1949年に細谷, 添田, 小松, 園田は,
Streptomyces reticuliまたはこれにごく近いspeciesに属する放線菌H-365株がストレプトマイシン類似の新抗生物質を産生することを見出し, この物質をレチクリンと名づけた。その際レチクリンは精製法, 抗菌スペクトル, 毒性, 定性反応などストレプトマイシンに酷似しているが, レチクリンはアルカリ分解によつてマルトールを生じないことと, ペーパークロマトグラフィーでストレプトマイシンと異なることを明らかにした。その後, レチクリンのタンク培養による生産, またレチクリンはスライドセルカルチュア法で人型結核菌に強く作用すること, モルモットの実験的結核症に対して著明な治療効果を発揮することを報告した。
1950年にいたつて, GRUNDY等, BENEDICT等は, それぞれ無関係に, ストレプトマイシン類似の新抗生物質を分離した。GRUNDY等の得た物質とBENEDICT等の得た物質は同じものと考えられるが, ことにBENEDICT等は詳細な研究をおこない, この物質の産生株を
Streptomyces griseocarneusと名づけ, この物質の化学的組成に関する研究をおこない, 仮定的構造式を提出し, Hydroxystreptomycinと命名した。
また一方において, 細谷, 小松, 添田はレチクリン産生株H-365株の菌体から抗カビ・抗酵母物質を結晶状に分離してこれをRotaventinと名づけ, またBENEDICTから梅沢博士に送られた
S. griseocarneusの分与を受け, その菌体からrotaventinと同一物質と推定される抗カビ・抗酵母物質を分離した。
この報告では
S. griseocarneusとH-365株の菌学的性状の比較, レチクリンとハイドロキシストレプトマイシンとの比較研究をおこない, 両者の化学構造について言及したいとおもう。
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