菌交代症とは, 抗生物質使用中に菌叢の攪乱交代が起り, 優勢となつた菌種によつて原病と同一臓器または他の臓器に感染がおこつた状態を意味し, WEINSTEINによる重感染症と同意義に解せられる。その発症機序については, すでにWEINSTEIN (1946, 1947, 1954, 1955), APPELBAUM等 (1948), SCHOENBACH (1949), HARVEY等 (1950), JACKSON (1951), WOODS (1951), 美甘等 (1951), LINSELL等 (1952), YOW (1952), MCCURDY等 (1952), BRISOU (1952), 堂野前等 (1952), 久保等 (1953), HOFFER等 (1954), 長岐等 (1954), 秋葉 (1954, 1955), FISHER (1955), 長谷川等 (1955) 等多数の研究者の報告がある。
MOOR1), HARIS2), 美甘3) 等は,
in vitroまたは
in vivoで, 抗生物質が
Candida属の発育を直接的に促進することをみとめ, それがカンジダ症発現の第1の要因であると主張したのに対し, WOODS4) 等, PAPPENFORT等5), LIPINIK6) 等, HUPPERT7) 等, 久保等8) はその直接作用を否定している。秋葉等9) は, カンジダ症の発症に及ぼす抗生物質の影響について
in vitroの実験をおこない, Peniciliin (Pc), Streptomycin (SM) およびChlortetracycline (CTC) の3種の抗生物質は, 少くとも血中濃度の範囲内では
C. albicansの発育になんらの影響をもたないことを確認した。また, 秋葉等10)はマウスを使用し, Pc, SM, CTC, Chloramphenicol (CP), Sulfaisoxazoleの投与によつて
C. albicans感染が助長されるという明確な所見は得られなかつたことを報告した。
著者は, X線照射を加えたマウスは
Aspergillus fumigatusに対する感受性が著るしく高まることを知ので,
Aspergillus感染が抗生物質投与つてどのような影響を受けるかについて検討を加え, 真菌感染に関する一連の研究をおこなつた。
抄録全体を表示