The Journal of Antibiotics, Series B
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8 巻, 9 号
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  • フェニール酢酸の1新微量比色定量法
    喜井 晴夫
    1955 年 8 巻 9 号 p. 387-390
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Penicillium chrysogenumのペニシリンG生産時に, フェニール酢酸 (以下PAAと略記) を前駆物質として用いると, 著るしくペニシリンGの生産量を増加する事が認められ, その添加時期, 方法, 量等については, 先人によつて多くの業績が報告されて来た。そして, ペニシリン醗酵培地中におけるPAAの定量的消長は, ペニシリンG生産に最良の醗酵状態を知る上に, またPenicillium chrysogenumのPAA代謝機構を知る上にも重要なことである。
    ペニシリンG生産時に, 培地に添加される前駆物質PAAの消長, 或いはその生物学的意義の研究に当つて, これを定量的に検討する必要があるため, 現在までに数人の著者によつて種々の研究がなされて来た。すなわち, SINGH,JOHNSON (1) はHIGUCHI, PETERSON (2) のTwo phase chromatographyを応用し, 青木, 谷口 (3) はPAAを培養液からトルエンで抽出して, その酸度をアルカリにより滴定し, 古武, 笹井 (4) もほぼ同様におこない, 石間, 丹野 (5) はベンゼン抽出後, アムモニウム塩とする重量法を報告している。
    比色定量法としては, 滝浦, 吉田 (6) がPAAをニトロ化したのち, 強アルカリ性にして生ずる黄色を定量すること, 植村 (7) はPhenylethyl alcoholの定量法の報告において, PAAがニトロ化したのち, ヒドロキシルアミン, アムモニア水によつて紫色に呈色することを述べている。磯野 (8) は, PAAを特異的に酸化するPseudomonas fluorescensを用いてWARBURG検圧計によつて定量する1種の生物学的定量法を報告している。
    私は, なるべく少量の試料で微量のPAAを生物学的な試料,殊に培養液中のPAAを定量するために, 1つの比色定量法を考案し, これでペニシリン醗酵培地中のPAAの消長の定量的研究を可能とし, 更にこの方法が体液, たとえば尿中のPAAの定量にも応用し得ることを明らかにした。
    本法はPAAを試料から抽出し, これを低温でニトロ化したのち, アムモニア, アルカリ性の下にヒドロキシルアミンを作用させて発色, 比色するもので, 後述するように, この方法によれば殆んどPAAを特異的に定量し得るものである。なお, 最近S. C. PAN & PERLMANも私と同様の方法によるPAAの比色定量法を発表している。
  • 第1報新抗生物質Brevolinについて
    元村 裕
    1955 年 8 巻 9 号 p. 391-400
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    本研究の概要は, 昭和28年9月19日第23回日本抗生物質学術協議会関西支部研究会, 及び昭和30年4月5日第28回日本細菌学総会において発表し, 一部は速報として, J. Antibiotics, Ser. A. 7 (1): 25, 1954に英文で報告した。
    放線状菌の産生する抗生物質の探索に関して, 現今までに非常に多くの業績があるが, 有芽胞細菌の産生する抗生物質, 殊に抗結核性を示す物質についての報告は少い。私は約3,000種の有芽胞細菌のスクリーニングテストをおこない, その中から抗結核性をもつB.brevisの1新株を見出し得た。
    有芽胞細菌の産生する抗生物質のうち, B.brevisの産生するものとしては, Gramicidin(1)(2)(3)(4), Tyrocidin(3)(4), Gramicidin S(5), Brevin(6), Gramicidin J (7) 及び安斎等の抗生物質 (8)(9) のみである。私の分離したB.brevisの産生する抗生物質を比較して見ると, これらのいずれとも異なり, 全く新らしい物質であると判断し得るに至つたので, これに対し'Brevolin'という名称を与え, その生物学的, 化学的研究をおこなつた。
  • 金沢 裕
    1955 年 8 巻 9 号 p. 401-405
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    細菌の化学療法剤に対する感受性測定法として種々の方法がおこなわれているが, Paper discまたはTabletを使用する平板拡散法は, 厳重な無菌的操作を要せず, 手軽に施行し得られるので, 臨床的に広く用いられている。これらの方法は,その創始者LUND等1) の記載及び使用説明書の範囲では, 感受性の程度を推定するに止り, 定量的測定についてはふれていない。
    化学療法剤の体液中濃度は, 薬剤の種類, 投与量, 投与法 (経口, 注射, 局所使用等) の差によつて, また感染の部位 (血中, 尿路, 膿瘍等) によつてもかなりの開きがある。したがつて, 薬剤の有効性を正しく推定し, 適当な薬剤を選択し, その使用法を定めるには, 起因菌の薬剤感受性を或る程度定量的に知ることが必要であろう。宮村2) 3) はCup法における抗生物質の拡散理論式を提唱し, それに基づいた感受性の定量的測定法を報告した。私4) 5)はSensitivity Tablet (Roskilde) またはSensitivity Disk (昭和) を用いる測定法について, その実験成績に及ぼす条件を検討して, 次の結果を得た。(1) 培地pHの差異によつて阻止帯の長さが異なる。(2) 培地の量, すなわち培地の厚さによつて阻止帯が影響される。(3) 細菌の発育速度または発育型式の差異によつて生ずる感受性値と並行しない阻止円のバラツキを少なくするため, 培養前6時間以上放置する必要がある。(4) Penicillin, Dihydrostreptomycin, Chloramphenicol,Chlortetracycline,Oxytetracycline,Sulfathiazoleについては,阻止円直径と最少発育阻止濃度の対数の間には, ほぼ直径関係が認められる。(5) Colistinは他の薬剤と異なつた拡散型式を呈し, 阻止円の大きさから感受性を推定することの不可能な場合があり, 阻止円の大きさと感受性値の間に充分に相関関係が見られるように, Discの薬剤含有量を適当に決定する必要がある。(6) 平板中の薬剤拡散起点と考えられるDisc直下の寒天層の薬剤濃度は, Disc静置後13~22時間の間は比較的一定している。
    以上の実験結果にもとづいて, あらかじめ感受性の決定された標準菌株を使用する感受性の定量的測定法について報告した。このたびは, 更に操作を簡単にするために, 各薬剤ごとに阻止円の大きさと最低発育阻止濃度の関係を検討し,阻止円の大きさから感受性値を直接計測する標準曲線法について実験をおこなつたので報告する。
    既にTUNEVAL6), ERICSSONはPaper discを用い, 3時間室温放置, 18時間培養後の阻止円直径からDiagramによつて最低発育阻止濃度を測定する方法について報告しているが, そのほかの実験条件にはふれていない。
  • 丸田 芳樹, 田中 勝宣
    1955 年 8 巻 9 号 p. 406-408
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Streptomyces griseusによるStreptomycin醗酵においては, 主要生産物であるStreptomycinとともにMannosidostreptomycinが生産される。また, 同時にS.griseusはMannosidostreptomycinaseを生産し, 本酵素作用によつてMannosidostreptomycin (以下SM-Bと記す) をStreptomycin (以下SM-Aと記す) に分解する。本酵素に関する研究としては, 1948年にPERLMAN & LANGLYKKE (1) 及びEMERY & WALKER (2) の報告があり, 本酵素の工業的利用に関する特許の類も見られる。
    著者等は, 本酵素の調製法及び性質に関する実験をおこない, 2, 3の知見を得たので報告する。
  • 束村 道雄, 鈴木 鐐三郎, 君野 徹三
    1955 年 8 巻 9 号 p. 409-414
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulfonamides (Sulfa剤) の薬剤耐性発現阻止作用については, KLEIN & KIMMELMAN(1) (1947) がStaphylococcus aureusについて, sulfadiazineがstreptomycin (SM) のsynergistとして有効であり, 且つSM耐性発現の阻止に有効であることを報告している。次いで日置(2) (1950) は, sulfathiazoleの互変異性体と考えられるSulzolinとSMとの併用によつて, 人形結核菌のSM耐性の出現が阻止されたと述べている。また, INAH耐性阻止について君野(3)(4) (1954) は鳥型結核菌についてSM耐性及びINAH耐性の発現阻止を種々の薬物について検討し, sulfathiazoleが最も有効であると報告した。以上の報告はすべてin vitroの成績であるが, 日置及び君野の報告はsulfathiazoleの1濃度のみを使用しているので, 次のような問題が考慮される。
    (1) Sulfa剤のうちでsulfathialeのみが結核菌における耐性発現阻止に有効なのか, またはこの作用はsulfa剤全部に共通するものか。(2) たとえば,sulfathiazoleの耐性阻止作用はどのような条件で有効なのか。(3) これらの報告で使用された実験方法は液体培地の継代培養法であるが, この方法では単独で発育阻止を示すものは, SMまたはINAHとの併用によつて通常発育阻止が強くなる。従がつて, sulfa剤が特異的に耐性阻止作用をもつというためには, SMまたはINAHとsulfa剤の併用下でも十分発育し得る条件で作用を検討しなければならない。(4) Sulfa剤の耐性阻止の機作はどのようなものであるか。
    これらの点について検討するため,本報では次の実験をおこなつた。
  • 吉田 良二, 鶴間 美代治
    1955 年 8 巻 9 号 p. 415-416
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Leucomycin (以下LMと略) は北里研究所秦等によつて発見されたStreptomyces kitasatoensis HATAからつくられる抗生物質で(1), 葡萄球菌, 枯草菌, 溶連菌, 肺炎球菌, ジフテリア菌, 破傷風菌, ガス壊疸菌等のグラム陽性菌, 淋菌等のグラム陰性菌及びスピロヘータに強力に作用し, 百日咳菌, ブルセラ属, レプトスピラにも抗菌作用を示すが, グラム陰性腸内細菌には抗菌力が弱いとされ, また毒性は極めて低いことが認められており(2)(3), Erythromycin, Carbomycinに類似する(4) といわれている。LMは化学的純粋に抽出され(5), LM塩基と酒石酸LMがあり, 力価は遊離塩基は1,000mcg/ml, 酒石酸LMは730mcg/mlである。水に対する溶解性は, 遊離塩基は難溶性であるが, 酒石酸塩は易溶性で, いずれも安定な物質である。本剤は経口投与 (LM塩基の錠剤, 小児用としての懸濁用LM) 及び静脈内投与 (酒石酸LM) によつて用いられ, 静脈内投与は主としてRINGER液等の稀釈による点滴注入がおこなわれる。著者等は, 日本抗生物質学術協議会から分与された酒石酸LMを慢性胆嚢炎の1例に使用して, その臨床的経過を観察するとともに, LMの血中濃度及び胆汁中排泄濃度を測定し, 興味ある結果を得たのでここに報告する。
  • 細谷 省吾, 浜村 憲克
    1955 年 8 巻 9 号 p. 417-418
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
  • Bacitracin, Erythromycin, Leucomycin, Penicillinの家兎上顎洞吸収について
    高野 修
    1955 年 8 巻 9 号 p. 419-425
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
  • Bacitracin, Penicillinの家兎上顎洞吸収に及ぼす高温並びに諸併用物質 (Urethane, 抱水クロラール, 牛胆汁) の影響について
    高野 修
    1955 年 8 巻 9 号 p. 426-430
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    慢性副鼻腔炎の局所化学療法は, Penicillinから各種の新抗生物剤の応用へと発展しつつある現況にある。そこで私は第1報において, 健康家兎の上顎洞にBacitracin, Erythromycin, Leucomycin, Penicillinを注入し, 時間的に血液を採取して血清から鳥居氏溶連菌重層法によつて血中濃度を測定し, これらの抗生物剤が上顎洞から吸収可能であるかどうかを検討すると共に, 腹腔内及び皮下注入時と比較観察し, 次の結果を得た。
    これらの抗生物剤は, いずれも家兎上顎洞から吸収され, 吸収面積が比較にならないほど大きく, 且つ血管, 淋巴管に富んでいる腹腔内吸収に劣るとしても, Bacitracin, Leucomycinの場合のように, 皮下吸収よりも良好な結果を示す場合も認められた。
    以上のように, 上顎洞吸収が確認されたのであるが, 義であると思われるので, 今回は更に吸収促進因子について検討することとした。
    諸臓器からの各種薬剤吸収促進物質についての研究は, 古くから多数の学者によつておこなわれているが, 大腸内における諸種薬剤吸収促進物質の検討に関しては本学薬理学教室において多年に亘り, 灌腸に関する一連の研究として種々の業績が発表されている。すなわち, カルシウム剤の吸収について吉元 (44) は, 塩化カルシウムと胆汁または胆汁酸を併用灌腸すると, 大腸から多量のカルシウムが吸収されて, 家兎は中毒症状を発現すると述べ, 加藤 (45) はカルシウムの大腸内吸収は塩化カルシウムと葡萄糖との併用灌腸によつて促進されることを確認した。また, 近藤 (46) は, 抱水クロラール, Urethane, Phenobarbital, 硫酸マグネシウムは, それぞれ塩化カルシウムの大腸内吸収を促進するが, 抱水クロラールが最も顕著であるといい, 一本 (47) は有機 (及び無機) カルシウムの大腸内吸収実験をおこない, 胆汁併用灌腸によつて著るしく吸収が促進されるものは, 塩化カルシウムのみであると結論した。
    次に, アミノ酸の吸収について見須 (48) はGlycocoll並にTaurinは単独灌腸では吸収されないが, 単糖類, 2糖類, 塩化カルシウム, 麻酔剤(抱水クロラール, Urethane, Phenobarbital) との併用により吸収されると述べ, 同じく見須等 (49) はPolytaminの大腸内吸収は, 塩化カルシウムまたは牛胆汁の併用灌腸によつておこなわれることを確認した。また, 葡萄糖の吸収について見須 (50) は, アミノ酸, カルシウム剤, 牛胆汁, 麻酔剤の中の特定の物質2種以上を同時に併用灌腸すると, Glucoseの大腸内吸収が著明に促進されると報告した。パラアミノサリチル酸の吸収について関谷 (51) は, 牛ならびに豚胆汁併用灌腸によつて最も収吸が促進されることを実証した。
    Histamineの大腸内吸収については, 系統的な研究があり, 望月(52)はHistamineは単独灌腸では殆んど吸収されないが, 抱水クロラールまたはUrethaneと併用すると, 血中Histamine量は激増し, 家兎はショック症状を起して斃死することを認め, 松元 (53) は家兎胆汁, Taurochol-酸, Chol-酸, 尿素, チオ尿素, Hyren, Emulgen106の併用灌腸によつてHistamineは吸収されると発表した。Sulfa剤の吸収に関して土持 (54) は, 尿素, 抱水クロラール, 牛胆汁, Urethaneの併用灌腸によつて吸収が促進され, 促進作用の順は概ね上記の順であると報告している。
    Penicillinの吸収に就て八家 (55) は, Sulfa剤を混注すると病変部への移行は少いが, 血中有効濃度を高く, 且つ長時間持続させることができ, 局所に混注すると血中濃度は低いが, 角尾等 (56) は, Penicillinの家兎大腸内吸収促進物質を検索し, Urethaneが最も吸収を促進し, 血中濃度を高く, 且つ長時間持続させ得ることを確認した。
    諸種薬剤の大腸内吸収に及ぼす室温の影響に関する実験もおこなわれ, 加藤 (57) は塩化カルシウムの大腸内吸収は最も室温によ1つて影響され易く, 25.0℃ 以上では血清カルシウムは最高16.57mg/dlの増加を来たし, サリチル酸カルシウムも14.38mg/dlの増加を来たしたと述べた。また近藤 (46) は, 室温18.0~28.0℃ において, Histamineは殆んど吸収されないが, 30.0℃ 以上になると吸収されるといい, 森田 (58) も31.0~32.5℃ の室温で塩酸-Histamineが吸収されると発表した。
    ここにおいて私は, 上顎洞における吸収状態が室温の変化によつてどのように影響されるかを見るため, Bacitracin, Penicillinについて夏季に於ける高温時の実験をおこなつた。また, 角尾等が検討したPenicillinの大腸内吸収促進物質が上顎洞においてどのような態度を示すかを観察するため, PenicillinとUrethane, 抱水クロラールならびに牛胆汁の上顎洞併用注入実験を試み, 興味ある結果を得たので報告する。
  • 1955 年 8 巻 9 号 p. 431
    発行日: 1955/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
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