第2報においては, No.212株の生菌抗菌像と培養濾液並びに最終産物の抗菌スペクトルの食い違いを検討した結果, ストレプトスライシしン第2型 (黒屋)(以下ST
2と略す) に属する物質 (A物質と仮称する) と, 従来知られていない新物質と思われるB物質が培養液に産生されることを確めたことを報告した。
A物質については, 既に第1報にその性状の一部を記載したが, その後の研究によつて, 本物質はグラム陽性, 陰性両菌, 抗酸性菌, かび, 酵母類等に広範囲に強い抗菌作用を示すが, その精製法, マウスに対する遅延性の毒性等の各種の性状が梅沢の提唱するストレプトスライシン群物質, 即ち黒屋等のST
2と一致することを確めた。
一方, 本株の第1次スクリーニング並びにその培養濾液及び最終産物の抗菌スペクトルを, 放線菌抗菌性物質の分類についての黒屋等の広範な研究の結果にあてはめて見ると, 本株は同氏等のST
2を産生する菌株と考えられたが, 更に生菌抗菌像を詳細に追及したところ, 本株を寒天平板上に培養した時間の推移に伴なつて, その抗菌像が変化することが判明した。この関係は液体培養においても同様に存在し, 前記のST
2に属する物質 (A) に対蹠的な抗菌性をもつ物質 (B) が得られた。本報告においては, この両物質の培養条件, 精製法, 抗菌スペクトル, 化学的性状, 毒性等について記載する。
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