Kanamycin (以下, KMと略す) を眼感染症に対して使用した報告は, 既に大石, 杉浦らによつてなされ, その優れた効果がみとめられている。
私達は今回, 一眼手術の術前無菌法処置の目的にKM眼軟膏が適するかどうかを検討した。結膜嚢は体外環境にあるおめ, 健常と見える者においても, 細菌は毎常のように存在する。大部分は非起炎性ものであるが, 時に起炎性のものもある。もし外傷で眼球壁が破られた場合, これらの菌が眼球内に侵入することが考えられる。眼外で非起炎性の菌も, 眼内に入ると病原性菌として振舞う場合がある。眼組織の中でも硝子体, 水晶体は血管を欠き, 感染に対して抵抗性に乏しく, 細菌にとつて好適な培地とさえなるものである。眼球内に感染が起つた場合, その眼の予後は絶望的であることが多い。眼手術, 特に侵襲が眼内に及ぶ場合 (内眼手術), 眼内に細菌を導入しないことはきわめて重要なことである。このために術前に結膜嚢を無菌の状態にしておくことが要求される。この処置を私達は内眼手術準備としての結膜嚢無菌法 (以下, 単に無菌法と呼ぶ) と称している。
以下に無菌法に用いたKM軟膏の効果を報告し, また数例の外眼部感染症にも試みた結果を併せて述べる。
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