ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)は心不全の診断および予後の把握に有用なバイオマーカ―である。今回,化学発光免疫測定装置HISCL-5000®を用い,「HISCL® NT-proBNP試薬」の基礎的性能評価を行った。同時再現性および日差再現性のCoefficient of Variability(CV)は0.9~2.4%であり,患者検体を用いた希釈直線性の評価ではNT-proBNP測定値について34,434 pg/mLまでの直線性を確認した。5種類の共存物質の影響を検討したところ,いずれの物質においても測定値に10%以上の影響を及ぼすものは認められなかった。患者検体112例を用いて,既存試薬(エクルーシス®NT-proBNP[ロシュ社])との相関を検討した結果,相関係数はγ = 0.994と良好であったが本法がやや低値となる傾向を認めた(y = 0.85x + 183.2)。本法で10,000 pg/mL未満であった104検体ではy = 0.988x − 0.588,γ = 0.998と2法の測定値はほぼ一致した。以上の結果から,HISCL-5000®を用いたNT-proBNP試薬は,日常検査において十分な性能を有していると考えられた。
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