医学検査
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66 巻, 2 号
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原著
  • 長谷川 秀浩, 種村 直美, 上村 綾香, 内藤 眞
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    目的:アザン染色の工程には劇薬指定されている試薬や発癌物質を使用しなければならない工程が存在する。人体にとって有害な試薬の使用を中止するためには,アゾカルミンG染色液の染色性を向上させる必要がある。方法:アゾカルミンG染色液の調整法を工夫する事により,染色性の向上が可能であるかについて検討した。アゾガルミンGを2種類の難溶解物質分解法で調整した染色液と使用時に調整した染色液の染色結果を市販液状試薬の染色結果と比較した。結果:難溶解物質分解法で作成された染色液の染色性は,極めて良好な染色性を示すものであった。特にマイクロ波加熱分解法で作成されたアゾカルミンG染色液は,媒染操作や加温染色せずとも,その染色性は媒染操作が必要な市販液状試薬に優るものと判断された。結論:マイクロ波加熱分解法で作成されたアゾカルミンG染色液を使用する事により,アザン染色の工程から劇物や発癌物質の使用工程を除くことができるとともに,染色工程の大幅な簡素化が可能であった。

  • 中越 りつこ, 向井 早紀, 松田 和之, 竹澤 由夏, 新井 慎平, 菅野 光俊, 本田 孝行, 奥村 伸生
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    シスメックス社のXE2100(以下XE)を使用した白血球分類において,新生児検体のDIFFスキャタグラムは側方蛍光が低い位置に分布すること(低SFL現象)が知られているが,当検査部では成人で明らかな低SFL現象を呈した症例を5年間で6症例認めた。今回我々はこの6症例のうち承諾を得られた4症例について検討を行った。DIFFスキャタグラムの分布位置をNEUT-Yを用いて比較したところ4症例は正常検体,新生児検体の平均と比較して有意に分布位置が低かった。また,正常検体,新生児検体,症例検体をそれぞれ赤血球と白血球に分離して,正常赤血球+新生児白血球,新生児赤血球+正常白血球,正常赤血球+症例白血球,症例赤血球+正常白血球の混合液を作成しXEで測定したところ,新生児赤血球,症例赤血球が存在するときにのみ低SFL現象が再現されたため,原因は赤血球側にあると推測した。我々はXEの前機種であるNE7000(シスメックス)の使用時に,白血球スキャタグラムに異常がみられる検体のうち赤血球側に原因があった症例の中から異常ヘモグロビンのHbC,HbEを見出し報告している。そこで今回の4症例が異常ヘモグロビン症であることを疑い,遺伝子解析を行った。その結果3症例がHbJ-Calabria,1症例がHb-Yamagataの変異と一致した。低SFL現象の機序は解析できなかったが,DIFFスキャタグラムの観察により異常ヘモグロビン症が見出せることは非常に興味深いことである。

技術論文
  • 堀江 香代, 後藤 勇也, 野呂 美鈴, 吉岡 治彦, 刀稱 亀代志, 小島 啓子, 横山 良仁, 渡邉 純
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    【目的】LBCは多くの利点があり,子宮頸部扁平上皮病変でその有用性が確立されている。しかしながら,子宮内膜LBCの有用性は十分に検討されていない。本研究では,光学顕微鏡による判定とデジタル解析を行い,子宮内膜のLBCの特性を明らかにした。【材料および方法】子宮内膜細胞診は,子宮内膜癌G1とG2をLBC法により作製した。細胞集塊を構成している細胞数,細胞集塊の重積層数について光学顕微鏡による判定とデジタル解析を行った。そして,核小体‍/核面積(N/N)比は,デジタル解析を使用して従来法とLBC法の比較を行った。【結果】G1と比べG2では細胞集塊の構成細胞数と重積層数は低い値を示した。また重積層数は光学顕微鏡による測定に比べ,デジタル解析を用いた方が低い値を示した。G1とG2子宮内膜癌の核と核小体面積は,LBC法は従来の方法と比較して有意に縮小していた。一方,N/N比はLBC法では従来法と比べ増大するという結果を示した。【結論】子宮内膜LBC法は子宮内膜細胞診標本作製の標準化を行う上で有用である。今後,診断基準が確立されれば,子宮内膜LBC法は子宮体癌細胞診検査の精度向上につながると考えられる。

  • 土田 一樹, 石田 貴子, 石川 哲夫, 齋藤 理, 西井 亜紀
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    国内の糖尿病患者数が増加傾向にある中,血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose;以下,SMBG)器は患者自身による日常的な血糖コントロールの手段として,ますます重要性を増している。メーカー各社から販売されているSMBG器の多くは,2013年に改訂されたISO15197に準じて精度向上が図られているが,それらの測定値には機種間差が存在することが報告されている。そこで今回,医療スタッフが正しい知識を基に機種選択を行い,患者が安心してSMBG器を使用できる環境整備に貢献するべく,SMBG器7機種を用いて精度試験を実施し,新ISO15197(2013年)の基準に沿って基本性能を評価した。

  • 高橋 一人, 齋藤 泰智, 小笠原 愛美, 中河 知里, 佐藤 多嘉之, 森川 知世, 秋田 隆司, 政氏 伸夫
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    近年,様々な産業で業務の標準化や透明化が求められ,医療分野でもその重要性が増している。ISO 15189は臨床検査室の国際規格であり,品質管理と技術能力に関する様々な要求事項について第三者評価機関の日本適合性認定協会が審査し認定する。しかし,ISO 15189の導入や維持には,文書や記録の作成をはじめとする膨大な事務作業を伴い,日常業務とISO 15189を両立させることが大きな課題となっている。そこで我々は煩雑な事務作業の効率化を目的として,ISO 15189に特化した独自の支援システムを開発した。支援システムを用いた文書の電子化や情報の一元化によって,文書の作成・閲覧・確認・承認作業,機器の管理,不適合業務や苦情の報告・是正・検証が迅速に行われるようになり,進捗状況の把握も容易になった。我々が開発した支援システムは事務作業の効率化に寄与し,ISO 15189の導入や維持に有効な手段と考えられた。

  • 小原 愛美, 戸来 孝, 川崎 理一, 遠藤 繁之, 米山 彰子
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    PIVKA-IIはビタミンK欠乏による生合成不全によって産生される異常プロトロンビンで,肝細胞癌の腫瘍マーカーとして広く利用されている。今回,新しく開発されたPIVKA-II測定試薬「アーキテクト・PIVKA-II」について基礎的検討を行った。専用コントロールの同時再現性はC.V. 2.2~3.0%,日差再現性は2.8~4.9%,患者プール血清の同時再現性はC.V. 2.0~2.7%,日差再現性は3.2~4.9%と良好であった。また,約30,000 mAU/mLまで希釈直線性が認められ,定量限界は3.45 mAU/mL,共存物質の影響は認めなかった。他法との相関は,ルミパルスプレストおよびピコルミともに良好であった。さらに,プレーン管,血清分離剤入りの採血管,トロンビンが塗布されている高速凝固採血管の3種類の採血管で測定した結果,測定値に差は認められなかった。本試薬は,基礎的性能が良好で日常検査に大いに貢献するものと考えられた。

  • 三宅 雅之, 糸島 浩一, 岡田 健, 大塚 文男
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone; PTH)測定には完全長のPTH(1–84)のみを測定するwhole PTHがあるが,近年CLEIA法を原理としたルミパルスプレストwhole PTH「DSPB」とECLIA法を原理としたエクルーシス試薬whole-PTHが発売されたため,それぞれの基礎的検討および両試薬の比較検討を行った。併行精度,室内精度においては両試薬とも良好であったが,希釈直線性においてエクルーシスでの低濃度域で若干の高値化が認められた。干渉物質においてはいずれも最終濃度まで影響が認められなかった。検体安定性においては両試薬ともに血漿と比べ血清で不安定であり,室温保存が最も不安定であった。相関においてはIRMA法と両試薬の比較でIRMA法が低値となった。ルミパルスとエクルーシスの比較では濃度帯域により傾向の変化が見られた。両試薬における血清とEDTA-2Na血漿の比較では良好な相関性が得られた。保存容器としてMPC処理を施した容器を用いた場合と比較して未処理の容器で低値になることが確認された。MPC処理容器は吸着反応が抑制されるため,この現象はPTHが保存容器に吸着したことが原因であると考えられた。本研究から比較的安定性が高く従来法であるIRMA法との反応性が近いルミパルスプレストwhole PTH「DSPB」が有用であると考えられた。

資料
  • 西原 弘人, 小林 謙一郎, 阪本 直也, 岩渕 千太郎, 河野 緑, 政木 隆博, 松浦 知和
    原稿種別: 資料
    2017 年 66 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    2014年7月から2016年3月までに東京都立墨東病院の感染症科外来において,細菌検査目的で採取された糞便のうち,患者の同意を得られた111例の検体を対象に基質特異性拡張型β-lactamase(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)産生腸内細菌の検出状況を調査した。その結果,ESBL産生腸内細菌はEscherichia coliが31例(27.9%),Klebsiella pneumoniaeが1例(0.9%)から検出された。渡航歴の有無によるESBL産生腸内細菌の検出状況は,渡航歴がないグループでは16.2%,渡航歴があるグループでは48.8%となり,その検出率は渡航歴がある患者の方が有意に高かった(p < 0.05)。渡航先はアジア地域を中心にアフリカ,中東,南米など多岐にわたったが,インドへの渡航歴がある患者数が最も多かった。海外渡航歴を有する患者が入院した場合はESBL産生腸内細菌が検出される可能性が高いため,院内感染対策として注意が必要である。

症例報告
  • 荻原 真二, 木下 真直, 井上 修, 内田 幹, 長田 誠, 雨宮 憲彦, 井上 克枝
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    今回,我々はBCG(Bacillus Calmette–Guérin)膀胱内注入療法後に陰嚢皮膚結核性肉芽腫を発症した1症例を経験した。患者は74歳男性で,2008年から2015年まで膀胱癌による治療として経尿道的膀胱腫瘍切除術後,補助療法としてBCG膀胱注入療法を施行した。2度目のBCG膀胱注入療法の1ヶ月後に右陰嚢に皮膚結節を自覚し,当院皮膚科を受診した。生検検体から抗酸菌が発育,PCR法及びイムノクロマト法の同定法でMycobacterium tuberculosis complexと同定した。今後の治療や感染制御を実施する上でM. tuberculosisM. bovis BCGの鑑別が必要となった。今回実施したPCR法で,M. bovis BCGと診断され,患者に適切な治療を施すことができた。日常業務で遭遇するM. tuberculosis complexのほとんどは,M. tuberculosisでありM. bovis BCGの感染症は極めて少ない。しかし,今回の症例を通して,膀胱癌患者の泌尿器検体ではM. bovis BCGを念頭に入れ検査を進めていくことを再認識した一症例であった。

  • 千味 和宏, 土田 純也
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    Roseomonas属は,ピンク色素を産生するブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌で,特に免疫抑制者(悪性腫瘍,後天性免疫不全症候群,慢性腎不全,糖尿病)に感染症を引き起こす日和見感染の原因菌として臨床的重要性がある細菌である。今回,R. gilardii subsp. gilardiiによる菌血症の一例を経験した。症例は82歳の男性,肺炎と診断され当院入院となった。患者は一旦軽快したが,第10病日に再度発熱した。その際,血液培養を2セット採取し,1/2セットの血液培養からグラム陰性桿菌を検出した。分離された集落はピンク色でムコイド型の集落が発育した。同定検査はWalkAway40SI及びIDテスト・NF-18を用いたが同定できず,16S rRNA遺伝子配列解析にてR. gilardii subsp. gilardiiと同定した。薬剤感受性試験結果よりSulfamethoxazole-trimethoprimが投与され,患者は軽快した。Roseomonas属による感染症は本邦では報告例の少ない稀な症例である。多くの検査室においてRoseomonas属の菌種レベルまで同定することは困難である。そのため,本菌の臨床的重要性はあまり知られていない。今後,本菌の薬剤感受性試験成績や感染症治療成績を蓄積していくことが重要であると思われる。

  • 澤井 恭兵, 菅野 のぞみ, 田口 裕大, 柳内 充, 櫻井 圭祐, 深澤 雄一郎, 中村 茂夫, 高橋 俊司
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    培養継続中であった血液培養にグラム染色を行い,菌の染色性と形態から早期に侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease; IPD)を診断することができた症例を経験した。症例は60歳代男性。全身に紫斑が出現し,急激に全身状態が悪化した。培養継続中であった血液培養にグラム染色を行ったところグラム陽性双球菌が認められ,尿中肺炎球菌抗原検査と併せてIPDが早期に診断できた。しかし,全身状態が改善することなく永眠された。本症例から培養継続中である血液培養にグラム染色を行うことで,血液培養自動分析装置で陽性を示すよりも早期に原因菌を推測できることが示唆された。実施には課題もあるが,検討に値する方法であり,この方法を臨床に周知・啓蒙したい。

  • 西原 佑昇
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/03/29
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    患者は80歳代女性。他院にて白血球高値を指摘され精査目的で当院受診した。当院検査所見:WBC 11,100/μL(LY 71.5%),Hb 12.6 g/dL,PLT 29.1万/μL。表面マーカー解析:CD2+, 3+, 4+, 5+, 7+, 8+。以上よりT-PLLと診断された。診断当初は経過観察となったが,途中病状の増悪を認め治療開始となった。しかしフルダラビン療法およびTHP-COP療法ともに効果なく,難治性CLLに対する分子標的薬Alemtuzumab(ALZ)の適応となった。ALZ投与後Day 3でWBCは正常域に達し,病状は劇的に改善した。ALZ投与ガイドラインに沿って最大12週間投与され,終了2ヶ月目の現在,状態は安定し継続加療中である。今回,新薬の奏効により予後不良のT-PLLの治療に大きな期待を抱く結果を得た。一方で我々検査技師としては,治療による大幅な検査値の変動に対し,その要因を把握することは精度保証の観点から非常に重要である。医学の進歩が著しい現代において,新薬や治療についても情報収集をすることは,我々の新たな責務といえる。

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