日本食品保蔵科学会誌
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34 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 石川 豊, 北澤 裕明, 桑名 陽子, 高砂 健
    2008 年 34 巻 6 号 p. 311-316
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本研究によりオウトウの最適包装設計手法の有効性について示すことができた。オウトウのMA包装試験を行うにあたり, 試料の酸素消費速度と使用する包装フィルムの酸素透過度をあらかじめ測定することにより包装条件の設定を行い, その結果, ほぼ設計どおりの包装内酸素濃度を得ることができた。この方法により, オウトウをプラスチックフィルムで包装し, 貯蔵試験を行う場合, やみくもに種々のフィルムで包装してみるというような必要がなく, 事前に包装条件を想定しておくことが可能となった。
    オウトウをフィルム包装後, 20℃で貯蔵し, 包装内ガス組成, 糖酸度などを測定した。オウトウ100gに対して, 厚さ18μmおよび36μm, 10×10cmサイズのLDPE袋で包装した場合, 包装内酸素濃度が1-2, 7-9%となり, 果柄の萎れに関する評価で良好な結果が得られた。
  • 片山 佳子, 内野 昌孝, 佐藤 広顕, 高野 克己
    2008 年 34 巻 6 号 p. 317-322
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    タイ産, ベトナム産および日本産の魚醤油66種を用いてそれらの化学組成を比較した。その結果, 魚醤油の性状が非常に多様であることを確認した。食塩濃度は14-28%であり, pHは5-8, 全窒素量1-6g/100mlと従来の報告と比べ, これらの値の範囲が広かった。また, 全窒素量が高い魚醤油はペプチド態窒素量が多かった。生体への機能が興味深いペプチドの含量は全窒素に対し全魚醤油の平均は32%であった。国別では日本産よりもタイ産, ベトナム産が高く, 亜熱帯から熱帯気候に位置するタイやベトナムは日本より高温で熟成させるため, プロテアーゼによる魚肉タンパク質の分解が高かったと考えられた。総遊離アミノ酸と代表的な旨味成分であるグルタミン酸との関係では総遊離アミノ酸量が多くなるに従ってグルタミン酸量は高い値を示し, その割合は平均で12%であった。一方, グルタミン酸の割合が20-30%と魚肉タンパク質の同組成値よりも高い値を示すものもあり, これらはグルタミン酸を添加している可能性が考えられた。
  • 松井 年行, 小杉 祐介
    2008 年 34 巻 6 号 p. 323-329
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本報告は, 収穫後14日間13℃と25℃で貯蔵されたナス果実の糖含量と関連するインベルターゼとショ糖合成酵素 (SS), ショ糖リン酸合成酵素 (SPS) 活性の変化について検討した。硬度と色の変化は, 貯蔵産物の品質指標として使用した。
    貯蔵された果実の可溶性インベルターゼ活性は, 貯蔵4日から14日まで25℃のものは13℃で貯蔵されたものよりも有意に高く, 一方, 細胞壁結合性の場合は, 貯蔵期間を通して25℃のものは13℃のものよりも高かった。ナスの細胞壁結合性の酸性インベルターゼ活性は, 25℃貯蔵開始8日でSS活性の22-25倍高かった。25℃貯蔵されたナス果実のSSとSPSは, 14日の活性が最も高かった。
    以上の結果より, ナス果実における13℃の低温貯蔵が, 可溶性及び細胞壁結合性の両画分のインベルターゼ活性を高温貯蔵と比較して抑制するため, ショ糖の分解を抑制するのに効果的であることが示唆された。13℃での低温貯蔵は, 果実に対して低温障害を起こさず, 果実のショ糖含量及び色や硬度の保持に効果的であることが認められた。
  • 北澤 裕明, 石川 豊, 中村 宣貴, 路 飛, 椎名 武夫
    2008 年 34 巻 6 号 p. 331-336
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    モモの輸送に用いられる包装を最適化し, 輸送振動による果実の劣化を防止するために, 段ボール箱内の底面中央部における隙間が振動による果実の回転に及ぼす影響を調査した。また, そのような回転の発生を軽減する方法として, フルーツキャップに粘着性を付与する効果について検討した。内部底面に隙間を有する段ボール箱にウレタンシートを敷き, その上にフルーツキャップで包まれた果実を詰めた一般的な包装形態においては, 実際の輸送レベルの振動によっても果実の回転が発生することが明らかとなった。しかし, 箱内底面の隙間を減少させた場合, 果実の回転は有意に減少した。さらに, フルーツキャップへの粘着性付与は, 振動による果実の回転抑制に有効であることが明らかとなった。そこで, これらの組み合わせが振動による果実の外観や硬度の変化に及ぼす影響を調査したところ, これらの処理により果皮変色の発生は軽減されなかったが, 毛じの剥離および果実硬度の低下は有意に軽減された。以上より, 箱内底面の隙間を減らし, フルーツキャップへ粘着性を付与することにより, 輸送振動により引き起こされるモモ果実における毛じの剥離や硬度低下の発生を軽減することができると考えられた。
  • 斎藤 美貴, 小嶋 匡人, 恩田 匠
    2008 年 34 巻 6 号 p. 337-341
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    Dumplings (Japanese Dango) with added mushroom (Shiitake, Eringi, Maitake or Mushroom) were produced by addition of 0.5% mushroom as dry matter to rice flour. After being kept at 25°C for 24 hrs, the hardness of the dumplings was measured. It was found that only Shiitake controlled the hardening of dumpling and the degree of gelatinization of starch measured by β-Amylase·Pullulanase (BAP) method declined gradually. These effects became more pronounced with increasing concentration of Shiitake. It was assumed that an enzyme in relation to saccharides contributed to the control of the hardening because the effect was not found when Shiitake was heat-treated. In the Shiitake dumpling, sugar composition changed and only glucose concentration increased slightly in process of time. From these results, it seemed that glucoamylase and other factors affected control of the hardening.
  • 松田 友彦, 山崎 雅夫, 富塚 登, 西澤 信, 鈴木 悌司
    2008 年 34 巻 6 号 p. 343-347
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    バイオマス資源として期待されるクマイザサの天然色素, イソオリエンチンの含量について生育環境との関連を検討した。
    ササ葉のイソオリエンチン含量と, 土壌の金属元素 (Na, Mg, Si, P, Ca, Zn, B), 窒素化合物量との間の関係は, 下層土壌 (深さ20-30cm) のリン含量と負の相関を示したものの, ほかの土壌成分との間に相関はみられなかった。イソオリエンチン含量には季節変動がみられた。また, チシマザサやミヤコザサに比べ, クマイザサのイソオリエンチン含量は低い値を示した。相対照度0%のササ葉ではイソオリエンチン含量は, 相対照度35%に比べて1/10と低い値である一方, 相対照度0-35%に2週間置いた葉では6.6倍に増加した。イソオリエンチン含量は照度と関連することが示唆された。
  • G. SZÉKELY, D. PECZE, L. SIPOS, V. LOSO
    2008 年 34 巻 6 号 p. 349-357
    発行日: 2008/11/25
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    本報告は, ハンガリーにおける過去10年間にわたる生鮮および加工した果実・野菜の消費について, ハンガリー統計局, GFKハンガリー世帯調査およびマクロ経済調査のデーターを解析した。これらの消費量は増減しながら長期的に増加したが, 最近の消費レベルは最新のFAO/WHOのデーターを元にした予想値と一致しなかった。ハンガリーでは, これらの消費が増加する社会的背景があったにもかかわらず, 散発的なキャンペーン活動しか行われなかったためである。その差は, 1994年-2004年における実際の果実・野菜の生産量と消費量の差よりも大きかった。野菜の消費構造は果実に比べより安定していた。加工品の消費量は果実と野菜では増加したが, これの増加は全体の消費に対して小さな効果しか示さなかった。家内加工品の比率は, すべての種類において全体と同様に減少した。この現状を打開するためには, 果実と野菜の消費拡大のための大々的なキャンペーンの繰り返しではなく野菜・果実とその製品へ接する小規模な機会が必要である。
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