日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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35 巻, 3 号
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症例報告
  • 芳賀 剛, 芳賀 智子
    2015 年 35 巻 3 号 p. 155-163
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    歯周治療において,進行をコントロールするだけではなく,いったん失われた歯周組織を再生させることができれば理想的な治療に近づく.本症例は,右上が腫れていることを主訴に来院された56 歳の女性である.歯周組織検査にてプロービングデプス(PPD)が6mmを超える部分が複数認められ,広汎型中等度~重度慢性歯周炎と診断した. 垂直性骨欠損を伴う3 2 7 に対し,徹底した歯周基本治療の後,歯の自然移動,歯周組織再生誘導材を用いた歯 周組織再生療法,限局矯正,などの多様な方法により歯周組織の再生を試み,長期安定性の向上を図ったものである.経過観察は3年余りであるが,エックス線所見において,歯周組織の改善と安定が確認できた.
  • 堀 洋一
    2015 年 35 巻 3 号 p. 164-173
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    グループファンクションドオクルージョンを基礎に,生理的に調和のとれたオクルージョンがファンクショナリーディスクルーデッドオクルージョン(FDO)である.この理論に基づいて修復治療を行うために,患者固有の4 インチ球面を付与する診断用ワックスアップと計画用ワックスアップを行い,それを基にプロビジョナルレストレーションを作製した.これを装着した患者は,咬合調整もなく生理的に調和のとれた咬合状態を獲得し,快適さを実感した.FDO を考慮したプロビジョナルレストレーションには優位性があると考える.その方法について実際の症例を通して報告する.
  • ——長期経過と症例——
    橘 直哉, 橘 えりか
    2015 年 35 巻 3 号 p. 174-184
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    著者らは,歯痛・知覚過敏・顎関節症など咬合力による口腔機能障害の疑いのある患者に対し解析装置による検査,咬合採得用簡易スプリントを用いた咬合採得後,継続使用を前提としたスプリント療法による治療成績を報告した(第1 報).生体反応を含む口腔機能障害の発生には,多数の因子が関わり時間経過を要することから長期経過症例などで本療法の考えを補足する.提示するのは初診時年齢が4 歳から58 歳までの10 症例で,従来行っていたスプリント療法を中断した症例も含め報告する.これらの症例から,①軽度の初期症状に対応することの有用性,②成長発育期の咬合育成の必要性などが強く示唆された.
  • 東田 淳一郎 , 島田 卓也
    2015 年 35 巻 3 号 p. 185-194
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    臼歯部咬合崩壊症例に対し,プロビジョナルレストレーションから客観的な情報を取得することを目標に,機能運動時の評価にデジタル式顎運動計測装置を用い,科学的根拠のある診断を目指した.そして,デジタル式顎運動計測装置の分析をもとにプロビジョナルレストレーションの再評価を行い,咬合再構成を行った.咬合再構成を行うにあたり,プロビジョナルレストレーションから最終補綴物に移行していくが,その際,術者の経験や勘に左右される要素も多い.今回,臼歯部咬合崩壊症例に対し,プロビジョナルレストレーションから客観的な情報を取得することを目的に,機能運動時の評価にデジタル式顎運動計測装置を用い,科学的根拠のある診断を目指した.そして,咬合再構成を行い満足いく結果を得たので報告する.
  • 松岡 力
    2015 年 35 巻 3 号 p. 195-202
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    歯科治療において部分的な問題を主訴にした症例の場合において,長期的に調和された顎口腔系機能を捉えた治療を考慮すると,一口腔一単位で治療計画を考えなければならない事例に遭遇することは少なくはない.提示する 症例は,補綴物辺縁部の深い歯肉縁下う蝕と歯の動揺を認める4 部の治療相談を主訴とする患者であった.精査し た結果,同部は再補綴処置を行っても良好な予後は望めないと判断した.全顎的には,部分的な歯の位置異常による機能運動時の咬合機能の不具合と,歯周環境の問題もみられた.そのため主訴部の治療だけでなく全顎的な診査診断を行い,包括的治療計画を各専門分野の術者間で立て,う蝕部位の補綴修復処置と歯周環境の健康回復のための歯周治療,患者自身の清掃管理を考慮した位置異常の歯に対する矯正治療,また保存不可能な歯に対して抜歯前の骨量獲得のための挺出処置の後,インプラント補綴を行った.治療後,適切な咬合関係と歯周環境の改善と維持を獲得でき,患者の満足を得られたので報告する.
  • 井上 義久 , 橋岡 優, 藤森 茂路, 中村 典正, 松山 雄喜, 小町谷 美帆, 山口 正人, 笠原 隼男, 黒岩 博子, 黒岩 昭弘
    2015 年 35 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    無歯顎患者の治療において,特に下顎の総義歯を安定させるには長い臨床経験が必要である.筆者らは,合理的に総義歯を作成するには上下顎顎堤のランドマークを含む機能印象を採得し,解剖学的および生理学的根拠に基づいて下顎位を求め,咬合,発音,審美性および舌房の確保を考慮した人工歯排列と歯肉形成を行うことが重要であると考えている.経験の有無にかかわらず同一レベルの下顎の機能印象を得るために,下顎の旧義歯からランドマークを基準に完成義歯に近似した形態の複製義歯を作成して,ダイナミック印象採得を行う.そして,下顎安静位空隙と顔面計測値や発音機能など複数の方法で咬合高径を決め,ゴシックアーチ描記法にて中心位を決定し,前歯部では切歯乳頭,外貌,臼歯部ではPound やPayne の排列基準線を参考に人工歯排列を行うことで,合理的に総義歯を作成できた.
  • ―コーヌステレスコープの臨床的意義と価値の再考と提言―
    森本 剛 , 増田 裕次
    2015 年 35 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    ケルバーによってコーヌステレスコープ冠(以下コーヌス)が開発され,半世紀以上が経過した.コーヌスを使った治療は,補綴前処置・補綴後処置も含めて幅広く対応でき,適応症は非常に多様で,補綴前処置や補綴後処置を一連の流れ・考え方の中で扱うことができない他の補綴法とは一線を画すものである.しかし日本では,コーヌスが,治療後の生涯にわたって予知が可能で,一定の考え方や処置方針のもとで咀嚼機能を維持できる包括一貫治療システムとして位置づけられることはほとんどなかったように思われる.本論文では,日本ではあまり議論されてこなかった,コーヌスの本質的な臨床的意義,価値などを再考した結果,コーヌスは補綴前処置・補綴処置・補綴後処置の全てにおいて具体的かつ実践的な包括一貫治療システムとして使うことができるとの結論に達したので,報告 する.
  • 河原 昌二
    2015 年 35 巻 3 号 p. 226-228
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    失明のため,日中もベッド上での生活が長く続いていた盲養護老人ホーム入所中の82 歳の女性について,上下総義歯をリマウント調整し,咀嚼能力を回復した.その直後から大きく口を開けてかむことに意欲を見せ,後傾していた頭位が自然に復した.リハビリに意欲的になり,2 カ月後に歩行器を使って小走りした.動画の表情の変化が示すように,咀嚼の回復が生活の意欲を引き出し,歩行機能回復の大きな契機となった.
技術報告
連載
  • 1 顎関節症の疾患概念
    栗田 浩, 山田 慎一
    2015 年 35 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    本稿では,顎関節症の概念を概説した.顎関節症は,咀嚼筋ならびに顎関節に関連する障害を含んだ包括的な診断名である.咀嚼筋ならびに顎関節の疼痛,関節雑音,顎運動障害を有する患者で,他に鑑別可能な疾患に鑑別されない患者が顎関節症と診断される.顎関節症は種々の病態を含んでおり,咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,関節円板障害,変形性関節症などが含まれている.
  • 摂食嚥下リハビリテーションを始める意義と歯科医の責務
    植田 耕一郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
  • 1 非歯原性歯痛とは
    和嶋 浩一
    2015 年 35 巻 3 号 p. 238-242
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
  • プロセスモデルで考える 咀嚼嚥下リハビリテーション
    松尾 浩一郎
    2015 年 35 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
  • 海外歯科医師に対する新・顎咬合学推進講座
    河原 英雄, 増田 純一, 上濱 正, Henry H Takei , Perry R Klokkevold, 林 崇民, Anth ...
    2015 年 35 巻 3 号 p. 249-258
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
    ディスカッションに先立って河原先生は,多くの患者に生き甲斐のある暮らしを提供することを目的に,「嚙むことの大切さ」を掲げ,治療時には特に義歯の新製を行わず義歯を調節する,それも和食を箸にて食べる文化を尊重し, Balanced occulusion で前歯で咬める咬合を付与すると説明した.調整前後のビデオでは義歯が調整されるだけで,患 者の人としての行動に改善が見られ,目が開き,話し,笑い,歩き,歌を唄った.エビデンスは確立していないが咬合の回復によって運動能力の活性化や認知症の改善をもたらす.「転ばぬ先の杖」元気なうちに義歯を作りそれをうまく使いこなすことが大切であると説明.まさに歯科医療は暮らしを支える医療となったと提言された.増田先生から長寿社会を生き抜くためには,まず「健口」な子どもの口腔を作る必要があることが説明された.具体的には,3 歳までに咬合の基本と土台を習得し,う蝕はゼロ,4 ~5 歳までこれを維持,第一大臼歯の萌出が始まったら,3 ~4 年間う蝕に罹患させない.そして,下顎位を完成させる.その後1 年くらいで側方歯が萌出して永久歯に生え変わり,12 歳でう蝕なしを達成する.このようにして,健全な永久歯と咬み合わせを持った「健口」な状態で人生の旅立ちができるようになると提唱. それらの説明を受けて上濱理事長は「口の健康が元気に生きる源である.嚙んで食べて消化吸収して,元気な体を作ることは生涯の宝である」とし,前述の二方の先生の話を生理学的根拠からまとめた.的確な咀嚼で刺激が脳に伝えられ,脳血流も増加する.また,唾液とよく混和された食物は適切に消化管で分解・吸収され,全身の源となる.子どもに対しては,母乳で育て,正しい方法・バランスで離乳食を食べさせ,しっかり嚙ませてう蝕にしないこと.幼児期に自然の味覚を覚えることも生涯において宝である.成人期は口腔内の疾患を早期に治療し,よく嚙ませる.高齢期は残存歯を維持する,口腔を清潔にする,入れ歯でよく嚙める環境を維持する.これによって健康な頭と体を取り戻す.たとえ脳血管障害,認知症などの患者でも,徐々に嚙み応えのある食事を応用した「食事による総義歯リハビリテーション」を行おうと提言した. これらの学会活動は学会内・外問わず注目され,メディアからの取材をはじめ外人記者クラブによる記者会見は記憶に新しい.今回のディスカッションではこれらの講演を元に変わりゆく日本の歯科医療について語っていただいた.
  • 知らないでは済まされない院内感染対策 ハンドピースの滅菌を考える
    小澤 寿子, 中西 賢介, 藤田 憲一, 長谷川 寛, 須呂 剛士
    2015 年 35 巻 3 号 p. 270-278
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー
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