医学検査
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67 巻, 5 号
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原著
  • 馬場 康次, 辻 智美, 福田 峻, 樋口 武史
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 623-630
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    近年,質量分析装置を用いた血液培養陽性ボトルから直接同定を行うための前処理方法が種々検討されているが,同定率など十分満足できるものではない。原因として質量分析装置で直接同定を行う際,ヘモグロビンなどの生体由来蛋白質の存在が結果に影響し,同定率が低下しているのではないかと考えた。本研究では,生体由来蛋白質の除去を目的としてセミアルカリプロテアーゼを用いた前処理方法を考案し評価を行った。臨床から提出された血液培養ボトルのうち,陽性を示した676件を用いた。前処理をした材料を質量分析装置VITEK MS(ビオメリュージャパン株式会社)を用いて直接同定を行った。グラム陽性菌の同定率は,属レベルで99.5%,種レベルで98.4%,グラム陰性菌の同定率は,属・種レベル共に99.0%,真菌は,属・種レベル共に80%,全属レベルでは,99.1%,全種レベルでは,98.5%であり,既報と比較して同等以上の結果が得られた。今回我々が考案した前処理方法は,特別な機器や試薬を必要とせず,安価であり,かつ洗浄操作だけで前処理ができる簡便な方法である。さらに第1ステップで完了する場合は,アルコールやギ酸処理を行わないため,従来の自動同定機器や簡易同定キットなどにも応用できる汎用性の高い方法であると考えられた。

  • 山内 淳平, 伊藤 修, 臼井 理加, 加藤 秀樹, 湯浅 典博
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 631-635
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    新生児聴覚スクリーニングによって聴覚障害を早期に発見することは早期の療育につながり,聴覚障害児のquality of lifeを向上させる可能性がある。本研究は,新生児・乳児において自動聴性脳幹反応(automated auditory brainstem response; AABR)での要再検(refer)と関連の強い臨床的因子を明らかにすることを目的とした。2013年から2016年の3年間に当院でAABRを実施した4,193例を対象として,AABRでのrefer率と聴覚障害ハイリスク因子との関連を検討した。単変量解析では,先天異常症候群・頭頸部奇形・重症仮死・5日以上の人工換気療法・耳毒性薬剤の使用・極低出生体重児は有意にAABRでのrefer率が高かった。多変量解析では,先天異常症候群・頭頸部奇形・重症仮死がreferと独立して有意に関連した。これらの因子を有する児は可及的速やかにAABRを行い,早期療育につなげるべきである。

  • 南 健太, 山本 佐弥香, 横山 香保, 堤 健雄, 山本 兼司, 大江田 知子, 澤田 秀幸, 杉山 博
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 636-642
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    慢性期患者を取り扱う障害者病棟において,メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生腸内細菌科細菌保菌患者の集積を経験した。本研究では,長期療養入院患者におけるMBL産生菌保菌者のリスク因子を明らかにするため,保菌調査のため提出された糞便74検体を対象として保菌群と非保菌群との症例対照研究を行い,保菌群の背景因子を多重ロジスティック回帰分析を用いて解析した。その結果,14%(10/74)のMBL産生菌保菌者が同定された。保菌群は非保菌群と比較して,胃瘻の使用が有意に多く(p = 0.009),入院期間は平均26か月で非保菌群の2倍であった。抗菌薬投与歴は有意に関連せず,プロトンポンプ阻害薬(PPI)投薬が有意に多かった(p = 0.009)。多重ロジスティック回帰分析でのオッズ比は,PPI投薬14.7(95%CI 1.8~121.4, p = 0.013),胃瘻使用3.9(95%CI 0.8~19.3, p = 0.098)であった。また,PPI投薬中の胃瘻使用患者では,保菌するリスクが15.6倍高まる(95%CI 1.4~164.4, p = 0.021)ことがわかった。感染制御チームによる手指衛生の徹底と本研究の結果を踏まえた対策により,感染は制御された。胃瘻やPPI投薬がある長期療養入院患者は,MBL産生菌を腸管内に保菌するリスクが高く,重点的に監視する必要があると考えられた。

  • 羽原 利幸, 保科 ひづる, 小関 紀之, 内田 一豊, 小澤 優, 岡田 茂治
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 643-651
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    体腔液塗抹染色標本の観察部位が細胞分類結果に及ぼす影響については,これまでほとんど議論されていない。今回われわれは,塗抹染色法による体腔液細胞分類の標準化に向けて,下記の検討を行った。対象は,体腔液100例(胸水66件,腹水34件)で,塗抹染色法で作製した標本中の5ヶ所(①および③:辺縁部位,②:中心部位,④および⑤:引き終わり周辺部位)の各々にみられた100個の細胞を,「リンパ球」,「多形核球」,「その他の細胞」に分類し,それらの出現の割合を計測した。次に,その結果と計算盤法で求めた細胞数の割合との相関を検討した。「リンパ球」の中央値は,塗抹標本②で最も多く,②と③,②と④,②と⑤の間に有意差を認めた(p < 0.01)。「その他の細胞」は,⑤で最も多く,①と⑤,②と⑤,③と⑤の間に有意差を認めた(p < 0.01)。計算盤法と塗抹染色法との相関係数は,「リンパ球」,「多形核球」,「その他の細胞」のいずれも観察部位①~⑤の平均が一番高かった。一般的に塗抹染色法では,大型の細胞が標本の引き終わりに,小型の細胞が中心に多くみられるが,この偏りは観察部位を変えて複数ヶ所の細胞を計測し,平均値を得ることでほぼ解消した。従って,塗抹染色法による細胞分類のために,辺縁部位の2ヶ所,中心部位の1ヶ所,引き終わり周辺部位の2ヶ所の計5ヶ所でそれぞれ100個,合計500個について細胞を分類するという観察方法を,標準化に向けた提案としたい。

  • 櫻井 慶造, 安本 龍馬, 中﨑 信彦, 棟方 伸一, 内山 勝文, 狩野 有作
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 660-667
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    今回,関節液98例および人工関節周囲材料140検体を用いてPCRラテラルフロー法(PCR-LF法)によるブドウ球菌系3菌種(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus; MSSA, methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA, methicillin resistant-coagulase negative staphlyococci; MR-CNS),それ以外の細菌は16SリボゾームRNA(16S-rRNA法)の解析を実施し,人工関節感染症における術中検体を用いた細菌遺伝子検査の有用性を検討した。その結果,PCR-LF法を用いた関節液より細菌遺伝子24検体(MSSA: 5.1%, MRSA: 9.2%, MR-CNS: 10.2%)が検出された。PCR-LF法が陰性であった74検体は16S-rRNA法を用いたシーケンスによる菌の推定を行った。しかし,16S-rRNA法は増幅酵素由来のEscherichia coliや試薬中に存在する他の細菌によるコンタミネーションが発生し検出感度に問題が生じた。よって,真核細胞をホスト細胞として作製したEukaryote-made Taq polymerase(E-Taq)を用いてbacterial DNA contamination freeを確認した結果,術中材料より直接的に1 × 102(CFU/mL:50%検出)まで細菌の遺伝子検出が可能となった。E-Taqを用いた16S-rRNA法では,74検体中19検体から細菌遺伝子を検出しシーケンス解析により菌を推定した。遺伝子検査法は培養同定検査に比べて検出率が1.5倍高値を示した。しかし,培養同定検査が陰性を示した8検体(MSSA:3例,MR-CNS:3例,MRSA:2例)および同時に採取された組織材料3検体(MSSA:2例,MR-CNS:1例)の術中組織材料から細菌遺伝子が検出され,採取時のコンタミネーションが生じる可能性が示唆された。以上より,PCR-LF法およびE-Taqを用いた16S-rRNA法は良好な感度および特異性を示し,人工関節感染症の感染診断として臨床応用が可能であると考えられた。

  • 原田 美里, 橋本 剛志, 梅橋 功征, 富園 正朋, 高永 恵, 本山 眞弥
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 668-674
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    背景―脳梗塞はアテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓症(cardioembolic stroke; CES)に大別される。中でもCESは最も重症であり,治療方法も異なるため早期の診断が重要である。CESの早期鑑別に心電図検査での心房細動の検出が有用であるが,搬入時の心電図検査で洞調律の患者もいる。本研究は搬入時の心電図検査で洞調律だった患者を対象にCESとその他の脳梗塞の早期鑑別が可能かを検討した。方法―2014年4月から2015年3月に搬入時の心電図検査で洞調律だった脳梗塞患者を対象とした。脳梗塞の病型はCESとnon-CES(アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞)に分けて検討した。心電図は搬入時のものを使用し,検討項目は自動計測値を用いた。結果―対象患者は125名で女性49名,男性76名,平均年齢は75.6歳だった。病型別ではCESが42名,non-CESが83名だった。搬入時の心電図検査と血液検査において,2群間に有意差を認めた項目はP duration(128.0 vs 114.0 ms, p = 0.001),QTc interval(438.0 vs 429.0 ms, p = 0.017),V1P positive potential(60.0 vs 40.0 μV, p = 0.006),BNP(182.0 vs 27.2 pg/mL, p < 0.001),D-dimer(1.59 vs 0.65 μg/mL, p = 0.001)だった。多変量解析の結果,P duration,V1P positive potential,BNPはCESを鑑別する独立した指標となった。ROC曲線解析で算出したcutoff値をもとに,心電図検査の指標とBNPがcutoff値以上であった場合CESの陽性的中率は95.0%,心電図検査の指標とBNPがcutoff未満であった場合の陰性的中率は93.2%と高い鑑別精度となった。結論―脳梗塞患者において心電図検査とBNPの組み合わせは,CESの早期鑑別に有用であることが示唆された。

  • 保科 ひづる, 永田 豊, 河西 美保, 林 美樹, 馬場 さくら, 浜 国英, 浅川 美保, 中村 洋子
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 675-680
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    膿胸を診断する上で,胸水の総蛋白やLDは滲出性胸水と漏出性胸水との鑑別に用いられている。しかし滲出性胸水には,膿胸の他に悪性腫瘍や肺炎随伴性胸水も含まれる。よって,膿胸を確定するためには,胸水の透明度や色調を観察する「主観的判断」に頼る要素が残る。今回我々は,胸水168検体を分析した結果から,膿胸の診断に有用な新たな指標を提唱する。pHは,膿胸群(6.82 ± 0.11)が,非膿胸群(7.48 ± 0.02)と比較して有意に低値を示した。糖は,膿胸群(32.2 ± 19.2 mg/dL)が,非膿胸群(123.7 ± 4.0 mg/dL)より有意に低値であった。総細胞数は,膿胸群(25.0 ± 10.0 × 103/μL)が非膿胸群(2.9 ± 1.2 × 103/μL)と比較して有意に高値であった。細胞分類の好中球の占める割合(好中球%)では,膿胸群(90.9 ± 1.9%)が非膿胸群(24.5 ± 2.2%)より有意に高値であった。そこで,短時間で測定可能である総細胞数と好中球%について,膿胸の補助診断における基準値設定ができないかと仮定し検討を行った。総細胞数を5.0 × 103/μL以上,好中球%を80%以上とした際に,感度が83.3%,特異度が95.5%と,良好な結果が得られた。胸水検体検査における総細胞数や好中球%の測定は,膿胸診断の補助として利用できる可能性が示唆された。

技術論文
  • 石井 絵梨, 佐藤 達郎, 浅沼 浩子, 黒住 泰枝, 石川 綾子, 西 由美
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 681-686
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    肝細胞癌に特異性の高い腫瘍マーカーとして知られているprotein induced by vitamin K absence or antagonist II(PIVKA-II)は診断の補助,治療効果の判定および経過観察に有用とされている。今回新たにCLIAを測定原理としたアーキテクトPIVKA-IIおよびCLEIAを測定原理としたステイシアCLEIA PIVKA-IIが開発され,基礎的検討および従来法であるECLIAを測定原理とするピコルミPIVKA-II MONOとの比較検討を行った。両試薬ともデータの信頼性は良好であり,従来法との相関性が高いことが確認できた。これらのPIVKA-II試薬を用いた院内測定により診察前検査が可能となり,肝細胞癌の診療における腫瘍マーカーの有用性がより高まると思われる。

  • 林 智弘, 西原 温子, 片山 実穂, 多田 絵美, 村上 由美
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 687-693
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    生化学自動分析装置の導入時には,ユーザーにおいても実施可能な性能確認試験を行うことが重要である。今回,日立自動分析装置LABOSPECT 008αを導入するにあたり,基礎性能確認試験を行った。試料分注量の精密性,正確性,試料プローブ,試薬プローブのキャリーオーバーおよび反応セルのコンタミネーション試験結果は,いずれもメーカー推奨基準を満たしていることが確認できた。大型自動分析装置であるLABOSPECT 008αの導入は,多検体・多項目の迅速で精確な測定値の報告につながり,日常検査に有用であると考えられた。また,ユーザーが性能確認試験を行うことで,装置の測定原理・特性の理解を深めることができ,装置の保守管理,装置に起因した異常データの解析に役立つと考えられた。

  • 仲田 夢人, 畑山 祐輝, 堀江 拓耶, 原 文子, 本倉 徹
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 694-700
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    我々は,GOD固定化酵素膜と過酸化水素電極によるアンペロメトリー法を測定原理としたグルコース分析装置ADAMS Glucose GA-1172(アークレイ株式会社)の基礎的検討を行ったので報告する。常用参照標準物質JCCRM521を測定した結果,良好な正確性を確認した。また,併行精度は変動係数が0.67~2.15%,室内再現性は0.31~1.02%であり,良好な精密性を確認した。直線性は969.3 mg/dLまで良好な結果を確認した。全血検体と血漿検体ならびにGA-1172(電極法)とLABOSPECT006(酵素法)の相関性は良好な結果であった。今回の基礎的検討の結果は良好であった。全血検体でのグルコース測定では遠心分離作業が不要であり,検査業務の単純化ならびに結果報告時間の短縮に繋がることから,臨床に貢献できるものと思われる。

  • 近藤 崇, 淺沼 康一, 山田 浩司, 盛合 亮介, 遠藤 明美, 柳原 希美, 髙橋 聡
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 701-707
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    これまで,血中可溶性インターロイキン2受容体測定試薬は,専用機器を必要とし汎用の自動分析装置では測定できなかった。最近,ラテックス免疫比濁法を原理とした汎用試薬「ナノピアIL-2R」が開発されたので,基本性能について検討した。再現性,希釈直線性と検出限界は良好な結果が得られた。また,プロゾーン現象や共存物質の影響は,認められなかった。対照試薬との相関係数は0.972と高く,回帰式はy = 0.97x + 8.83と近似した値であった。しかし,偽高値と偽低値の非特異反応を呈する検体が1例ずつみられた。偽高値例をDTT処理しIgMを不活化すると,測定値が低下したため患者血清中のIgMが偽高値の原因と考えられた。一方,偽低値例の添加回収試験を行うと回収率は低く,本試薬を用いたsIL-2R測定に干渉する物質が血清中に存在すると考えられた。以上の結果より,本試薬の基本性能は良好で,日常検査に十分な性能を有していた。しかし,偽高値や偽低値を呈する検体には注意を要する。

  • 市村 直也, 小山 祥美, 佐藤 明日香, 町田 友美, 萩原 三千男, 東田 修二
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 708-715
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    尿沈渣目視法における識別基準の標準化と検査担当者の分類精度を明らかにするため,『尿沈渣検査法2010』の画像による内部精度管理(internal quality control; IQC)システムを開発した。これは担当者に沈渣成分画像をモニタ上で分類させて,その精度を定量評価するものである。本研究は担当者の分類精度の検証と,臨床検査値の技師間差に対する効果の検証を目的とした。3名の担当者がシステムによるIQCを実施し,成分ごとの一致率と的中率を算出した。さらに臨床検査値の沈渣成分ごとの技師間差と陽性率の時系列変化を観察した。一致率または的中率は,60%を下回った成績不良な成分が担当者により異なっていることを示した。技師間差と陽性率変動幅の経時的推移は,IQC実施後に両値が拡大または縮小した成分があることを示した。さらに技師間差に統計学的有意差を認めた成分の数がIQCを実施した前後3ヶ月で比較すると,11成分から7成分に減少したことがわかった。開発したシステムは担当者の力量を数値化し,またIQCとしての活用により臨床検査値の技師間差に影響する可能性を示した。これは尿沈渣目視法における識別基準を標準化し,さらに検査室内の精密度の向上が期待できる。しかし患者背景などから総合的な判断が必要な沈渣成分ではその効果が限定される可能性があり,臨床検体での陽性率による技師間差の定期評価が必要である。

  • 山田 智, 押元 雄一, 橋本 幸平, 戸口 明宏, 大塚 喜人
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 716-721
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    結核をはじめとした抗酸菌検査は遠心集菌法が推奨されている。しかし,遠心集菌法は高額なバイオハザード対策用冷却遠心機が必須で,施設によっては導入が困難である。磁性ビーズによる抗酸菌集菌法であるTB-Beads法は,バイオハザード対策用冷却遠心機を必要としない集菌法であり,これを評価する目的で基礎的検討を行った。当院にて抗酸菌検査依頼のあった喀痰50検体を対象とし,TB-Beads法と遠心集菌法による各抗酸菌集菌法処理後の塗沫検査,培養検査,遺伝子検査の結果を比較評価した。一致率は塗沫検査92.0%,培養検査100%,遺伝子検査98.0%であった。塗沫検査ではTB-Beads法が遠心集菌法よりも感度が低かったが,培養検査と遺伝子検査では良好な一致率であった。TB-Beads法はバイオハザード対策用遠心機を用いることなく抗酸菌集菌法が行えることで,より多くの施設で抗酸菌検査の精度向上が可能となる。

  • 大籔 智奈美, 佐藤 伊都子, 東口 佳苗, 山本 和宏, 石村 武志, 中町 祐司, 三枝 淳
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 722-726
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    mTOR阻害薬であるエベロリムスは,臓器移植における免疫抑制剤として主に用いられている。エベロリムスの投与に関しては,急性拒絶反応に対する有効性,副作用に対する安全性から薬物血中濃度モニタリング(TDM)を定期的に行うことが必要である。全血中のエベロリムス濃度測定には,LC-MS/MS法が用いられていたが,操作が煩雑であるために臨床の日常業務における測定には不適当であった。近年,ラテックス免疫比濁法(LTIA法)を原理とする試薬が開発されたが,推奨トラフ値はLC-MS/MS法の測定値をもとに設定されており,測定法による値の差の評価が必要であると言われている。そこで今回,新たに開発された電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)による「エクルーシス®試薬エベロリムス」の基礎的検討を行った。ECLIA法による測定は再現性および感度が良好であり,LTIA法による測定値との相関は,y = 1.24x + 1.48(r = 0.854)と良好であった。以上の結果から,ECLIA法はLTIA法による血中エベロリムス濃度の測定と同等以上の感度・精度を有することが確認され,エベロリムスのTDMに有用である可能性が示唆された。

  • 前田 和樹, 大友 志伸, 林 智弘, 志村 敏史, 上地 幸平, 江後 京子
    原稿種別: 技術論文
    2018 年67 巻5 号 p. 727-733
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    近年,基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended-spectrum β-lactamases; ESBLs)産生菌の検出頻度は増加傾向であり,それに伴って迅速検出法が多く考案されている。Nordmannによって報告されたESBL NDP(Nordmann/Dortet/Poirel)testは,迅速かつ正確にESBLs産生菌の検出が可能である。しかし,蛋白抽出試薬として20 mmol/L-トリス-塩酸緩衝液(BPERII Bacterial Protein Extraction Reagent, Thermo Scientific)を用いるため酵素抽出の過程に30分間の時間を要する。そこで,我々はガラスビーズを用いて菌体から酵素を粉砕抽出することでESBLs産生菌を簡便で,迅速かつ安価に検出できるガラスビーズ試験(Glass beads test; GB test)について考案した。今回,GB testの基本性能をNDP testと比較することでESBLs産生菌のスクリーニング検査としての有用性について評価を行った。対象にはESBLsの表現型試験陽性となり,遺伝子型が決定した111株と第3世代セファロスポリン系薬に感受性を示しESBL非産生菌と判定した109株を用いた。GB testとNDP testの判定一致率は100%であった。両検査法の感度,特異度は94.6%,100%であった。さらに,GB testでは酵素抽出時間を30秒に短縮できたことでNDP testと比較して陽性までの検査所要時間が有意に短縮した(p < 0.01)。GB testはESBLs産生菌のスクリーニング法としてNDP testよりも安価でさらに迅速性,簡便性に優れていた。

資料
  • 堀内 寿志, 松尾 龍志, 小宮 ゆきえ, 星 紫織
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 734-739
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    福岡地区の病院における血液培養の検査状況をアンケート調査した。回答項目は,病床数,2015年度の血液培養検査実施状況,使用機器,使用ボトル,培養日数,陰性ボトルのサブカルチャーの有無,採取時の皮膚消毒方法,血液接種時のホルダー使用の有無,陽性ボトルから直接菌液を調整した感受性試験の実施の有無,時間外に提出された血液培養検査の対応等である。18施設から回答が得られたアンケートの結果,陽性ボトルから直接菌液を調整した感受性試験の実施や,陰性ボトルのサブカルチャー,血液培養ボトルへの接種時のホルダーの使用は多くの施設で実施していなかった。血液培養の精度管理および質評価の観点から一般的に用いられている指標,採取時の消毒方法,時間外の対応等は施設によって異なり,血液培養検査の実態を把握することができた。

  • 太田 由理, 直本 拓己, 東口 佳苗, 矢野 美由紀, 中町 祐司, 三枝 淳
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 740-746
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    採血室では多くの患者が採血を実施するため,高い採血技術,より良い患者対応,快適な採血室環境,待ち時間の短縮など,質の高い患者サービスが求められている。そこで我々は,採血室への患者視点の評価を得ることにより,採血室の業務改善を行って患者サービスを向上させることを目的として,2016年6月に当院検査部として初めて採血室に対する患者満足度調査を行った。その結果,採血者の対応や採血手技など人的要因のソフト面は満足度が高かったが,待ち時間に対する満足度が最も低いことが判明した。そこで,待ち時間の満足度の改善のために,採血者毎の採血所要時間や曜日時間帯別の待ち時間などの採血業務の実態を調査し,客観的な現状把握を行った。更に,採血者の人員配置や新人採血者の業務の見直しなどの改善策を実施した。翌年,同内容の満足度調査(第2回)を実施したところ,待ち時間の満足群の割合が増加し,平均待ち時間が短縮し,改善策の効果を確認することができた。待ち時間短縮の主な要因は,朝の混雑時に採血優先の業務体制として採血台10台全てを使用する運用に変更したことであると考えられた。満足度調査の実施により,採血室の客観的評価が得られ,問題点が明らかとなり,業務改善を実施することができた。更なる患者サービスの向上のために採血室患者満足度調査は有効であり,今後も患者満足度の向上に努めていきたい。

  • 大村 正恵, 矢島 尚子, 石松 昌己, 河口 豊, 入江 由美, 黒川 幸徳
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 747-754
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    2008年に岡山県内の主要医療機関によって結成された岡山県微生物同好会(CLUB細菌)では,2011~2015年の当同好会参加施設における,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus; MRSA),多剤耐性緑膿菌(multiple drug-resistant Pseudomonas aeruginosa; MDRP)および基質拡張型β-ラクタマーゼ(extended spectrum β-lactamases; ESBLs)産生菌の分離状況の推移を解析した。入院患者におけるMRSA,MDRPの患者分離率は,2011年のMRSA 10.99%,MDRP 0.55%に比べると2015年はMRSA 8.34%,MDRP 0.24%と減少傾向にあるが,依然,厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance; JANIS)事業の全国平均MRSA 6.64%,MDRP 0.07%を上回った。外来患者のMRSA分離頻度は2011年の26.25%から2015年は28.69%と経年的に増加しており,市中でのMRSAの蔓延を疑った。ESBLs産生菌では,E. coliK. pneumoniaeで入院・外来ともに著明な増加傾向を認め,様々な要因によるESBLs産生菌保菌者の増加が示唆された。今後も継続して調査を行い,地域での情報共有と連携の強化,院内感染防止対策に役立てていくことが重要である。

  • 河内 誠, 及川 加奈, 魚住 佑樹, 野田 由美子, 岩田 泰, 舟橋 恵二, 西村 直子, 尾崎 隆男
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 755-759
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    我が国で市販されているBordet-Gengou血液寒天培地(ボルデジャング培地),ボルデテラCFDN寒天培地(CFDN寒天培地),およびチャコール寒天培地の3種類の百日咳菌(Bordetella pertussis; B. pertussis)分離用培地について,発育支持能および夾雑菌抑制能を比較検討した。発育支持能試験にはB. pertussisの臨床分離株を用い,夾雑菌抑制能試験には分離頻度の高い細菌のATCC株または臨床分離株を用いた。両試験はMiles & Misra法に準拠し行った。発育支持能試験では,CFDN寒天培地は10−5希釈まで,ボルデジャング培地およびチャコール寒天培地は10−6希釈まで発育支持を認めた。また10−5希釈での発育コロニー数の平均値は,ボルデジャング培地,CFDN寒天培地およびチャコール寒天培地で,36.5,20.4,および40.5 CFUであった。夾雑菌抑制能試験では,ボルデジャング培地には全ての夾雑菌が発育し,チャコール寒天培地は全ての夾雑菌を抑制した。CFDN寒天培地はMoraxella catarrhalisを抑制できず,巨大コロニーが形成されてB. pertussis分離の妨げになる可能性があった。以上の結果から,チャコール寒天培地は発育支持能および夾雑菌抑制能に優れ,検討した3種類の培地の中でB. pertussis分離に最も適した培地と考えられた。

  • 生駒 俊和, 浅井 孝夫, 遠藤 和男, 土屋 康雄
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 760-765
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    インド北部のガンジス川流域は胆嚢がん多発地域である。しかし,その発症機序は十分に解明されていない。本研究の目的は,ガンジス川流域の住民が日常的に飲食に使用している水の汚染状況を調査し,胆嚢がん発症要因解明の手掛かりを得ることである。2017年9月,インド北部のバナラシ市に滞在中に,市内のガンジス河の河川水,公共水道水(1カ所),公共井戸水(2カ所),及びバナラシ市内及び近郊の胆嚢がん患者宅の井戸水(4カ所)を採取した。簡易水質検査法により10項目(鉛,細菌,農薬,鉄,銅,硝酸塩,亜硝酸塩,塩素,pH,硬度)の水質検査を行い,各々の結果を我が国における水道水質基準と比較した。水道水質基準を超えていた項目は,細菌,鉄,硝酸性窒素であった。細菌は,患者宅の井戸水3カ所で,鉄は,水道水,公共井戸水2カ所,患者宅井戸水2カ所で基準値以上を示した。硝酸性窒素は,市内井戸水1カ所で基準値より高値を示した。鉛,農薬,銅,亜硝酸性窒素,塩素,pH,硬度の値は全て基準範囲内であった。今回の調査で,患者宅の井戸水は細菌汚染(75%,3/4)と鉄の濃度が高い(50%,2/4)ことが判明した。細菌感染が胆嚢がん発症と関係していることが報告されていることから,患者宅井戸水を汚染している細菌種についての詳細な検討が必要である。

  • 田中 伸久, 三宅 妙子, 新井 菜津子, 佐藤 敦子
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 766-771
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    臨床検査値のうち感染指標である,白血球(white blood cell; WBC)数,C-reactive protein(CRP)値,エンドトキシンについて,血流感染における診断上の有用性を検討した。平成24年4月~29年3月の期間に0~18歳の患児において血培陽性となった151エピソードを対象に,血液培養提出日および前日と翌日におけるWBCとCRP値,エンドトキシンの分析結果を後方視的に調査した。陽性群(126エピソード)とコンタミ群(25エピソード)に分け,WBC数とCRP値を比較したところ,提出日のCRP値は陽性群が有意に高値であった。カットオフ値は1.70 mg/dL(感度55.6%,特異度78.3%,陽性的中率93.3%)であった。CRPの高値は陽性の判断には有用だが,低値による否定は行うべきではないと思われた。また,WBC数の前日値との差およびCRP値の翌日値との差も,陽性群が有意に高値であり,これらも参考になり得る情報と考える。一方,エンドトキシンの分析は,151エピソードのうち33例で行われ10例(30.3%)が陽性であった。グラム陰性桿菌が検出されたエピソードの陽性率は75.0%(9例/12例)であった。当分析は,より早い段階での対応につながる。

  • 度會 理佳, 安藤 善孝, 菊地 良介, 松下 正
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 772-778
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    HBs抗原はB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus; HBV)の感染診断に有用な検査項目である。HBs抗原量は肝細胞癌の発生頻度や治療効果判定において有用であることが複数の研究者らによって報告され,HBs抗原量の把握はB型肝炎治療や持続感染者の経過観察において欠かせない指標となっている。しかし,当院ではHBs抗原量高値の患者は,手希釈による再検査が必須であり,自動希釈が適応できる他の項目と比して測定結果報告が遅くなることが多い。今回我々は,全自動化学発光免疫測定装置「ARCHITECT i 2000SR」(アボットジャパン株式会社)を用いて,HBs抗原測定試薬「アーキテクトHBsAg QT・アボット 自動希釈専用」(アボットジャパン株式会社)の基礎的検討を行った。基礎的検討の結果,「アーキテクト・HBsAg QT・アボット自動希釈専用」試薬の同時再現性は変動係数(CV)2.9~4.8%,日差再現性は6.1~7.7%,希釈直線性も良好な結果が得られた。また,HBs抗原量5,000 IU/mL未満における現行試薬との相関性も良好であった(n = 38,y = 1.05x + 83.51,相関係数:r = 0.984)。従って,自動希釈の導入により日常検査におけるHBs抗原測定の迅速化が期待できると考えられた。

  • 阿部 水穂, 村松 志保, 赤澤 博美, 網野 秀一
    原稿種別: 資料
    2018 年67 巻5 号 p. 779-784
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    当院検査室における抗酸菌検査動向調査を行ったので報告する。2012年10月から2017年9月の5年間において,当検査室でデータ管理している山梨勤労者医療協会(山梨勤医協)の医療機関での抗酸菌検出状況,年齢分布と性差,各検査項目の比較,薬剤耐性率,患者の臨床背景および非結核性抗酸菌症の診断・治療について検討した。5年間での抗酸菌培養陽性率は7.0%であり,結核菌(Mycobacterium tuberculosis; M. tuberculosis)35例(19.1%)非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria; NTM)148例(80.9%)であった。年齢は,どちらも70歳代以上の高齢層に多いが,M. tuberculosisは10~30歳代の若年層にもピークが見られた。性別では,M. tuberculosisが男性優位,NTMは女性優位であった。検査項目では培養検査の陽性率が90%以上と高率であった。患者の受診動機は一般的な風邪症状の他,X線異常などの無症状の方も多かった。初期診療を行うにあたり,今回の動向調査が参考にされることが望まれる。また,抗酸菌分離状況は地域性があるため,県内の動向を把握することは感染管理の観点から意義があることと思われた。

症例報告
  • 石井 隆浩, 小倉 航, 小島 直美, 関口 久美子, 高城 靖志, 大西 宏明
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 785-790
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    症例は44歳女性。子宮筋腫の手術目的に当院婦人科を紹介受診された。RhD血液型判定において,カラム凝集法は陰性であったが,試験管法による間接抗グロブリン試験で試薬間差が認められたため精査を実施した。抗D被凝集価の測定では,対照のR1R2赤血球に比べ8管差と大幅な減弱を認めた。抗D吸着解離試験では,被検血球から得られた解離液とパネル赤血球との反応において抗D特異性を示した。12種類のモノクローナル抗Dとの反応では,全体的に弱い凝集であったが,partial D category DFRと一致したパターンを示した。総合判定に苦慮したため遺伝子検査を行ったところ,特徴的な845G>A(Gly282Asp)の変異を認めたため,weak partial D type 15と確定した。weak partial D type 15はD抗原の抗原性が弱く,かつDエピトープの一部を欠いているため,反応は弱いがpartial Dに類似したパターンを示す。Gly282Aspの変異部位が膜表面近くの膜貫通ドメインに存在することより,RhDタンパクの高次構造に何らかの影響を及ぼし,このような血清学的特徴を示したと考えられた。本例のように血清学的検査ではRhD変異型間の鑑別が困難な例もあり,遺伝子検査の実施はweak partial D type 15の判定に有用であると考えられた。

  • 小幡 進, 岩楯 欽央, 矢嶋 正太郎, 佐橋 久美子, 棟方 伸一, 石井 直仁, 狩野 有作
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 791-796
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    【目的】ティンパノメトリー(tympanometry; TM)は,鼓膜と中耳の状態を把握できる簡便な検査である。健常者のティンパノグラム(tympanogram: TG)はA型を示し,ピーク値は−100~+100 daPaの範囲とされるが,高度陽圧側にピーク値を示す場合は非常に少ない。我々は,北里大学病院臨床検査部でTMを実施し,A型で+51 dapa以上の高度陽圧を示した例を対象とし臨床的背景について精査したので報告する。【方法】北里大学病院臨床検査部でTMを実施した1,307例(2,614耳)のうちA型を示し,+51 dapa以上の高度陽圧を示した例を対象とし,その検査結果および臨床的背景について精査した。【結果】対象とした1,307例のうち,TGのピーク値が高度陽圧を示したのは12例で全体の0.9%であった。15耳のうち両側高度陽圧は6耳(3例)で右耳のみ高度陽圧が6耳(6例),左耳のみ高度陽圧が3耳(3例)であった。鼓膜所見に何らかの異常が認められたのは2耳(13.3%)のみであった。12例中4例については複数回の検査を実施していたが,複数回の高度陽圧を認めた例は無かった。【結語】今回の検討結果から,一般的には高度陽圧を示す場合は急性中耳炎などが多いとされているが,他の原因も多く存在する可能性があることが示唆された。

  • 林 かんな, 森下 律子, 松本 実佳, 柳川 香, 川住 勇, 竹浦 久司
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 797-801
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    恒久的ペースメーカ植込み患者の心電図波形は,右心室心尖部ペーシングの場合,胸部誘導のQRS波形は一般的には左脚ブロック様波形を呈すると考えられ,右脚ブロック様波形を呈した場合は,リードの位置異常や右心室の穿孔などが推測される。我々は,右心室ペーシング患者において標準12誘導心電図(12誘導心電図)記録を行い,右脚ブロック様波形を呈した1例を経験した。本症例は,胸部レントゲン,心臓超音波検査にて右心室リードの位置異常はないと確認できた。リードの位置異常を認めない場合にも,右脚ブロック様波形を示すことが報告されており,リードの位置を検討するため,胸部誘導の通常肋間より1肋間下部での記録,電気軸,移行帯などをみることが提唱されている。我々の報告も,胸部誘導での1肋間下部での記録で左脚ブロック様波形,電気軸は−30°,移行帯はV1とV2の間であることを認め,既報のアルゴリズムに相違はなかった。右心室リードの位置異常の検出に,心電図も有用な検査の一つと考えられた。

  • 小堺 智文, 原 美紀子, 岩本 拓郎, 高木 洋行, 桐井 靖, 太田 浩良
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 802-808
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    背景:乳癌腹膜転移は稀な病態である。体腔液細胞診において腫瘍の原発巣の推定には細胞診の形態像のみでなく,免疫染色を加えた検討が必要である。セルブロック(cell block; CB)標本の免疫染色が腹膜転移の診断に有用であった乳癌の2症例を報告する。症例1:40歳台女性。左乳腺浸潤性乳管癌にて乳房切除を施行。術後約2年10ヶ月後に腹水が出現した。腹水細胞診(ascites cytology; AC)では偏在性異型核を示す低分化型腺癌細胞が弧在性に認められた。CBの免疫染色では,異型細胞はgross cystic disease fluid protein 15(GCDFP15),GATA binding protein 3(GATA3),E-cadherinが陽性,ERα,PgRが陰性であり,浸潤性乳管癌の腹膜転移と診断した。症例2:50歳台女性。左乳腺浸潤性小葉癌にて乳房切除を施行。術後約1年7ヶ月で腹水が貯留した。ACでは中型の偏在性核,胞体内に細胞質内小腺腔を示す異型細胞が小集塊状に出現していた。CBの免疫染色では,異型細胞はERα,GATA3,carbohydrate antigen 15-3(CA15-3)が陽性であり浸潤性小葉癌の腹膜転移と診断した。結論:2症例の腹水細胞診において,乳癌腹膜転移の診断にはCBを利用した免疫染色が有用であった。

  • 井関 文, 畠 榮, 原 稔晶, 稲垣 恵章, 安藤 善孝, 下山 芳江, 松下 正, 中村 栄男
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 809-816
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    乳腺の扁平上皮癌はまれで,急速に増大する特徴から予後不良とされる。今回われわれは,乳腺扁平上皮癌の1例を経験したので細胞学的特徴を中心に報告する。症例は60歳代女性で,検診で右乳房腫瘤を指摘され当院を受診した。腫瘤はDynamic MRIで遅延相におけるリング状増強効果を示した。穿刺吸引細胞診では,多数の壊死物質とリンパ球,少数の線維芽細胞を背景に,重積性の腫瘍細胞集塊や,孤立散在性の角化した腫瘍細胞を認めた。広めの細胞質を有する大小の細胞からなる集塊では,辺縁から突き出す約70 μmの大型細胞を認めた。大型細胞は濃いライトグリーンやオレンジ色の厚い細胞質を有し,中心に48 μmの巨大核を認めた。単調な楕円形核を有する細胞が結合性のよい流れるような配列を示す集塊では,p40免疫細胞染色において陽性の細胞が集塊の片側に偏るように染色された。小型の集塊では,すべての細胞がp40陽性を示す集塊と,p40陽性細胞と陰性細胞が混在する集塊とがみられた。病理組織学的には高分化な扁平上皮癌で,一部に腺癌から扁平上皮癌へと連続する移行部を認めた。ER,PgR,HER2は陰性,Ki-67陽性率は55%であった。今回,経験した乳腺扁平上皮癌は細胞診において,強い異型を示す角化細胞と移行部を反映した特徴的な細胞集塊がみられた。本報告例は予後良好であり,腫瘍の小さい早期に行われた細胞診検査は組織型推定に有用と考えられた。

  • 赤石 優, 吉澤 梨津好, 石橋 直美, 藤井 陽子, 馬渕 邦子
    原稿種別: 症例報告
    2018 年67 巻5 号 p. 817-821
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
    ジャーナル フリー HTML

    骨髄肉腫(myeloid sarcoma; MS)は,分化を伴うまたは伴わない骨髄芽球で構成される髄外腫瘤のことである。今回我々は,尿沈渣で通常みられる血球類や上皮細胞類とは異なる細胞を認め,異型細胞として報告した。スクリーニング検査である尿沈渣では細胞を同定することはできなかったが,他の検査情報より,異型細胞と報告した細胞を未熟単球と裏付けることができた。その後,患者はMSと診断された。尿沈渣中に未熟単球を認めることは稀であるが,見落とすことなく臨床に情報提供できた症例であった。

  • 杉浦 由季, 牧 俊哉, 広瀬 美砂, 加藤 敦美, 有吉 彩, 加藤 秀樹, 湯浅 典博
    原稿種別: 原著
    2018 年67 巻5 号 p. 652-659
    発行日: 2018/10/25
    公開日: 2018/10/27
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    臨床検査技師に必要なノンテクニカルスキルを明らかにして検討した報告は少ない。当院検査部では臨床検査技師のためのノンテクニカルスキルを設定し,これを向上させるための試みを行ってきた。本検討ではこの試みが技師のノンテクニカルスキル向上に役立っているかを調査した。2013年1月,技師10名から成る検査部ワーキンググループを立ち上げ,65名の技師から395個のノンテクニカルスキルを収集した。ワーキンググループで状況認識,意思決定,コミュニケーション,チームワーク,リーダーシップ,ストレス・疲労管理の6つの視点から,27の「検査室のノンテクニカルスキル」を決定した。この中から毎月1つを強化スキルとし,リーフレット,メールでの配信,掲示などによって周知した。各スキルについて自己評価を6か月ごとに行ったところ,介入前に比べて向上が見られた。ノンテクニカルスキルの評価には経験年数,部署によって6つの視点ごとに違いが見られた。臨床検査技師のノンテクニカルスキルはこうした試みにより向上する可能性がある。

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