MURRAY, WEBBおよびSWANN (1926) 1) が発見した
Listeria monocytogenesは, 各種の哺乳類や鳥類と同時に, ヒトをも侵すいわゆる人獣伝染病の原因菌の1つである。ヒトにおける感染はNYFELDT (1929) が腺熱様の症状を呈した患者の血液中から発見したのが最初であるが, それ以来, ヒトにおけるリステリア症は, 主として欧米各地から報告されたのみで, 本邦ではまだその報告がなかつた。
ところが, 昨1958年, 伊藤, 佐久間, 内海および井畑 (1959) 2) は, 山形県下で脳膜炎の症状を呈した1小児の脳脊髄液から,
L. monocytogenesを検出し, 細菌学的にもMeningitis listericaと診断し得た1症例を報告し, 本邦にもヒトのリステリア症の存在が確認されるに至つた。したがつて, 今後, 本症の発生は充分予想されることになつたが, リステリア症の細菌免疫学, 疫学, 化学療法等に関しては未知の点が多く, 殊に, 本症に対する抗生物質療法は重要な課題の1つと考えられ, しかも, 検索の余地が多く残されている。余等は, 抗生物質の実際的応用に関する基礎的事項について検索を試み, 次の結果を得たので報告する。
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