医学検査
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71 巻, J-STAGE-1 号
病理細胞症例特集
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第1部
  • 鳥居 良貴, 中村 純子, 石田 誠実, 中西 昂弘, 佐藤 元, 白波瀬 浩幸
    原稿種別: 第1部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 1-10
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    口腔の病理は,広義には,粘膜や骨など他の臓器と同様の軟組織疾患や硬組織疾患に加えて,顎骨に存在する歯や唾液腺から発生する病変が存在する。口腔は粘膜によって覆われており,粘膜中には味覚受容体や小唾液腺などの多数の付属器が存在しているが,悪性腫瘍(口腔癌)のほとんどは口腔粘膜を被覆する重層扁平上皮に由来する扁平上皮癌である。日本では年間約7,000人が口腔癌で死亡しており増加し続けている。唾液腺は解剖学的に大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺)と小唾液腺(口蓋腺,口唇腺など)に分類される。唾液腺に発生する病変は多岐にわたるが,大別すると炎症,化生・過形成性病変,嚢胞などの非腫瘍性病変と腫瘍性病変である。唾液腺には導管上皮細胞や腺房細胞に加え,筋上皮,基底細胞があり,腫瘍化に伴い種々の割合で増殖・分化を示すことから,唾液腺腫瘍は組織像が非常に多彩である。腫瘍は通常片側性に発生する。両側性に唾液腺の腫大がみられた場合はほとんどが非腫瘍性疾患であるが,悪性リンパ腫,ワルチン腫瘍,多形腺腫,腺様嚢胞癌では両側性に発生することがある。唾液腺腫瘍の約8割は大唾液腺,とりわけ耳下腺に生じ,大半は良性腫瘍であるが,小唾液腺に発生する腫瘍は良性よりも悪性の頻度が高い。

第2部
  • 鳥居 良貴, 中村 純子, 石田 誠実, 中西 昂弘, 佐藤 元, 廣田 誠一, 林 裕司
    原稿種別: 第2部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 11-36
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    食道の非腫瘍性病変は形成・形態・機能異常,循環障害,炎症に分けられ,食道裂孔ヘルニア,食道アカラシア,食道静脈瘤などが重要である。逆流性食道炎では,胃内容物の逆流により下部食道の粘膜が傷害され,食道胃接合部から連続的に重層扁平上皮が円柱上皮粘膜に化生することがあり,バレット上皮といわれる。悪性上皮性腫瘍として扁平上皮癌と腺癌がある。扁平上皮癌が日本では食道癌の90%以上を占める。腺癌のほとんどはバレット上皮から発生する。胃は食道と十二指腸との間に位置する嚢状の臓器で,食物の一時的貯蔵や攪拌だけでなく,胃液を分泌して消化するとともに,消化に関連する諸種のホルモンを出す。胃壁は消化管のほかの部位と同様に,粘膜,粘膜下組織,筋層,漿層の4層から構成されている。組織表面が局所的に欠損して陥落した病変を潰瘍という。粘膜に傷はあるが,粘膜下層にまでは傷が達していない状態を「びらん」と呼ぶ。ヘリコバクター・ピロリ胃炎は日本で最も多い胃炎で,慢性持続性感染により慢性胃炎にいたることが明らかになっている。胃の悪性上皮性腫瘍の大部分が癌腫(腺癌)で,悪性非上皮性腫瘍では悪性リンパ腫,消化管間質腫瘍などが発生する。大腸は盲腸,上行結腸,横行結腸,下行結腸,S状結腸,直腸の6つに区分される。大腸の粘膜は盲腸から直腸まで同様で,粘膜筋板は大腸粘膜に目立つ構造で,規則的な収縮により,粘液を分泌し糞便を押し出す。吸収上皮細胞と,粘液分泌性の2種類の杯細胞が存在し,その2種類の細胞が管状腺あるいは陰窩を形成し,粘膜筋板付近まで達する。大腸の病変としては,形態・機能異常であるヒルシュスプルング病,循環障害である虚血性腸炎,炎症性病変,腫瘍性病変(上皮性,間質性,悪性リンパ腫)がある。

第3部
  • 米田 操, 今野 和治
    原稿種別: 第3部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 37-48
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    膵臓は,膵管上皮(円柱上皮),ランゲルハンス島,腺房細胞から構成される内分泌と外分泌が存在する臓器である。脂肪も含まれることが多い。膵腫瘍は,膵管から発生する膵管癌(腺癌)が最も多く,次いでランゲルハンス島から発生する神経内分泌腫瘍,腺房細胞から発生する腺房細胞癌があげられる。その他,自己免疫性疾患(IgG4関連疾患),充実性偽乳頭状腫瘍,平滑筋肉腫,転移性膵癌,扁平上皮癌等が認められる。現在,これらの膵腫瘍の診断は,超音波穿刺吸引細胞診検査(EUS-FNA)が広く実施されている。メイ・ギムザ染色迅速簡易法,Pap染色,セルブロックによるHE染色,免疫組織化学染色を実施して確定診断する。膵腫瘍を診断する方法は,主に細胞診検査であり,一部,セルブロックによるHE染色,免疫組織化学染色による組織検査を実施する。よって膵腫瘍の細胞学的特徴及び組織学的特徴を詳細に熟知することが必須である。各染色態度を各疾患別に鑑別できるように知識を習得する。今後,膵腫瘍の特徴を捉えることをしっかり身に着け,鑑別診断できるように学習することが必要である。

第4部
  • 金山 和樹, 今野 和治, 米田 操
    原稿種別: 第4部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 49-59
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    肝臓は横隔膜の下に位置し,胃を覆うように存在していて4つ肝葉に分かれ,横隔膜と腹壁からの肝鎌状間膜で支えられている。消化器系で最も大きな臓器であり,成人男性では1から1.3 kg,成人女性で1 kg前後である。肝臓の構造は実質である肝小葉と支持組織である門脈域(グリソン鞘)と中心静脈で構成され,肝小葉の中央に中心静脈がある。肝小葉は肝細胞と内皮細胞,クッパー細胞,星細胞,ピット細胞の類洞細胞とからなり,門脈領域には樹状細胞が見られる。肝臓の機能はたくさんあるが,糖,脂質,蛋白質の代謝,胆汁の生成・分泌,解毒作用,薬物の代謝,ビタミン・鉄の貯留などがある。肝細胞では1日約600 mLの胆汁が生成され,胆道である肝内胆管,肝外胆管,胆嚢,総肝管を経由して十二指腸乳頭部に分泌されるが,十二指腸乳頭部のOddi筋により胆汁は一時胆嚢に貯えられる。食物が十二指腸を刺激するとコレシストキニンによって胆嚢が収縮し,Oddi筋が弛緩することで胆汁が十二指腸に排出される。肝臓はウイルスに感染することで変化をきたし腫瘍が発生することが分かっている。腫瘍の他,いろいろな疾患が発生するのでその基本構造や機能を理解することが必要である。

第5部
  • 森藤 哲史, 塚本 龍子, 伊藤 智雄, 西川 武
    原稿種別: 第5部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 60-96
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    上気道は一般的に鼻腔,副鼻腔,咽頭,喉頭,気管までの一連の気道を指す。呼吸部の延長上には副鼻腔があり前頭洞,蝶形骨洞,櫛骨洞,上顎洞に分けられる。鼻腔・副鼻腔領域の腫瘍性疾患として唾液腺型腫瘍,嗅神経芽腫,上顎癌およびリンパ腫などがある。肺は主気管支から徐々に小さな気管支へと分岐を繰り返し,終末気管支を経て最終的には呼吸細気管支から肺胞へと連なる。肺疾患は循環障害,非感染性または感染症による肺炎,腫瘍性病変の3つに大別することができる。そのなかでも肺の感染症はきわめて頻度が高く,死因の上位にあり,呼吸器疾患の中でも主要な位置を占める。肺の感染症は細菌,ウイルス,マイコプラズマ,真菌,原虫など非常に多種類の病原微生物によって引き起こされ,各種の特殊染色が診断に有用である場合が多い。肺腫瘍において,腺癌は最も多い組織型で肺癌の約60%を占め,女性に多く,末梢発生が多い。扁平上皮癌は約30%を占め,男性に多く,中枢発生が多いが,末梢型も増加している。小細胞癌は約10%,大細胞神経内分泌癌は3%程度を占め,両者ともに神経内分泌形態を示し,免疫染色では神経内分泌マーカーが推奨される。縦隔は上縦隔と下縦隔に分けられ,下縦隔はさらに前縦隔,中縦隔および後縦隔の3区域に分けられ,それぞれ好発する腫瘍は異なる。

第6部
  • 坂根 潤一, 馬場 聡, 岩淵 英人, 浜﨑 豊
    原稿種別: 第6部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 97-105
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    心臓の形と大きさは握りこぶしに似ており,重さは約300 g程度である。位置としては縦隔の下部に存在し,心嚢に包まれ,左右には肺がある。心尖部の先端は横隔膜の上に位置し,やや左下を向いている。前面はほとんど右心室で形成されている。心臓の大きな働きとしては血液を全身に送り出すポンプの役割であり,肺循環と体循環に区別される。肺循環は心臓の右側が担っていて,全身の静脈から戻ってきた静脈血が上大静脈・下大静脈を通って右心系に入り肺動脈幹に送られる。肺胞でガス交換されて二酸化炭素が除かれ,酸素が赤血球に受け渡された後,肺静脈を通って左心系に戻ってくる。体循環は左心系に戻ってきた血液が大動脈から全身組織に供給された後,血液は各組織で使用され静脈血となって右心房に戻ってくる循環である。1日に心臓の送り出す血液量は5,000 Lを超えるといわれている。その心臓から出た血液の循環は血管系が担っており,それは動脈系と静脈系に分類される。心臓が拍動すると血液は大動脈から細動脈を経て,組織の毛細血管床に至り,その後毛細血管から細静脈,静脈を通って大静脈から心臓に戻ってくる。血管の組織構造は毛細血管を除いて内膜,中膜,外膜の3層からなっているが,動脈と静脈ではそれぞれの構成要素の割合が異なっている。循環器疾患は炎症,変性,循環障害,腫瘍のあらゆる疾患が発生するためその病理を理解することは重要である。

第7部
  • 佐藤 初代
    原稿種別: 第7部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 106-144
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    リンパ組織は生体内の各所に分布していて,リンパ節,リンパ装置,リンパ濾胞として存在し免疫を担当している。リンパ節の組織構造は被膜に覆われ輸入・輸出リンパ管を有し,リンパ実質とリンパ洞から成る。リンパ装置はリンパ節にある組織周囲の被膜は無く,輸入・輸出リンパ管やリンパ洞もみられない構造をしていて,扁桃,気管支関連リンパ組織(BALT),パイエル板などの消化管関連リンパ組織(GALT),脾臓の白髄などが該当する。リンパ濾胞は全身の臓器,組織に状況に応じ形成される。その他にもリンパ組織を構成するリンパ球幹細胞の供給や未熟リンパ球の分化を担うリンパ装置として胸腺や骨髄がある。近年BALTやGALTは他の部位の粘膜も含め粘膜関連リンパ組織(MALT)として認識されている。これらリンパ組織から発生する疾患としては,免疫反応による変化や悪性リンパ腫などが重要である。人の造血は胎児の早い時期から始まり,卵黄嚢,肝,脾で行われる。胎生4か月ごろには骨髄で造血が始まり出生後も続く。出生時の造血はどの骨でも起こっているが,四肢の骨では成人期前半ごろまでに終わり,その後は主に骨盤や脊椎などに移行する。骨髄は脂肪細胞が多く存在する黄色髄と赤色髄に分類される。骨髄への栄養は主動脈が骨皮質から入って終末動脈となり,中心静脈に集まって静脈として出てゆく。造血器官の疾患として重要なのは貧血や白血病などである。

第8部
  • 山下 和也, 村雲 芳樹, 迫 欣二, 島田 直樹
    原稿種別: 第8部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 145-174
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    泌尿器は,体内を循環してきた血液を濾過し,不要な老廃物を尿として身体から除去するための経路であり,腎臓,尿管,膀胱および尿道をいう。下部の泌尿器の解剖学的構造(大きさと位置)は,女性と男性で異なっている。腎臓の疾患では,糸球体腎炎,腎硬化症,ネフローゼ症候群,腎盂腎炎,腎癌などの他に,糖尿病や膠原病などのように全身性疾患の症状として病態を示すことがある。尿路系では,膀胱炎,前立腺炎などの炎症性疾患の他,悪性腫瘍が見られるが,組織型では尿路上皮癌が多い。尿路上皮細胞は炎症を起因とする化生や反応性の核腫大が生じる。腫瘍性病変では内腔側に突出する乳頭状発育や基底膜を超えた浸潤性増殖を示す。

第9部
  • 山田 範幸, 石田 和之, 菅井 有, 浅見 志帆
    原稿種別: 第9部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 175-215
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    代表的な内分泌系器官には,下垂体,甲状腺,副甲状腺,上皮小体,副腎,膵臓ランゲルハンス島,卵巣,精巣,松果体などがある。通常,内分泌系器官では様々な生体内情報伝達物質を分泌し,それらを血流を介して運んで,遠隔の標的とする臓器に作用し,受容体と結合して発育や成長,自律機能,内部環境の調節などを行い,生命を維持している。疾患によっては,ホルモン過剰,ホルモン欠乏およびホルモン抵抗性を示すこととなり,それぞれのホルモンの作用機序によって特異的な症状を引きおこす(機能亢進,機能低下)。内分泌系の異常を示す要因には,自己免疫,腫瘍,感染症/炎症,酵素欠損,受容体の異常等がある。また,種々の内分泌腺に腺腫や過形成あるいは癌が多発する多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia; MEN)があり,MEN I型(Wermer症候群),MEN IIA型(Sipple症候群)およびMEN IIB型がある。時には複数の自己免疫疾患と内分泌疾患を合併した自己免疫多発内分泌症候群がある。

第10部
  • 加藤 智美, 安田 政実, 丸川 活司, 恩田 千景
    原稿種別: 第10部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 216-240
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    女性生殖器には,子宮以外にも膣,卵管,卵巣が含まれ,女性ホルモンを分泌し,卵子を作り,妊娠に関与する。年代によって月経,出産,閉経後とそれぞれの組織・細胞像が変化する。女性生殖器の疾患では,感染症,良性疾患(膣炎,子宮下垂,子宮脱,子宮筋腫,子宮内膜症),悪性疾患(子宮頸癌,子宮体癌,卵巣癌),および機能性疾患(月経,機能性性器出血,更年期障害,不妊症)がある。

第11部
  • 青木 裕志
    原稿種別: 第11部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 241-255
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    運動器は,解剖学的には身体の骨格をなす骨,骨同士の可動的な連結部である関節,関節を介した複数の骨につながり骨を動かす骨格筋,刺激を伝える神経からなるが,本項では便宜上,軟部組織も含んだ疾患を取り上げる。骨はその形状から長管骨,短骨,扁平骨に分類される。長管骨はさらに両端の膨らんだ先端部から骨端部,骨幹端部,中央部の骨幹部からなる。骨の断面は,辺縁で硬い緻密骨と内部のスポンジ状の海綿骨からなり,関節にあたる骨表面は軟骨で覆われる。骨格筋は腱を介して骨膜に接続する。これらの組織を取り囲むように,膠原線維や脂肪組織,脈管が局在する。骨には,炎症性疾患やくる病,骨粗鬆症,骨折がみられ,骨を由来とする良性腫瘍として骨軟骨腫,悪性腫瘍として骨肉腫,軟骨肉腫,骨巨細胞腫が挙げられ,この他に転移性骨腫瘍もみられる。関節には,自己免疫的な発生機序が考えられる関節リウマチ,プリン体代謝異常の痛風,加齢による変形性関節症などが発症する。軟部組織由来の良性腫瘍として脂肪腫,平滑筋腫,線維腫,神経鞘腫などがあり,悪性腫瘍は脂肪肉腫,横紋筋肉腫,平滑筋肉腫,線維肉腫などが発症する。いずれも由来となる細胞を明らかにすることが,組織型の決定につながるため,診断においては細胞および組織の形態のみならず,免疫組織学的あるいは遺伝子学的な検索が必要となる。

第12部
  • 青木 裕志
    原稿種別: 第12部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 256-261
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    皮膚は,表皮,真皮,皮下組織の3層で構成される。表皮は重層扁平上皮,真皮は膠原線維と弾性線維を主体とした乳頭層と緻密層,真皮は脂肪組織からなっている。皮膚は様々な成分から構成されることから,紅斑や水疱などの症状を示す湿疹,重層扁平上皮やメラニン産生細胞(メラノサイト)を由来とする腫瘍,さらには結合組織など間葉系成分を由来とする腫瘍,病原微生物による感染症など,幅広い疾患が発症する。湿疹のうち水疱症を起こす自己免疫性疾患には,抗原が表皮細胞間物質である尋常性天疱瘡,基底膜物質である類天疱瘡がみられる。腫瘍は,扁平上皮細胞を由来とする良性腫瘍として脂漏性角化症や粉瘤など,悪性腫瘍として扁平上皮癌(有棘細胞癌)や基底細胞癌,Bowen病などが,メラノサイトを由来とする良性腫瘍として色素性母斑や青色母斑,悪性腫瘍として悪性黒色腫が挙げられる。間葉系腫瘍は,良性では脂肪腫や線維腫,悪性では様々な肉腫が発生する。この他にも皮膚を構成する毛包や皮脂腺,汗腺,脈管を由来とする腫瘍として乳房外Paget病,脂腺癌,汗腺癌など,造血細胞を由来とする腫瘍として皮膚悪性リンパ腫などがみられる。感染症はウイルス,細菌,真菌などによって引き起こされる。

第13部
  • 松本 慎二, 鍋島 一樹, 井上 亨, 冨永 晋
    原稿種別: 第13部
    2022 年 71 巻 J-STAGE-1 号 p. 262-306
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2022/01/31
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    神経系疾患は,中枢神経(脳・脊髄),末梢神経,および筋肉を侵す疾患群であり,脱髄疾患,変性疾患,脳血管障害,脳外傷,脳腫瘍,先天性疾患,神経・筋疾患などがある。多くは難治・進行性であり,原因が不明で有効な治療法に欠ける。近年,家族性神経変性疾患のいくつかで原因遺伝子の同定が果たされるなど発症機序に関して遺伝子・蛋白質レベルの研究が相当進展してきており,病理組織学的診断の重要性が増している。髄鞘が破壊されるギランバレー症候群は末梢神経の代表的脱髄疾患である。神経変性疾患には,パーキンソン病,アルツハイマー病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症などがある。脳腫瘍は頭蓋内(大脳,小脳,脳幹,硬膜,くも膜,血管,下垂体,および左右12対ある脳神経など)にできた腫瘍をいう。基本的に脳の組織から発生する原発性脳腫瘍と,他の臓器の腫瘍が脳に転移した転移性脳腫瘍に分ける。原発性脳腫瘍は,さらに良性の脳腫瘍と悪性の腫瘍に分類されるが,脳腫瘍には他のがんのようにTNM分類やステージ分類といったものはなく,悪性度(グレード)によって分類される。脳腫瘍の種類は星細胞腫,髄膜腫,神経鞘腫,下垂体線種は良性に分類されるが,星細胞腫と髄膜腫は悪性に変わることがある。毛様細胞性星細胞腫,乏突起膠細胞系腫瘍,膠芽腫や髄芽腫は悪性に分類される。膠芽腫と髄芽腫はグレードIVに分類されている脳腫瘍である。転移性腫瘍では肺癌,乳癌,前立腺癌,リンパ腫などが多い。

第14部
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