日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第10回大会
選択された号の論文の152件中51~100を表示しています
ポスター発表1(思考・言語/発達・教育・学習)
  • Word fluency taskでの検討
    河村 民平, 森岡 周, 小林 康孝
    セッションID: P1-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    【はじめに】動詞には意志動詞と無意志動詞といった意図的動作の有無による分類がある.本研究では,ワーキングメモリ容量の違いと動詞操作の関係を検討した.【対象】右利き健常成人28名.平均年齢22.46±3.26.Reading Span Testにより,High群,Middle群,Low群に分けた.【方法】60sec以内に,刺激語(名詞)と関連がある動詞を出来るだけ多く答える.被験者には内的表象で関連付け可能である動詞の生成を求めた.【分析】(1)生成語数を独立変数とした1要因分散分析および事後検定を行った.(2)意志動詞および無意志動詞の生成語数比率に対し1要因分散分析を行った.【結果】(1)High群と他群の生成語数で統計学的に有意差を認めた(p<.01).(2)Low群がHigh群に比べ無意志動詞の生成比率が有意に多かった(p<.05).【考察】無意志動詞の生成語数比率の違いから,High群がLow群に比べ1人称的視点による動作の内的表象能力に優れていることが示唆された.
  • 望月 正哉, 内藤 佳津雄
    セッションID: P1-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    文を理解する時の心的シミュレーションでは,文中の対象物に特定の知識がある場合でも文全体が含意する内容に一致する知覚的情報が活性化されることが示されている。しかし,このことは身体との関連性の高い道具によってのみ検討されていた。そこで本研究では,顔や頭には近づけないで使う道具を含む行為文を用いて,行為文理解の心的シミュレーションによって活性化させる知覚的情報について検討した。対象物を使用する内容を含意する行為文を提示したあとに,文意に一致する写真と一致しない写真を提示し,対象物の照合課題を行わせた。その結果,文の内容と一致するような写真の反応時間が,文の内容と一致しない写真よりも有意に短いことが示された。このことから,文理解の心的シミュレーションでは,道具の特性に関わらず文意に一致する知覚的運動情報が活性化されることが示唆された。
  • 沖林 洋平
    セッションID: P1-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    本研究では,豊田(1989)やToyota(2007)の研究を踏まえて,記憶の自伝的精緻化効果に関する実験を行った。本研究では,記憶の自伝的精緻化効果に関連する変数として,潜在連合テスト(IAT)と情動知能尺度を取り上げることとした。IATの測定には,小塩・西野・速水(2009)が作成した紙筆版IATを用いた。情動知能尺度は,Toyota, Morita, & Taksic(2007)によるJ-ESCQを用いた。本研究では,記銘語として,情動価の高い語と低い語を設定し,記銘語の情動価が自伝的精緻化効果に影響を及ぼすかどうかを検討した。また,IATスコアおよび情動知能得点が記憶の自伝的精緻化に及ぼす影響についても検討した。本研究の結果,記銘語の情動価と自伝的精緻化効果の関係については,先行研究を支持する結果が得られた。加えて,IATスコアと情動知能が記憶の自伝的精緻化と関連した。
  • 千葉 元気, 都築 誉史, 相馬 正史
    セッションID: P1-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    この実験では,糖分の摂取が直感に依存したヒューリスティックベースの意思決定に及ぼす影響を検証するため,二つの文脈効果,魅力効果と妥協効果を用いた。またその生起メカニズムの探索のため被験者の眼球運動とネガティブ感情の測定を行った。文脈効果のため,2選択肢間の困難な選択は規範的に重要でない第3選択肢の存在により揺らいでしまう。これまでの研究では,事前のセルフコントロール課題により認知資源が消耗している際,魅力効果は高まるが,妥協効果は低くなるといった研究結果が示されてきた。また魅力効果は,トレードオフを知覚した際に生じるネガティブ感情からの回避のため生じると考えられている。我々はこれら研究結果を再現し,また二つの文脈効果の差異を検証するため眼球運動とネガティブ感情を分析した。
  • 有馬 比呂志, 中條 和光
    セッションID: P1-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    小学校2〜6年生を対象として,相手の情報に基づいて自己の記憶方略を最適化するという相互交流記憶システム(TMS)に基づく認知的分業の発達変容について質問紙調査により検討した。本研究では,2者間で役割を分担して遂行することで高得点になる事態を設定した課題を用いた。課題では,児童がペアとなって学校内にある物を覚え,記憶成績を他のペアと競うというストーリーを用いた。参加児には,登場するペアの一方の記憶方略に関する情報を与え,もう一方の児童が取るべき記憶方略について回答を求めた。明示条件(実験1)では,ペアの相手の記憶方略を直接提示し,もう一方が選択すべき方略を質問した。また暗示条件(実験2)では,相手がどのような方略を選択するかを推論するための情報を提示し,もう一方が選択すべき方略を質問した。その結果,TMSに基づく自発的な認知的分業が可能になるのは4年生以上であることを見出した。
  • 堀田 千絵, 花咲 宣子, 堀田 伊久子, 生天目 聖子, 重森 雅嘉, 杉浦 ミドリ, 岩原 昭彦, 八田 武志
    セッションID: P1-20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    本研究は、3歳児から6歳4ヶ月までの箸の操作と描画発達の遅延との関連を明らかにした。分析の結果、食具の利用機能が年齢水準に満たしていないばかりではなく、人差し指、中指の未分化と描画発達の遅延とに相関が認められた。全般的に発達の遅延が認められることからも保育上留意して支援を行っていく必要があることが示唆された。
  • 概念関連小テストを用いて
    皆川 順, 伴 浩美
    セッションID: P1-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    自由連想事態において反応語は新たな刺激となり、刺激語は事実上増加する。そのため単純な連想順位という尺度のみでは新たに連想された項目が、いかなる項目を刺激語として連想されたのか不明確であるという難点がある。本研究においては、皆川(2009)の実験結果を参考に、析出されたすべての項目に連想順位を書かせ、個人ごとの連想の構造を解明するとともに、後に実施された、刺激語に関わる小テスト得点との関連について検討を試みた。
  • 高橋 純一, 行場 次朗, 山脇 望美
    セッションID: P1-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    本研究では,健常者を対象とした自閉症スペクトラム指数(AQ)において,空間的形状の複雑さが視覚的短期記憶(VSTM)容量に及ぼす影響の違いについて検討した。空間的形状は,同等集合サイズ(ESS)により,単純(ESS4)と複雑(ESS8)として定義された。予備調査におけるAQ得点(n=120)より,High AQ(n=11)とLow AQ(n=9)を抽出し変化検出課題を行なった。変化検出課題では,様々な傾きをもった線分が,300,500,900msの提示時間により反復提示された。結果から,提示時間が長い条件(900ms)において,Low AQではESS4の方がESS8よりもVSTM容量が大きかったが,High AQではESS4とESS8の間に有意差は認められなかった。以上より,Low AQで認められるVSTMに対する空間的形状の複雑さの影響が,High AQでは認められないことが分かった。
  • 山口 剛, 藤田 哲也
    p. 59-
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    学業成績を上げようとしたとき,認知心理学や教育心理学は学習方略に注目してきた。適切な学習方略を使用することによって,良い学業成績が獲得できる関係が示されている。これらの知見の多くが質問紙調査によって示された。質問項目に対して回答する際に,回答者は自身の認知や行動を適切に判断する必要がある。つまり,メタ認知が必要不可欠である。しかしながら,テスト得点の予想について,メタ認知能力の低い参加者ほど自身の得点を高く予想し,また,実際の得点は低いという結果が報告されている。そこで,本研究では英語のテスト実施後の予想得点と実際の得点とのズレを回答してもらい,ズレの大きさを独立変数として,方略使用の評価得点が異なるかを検討した。本研究の仮説は,①予想得点が高い学習者ほど方略をよそ使用していると評価するが,②予想得点と実際の得点とのズレが大きい学習者ほど,学習方略使用得点を高く評価している,の二点である。
  • Bae Sungbong, Yi Kwangoh
    セッションID: P1-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    An experiment was conducted to see if morphological processing of S-K words can be enhanced through training. Thirty-six students were asked to memorize 20 rare words with word-level or morpheme-level definitions. Morpheme-level definitions were expected to make the words  semantically transparent more than word-level definitions. After two sessions of training, the go/no-go lexical decision task was performed for the words studied in the training sessions. The words trained with the morpheme definitions  were responded faster than the ones with the word definitions. The pattern of the mean error rates was parallel to that of mean RTs. In sum, the results suggest that studying words with the focus on morphemes contributes to making them more semantically transparent, and, as a natural consequence, improving their recognition.
ポスター発表2(認知神経科学/社会・感情/身体・比較/人格・臨床)
  • 重森 雅嘉
    セッションID: P2-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    ヒューマンエラーを事故が起こる前に発見するためダブルチェックを複数回行うことがある。しかし、複数人が作業に関与すると、単独で行うよりも個々のパフォーマンスが落ちること(社会的手抜き)が知られている。したがって、ダブルチェックにおける社会的手抜きの可能性を検討した。大学生を対象に、2つの誤字を含む文章校正課題を単独で行う条件(単独条件13名)と複数人で行う条件(複数条件、1回目:31名、2回目:29名、3回目:28名)で実施し、各回の平均誤字検出数を比較した。その結果、単独条件の検出数が複数条件の各回よりも多かった。また複数条件の各回の検出数には違いがなかった。これらの結果から、既にチェック済みのものを再度チェックする場合とこれからチェックするものがその後他者にチェックされる場合の社会的手抜きについて検討した。
  • 慣れた把持と不慣れな把持における把持位置
    山田 直樹, 藤田 貴大, 片山 正純
    セッションID: P2-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    我々は,3つの課題(視覚課題と持ち上げ課題とつまみ課題)における対象物の把持位置が異なっていることを報告した.視覚課題は見るだけで把持位置を答える課題であり,持ち上げ課題は把持して持ち上げる課題であり,つまみ課題は把持後にテーブルから持ち上げない課題である.本研究では,把持位置が異なった原因を明らかにするために,使い慣れた指での把持(慣れ条件)と使い慣れていない指での把持(不慣れ条件)を用いて調べた.この結果,慣れ条件では,我々の従来研究と同様に,つまみ課題と視覚課題での把持位置が一致し,これらは持ち上げ課題とは異なった.しかし,不慣れ条件での持ち上げ課題では慣れ条件でのつまみ課題と視覚課題の場合と一致した.この結果は,Gonzalezら(2008)の結果から,慣れ条件と不慣れ条件でのそれぞれの把持位置計算には異なる2つの視覚経路(腹側経路と背側経路)が関与していることを示唆している.
  • 中心視条件と周辺視条件における把持位置
    酒井 雅哉, 藤田 貴大, 片山 正純
    セッションID: P2-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    我々は,課題要求の異なる2つの把持運動課題(持ち上げ課題とつまみ課題)における対象物の把持位置が異なっていることを報告した.持ち上げ課題は対象物を把持して持ち上げる課題であるが,つまみ課題は把持後にテーブルから持ち上げない課題である.そこで,本研究では,中心視条件と周辺視条件を用いることにより,把持位置計算に関与する視覚メカニズムについて調べた.この結果,視野を中心視に制限した中心視条件では,持ち上げ課題の把持位置がつまみ課題と一致するように変化した.一方,視野を周辺視に制限した周辺視条件では,持ち上げ課題の把持位置が持ち上げ課題と一致するように変化した.これらの結果は,持ち上げ課題の把持位置計算には主に周辺視系が関与し,つまみ課題では主に中心視系が関与していることを示している.従って,課題要求の異なる把持運動課題のそれぞれの把持位置計算の視覚メカニズムが異なっていることを示している.
  • 野村 郁也, 鮫島 和行, 植田 一博, 鷲田 祐一, 岡田 浩之, 大森 隆司
    セッションID: P2-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    新商品が次々と発売される消費社会において,既知の商品と未知の商品との間の選択は日常的に行われており,いずれを選択するかは消費者行動の重要な一面となっているが,このような選択に関する実験的研究はまだ少ない.本研究では,ミネラルウォーターを用いて,実験参加者にとって既知の商品と未知の商品との間の選択を繰り返し行い,その選択に関わる個人特性について検討した.さらに,商品選択を行っているときの脳活動をfMRI計測によって調べた.その結果,情報探索的な実験参加者ほど未知の商品を選択する割合が高くなる傾向が見られ,また,未知の商品の選択時には右前頭極に活動が見られた.これらの結果はともに未知の商品を選択することが情報を得るための行動であることを示唆するとともに,損得勘定に基づく判断であるとする従来のマーケティング現場の通念を変えうるものである.
  • 川崎 真弘, 北城 圭一
    セッションID: P2-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    ワーキングメモリは、主にイメージ操作に前頭葉の、保持に各感覚部位の関与が示唆されている。各脳部位は関連タスク時に情報伝達することが知られているが、その伝達仕様は明らかではない。そこで本研究は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて、ワーキングメモリ操作時に脳波の位相リセット伝搬から情報伝達の推定を試みた。10被験者は音声呈示された数字を暗算する聴覚課題と視覚呈示された図形を指示に従って心的に移動する視覚課題を行った。各課題をTMSで前頭、側頭、頭頂を単発刺激する条件と統制条件で行い、各条件間で正答率に差はなかった。脳波データを周波数解析した結果、前頭θ波(6Hz)と側頭、頭頂α波(10Hz)が聴覚、視覚ワーキングメモリ操作時にそれぞれ増加した。また前頭葉と各関連脳部位は位相同期を示し、TMSによる位相リセットにも差が見られ、この位相関係がワーキングメモリの操作に関与することが示唆された。
  • Okita Yoko
    p. 66-
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    This study examined the role of MEG (magnetoencephalography) components, M100 (component at around 100ms after stimulus onset) and M170 (component at around 170ms after stimulus onset)in kanji recognition. It is said that M100 reflects preliminary character analysis and M170 reflects complex character analysis. We scanned MEG signals while participants see Kanji, simplified Chinese characters, Traditional Chinese characters, and Korean characters passively.  The participants consist of Japanese, Chinese, Taiwanese, and Korean. M100 was observed in 49 out of 112 participants. In all participants the changes between M100 and M170 in the five stimuli were not parallel. The changing patterns varied greatly from individual to individual. There was no relation between changing patterns and mother languages. It appears that some kind of judgment on a character occurs in a very early, namely perceptual, stage of character recognition and there are grate individual difference in judging characters.
  • 加藤 由樹, 加藤 尚吾, 千田 国広
    セッションID: P2-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、携帯メールにおける返信のタイミングについて調査を行った。特に、携帯メールの「受信者」の立場から、返信メールのタイミングについて調べた。筆者らは先行研究で、携帯メールの送信者はすぐに返信を送れる状況でも意図的に返信を遅らせることがあることを示した。本研究では、受信者の側が、意図的に遅らせた返信についてどう感じているかを調べた。その結果、送信者の期待と送信者の受け止め方には差異があることがわかった。
  • 三雲 真理子, 上野 真弓
    セッションID: P2-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、ある事象に対する意思決定場面で、とくに親しいわけではない他者に自分の意見について反対されて不快な感情になっているときに、親友がその感情に共感してくれる場面・共感してくれない場面、そして親友が自分の意見に同調してくれる場面・同調してくれない場面の4通りの組み合わせ、さらに親友がその場にいない場面(親友からの感情的共感も意見の同調もない統制条件)を設定した。その結果、人生への影響力が大きい事象を決定しなければならない場面であれば、親しい他者からの感情的な共感よりも意見の同調に影響を受けやすく、人生への影響力が小さい事象を決定する場面であれば、親しい他者からの意見の同調よりも感情的な共感に影響を受けやすいことが示唆された。また、態度や表情で共感を示すだけでも意思決定の後押しになることも示唆された。
  • 伊師 華江, 行場 次朗
    セッションID: P2-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、特定の表情顔から真顔へと変化する表情戻り過程において、真顔 の認知に及ぼす文脈表情の影響をAffect Gridを用いて検討した。実験1では、真顔及び表情顔の静止画刺激(平均顔)を実 験参加者にAffect Gridで評価してもらい、感情意味 空間上でそれらの心理的布置を確認した。実験2では、表情戻り過程の動画刺激(平均顔)を用 いて動画で最終表示される真顔をAffect Gridで評価してもらい、感情意味空間 上での位置を分析した。実験1および実験2で得られた感情空間上で の刺激布置の比較結果を示し、表情変化を伴う真顔の感情印象の変容傾向を考察 する。
  • 図形のトレースと模写の分析
    杉島 一郎, 村上 郁美
    セッションID: P2-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    Williams症候群は、図形に対するトレースは出来ても模写が出来ず、見本から5cm離した描画も出来ない(Closing-in現象)報告されている(永井, 2008)。この現象は3・4歳の健常児にも見られるという。そこで本研究では、健常な3~5歳児111名に対し4つの図形刺激(正四角形・正五角形・正六角形・アンパンマンの顔)を見本とし、トレースさせる条件と模写させる条件、見本から5cm浮かせた位置のシートに描画させる条件の描画をさせ、描画成績の比較を行った。今回の発表ではトレースと模写の分析のみを扱ったが、3歳児では正四角形などのトレースもうまく出来ないが5歳になると可能になっていくこと、アンパンマンの顔は3歳児でもトレースも模写も可能であることがわかった。これらの結果から、幼児は概念をもとに描画しており、既存知識のない図形に対しては描画を失敗すると考察した。
  • 日吉‐谷口 和子, 川崎 真弘, 横田 達也, 福山 秀直, Vialatte Francois, Cichocki Andrzej
    セッションID: P2-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    我々はコミュニケーション時に相手の顔の表情や声の韻律によって感情を判断する。従来研究は個々のモダリティが感情に及ぼす影響を特定したものの、マルチモーダルな刺激における視覚と聴覚情報の不一致が感情判断に及ぼす影響を脳活動から評価した研究は少ない。そこで本研究は、人の表情(視覚刺激)と言語韻律(聴覚刺激)のマルチモーダルな刺激に対する感情判断時の脳波分析を行った。予備実験よりポジティブな感情(幸せ)、中立な感情、ネガティブな感情(怒り)の誘発が確認できた視覚・聴覚刺激を呈示し、被験者は「幸せor中立or怒り」の判断をボタン押しで行った。この課題を、「視覚のみ」、「聴覚のみ」、「視覚+聴覚」の条件下で行った。アーチファクト除去した脳波データについて、ウェーブレット変換を行った結果、各条件間で脳波パワーに差がみられることがわかった。
  • 自己名と感情の効果
    荒生 弘史, 平尾 沙央里, 諏訪園 秀吾, 岩城 達也
    セッションID: P2-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    相手の名前を呼ぶことは、相手の注意を引きつける働きを持つほか、感情的な意図を呼びかけに込めるなど、社会的関わりにおいて重要な役割を果たす。とりわけその感情伝達においては、伝達先(名前)の情報が同時に示されるという際立った特徴を持つ。本研究では、非注意の聴覚刺激として呈示される名前および同時に込められた感情に対する自動的反応について、事象関連電位を指標として検討した。実験参加者は、実験中、ビデオゲーム(音響効果なしのテトリス)に集中し、聴覚刺激は無視するよう教示された。事象関連電位のデータは、無視された名前刺激に対しても、200~300msの潜時において自他名の区別がなされていることを示した。さらにその後の潜時帯において、自己名において大きな感情効果が生じた。呼びかけにおける感情情報の独自性と、自他名の区別と感情の時系列処理に関して考察した。 
  • 中嶋 智史, 森本 裕子, 吉川 左紀子
    セッションID: P2-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    先行研究において,怒り顔で学習するよりも,笑顔で学習した場合に,顔の再認成績の高いこと(笑顔優位性効果)が示されている。しかし,この笑顔優位性効果は内集団の成員である自人種の顔記憶で特異的に見られる現象である可能性がある。そこで,本研究では,顔記憶における表情の効果が,参加者と同人種の顔と,他人種の顔の間で異なるか否かを検討した。実験では,まず,日本人参加者に対し,笑顔,もしくは怒り顔の日本人顔,および白人顔を呈示し,学習させた。 その後,一定の遅延をおいて,ターゲットおよびディストラクタを真顔で呈示し,再認させた。実験の結果,日本人顔においては,先行研究と同様,笑顔の方が怒り顔よりも再認成績が高かったのに対し,白人顔では,怒り顔の方が笑顔よりも再認成績が高かった。この結果から,顔記憶における表情の効果は顔の人種によって異なることが示唆された。
  • 視線・表情・魅力度に関する検討
    布井 雅人, 吉川 左紀子
    セッションID: P2-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,対象と対呈示される人物の視線方向・表情・魅力度を操作し、これら3つの要因が対象の選好に及ぼす影響を検討した。実験では、画面中央に呈示された人物(高魅力・低魅力)の視線が左右いずれかに変化し、喜びまたは嫌悪の表情を示した。その後,画面の左右いずれかの位置にターゲット刺激(日用品画像)が呈示され,ターゲット刺激への好意度評定を行った。その結果,視線を向けられたターゲットが視線を向けられなかったターゲットよりも好まれ,喜び表情と対呈示されたターゲットは嫌悪表情と対呈示されたターゲットよりも好まれた。さらに,高魅力人物と対呈示されたターゲットが低魅力人物と対呈示されたターゲットよりも好まれた。しかし,各要因間に交互作用は見られなかった。これらより,顔画像の視線方向・表情・魅力度の各要因が,顔画像と対呈示される対象への選好に独立に影響していると考えられる。
  • 藤田 理恵, 沖林 洋平
    セッションID: P2-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     特定の刺激語への接近・回避の身体的動作の効果が,IAT(Implicit Association Test)で同じカテゴリの未接触刺激語にも及び,対象概念に対する潜在的認知が変化することを検討した。本実験では対象概念と刺激語をDRMリスト(宮地・山,2002)より選出し,IATとカード分類課題(尾崎,2006)で異なる刺激語を用いた。まず,IATにより英語と電波の潜在的概念を測定した(Time 1)。続いて,刺激語の書かれたカードを条件に応じて,手前側(i.e.接近)あるいは向こう側(i.e.回避)に分類する課題を行った。その後,再びTime 1と同じIATを実施した(Time 2)。事前・事後の測定値を比較したところ,IATスコアに有意な変化はみられなかった。これより,用いる概念の相対関係や刺激語について議論した。
  • 上田 真由子, 和田 一成, 臼井 伸之介
    セッションID: P2-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    覚醒水準が極端に高くなりやすい緊急事態には、ヒューマンエラーが発生しやすいと言われている。しかし、緊急事態下の行動に関する研究は、ほとんどが事例分析や集団パニックに関するものであり、個人の緊急事態下の行動を実験的に検討した研究はほとんどない。そのため、本研究では、緊急事態の定義となる「時間切迫性」と「重大性」の2つを同時に設定した環境(高覚醒条件)を設定し、実験参加者に水道管ゲームを遂行させた。また,副次課題として時折画面中央にターゲットを提示し,できるだけ速く正確に反応するように求めた。 その結果,統制条件と比較して高覚醒条件では,クリック回数が増え,思考時間も短くなった。また,ターゲットに対するミス率とFA率も高くなった。つまり人間は,非常事態に「深く考えないとりあえずの行動」を積極的に実施しがちになり、また実施中の作業以外への事象に対して気づきにくく,間違って反応しやすいといえる。
  • 藤井 勉
    セッションID: P2-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
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    本研究は,潜在的測度であるImplicit Association Test (IAT; Greenwald, McGhee, & Schwartz, 1998) と顕在的測度である質問紙の両者を用いて,27名の参加者に対し,潜在的不安と顕在的不安を測定した。それぞれの尺度の得点によって,参加者を潜在的・顕在的不安それぞれについて高・低群に分割し,従属変数となるパーソナリティ (自尊心,抑うつ・不安) に対して2×2の分散分析を行った。いずれの分析でも交互作用は有意ではなく,本研究の結果からは,潜在的不安と顕在的不安に不一致を示す群に,際立った特徴はみられなかった。しかし,自尊心に対しては潜在的不安の主効果のみ有意になるなど,不安IATを用いた潜在的不安の測定も意義があると思われる結果が得られた。
  • 喜入 暁, 越智 啓太
    セッションID: P2-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,身体形状の魅力認知に及ぼす脚−身体比率(leg-to-body ratio; LBR)の影響について検討した。Sorokowski & Pawlowski (2008)は,ポーランド人を用いた研究において,ポーランド人の平均LBRの110%の値である,男性では0.5676,女性では0.5643が最も魅力的であるという結果を示している。そこで本研究では,日本人の被験者を用いて,日本人の平均LBRの110%(男性0.5054,女性0.4994)を上限とした刺激で同様のパタンが示されるかを検討した。40名の実験参加者にLBRの異なる男女各11パタンの身体形状のシルエットを呈示し,その身体の魅力度について7段階で評定させた。その結果,刺激性別に関係なくLBRが大きければ大きいほど魅力的であると認知された。また,LBRが小さい場合には男性刺激の方が女性刺激よりも魅力的であると認知された。
  • 山下 雅子, 丹藤 克也, 羽生 和紀, 小玉 陽士, 佐久間 隆介, 五十嵐 一枝
    セッションID: P2-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    注意欠陥多動性障害(ADHD)は成人になってもその特性が持続することが指摘されてきている。ADHDの特徴として抑制の不全(衝動性、注意の転導、思いつきや連想などによって目的的な行動が阻害されるなど)がしばしば観察される。ところで、既学習項目の検索によってそれらが属するカテゴリーの他の項目の記憶成績が低下する検索誘導性忘却(RIF)の現象は、検索によって関連する語の想起が抑制されるために生じるという仮説がある。ADHDにおいての結果は一貫していないが青年期の実験参加者においてADHD群のRIFが生起しにくいという報告がある。本研究では、ADHD様の自覚症状を訴える中年期の成人20名についてRIF現象の生起の有無を検討した。その結果、ADHD自覚群と健常群の両群においてRIFが生起し、ADHD様の自覚症状だけでは、RIFの生起の有無に影響しない可能性が示された。
  • 丹藤 克也, 山下 雅子, 羽生 和紀, 佐久間 隆介, 小玉 陽士, 五十嵐 一枝
    p. 80-
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,高い確率で虚記憶を生成するDRMパラダイムを用いて,注意欠陥/多動性障害(AD/HD)と同じような生活困難を訴える成人の認知機能を検討した。健常を自覚する群とAD/HDを自覚する群に,15語で構成されるDRMリストと9語で構成されるリストを提示し,リストごとに直後自由再生を求めた。同時に,再生した項目に対してRemember/Know判断を求めた。その結果,正再生率は15語リストより9語リストで高く,反対にクリティカル語の虚再生は9語リストより15語リストで高かった。しかし,健常自覚群とAD/HD自覚群とで,これらの傾向に違いは認められず,いずれの指標においても群間で有意差は認められなかった。これらの結果から,意味ネットワークの自動的な過活性やソースモニタリング・エラーの傾向は,AD/HD様の生活困難を訴える背景に関与していない可能性が示唆された。
  • 上田 紋佳
    セッションID: P2-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    不安障害患者や高不安者は,中性刺激と比較して脅威刺激の記憶成績が高くなるという記憶バイアスが示すことが多くの研究により報告されている(e.g., Mitte, 2008)。大学生などの健常者を対象に記憶バイアスを検討する場合,不安の測定は特性不安尺度による顕在的な測定によって行われる。そこで,本研究では,顕在的測定に加えて,潜在的測定である不安潜在連合テスト(IAT)の両者によって不安を測定し,感情語の記憶成績との関連を検討した。その結果,不安IATのみが記憶成績と関連し,特性不安との関連は認められなかった。
ポスター発表3(記憶①)
  • 漁田 武雄, 松永 春菜, 漁田 俊子
    セッションID: P3-1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    Balch, Bowman, & Mohler (1992) は,楽曲のジャンルとテンポを操作した実験を行い,自由再生におけるBGM文脈依存効果を規定するのはテンポと結論した。しかしながら,ジャンル×テンポの各属性に1曲しか選択されていないため,属性の効果と楽曲に固有の効果を分離できない。本研究は,4種類の楽曲(120bpm)を,160bpm(fast)と80bpm(slow)に変換して,学習時と同じ楽曲でテストするSS条件,学習時と異なる楽曲でテンポが同じDS条件,楽曲とテンポの両方が異なるDD条件を構成した。各群に大学生を25名ずつ割り当てた。24単語を5秒/項目で提示し,語連想を求めた。30秒後の自由再生において,SS条件はDS条件とDD条件のいずれよりも再生率が高く,SS条件とDS条件との間に有意差はなかった。本研究結果は,BGM文脈依存効果をテンポが規定しないことを示している。
  • 日隈 美代子, 漁田 武雄
    セッションID: P3-2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     意味的関連性を持たせた学習刺激を聴覚提示し,再認実験を行った.視覚提示を用いた先行研究において新項目に引き起こされた正答率と確信度評定の乖離が,聴覚提示でも起こるのかを調べた.実験参加者 (N = 129) は,カセットデッキから聴覚提示される24単語を学習した.学習セットには意味的関連性が持たせてあり,単語提示間隔は,単語の朗読開始から,次の単語の朗読開始までを1.6秒に制御した.5分間の保持期間後に48単語 (旧項目24単語,新項目24単語) の聴覚提示による再認判断と確信度評定を行わせた.再認判断と確信度評定には冊子を用いた.再認セットは,1単語につき1回の朗読で,単語の朗読開始から次の単語の朗読開始までの時間に,10秒の間隔を設けた.その結果,視覚提示での実験結果と同様に,学習セットと意味的関連性が高い新項目について,正答率と確信度評定の乖離が引き起こされた.
  • 酒井 徹也, 山本 智美, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P3-3
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    意図学習語の自由再生におけるビデオ文脈手がかりと学習時間効果の関係を調べた。提示速度(4秒/項目vs.8秒/項目;参加者間)×文脈(SCvs.DC;参加者内)の2要因混合計画を用い,42名の大学生をランダムに4群に割り当てた。個別実験で,実験参加者は28個の単語リストの提示を受け,各単語を意図学習した。ビデオは項目提示ごとに28種類の動画をランダムに割り当て提示した。30秒間の保持期間後に,口頭自由再生を行わせた。口頭自由再生中はコンピュータ画面上に,学習時に使用した動画のうち半数をランダムな順に複数回提示した(4秒条件:4回,8秒条件:2回)。文脈条件はテスト時に提示された動画と同じ動画上で学習した項目を再生した場合をSC条件の再生とし,テスト時に提示されない動画上で学習した項目を再生した場合をDC条件の再生とした。結果,提示速度と文脈の主効果が有意となり,交互作用は有意ではなかった。
  • 仙田 恵, 川口 潤
    セッションID: P3-4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
     自己に関連する情報は自己と無関連な情報よりも符号化されやすく検索されやすいことが知られている.これは,自己関連情報が忘却されにくいことを暗示している.しかしながら,記憶抑制研究では意図的な抑制コントロールによって特定の記憶を忘れることは可能と示されている.本研究では,Think/No-Think (TNT) パラダイム (Anderson & Green, 2001) を用いて,思い出されやすい自己関連情報を意図的に抑制できるのかについて検討した.参加者は自己関連づけ群/他者関連づけ群に割り当てられ,手がかり-ターゲット(i.e., 単語-写真)のペアの学習を求められた.Think/No-Think フェーズ後,最終記憶成績をテストされた.その結果,自己群・他者群の両群において,No-Think 項目の再生がベースラインより低下した.これは,意図的な抑制コントロールが自己関連情報にも働くことが示唆された.
  • 森田 泰介
    セッションID: P3-5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,未来の予定の想起に伴う主観的経験と,予定の特性との関連性について検討することであった。大学生に対し,3分間でできるだけ多くの予定を想起して記述することを求めた。また,記述された予定に伴う“何かしなければならない感じ”の強度や,予定の緊急性,重要性,実現可能性について評定するよう教示した。さらに,記述された予定が,“あまり現実的ではないが,できたら良いなと思っていること”,“しようと決めていること”,“したくはないが,しなければならないこと”の3タイプのいずれに当てはまるかの判断を求めた。実験の結果,未来の予定の想起に伴う主観的経験を規定する要因が,予定のタイプによって異なることが明らかとなった。
  • 池田 賢司, 北神 慎司
    p. 87-
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    正確なメタ理解には,対象レベルとメタレベルへの注意の分配が重要であるが,このような注意の分配には,文章への処理努力が影響することが示唆されている。そこで,本研究では,ワーキングメモリ (WM) と文章の連接性が,メタ理解の正確さに及ぼす影響について検討した。まず,実験参加者には,オペレーションスパンテストが実施された。その後,参加者には,説明文4本の読解が求められた。なお,連接性高条件では,連接性の高い文章が,連接性低条件では,連接性の低い文章が提示された。読解後,各文章の理解度を評定させ,最後に理解テストが実施された。実験の結果,連接性高条件では,WM容量の小さい読者の方が,メタ理解はより正確であった。これに対して,連接性低条件では,WM容量の大きい読者の方が,メタ理解はより正確であった。この結果は,文章への処理努力の違いが,読解中の注意の分配に影響していることを示唆するものである。
  • 意図存在表象と時機表象の連合強度が背景課題に与える影響
    花村 光貴
    セッションID: P3-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    展望的記憶とは,次回Aに会ったらお礼を言うといった,未来の特定の時点で特定の行動を行う意図の記憶である。従来の展望的記憶のモデルとして,意図した行為を実行するきっかけである事象の記憶表象(時機表象)と,行為の記憶表象とそれらの間の連合を仮定し,両表象と連合の活性化を以て展望的記憶の想起とみなすというものがある。この2つの表象に「するべきことが存在する」ことに関する記憶である意図存在表象を加えた3表象モデル(森田,2005)が新しく提案された。3表象モデルの意図存在表象の実証的証拠を得るため,時機表象と意図存在表象との連合強度を独立変数,並行して行う語彙判断課題(背景課題)の成績を従属変数とする実験を行った。結果,その連合の強度が弱い条件よりも強い条件の方が語彙判断の反応時間が短いことが認められた。この結果は3表象モデルで提案されている意図存在表象の妥当性を示すものであると考えられる。
  • 佐野 司, 川口 美紗季
    セッションID: P3-8
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    単語の連続提示後にその意味関連情報へのアクセスが低減する現象は意味飽和として知られる。本研究では,日本語オノマトペを用いてその効果について検討した。オノマトペを連続提示した後にカテゴリー判断と類似した手法の課題,オノマトペ‐動詞の間に修飾関係が成立するか否かを判断する課題が実施された。結果は,連続提示回数が多い条件で修飾関係が成立しない判断が有意に遅延したが,修飾関係のある判断速度は提示回数に関係なく一定となった。先行研究(例えばSmith, 1984)の結果と異なり,意味的関連性のない項目をリジェクトする反応にのみ意味飽和効果が認められた点から,オノマトペが持つ意味表象の特異性が示唆された。
  • 笛田 祐加, 箱田 裕司
    セッションID: P3-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    検索誘導性忘却効果とは、ある項目を繰り返し思い出すことで関連したその他の項目を忘れてしまう、という現象である。本研究では、感情的な自伝的記憶における検索誘導性忘却効果の検討を行った。その結果、ネガティブな自伝的記憶では検索誘導性忘却効果が生じたが、ポジティブな自伝的記憶では検索誘導性忘却効果が生じなかった。検索誘導性忘却効果が無意識的抑制に因り生じることをふまえると、ネガティブな自伝的記憶は無意識的に抑制され、ポジティブな自伝的記憶は無意識的に抑制されないことが示唆される。
  • 水野 りか, 松井 孝雄
    セッションID: P3-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    Baddeley, Thomson, & Buchanan (1975)は音韻の長さがメモリスパンに影響する語長効果を見出した。しかし,この実験で用いられた単語は音韻数が多いほど文字数も多かった。また,日本語母語者は文字処理で英語母語者より音韻コードへの依存度が低く形態コードへの依存度が高いことも明らかにされている(水野・松井・Bellezza, 2007)。そこで我々は,日本語母語者のメモリスパンは音韻の長さよりもむしろ文字数の影響を大きく受けるという仮説を立てた。実験では,モーラ数が3と一定で文字数が1,2,3文字の単語で日本語母語者のメモリスパンと読みの速度を測定した。その結果,メモリスパンは1・2文字の単語よりも3文字の単語の方が少なく,読みの速度は1・2文字の単語よりも3文字の単語の方が遅く,我々の仮説が検証された。
  • 向居 暁
    セッションID: P3-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、過去に出会った教師の名前を想起しやすくする要因を調査することであった。80人の学部学生が、小学校、中学校、高校で出会った5人の教師の名前を、頭に浮かんだ順番に、想起するように求められた。これらの想起された教師やその名前は、熟知度、感情喚起度、親しみ度、好意度、印象度、連想度、最近の想起頻度など、様々な変数において評定された。その結果、教師の名前の想起しやすさは、教師に対する熟知度、感情喚起度、印象度、連想度、教師の想起頻度、名前の接触頻度と有意な正の相関が見られた。しかしながら、教師の名前(名字)自体に対する指標とは有意な相関が見られなかった。本研究で得られた知見と先行研究の知見の類似点と相違点が議論された。
  • 神谷 俊次
    セッションID: P3-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    神谷(2011)は,夕食メニューを想起するプロセスが,人名同定処理(Bruce & Young, 1986)と同じように,系列的処理である可能性を示唆している。本研究では,このような夕食メニューの想起過程の系列性を確認することを目的とした。そのために,一週間前の夕食メニューを想起できた場合に,どのような過程を経て想起されたのかを詳細に報告するとともに,想起されたメニューで間違いないと確信する理由の記述を研究参加者に求めた。また,夕食メニューを想起できなかった場合には,どのような情報まで想起できたのかを報告することを求めた。記述されたデータが分析され,(1) 当該日の出来事を考えてその日を特定する (2) 夕飯前から夕食頃までの自分の行動を思い出す (3) 夕食の場所や夕食のとき一緒だった人を思い出す (4) 食べた夕飯のメニューを思い出す といった夕食メニューの想起モデルが提唱された。
  • 野畑 友恵
    セッションID: P3-13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    思い出そうと意図しなくても意識にのぼってきてしまう思考を無意図的記憶という。本研究は,日常生活で生じる無意図的記憶の特性として,その頻度と内容について調査した。参加者は女子大学生だった。無意図的記憶について説明し,その後,そういった記憶が起こる頻度について2つの質問で測定した。1つは,自分の感覚として無意図的記憶が起こる頻度をまったく起こらないから非常に起こるまでの7件法で評価させた。2つ目は,具体的な頻度を提示し,全くない,3年に1回程度,年に1回程度,月に1回程度,週に1回程度,1日に1回程度,1日に数回以上の7つの中から選択させた。また,無意図的記憶の内容について,感情(快,不快)と時制(過去,未来)に分け,その浮かびやすさをまったく浮かばないから非常に浮かぶまでの7件法で評定させた。その結果,無意図的記憶は,未来の快な出来事に関する内容が多いことが示唆された。
  • 中山 友則
    セッションID: P3-14
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では事後情報効果パラダイムを応用し,特定の情報源に関する項目の再認が,その後のソースモニタリングテストに及ぼす影響を検討した。事後情報効果パラダイムは出来事,事後情報,記憶テストの3段階から成り立つ。また,出来事はスライドやビデオで,事後情報は文章で呈示される。この形式の問題点として,情報の呈示形式が異なり,さらに情報量にも違いが生じやすいことが挙げられる。そこで,本研究では出来事を文章で呈示することにより,事後情報と情報源の呈示形式をそろえ,情報量を統制した上で,出来事や事後情報の項目について再認することが,その後のソースモニタリングにどのような影響を及ぼすかを検討した。出来事についての再認を行った場合はその後のソースモニタリングが困難となった。これまでの研究と併せて考えた場合,時間的に先行する情報の検索は,その後のソースモニタリングにとって不利益となりやすい可能性が示された。
  • 田中 孝治
    セッションID: P3-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    虚記憶とは,実際には起こっていない事柄を起こったこととして誤って思い出すことである。虚記憶を検討する実験手法として,DRMパラダイムと呼ばれる手法が確立されている。本研究では,DRMパラダイムで見られる虚再認が,漢字一字の刺激に対しても見られるかについて検証を加えた。ルア項目1項目とルア項目の関連項目15項目で構成されるリストを12種類作成し,DRMパラダイムに用いた。その結果,6種類のリストにおいて,関連項目が学習時に提示されると,関連項目が提示されない場合に比べて,後のテストにおいて学習時に提示されていないルア項目についても,学習時に提示されたという偽りの既知感を高めることが示された。この結果は,漢字一字の刺激に対してもDRMパラダイムによって虚再認が生成されることを示すものといえる。今後,本研究で虚再認が示されたリストが頑健なものであるかについてはさらに詳細な検証が必要である。
  • 波多野 文, 北神 慎司, 川口 潤
    セッションID: P3-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,ターゲット顔の印象,または部分的特徴の評定が後の再認成績に与える影響の検討を目的とした.先行研究では,ターゲットの特徴を言語記述することで,何もしない場合よりもかえって再認成績が低下する現象(言語陰蔽効果)が報告されている.人物の言語記述には文章の評定や,印象の記述,客観的特徴の記述など,多様な方法が考えられるが,これまでの研究ではどのタイプの言語化が特に言語陰蔽効果を生じさせるかはあまり検討されてこなかった.本研究ではターゲットの部分的特徴を詳細に言語化する条件,ターゲットの部分的特徴を記述した文章を評定する条件,ターゲットの全体的特徴(印象)を記述した文章の正確さを評定する条件,フィラー課題を行う条件の4条件を設定し,後の再認成績を比較した.その結果,部分的特徴を評定・言語化した場合の再認成績は,数値上は統制条件の再認成績よりも低かったが,有意な差は見られなかった.
  • :メタ認知が引き起こす基準のシフト
    三浦 大志, 伊東 裕司
    セッションID: P3-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    リベレーション効果は、再認刺激が認知的な処理を要する課題によって先行される時、その刺激をより「old」であると判断しやすい効果である。先行研究でメタ認知とリベレーション効果の関連が示されたが、メタ認知は実験的に操作されていなかった。そこで本研究では、「挿入課題を行うと直後の再認判断成績が上昇する」というメタ認知が判断の基準を厳しくし、逆リベレーション効果を生起させるかどうかを実験的に検討した。その結果、前半のブロックで挿入課題の直後に易しい再認単語を配置した実験群では、後半のブロックで逆リベレーション効果が生起した。一方前半で挿入課題の直後の再認単語の難易度を操作しなかった統制群では、後半で逆リベレーション効果は生起しなかった。本研究結果から、挿入課題が再認判断成績に及ぼす影響に関するメタ認知が基準をシフトさせ、リベレーション効果や逆リベレーション効果を生起させている可能性が示された。
  • 浅野 昭祐, 兵藤 宗吉
    セッションID: P3-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    画像優位性効果の説明理論の一つである概念的示差性仮説(Hamilton & Geraci, 2006)では,画像はその刺激に,記憶内の特定の項目(e.g., ウサギ)と他の項目とを概念的に区別するのに役立つ概念的示差性情報(e.g., 大きな耳)が示されており,そのような情報が記憶を促進することを仮定している。本研究では,画像に示された概念的示差性情報が記憶成績にどのような影響を与えるかを検討した。実験では,概念的示差性情報を含んだ画像,含まない画像(e.g., 耳のないウサギ),単語いずれかを5000ms呈示し,命名させた後に,テスト課題として一般知識課題と手がかり再生課題を与えた。その結果,概念的示差性情報を含んだ画像と含まない画像とで,記憶課題の成績に差はなかった。そのため,概念的示差性情報が画像に示されていること自体は,画像の記憶優位性に必ずしも必要でないことが示唆された。
  • 山本 晃輔, 豊田 弘司
    セッションID: P3-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/20
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,自伝的記憶の想起と情動知能の個人差との関連性を検討した。実験参加者に情動知能尺度である日本語版ESCQ(Japanese version of the Emotional Skills and Competence Questionnaire)を実施するとともに,快,あるいは中立な自伝的記憶の想起を求め,それぞれに記憶特性質問紙(Memory characteristics questionnaire)を行った。その結果,情動知能低群では快な自伝的記憶が中立な自伝的記憶よりも鮮明でかつ正確であった。一方,情動知能高群では,自伝的記憶の情動性による違いは見られなかった。これらの結果は,情動知能と自伝的記憶の想起との関連性を示唆している。
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