海外で畜養され氷蔵状態で空輸される高級マグロが, 近年市場に多く出回るようになった。それらは, 脂肪分も高く年間を通して安定的に供給可能である等, 経済的に優れている。しかしながら, そういった新しい流通形態におけるマグロの品質に関して利用しうるデータは非常に少ない状態にある。本研究では温度, および経過時間等履歴を明確にしつつオーストラリアから空輸した直後のチルドミナミマグロのK値の測定を試みた。また, 大型魚であることから魚体部位による差異についても検討を行った。採取肉単位重量当たりのATP関連物質の総量は, 魚体各部で背肉赤身, 同白身, 尾部, 腹部の順で, それぞれ11.8, 9.7, 7.8, 5.9μmol/gで, いわゆる大トロとされる腹部では, 脂質が多いためにATP関連物質の総量が著しく低い値を示した。K値に関しては, 8.8-14.7%の範囲にあり, マグロの生食可能とされるK値の上限20%と比べて低い値を示すことが確認された。特に, K値は尾部で高い値を示すことも明らかになった。尾部は水揚げ前に最も活動の激しい部位であることから, ATPの分解が早く進むものと考えられているが, それを裏付ける結果となった。マグロのような大型魚では, 最も劣化の激しい尾部肉のK値を指標として使うことが, 品質および安全性を保証するうえで推奨される。
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