医学検査
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65 巻, 6 号
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原著
  • 小川 里美, 岩田 幸蔵, 久野 臨, 小島 伊織, 堀部 良宗
    原稿種別: 原著
    2016 年 65 巻 6 号 p. 605-611
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    神経内分泌型非浸潤性乳管癌(neuroendocrine ductal carcinoma in situ; NE-DCIS)の細胞学的所見について検討した。病理組織学的にNE-DCISと診断され,穿刺吸引細胞診を実施した5例を対象とした。年齢は50歳代から80歳代で平均年齢70.6歳であった。NE-DCISの細胞学的特徴は,出血性から清の背景に粘液様物質や裸血管を認めた。細胞採取量が多く,結合性の低下した集塊ないし孤立散在性に出現し,筋上皮の付随はみられなかった。細胞形態は多辺形から類円形で,細胞質はライトグリーンに淡染性で顆粒状を呈していた。核は円形から類円形で偏在傾向を示し,クロマチンは微細顆粒状から細顆粒状に軽度増量し,小型の核小体が1から数個みられた。肉眼的に,腫瘍の大きさは4例が10 mm以下で,1例が最大径25 mmであった。病理組織学的に,腫瘍細胞は拡張した乳管内に充実性および索状に増殖していた。間質には毛細血管が豊富にみられ,粘液貯留も観察された。免疫組織学的検索では,シナプトフィジン,クロモグラニンAは4例陽性,CD56は3例陽性であった。Ki67は,検索した4例について0%から19.1%(平均8.5%)であった。本症例と鑑別を要する腫瘍は,乳管内乳頭腫であった。NE-DCISは,結合性が低下し散在性細胞の出現,筋上皮細胞を認めない,さらに核の偏在傾向や顆粒状の細胞質を有することが最も重要な鑑別点に挙げられた。

  • 河野 浩善, 三好 夏季, 竹野 由美子, 山本 真代, 沖川 佳子, 野田 昌昭, 兼丸 恵子, 飯伏 義弘
    原稿種別: 原著
    2016 年 65 巻 6 号 p. 612-619
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    近年,真性赤血球増加症(PV)の約98%でJAK2-V617FまたはJAK2 exon 12変異を認め,本態性血小板血症(ET)の約80%でJAK2-V617F,MPLCALR変異のいずれかを認めることが報告されている。今や骨髄増殖性腫瘍において遺伝子変異の解析は診断上必須であるにもかかわらず,限られた施設でしか検査できないのが現状である。我々は,PV,ETおよび各反応性血球増加症における末梢血液検査データについて後方視的解析を行い,スクリーニングへの応用やJAK2-V617F変異の予測について検討した。その結果,IPF countはPVおよびET症例群で有意に高値を示し,NAP scoreはPVおよびETの中でもJAK2陽性症例群において有意に高値を示すことが分かった。さらに,JAK2-V617F変異予測におけるROC解析の結果,IPF countおよびNAP scoreはAUCが0.9以上と予測能が高かった。我々はIPF countのカットオフ値を10,000/μL(真陽性率100%,偽陽性率16.7%),NAP scoreを250(真陽性率85.7%,偽陽性率25.0%)に設定し,症例をIPF count 10,000/μL未満&NAP score 250未満のA群,IPF count 10,000/μL未満&NAP score 250以上のB群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250未満のC群,IPF count 10,000/μL以上&NAP score 250以上のD群に分類した。A,B群には各反応性血球増加症が91.7%と高率に含まれ,D群はJAK2変異陽性率が94.7%と高かった。このように,PV,ETにおいてIPF countおよびNAP scoreは,反応性血球増加症例との鑑別に有用であり,迅速かつ簡便にJAK2-V617F変異を予測できる可能性が示唆された。

技術論文
  • 石﨑 大輝, 内本 高之, 齋藤 真琴, 澤部 祐司, 松下 一之
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 6 号 p. 620-628
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    尿定性検査は腎・泌尿器系疾患のスクリーニング検査として重要である。尿試験紙法は化学的な原理を用いている項目が多く,投与薬剤における尿中代謝物などの影響を受けやすい。そのため,偽陽性や偽陰性になることが知られている。今回,尿定性分析装置3機種(オーションマックスAX-4060:アークレイ株式会社,US-3100R plus:栄研化学株式会社,クリニテック ノーバス:シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社)を使用する機会を得た。そこで,各機種の性能把握を目的とした検討を行った。定性検査の一致率では日常分析装置として使用しているオーションマックスAX-4030:アークレイ株式会社と3機種で比較検討をした。また,偽陽性検体における異常反応検出機能の比較およびアスコルビン酸の影響について検討を行った。定性検査の一致率では3機種ともに95%以上と良好なデータを示した。しかし,偽陽性検体における異常反応検出機能やアスコルビン酸による影響では各機種ともに独自の方式をとっているため,異なるデータを示した。このことから,尿定性分析装置を使用する際には,機種の特徴を把握したうえで日常検査に用いることが重要であると考える。

  • 古村 菜穂子, 小松 和典, 河野 肇, 古川 泰司
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 6 号 p. 629-635
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    抗核抗体の検出は膠原病のスクリーニング検査に用いられ,間接蛍光抗体法が広く用いられてきたが特異性や迅速性に欠けていた。今回化学発光酵素免疫測定法を原理とする全自動臨床検査システムSTACIA搭載試薬ステイシアMEBLuxTMテストANAの基礎的検討を行った。基本性能は概ね良好であり,従来法である間接蛍光抗体法と比較して感度・特異度ともに良好な結果が得られた。本法は従来法と比較して測定時間が大幅に短縮されるため,膠原病のスクリーニング検査として有用であると考えられる。

  • 久住 裕俊, 村越 大輝, 小杉山 晴香, 雨宮 直樹, 薗田 明広, 島田 俊夫
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 6 号 p. 636-641
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    ACSの客観的な診断指標として心筋バイオマーカーの測定が重要となっているが,心筋バイオマーカーの選択は施設規模や施設を取り巻く環境に影響を受けるため,個々で異なっているのが現状である。本研究において,我々は,急性胸痛を主訴として当院救急外来を受診し,総合的にACS・非ACSと診断された患者を対象に,ACS診断における高感度心筋トロポニンI,T(hs-cTnI, hs-cTnT)測定の有用性についてH-FABP,CK-MB massと比較検討した。ROC解析の結果,hs-cTnI,hs-cTnT,H-FABP,CK-MB massのAUC値はそれぞれ0.955,0.946,0.827,0.896,Cutoff値は155.5 pg/mL,91.0 pg/mL,25.6 ng/mL,6.4 ng/mLであった。また,各マーカーのAUCを各々2マーカー間で比較検討した結果,hs-cTnI,hs-cTnTはH-FABP,CK-MB massと比較してACSに対する診断能力が高く,CK-MB massはその中間的な診断能力を有する心筋バイオマーカーであると考えられた。従来の心筋バイオマーカーによるACSの診断能力は決して低くはないが,高感度心筋トロポニンははるかに優れた診断能力を有していた。高感度心筋トロポニンはACSの早期診断・早期治療に有用な心筋バイオマーカーとして,第一に選択すべきであると結論する。

  • 園山 里美, 宇野 直輝, 岡田 侑也, 川良 洋城, 清水 愛李, 佐々木 大介, 長谷川 寛雄, 栁原 克紀
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 6 号 p. 642-648
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    全自動免疫測定装置cobas e 411等の専用試薬として新たに開発されたHTLV-1/2抗体測定試薬「エクルーシス試薬Anti-HTLV I/II」の基礎性能評価を行った。本試薬は電気化学発光免疫測定法を測定原理とするダブル抗原サンドイッチ法を用いた第3世代の測定試薬である。本試薬の基礎性能に関する再現性や共存物質の影響などに問題は見られなかった。従来試薬3試薬との相関は,判定一致率99.7~99.8%と良好であった。検出感度や特異性においても優れており,測定時間も18分と短いことから,HTLV-1抗体及びHTLV-2抗体測定試薬として日常検査に有用である。

資料
  • 堀田 美佐, 安藤 由香理, 加藤 秀樹, 永山 円, 遠藤 美紀子, 牧 俊哉, 山中 泰子, 湯浅 典博
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 6 号 p. 649-654
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    入院患者において始業時までに血液検査結果が報告されていることは,患者の病態把握,診断・治療の迅速化をもたらし,医療の質の改善につながる。2013年4月,入院患者の血液検査結果を始業時までに報告する目的で,臨床検査技師が午前7時30分から病棟に出向いて検体を回収し,これを直ちに測定するようにした。この結果,入院至急検体の約8割が午前9時までに報告できるようになった。また,提出検体数のピークが分散化され,提出検体数の多い時間帯(午前8時30分から9時30分)の外来検体のturn around time(TAT)も短縮した。この体制整備から30カ月経過した現在,午前8時までに採血される検体数が増加し,入院検体の9時までの報告率,外来検体のTATはさらに向上している。

  • 秋元 誠, 堀江 里美, 小野田 靖春, 宮崎 崇, 野村 秀和, 芳賀 厚子, 赤津 義文, 大塚 喜人
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 6 号 p. 655-659
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    Streptococcus agalactiae(Group B streptococci; GBS)感染症においてペニシリン系抗菌薬が第一選択薬として使用されるが,近年ペニシリン低感受性GBSが散見されるようになった。2010年から2014年までの5年間に竹田綜合病院,河北総合病院,大分中村病院,松波総合病院の4施設において臨床材料より分離されたGBS 1,465株について感受性の動向を調査するとともに,ペニシリン低感受性GBS(GBS with reduced penicillin susceptibility; PRGBS)が検出された患者背景についても調査した。PRGBSは51株検出され,その材料の内訳は呼吸器系材料43株,泌尿・生殖器系材料5株,褥瘡3株であった。微量液体希釈法によるpenicillin G(PCG),erythromycin(EM),levofloxacin(LVFX),cefepime(CFPM),vancomycin(VCM)の5種類の抗菌薬の感受性率を調査すると,PRGBSにおいてそれぞれPCG 0%,EM 24%,LVFX 27%,CFPM 22%,VCM 100%であった。呼吸器系材料43株のPRGBSの患者背景(全43名)は,38名(88%)が60歳以上の患者,39名(91%)が長期臥床患者であり,呼吸器系材料から検出されることが多い。以上のことから医療施設内での伝播に注意する必要がある。

  • 楠木 晃三, 米田 登志男, 花田 純子, 川崎 万里子, 浦 安美
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 6 号 p. 660-666
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    当院では採血支援システムの構築に当たり,外来診療での予約診療や診療前検査をより円滑に運営することを目的として,診療内容を優先した採血方法を取り入れた。優先する内容としては,診察予約時間,CT・エコー検査の予約時間,固形がん治療予定患者,紹介患者の採血が有る場合とした。本システムの稼働により,採血スタート時の待ち患者のピークは解消され,患者は診察予約時間に合わせて採血に来るように変わり,患者が集中する時間帯を分散することができた。その結果として,採血待ち時間は大幅に短縮し改善された。また,固形がん治療予定患者,紹介患者については,時間帯とは無関係に最優先で採血するため,5分以内の待ち時間で採血が可能となった。

  • 山口 直則, 松居 由香, 石原 駿太, 下村 雅律, 岸本 光夫
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 6 号 p. 667-673
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    Epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異検査は肺癌治療における分子標的薬の使用適否や選択上,極めて重要である。検体の多くはホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin embedded; FFPE)標本が用いられているが,ホルマリン固定条件等によりDNAが断片化を来し,測定誤差の要因となっている。今回,2014年8月から2015年7月に当院において捺印細胞診標本(touch imprint cytology; TIC)が作製可能であった原発性肺癌18例を対象とし,EGFR遺伝子変異検査を実施した。検体種別間(FFPE標本とTIC標本)における,サンプル中のDNA濃度,変異の割合,リアルタイムPCRによるDNA品質評価について検討した。また,固定液別のDNA品質評価も行った。EGFR遺伝子変異は11例でみられた。検体種別による変異検出の有無に差はなく,変異領域もすべて一致した。TIC標本は変異の割合が高い傾向にあり,一方で,DNA濃度は低い傾向にあった。DNAの品質評価では,TIC標本は相対的にDNAクオリティー指数が高い傾向にあり,品質が良好と考えられた。また,アルコール固定はDNAの品質保持に優れた固定方法であった。今回の結果,相対的にTIC標本は変異含有率が高く,より低いDNA濃度で検査が可能である。そして,腫瘍細胞の分画塗沫や選択的回収が可能であり,良品質のDNAを保持できることが示唆された。TIC標本は過固定標本や腫瘍比率の低いFFPE標本の代用として有用であることが示唆され,FFPE標本と同等以上のDNA品質を有していると考えられた。

症例報告
  • 原田 あゆみ, 湯本 浩史, 白川 綾香, 山下 朋子, 宮平 良満, 石田 光明, 九嶋 亮治
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 6 号 p. 674-678
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は心不全等で高値を示すことが知られているが,強い心不全等が存在しないにも関わらずBNPが異常高値を示し,心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide; ANP)値と乖離した症例に遭遇した。そこで,その原因について検討し,推察される若干の知見が得られたので,報告する。症例は77歳,女性。他院で狭心症・高血圧で経過観察されていた。ANPは81.9 pg/mLであったが,BNPが35,347 pg/mLと異常高値を示したため,紹介受診となった。その後もBNPの異常高値が持続したが,臨床症状とは合致せず,心エコーや心電図からも原因は特定できなかった。一方,測定原理や測定法の相違によりBNP値に解離が生じている可能性を検討するため,蛍光酵素免疫測定法及び化学発光酵素免疫測定法で測定したが,同様の値を示した。また,非特異反応の有無を確認するために希釈直線性試験を実施したが,希釈測定による変化率は6%以内であった。また,異好抗体の一つであるHAMAや本法に使用されている標識酵素(アルカリフォスファターゼ;ALP)に対する抗体の影響を確認するために,それらの吸収剤を添加し測定したが,同様の値であった。さらにゲル濾過分析を行ったところ,患者検体にはBNP-32の分子量である3.5 kDaよりも高分子分画に免疫活性物質のピークを認めた。BNPの測定系は生理活性を有するBNP-32だけでなくpro-BNPも測り込んでいることが知られている。本症例では,pro-BNPに自己抗体等の結合,或いはpro-BNPからBNP-32に切断する酵素の欠損によりpro-BNPが異常に蓄積したことでBNP値が異常高値を示したと推察された。

  • 大国 千尋, 清水 祥子, 木村 紘美, 藤澤 義久, 堀江 稔, 宮平 良満, 九嶋 亮治
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 6 号 p. 679-684
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    アンダーセン・タウィル症候群(Andersen-Tawil syndrome; ATS)は,(1)U波を伴う心室性不整脈,(2)周期性四肢麻痺,(3)外表小奇形を3徴とするまれな遺伝性疾患である。内向き整流性カリウムチャネルであるKir2.1蛋白をコードしているKCNJ2遺伝子の変異が原因で発症する。心電図所見としてQU延長を伴う著明なU波と頻発する心室期外収縮(PVC),2方向性心室頻拍を認め,治療にはIc群抗不整脈薬であるフレカイニドの有用性が報告されている。症例は50代女性,ATSの3徴全てを満たし,QU延長(723 msec)を伴う著明なU波,PVC頻発を認め,遺伝子検索にてKCNJ2遺伝子変異陽性であった。ホルター心電図では総心拍の24%のPVC,2方向性心室頻拍を認め,フレカイニドの導入により9%までPVCが減少,動悸症状も改善した。ATSでは,増高したU波や2方向性心室頻拍が重要な所見となるため,心電図検査,ホルター心電図の解析では,QU時間,U波高,U波幅,PVCの極性などの情報にも着目する必要がある。

  • 久末 崇司, 宿谷 賢一, 田中 雅美, 常名 政弘, 大久保 滋夫, 増田 亜希子, 下澤 達雄, 矢冨 裕
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 6 号 p. 685-689
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性疾患であり,貧血などの造血障害や骨融解,腎障害など,様々な症状を呈する。また,多発性骨髄腫の髄膜浸潤は非常に稀である。我々は,髄液検査にて計算盤による細胞検査時に異常な細胞を認め,その後の迅速な対応につながった髄膜浸潤を有する多発性骨髄腫の1症例を経験したので報告する。症例は65歳,男性。歩行障害にて近医を受診し,骨髄検査の結果から多発性骨髄腫と診断された。化学療法にて一旦は全身の腫瘍の縮小や消失を認めたが,その後,髄液検査にて形質細胞様の細胞を多数認めた。直ちに担当医へ連絡し,追加検査を実施。細胞表面抗原解析や細胞診検査の結果から多発性骨髄腫の中枢神経浸潤と診断された。髄液検査は検体採取後すぐに結果の報告が可能な検査である。髄液検査で異常な細胞を検出することは,その後の迅速な対応につながり,治療方針や患者の予後に影響するため,我々は常日頃から異常な細胞の検出を念頭に置いて髄液検査を実施することが重要であると考えられた。

  • 島林 健太, 紙田 晃, 大栗 聖由, 佐藤 研吾, 福田 千佐子, 廣岡 保明, 杉原 進, 前垣 義弘
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 6 号 p. 690-694
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    Jerk locked back averaging(JLA)は,ミオクローヌスの筋放電をトリガーとし,その前後の脳波を加算平均することで,ミオクローヌスの起源を推定する方法である。主に皮質性ミオクローヌスの診断に利用されている。今回JLAを用いてミオクローヌスに先行する棘波を記録し,ミオクローヌスの起源を同定できた一例を経験したので報告する。症例は14歳10ヵ月男児。9歳8ヵ月時,頭部打撲後に全身強直発作が出現したが,頭部CT・MRIに異常は認められなかった。11歳頃より手指のミオクローヌスおよび振戦が出現。14歳時に生活に支障をきたすほどのミオクローヌスが出現したため,精査加療目的に当院へ入院となった。右小指外転筋のミオクローヌスをトリガーとし,トリガー前140 ms,後60 msの脳波を右手感覚野付近5箇所からJLAを導出した。JLAの結果,筋放電より約15.8 ms前に再現性のある二相性(陽性-陰性)の棘波を認め,左半球正中線付近において最大振幅を認めた。また,正中神経刺激によるsomatosensory evoked potential(SEP)にてgiant SEPと中枢伝導時間の延長を認めた。今回,ミオクローヌスの筋放電に先行する頭皮上の棘波,giant SEPおよび中枢伝導時間の延長を認めたため,本小児例のミオクローヌスは皮質下性ミオクローヌスと考えられた。

  • 永田 勝宏, 田中 佳, 松本 正美, 田中 千津, 新田 恭子, 宮澤 克人, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 6 号 p. 695-699
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2017/01/10
    ジャーナル フリー

    2,8-ジヒドロキシアデニン結晶(2,8-dihydroxyadenine; 2,8-DHA)は,黄~黄褐色で大小不同の球状結晶であり,アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adenine phosphoribosyl transferase; APRT)欠損症で生じる異常結晶である。症例は60歳代男性で,2012年に糖尿病と診断され糖尿病性腎症による慢性腎不全のため通院中であった。約2年後2,8-DHA結晶を疑う結晶を初めて検出,以後毎回検出した。化学的性状検査を確認し2,8-DHA疑いとして臨床に報告したが,赤外線分光分析で同定できずCTでも尿路結石は確認できなかったため,最終判定に苦慮した。その後遺伝子解析により,日本人変異遺伝子APRT*J型のホモ接合体APRT*J/APRT*J型であることが判明した。また,2,8-DHA初検出時期とeGFR悪化の時期が一致しており,2,8-DHA結晶自体が腎機能低下の一因である可能性が示唆された。2,8-DHAは結石でなくとも結晶自体が腎毒性に働くことがラットを用いた実験で証明されており,主治医とのディスカッションの中で高尿酸血症治療薬(2,8-DHAの生合成抑制作用も併せ持つ薬剤)の投薬が開始されることになった。本症例は検査室からの結晶報告を機に診断・治療に結びつき,尿沈渣検査が臨床に大きく貢献できた症例であった。

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