放線菌の産生する抗癌物質のScreeningにおいて, HeLa細胞を使用して各濾液の示す細胞変性効果を観察することは, 含まれている有効物質の判定を容易にするばかりでなく, さらにその物質の精製にも利用されるきわめて簡便な抗癌物質試験系であることを異にする2物質の併用5, 6) を理論的に導いてゆくため, ことに既知の抗癌物質のいずれもがその高い毒性をもつことが知られている現状を考え合わせると, 重要な問題といえる。このような考慮のもとに, 既知の抗癌物質と教室で最近分離した抗癌物質21種についてそ, のHeLa細胞に対する作用機作を細胞学的に調べたのがこの仕事である。
仕事を進めるに当つて, 次のような方法論によつた。
(1) HeLa細胞は無染色のまま観察するほか, MAY-GIEMSA染色をおこない, 細胞学的変化を油浸で観察した。
2) 各物質について, その作用部位を決定するに当つては, 時間的な変化の追跡はさけ, むしろ濃度勾配をつけて一定時間後に観察し, 最小有効濃度附近でHeLa細胞のどの部位に変性効果を示すかを検討することとした。
(3) ただし, このような形態学的な変化のみから結論を下すことは危険と考えたので, この細胞がHVJの完全増殖を許す事実を利用して, 各種抗癌物質がこのウイルス合成をどのような態度で阻止するかを定量的にしらベ癌物質作用下, 抗のHeLa細胞の蛋白合成能の一端を窺うこととした。
(4) さらに, 以上の基礎的な実験結果をもととして, 2種の抗癌物質の併用効果をこの細胞の場でしらべてみたもちろん, 現在の趨勢としては, 担癌動物を用いて特に抗癌物質分布の相異という観点に立つて動物レベルで併用の研究が主としておこなわれているのであるが,
in vitroの簡単な条件下で細胞レベルの成績を固めることは今後多くの利用度を生む基礎的な実験と考えたためである。
以上, 4つの観点から進めた実験結果を整理してみて, 種々の新知見を得たと考えるので, ここに報告して批判をうけたいと思う。
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