登, 福島 隆治
    2023 年56 巻2 号 p. 101-105
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    粘液腫様変性性僧帽弁疾患ACVIM Stage Dにて内科的治療中であった10歳のポメラニアンが,発咳後に奇声を発して倒れるとの主訴で来院した。ホルター心電図検査では,発咳後の失神発作に一致して洞停止が11秒間続いた後,心房細動が約1分間持続していた。この洞停止と発作性心房細動が発咳後の失神発作と時期を一にして発生していたことから,神経調節性失神(咳嗽失神)ならびに迷走神経性発作性心房細動と診断された。本例は,ホルター心電図検査が終了した翌日にうっ血性心不全による肺水腫をきたし,入院治療を施したが反応せずに死亡した。心臓の病理組織学的検査において,洞結節を含めた刺激伝導系に著変は認められなかった。

  • 和田 智樹, 藤原 彬, 町田 登, 森 拓也
    2023 年56 巻2 号 p. 107-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル フリー

    15歳の雑種猫が呼吸困難を主訴に来院した。胸部X線検査にて胸水の貯留が認められ,各種検査から右心不全に伴う胸水貯留と診断された。内科治療により一時的な改善は得られたものの,一般状態が漸次悪化し第1060病日に死亡した。病理学的検索において特に目立った病変は,右心系の心内膜にみられた顕著な線維性肥厚であった。右房ではほぼ全域にわたって中等度~重度に肥厚し,灰白色でまだら状を呈していた。同様の心内膜肥厚は,右房に比べて軽度ではあったが,右室の流入路でも観察された。一方,左心系では左室流出路を中心に大動脈弁を巻き込む形で,心内膜が軽度~中等度,一部では重度に肥厚していた。こうした心内膜病変は,組織学的に特徴的な2層構造を有しており,心内膜心筋型拘束型心筋症と病理診断された。猫の拘束型心筋症の病的機転は左心系に発生するのが一般的であるが,本例のように右心系に主座する例もあることが明らかになった。

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