医学検査
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64 巻, 6 号
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特集論文
  • 渡邉 眞一郎, 坂場 幸治, 山本 慶和, 通山 薫, 大畑 雅彦, 三島 清司, 久保田 浩, 西浦 明彦
    原稿種別: 特集論文
    2015 年64 巻6 号 p. 639-643
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    好中球比率や好中球数は基本的検査であるが,好中球の形態学的判断基準や基準範囲は未だ標準化が達成されていない。従来,日本臨床衛生検査技師会(JAMT)の「血液形態検査に関する勧告法」(1996年;日臨技案)と日本検査血液学会(JSLH)の「好中球桿状核球・分葉核球」の分類標準(2003年;学会案)の二つの分類基準が併存してきたが,その採用率は日臨技案約80%,学会案10~20%と報告されている。その結果,採用基準の違いによって,桿状核球の値が基準範囲も含め施設間で明らかに異なることが判明し,少なからぬ混乱を招いて来た。この現状を打開すべく2013年10月,JSLH血球形態標準化小委員会は好中球桿状核球と分葉核球の鑑別に関して,日臨技案と学会案を折衷し日常業務形態に即した新しい分類基準(新学会案)を合意した。2013年12月,JAMTとJSLHは新学会案の普及活動を協同で行う方針を合意し,この目的のためJAMT 6名,JSLH 5名,計11名の委員からなる「血球形態検査標準化合同ワーキンググループ」(合同WG)を新たに結成し,2014年度より活動を開始した。合同WGの目標は以下の通りである。1)新学会案の基礎的検討と臨床的妥当性を検証する。2)その成果をもとに新学会案準拠アトラスを作成し,JAMT各支部の形態学研修を通じて全国的に普及させる。3)精度管理調査や教科書への新分類法採用により確立した分類法とする。現在,第1目標は満足すべき成果を得て,第2目標を推進しているところである。
  • 山口 孝一, 大畑 雅彦
    原稿種別: 特集論文
    2015 年64 巻6 号 p. 644-649
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    好中球系細胞の新分類基準の臨床応用について検証を行った。対象は生化学・免疫学的検査および血算項目がすべて基準値内であった健診検体50例とCML症例より作成したバーチャルスライドの細胞判定を12施設87名(一部個人参加あり集約した)に依頼した。またフォトサーベイ60細胞とSIRSを含む臨床検体74症例を用いて細胞判定の検証を行った。健診検体は桿状核球(band)比率は0.5~6.7%では全国平均:0.5~6.5%とほぼ同様の値を示した。バーチャルスライドは施設間差があり,左方または右方優位などの特徴を示し,個人のカウントがそのまま施設の特徴を表していた。フォトサーベイは80%以上一致率で評価すると,新分類基準の再現性は良好であった。またSIRS症例の検証ではband比率はバイタルサイン(vital signs;以下バイタル)と相応して増減し,日常臨床の現場においても問題なく使用できると考える。
  • 志賀 修一
    原稿種別: 特集論文
    2015 年64 巻6 号 p. 650-654
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    好中球の目視区分(形態学的分類)をどれだけの施設が意識をして分類しているのであろうか。1996年日本臨床衛生検査技師会の血液形態標準化委員会が「血液形態検査に関する勧告法」を発表して久しい。その後,2000年には日本検査血液学会が設立。標準化委員会の下部組織である血球形態標準化小委員会による好中球の新規目視分類の提案が進められた。しかし,実状は日本臨床衛生検査技師会勧告法に基づいて運用されている施設がほとんどであり(約8割),日本臨床衛生検査技師会勧告法に変わって,日本検査血液学会でとりまとめた目視区分が,日本の血液検査の現場ではなかなか受け入れられてこなかった。今回,日本臨床衛生検査技師会と日本検査血液学会での血球形態標準化合同ワーキンググループを立ち上げ,今後の好中球(分葉核球,桿状核球)の目視区分(分類)法について再度,新目視区分法を提案することになった。今回,これまでの歴史的な背景をもう一度見直し,日本臨床衛生検査技師会と日本検査血液学会合同で考案した好中球の新目視区分法を,検査現場でどのように捉え普及させるかを,自動血球分析装置の性能や国際標準化の動向も踏まえながら考察する。
  • 山本 慶和, 坂場 幸治, 渡邉 眞一郎, 通山 薫, 大畑 雅彦, 三島 清司, 久保田 浩, 西浦 明彦
    原稿種別: 特集論文
    2015 年64 巻6 号 p. 655-665
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    目的:血球形態標準化ワーキンググループ(WG)は日本臨床衛生検査技師会と日本検査血液学会において血液形態検査の標準化を協同で行う方針で結成された。血球形態標準化WGでは日本検査血液学会血球形態標準化小委員会より提唱された好中球系細胞の新分類基準に基づき,健常者を対象にノンパラメトリック法より得られた白血球目視分類の共用基準範囲を設定し,これを全国的に普及させる。方法:基準個体の除外基準は,「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案」(日本臨床検査標準化協議会;JCCLS)を用いた。健常対象者を医療施設における健康診断受診者または臨床検査部に勤務している職員とした。性および年齢が均等に分布するように考慮し936基準個体とし,対象年齢の範囲は18~67才とした。目視分類は認定血液検査技師またはその指導のもと血液検査を担当する技師が好中球系細胞の新分類基準に従い400倍の視野にて200個分類した。目視分類の対象項目は好中球桿状核球,好中球分葉核球,リンパ球,単球,好酸球,好塩基球とした。結果:基準個体値のCBC項目の分布はJCCLSの基準範囲と一致し,基準個体の妥当性を確認した。目視分類項目は性,年齢間差を認めなかった。パラメトリック法およびノンパラメトリック法による基準範囲は一致し,ノンパラメトリック法にて設定した。結論:日本全国で共用するための末梢血液の白血球目視分類の基準範囲を設定した。この基準範囲の普及のため日本臨床衛生検査技師会のネットワークを活用して全国的な普及を行う。
総説
  • 岡山 直子, 西岡 光昭, 中原 由紀子, 宮原 悠太
    原稿種別: 総説
    2015 年64 巻6 号 p. 666-674
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    遺伝子検査が臨床検査へのサービスとして求められているものは,様々な種類のサンプルによる解析および限られたサンプル量での情報提供を短時間で行うことである。そこでこれまでに我々が行ってきた核酸抽出を中心に遺伝子検査の変遷についてまとめた。末梢血液検体からはフェノ・クロ法,NaI法,抽出装置によるDNA収量の比較を行った。FFPE検体からは脱パラフィン操作の影響,ホルマリン固定時間,パラフィン包埋の影響を検討した。HE染色標本を用いてマイクロダイセクションとレーザーマイクロダイセクションによる目的部位の収量を比較した。さらに今後遺伝子検査の主力になると予想される自動遺伝子解析装置についてまとめた。またこれまでに行われてきた日本臨床検査技師会研修会を振り返り,今後,我々検査技師の力がより発揮できる遺伝子検査に期待したい。
原著
  • 鈴木 更織, 谷 涼子, 加藤 恵子, 尾崎 真澄美, 田中 直宏
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻6 号 p. 675-679
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    粥状動脈硬化を基盤とする冠動脈疾患患者では,下肢の閉塞性動脈硬化症を合併すると予後不良となることが明らかにされている。総頚動脈(CCA)および大腿動脈(FA)の内膜中膜複合体肥厚度(IMT)と下肢動脈閉塞の指標であるankle-brachial index(ABI)との関連は不明である。我々は,冠動脈疾患の既往があり二次予防目的で当院循環器外来に通院している患者213名を対象とし,CCAおよびFAの平均IMT(mIMT)とABIとの関連を調べた。CCA mIMT,FA mIMT,ABIの中央値は,それぞれ0.77 mm,1.71 mm,1.05であった。CCA mIMTが0.77 mm以上の群と0.77 mm未満の群では,ABI値とABI < 0.9の頻度について両群間で有意差を認めなかった。一方,FA mIMT 1.71 mm以上群では1.71 mm未満の群に比較してABI値は有意に低値であり(1.01 vs. 1.08, p < 0.001),ABI < 0.9の頻度が有意に高率であった(25.7% vs. 2.9%, p < 0.001)。ABI < 0.9に対するCCA mIMTとFA mIMTのROC曲線を算出したところ,AUCはCCA mIMTで0.555(0.442–0.668),FA mIMTで0.772(0.682–0.852)であった。冠動脈疾患の二次予防患者では,CCA mIMTではなく,FA mIMTが下肢のABIの低下と関連していることが示唆された。
  • 谷野 洋子, 木村 武史, 牛山 正二, 倉橋 智子, 京谷 憲子, 山田 幸司, 安本 都和, 中西 雅樹
    原稿種別: 原著
    2015 年64 巻6 号 p. 680-685
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    Clostridium difficile感染症診断の際には,迅速検査として便検体から直接EIA法を行う検査方法が一般的に用いられているが,毒素検出感度が低いことが問題となっている。そのため,毒素検出を行うためC. difficileの培養を行い(toxigenic culture; TC),発育コロニーから毒素蛋白をEIA法で検出する方法を用いて毒素産生株の検出感度を上げるための手順書を作成した。その中で,TCに使用する培地やEIA法を行う際の菌液濃度によって毒素反応に影響が出ることが判明した。検討の結果,純培養時の培地にチョコレート寒天培地を使用し,菌液濃度をMcFarland(McF)3.0に調整したところ,PCR法陽性であった24件中5件が陰性となり感度79%であったが,CCMA-EX培地を使用し,菌液濃度をMcF 4.0以上にするとPCR法と結果が完全に一致し24件全てが陽性となった。このことから,TCを日常業務として実施する際には,手技による偽陰性をなくすためにも,使用培地や菌液濃度をマニュアルで決めておくなど,統一した作業手順の確立が重要である。
症例報告
  • 梅田 豊, 林 寿朗, 今井 利, 福井 康雄
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻6 号 p. 686-691
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    血液培養よりCorynebacterium jeikeiumが検出された2例を報告する。症例は,急性骨髄性白血病の化学療法目的で入院加療していた55歳と37歳の男性。両患者とも化学療法剤の治療過程に血液培養からC. jeikeiumが検出された。血液培養陽転時間と患者が極度の免疫不全状態下であったことから起因菌と判断され,vancomycin(VCM)投与が開始された。その後,同菌の検出は認められず原疾患の治療が継続となった。今日の医療技術の発達にともない日和見感染症が増加している。血液培養よりC. jeikeiumが検出された場合には,患者背景と血液培養陽転時間から起因菌であるかを判断し,起因菌とされれば推奨抗菌薬であるVCMへの薬剤変更を検討する必要がある。
  • 森下 真由美, 宮木 康夫, 岡本 大輔, 湯月 洋介, 芳林 浩史, 小野 一雄
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻6 号 p. 692-697
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    アポクリン癌の2症例を経験したので,その乳腺エコー画像の特徴について報告する。症例1は60歳代,女性。アポクリン腺症と診断後,6年間の長い経過で乳腺腫瘤の大きさに著変ないものの,乳腺エコーで前方境界線の断裂,微細点状高エコースポットおよび血流シグナルを認めることより乳頭腺管癌を疑い,再度の組織診にてアポクリン癌と診断された症例であった。症例2は60歳代,女性。MRIで病変の指摘あるも乳腺エコーで明らかでなく,およそ3年の経過にて乳腺エコーで不整な低エコー腫瘤を認め,硬癌を疑い,組織診にて非浸潤性アポクリン癌と診断された症例であった。アポクリン癌の乳腺エコー画像の特徴として,2症例とも不整な低エコー腫瘤として指摘された。いずれも良性病変として経過観察されていたが,長い経過にて乳腺エコーで悪性の可能性がある所見が認められた。腫瘤の大きさの変化に関わらず,性状を注意深く観察することは重要であり,長期間でのその性状変化をとらえるのに乳腺エコーは有用であった。
  • 関 修, 鈴木 千恵, 佐々木 麻美, 桑島 幸子, 佐藤 亜耶, 菅原 新吾, 三浦 弘守, 長沢 光章
    原稿種別: 症例報告
    2015 年64 巻6 号 p. 698-704
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    指状嵌入樹状細胞肉腫(interdigitating dendritic cell sarcoma; IDCS)は,樹状細胞の一種である指状嵌入樹状細胞を由来とする非常に稀な疾患である。今回我々は,皮膚に発生したIDCSが骨髄に浸潤したと思われる症例を経験した。皮膚生検の組織像では,核小体が明瞭な類円形腫大核を有する大型の異型リンパ球様細胞が広く浸潤しており,免疫組織化学染色にてS100陽性,CD68陽性,CD1a陰性,CD21陰性,CD23陰性であったことからIDCSと診断された。骨髄生検では明らかな異型細胞浸潤は確認できなかったものの,骨髄像検査で異型細胞がわずかながら観察され,腫瘍細胞が骨髄に浸潤している可能性が示唆された。皮膚病変が比較的広範囲で,骨髄浸潤が疑われたことから,化学療法の適応と考えられABVD療法が行われた。
技術論文
  • 中島 昌哉, 佐草 貴清, 岡村 邦彦, 片野 武司, 佐々木 泰信, 荒井 政和, 堀内 啓
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 705-712
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    心臓由来脂肪酸結合蛋白(heart-type fatty acid-binding protein; H-FABP)は,急性冠症候群の診断において超急性期心筋マーカーとして用いられている。今回我々は,積水メディカル株式会社より新たに開発されたH-FABP定量試薬「ラピッドチップ®H-FABP」の基礎的検討を行った。本試薬の性能確認を行うため,精密度,測定範囲,妨害物質,プロゾーン現象を検討した。更に本キットと他の市販キットとの比較を行った。その結果,新たに開発されたポイントオブケアテスティング(POCT)キット「ラピッドチップ®H-FABP」は,検査室でのルーチン検査において精密度は良好であり,簡便な手法であると考える。また,緊急検査や在宅診療時,災害時における心筋梗塞の診断・治療においても活躍が期待される。
  • 田村 祥子, 髙木 豊, 櫻田 裕太, 青木 麻衣, 吉田 一樹, 森本 進, 岸 恵, 勝部 康弘
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 713-718
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    KL-6測定試薬「ナノピア®KL-6エーザイ」を汎用自動分析装置であるLABOSPECT 008を用いて基本性能の検討を行った。同時再現性および日差再現性はCV 0.88~1.75%と良好であった。検出限界は16.0 U/mL,希釈直線性は約5,000 U/mLまで確認できた。共存物質についても検討範囲内で影響を認めなかった。従来法との相関関係は,回帰式y = 1.03x − 40.0,相関係数r = 0.995と良好な結果が得られた。以上より,本試薬は基本性能が良好であることからLABOSPECT 008を用いた「ナノピア®KL-6エーザイ」によるKL-6の測定は診察前検査などの迅速測定に有用と考えられた。
  • 佐藤 雅美, 香川 葉子, 菅﨑 幹樹, 笹田 倫子, 畑 美智子, 高松 典通, 中尾 隆之, 土井 俊夫
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 719-726
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    我々は,抗菌薬長期投与をうけた患者2名から,ヒツジ血液寒天培地M58で非典型的集落である「微小集落」を示し,グラム陽性球菌用培地のコロンビアCNA 5%ヒツジ血液寒天培地(CNA)で典型的集落を示したMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)を分離した。そこで,各メーカーの血液含有培地やMRSA選択培地を用いて,保存菌株を好気培養,5%炭酸ガス培養および嫌気培養し,発育状況を5日間観察した。血液含有培地では,CNAとヒツジ血液寒天培地M70は1日目で典型的集落を示したが,多くの培地は非典型的集落を示した。MRSA選択培地では未発育が多かった。微生物感受性分析装置Microscan WalkAway 96 SI(好気培養)での測定は発育不十分で測定不能となり,パネルを5%炭酸ガス培養および嫌気培養した場合では,Methicillin-sensitive Staphylococcus aureusStaphylococcu capitis subsp. capitisとなり誤同定となった。MRSA検出において,非典型集落の存在を念頭におき,抗菌薬の長期投与患者ではMRSA選択培地に加えて非選択培地で培養する必要がある。そして,培地による発育性の差異がみられた場合には,患者情報の検索や発育性を用いない検査法での確認を実施し,注意深く判断する必要があると考えられた。
  • 保田 奈緒美, 下坂 浩則, 大久保 滋夫, 池田 均, 矢冨 裕
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 727-736
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    特異的IgE抗体測定試薬「アラスタット3gAllergy」の基本性能と有用性を評価した。同時,日差再現性は良好であり,最小検出感度も0.048~0.061 IUA/mLと良好であった。希釈直線性は低濃度から高濃度域まで良好な直線性が得られた。さらに,28種のアレルゲン特異的IgE抗体についてイムノキャップとのデータ比較検討を行ったところ,2法の相関性は全てにおいてスピアマン順位相関係数0.7以上と高い相関性が認められたが,ネコ上皮・皮屑,アスペルギルスおよび卵白でアラスタット3gが高値傾向となり,イヌ皮屑,小麦およびピーナツでイムノキャップが高値傾向となるなど,アレルゲンによる測定値の特徴が認められた。
  • 高橋 篤史, 木村 泉美, 樋口 貴洋, 伊藤 克彦, 向山 弘昭, 譚 策, 笹川 裕
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 737-742
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    イムノクロマトグラフィ法に白黒写真の銀増幅技術を応用した高感度インフルエンザ自動判定キット富士フイルム(株)「富士ドライケムIMMUNO AGカートリッジFlu AB」と他2社のインフルエンザ迅速診断キットについて比較検討を行った。対象患者131名から得られた鼻腔拭い検体を用いて,RT-PCRを基準とした各キットの陽性一致率/陰性一致率/全体一致率を算出した。インフルエンザA型に対して本キットで100% / 96.0% / 97.7%,対照キット①で83.9% / 98.7% / 92.4%,対照キット②で75.0% / 100% / 89.3%であった。またインフルエンザB型に対しては本キットで86.7% / 98.3% / 96.9%,対照キット①で73.3% / 98.3% / 95.4%,対照キット②で60.0% / 99.1% / 94.7%であった。本キットは対照キット①,②に比べA型,B型に対する陽性一致率,全体一致率が共に高かった。RT-PCR陽性,問診票で38℃以上の発熱があった症例にて発症時間と各キットの陽性率を比較した。発症から24時間以内の症例で,本キットは対照キット①,②よりも陽性率が高かった。本キットは高感度であるためウイルス量が少ない検体でも陽性判定できる可能性が高く,早期診断に有用であると考えられる。
  • 佐伯 勇輔, 大﨑 博之, 近藤 めぐみ, 檜垣 めぐみ, 山中 睦美, 近藤 喜代孝, 則松 良明
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 743-748
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    尿細胞診においては特に集細胞率がその精度に影響を与えるため,BDサイトリッチTM(BD CR)法と従来法(2回遠沈法)における標本上の上皮細胞数について比較検討を行った。その結果,上皮細胞数はBD CR法で有意に高かった。尿蛋白陽性と潜血陽性の検体でもBD CR法で上皮細胞数が有意に高い結果を示した。また,塗抹面の細胞分布においても2回遠沈法では偏りと重積を認めたがBD CR法では均一に分布していた。さらに,蛋白尿では2回遠沈法の背景に蛋白凝集物が出現する傾向にあった。BD CR法は,集細胞率が高いというだけでなく,用手法で実施可能であるため中小規模施設でも導入可能という利点を有している。そのため,BD CR法は尿細胞診の精度向上と標準化に有用と考える。
  • 田中 雅美, 宿谷 賢一, 森田 賢史, 久末 直子, 影山 祐子, 大久保 滋夫, 下澤 達雄, 矢冨 裕
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 749-754
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    シスメックス株式会社(以下,シスメックス社)より開発された多項目自動血球分析装置XN-550による髄液細胞数算定の基礎的検討を行った。再現性,直線性,最小検出感度,目視法との相関性は良好な結果が得られた。しかし,変性した細胞を含むドレナージ検体では,目視法との乖離が認められ,これらの細胞は側方蛍光強度の低い位置にプロットされた。本装置は簡便かつ迅速な結果報告が可能で,スクリーニング検査に有用であると考えられる。
  • 市原 洋士, 佐藤 康子, 浅田 高至, 新井 浩司, 渡邉 清司, 井上 徳浩, 鎌倉 史郎, 星田 義彦
    原稿種別: 技術論文
    2015 年64 巻6 号 p. 755-759
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    Thymus and activation regulated chemokine(TARC)は統一名称CCL17を有するケモカインで,即時型過敏症においてはアレルゲンがTh2細胞の活性化を誘導する際に発現が増加し,血中濃度が著増する。血清TARC値はアトピー性皮膚炎の日常診療において重症度や病勢の客観的指標として用いられている。2014年4月,HISCL®TARC試薬を使用したCLEIA法による血清TARC値測定が保険適用となった。これにより従来法に比べ測定時間が著明に短縮し,患者は来院当日にアトピー性皮膚炎の診断や病態把握を行うことが可能となった。今回,筆者らは本測定法に対する高濃度域試料を含んだ測定幅全域にわたる基礎的検討を行ったので報告する。対象は当院にて血清TARCを測定した患者の残余検体及び当院職員の血清合計51例。これを用いて同時再現性,日差再現性,希釈直線性,相関性,共存物質の影響について検討した。結果はいずれも良好で,特に血清TARC値50,000 pg/mL以上の検体を用いて希釈直線性を確認できた。本検討により,HISCL®TARC試薬を用いたCLEIA法による血清TARC測定法は当院の日常ルーチン検査業務に問題なく導入できることが分かった。今後,アトピー性皮膚炎の早期診断,早期治療,フォローアップに貢献できるものと思われる。
資料
  • 高柳 美伊子, 二瓶 司, 片山 暁子
    原稿種別: 資料
    2015 年64 巻6 号 p. 760-766
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    茨城県の平均寿命は全国平均に比べ,男性で0.5歳,女性で0.6歳低いと言われている(茨城新聞2013年8月4日)。この事実に対し,救命救急センターまでの距離や人口10万人当たりの病床数および疾患別標準化死亡比が平均寿命にどのように影響しているかを検討した。検討結果は,以下のとおりである:(1)茨城県全体では,心疾患および肺炎による標準化死亡比が救命救急センターまでの距離と有意な正の相関があった。(2)男女別では,男性の平均寿命を目的変数として重回帰分析を行った結果,有意な相関が見られたのは脳血管疾患,糖尿病および肺炎による標準化死亡比(負の相関)ならびに人口10万人あたりの病床数(正の相関)であった(糖尿病による標準死亡比は全国下位から2位であった)。一方女性の平均寿命は,糖尿病および心疾患の標準化死亡比と有意な負の相関があった(糖尿病による標準死亡比は全国下位から5位であった)。(3)救急医療体制の改善(距離の短縮)と心疾患の標準化死亡比の低下との相関は有意ではなかった。これは,ドクター・ヘリ事業の整備により地域差が小さくなったためと思われる。しかし,平均寿命が全国ワースト50位以内となっている鹿行地区の対策が急がれる。対策として,病床数を増やすことは医療費の問題もあり,容易ではないかもしれない。糖尿病,心疾患,脳血管疾患などの生活習慣病の対策を行うことで効果が期待できよう。
  • 森田 幸, 根ヶ山 清, 三好 そよ美, 堀尾 美友紀, 荒井 健, 村尾 孝児
    原稿種別: 資料
    2015 年64 巻6 号 p. 767-771
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2016/01/10
    ジャーナル フリー
    MRSA選択分離培地(MRSA-CI寒天培地,CHROMagar MRSA II寒天培地,MDRS-K寒天培地)について発育支持能および鑑別性能の比較検討を行った。発育支持能をMiles & Misra法により評価した結果,3種類の培地に差は認められず,ほぼ同等の発育支持能を有していた。鑑別性能については,鼻腔分泌物等の臨床材料120検体を用いて,24時間および48時間培養後に発育状況を判定した。24時間判定におけるそれぞれの培地の感度/特異度は,MRSA-CIが88.4% / 100%,CHROMagar MRSA IIが90.7% / 100%,MDRS-Kが88.4% / 100%であった。48時間判定においては,MRSA-CIが95.3% / 100%,CHROMagar MRSA IIが95.3% / 100%,MDRS-Kが95.3% / 97.4%であり,3培地ともほぼ同程度であった。また,いずれの培地においても24時間判定に比べて48時間判定で検出感度が向上した。MRSA選択分離培地は,簡便性に優れたMRSA検出法であるが,菌量が少量の場合や呈色が弱い菌株では,検出・判定が困難となることもあり,各培地の特性を十分把握したうえで適切に使用する必要があると考えられた。
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