日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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ISSN-L : 1881-2503
20 巻, 3 号
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事例報告
  • 瀬戸山 博, 大野 辰治, 加藤 理史, 飛田 美乃
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 105-109
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     滋賀県がん診療連携協議会地域連携部会は、2010年、県下統一がん地域連携クリティカルパスの運用を開始した。がん地域医療連携制度の創成にあたり、患者と連携機関(診療所)の安心を担保するため、アウトカムチェック式のバリアンスシートを創作し、早期5大がんから地域連携クリティカルパスを開始した。県内連携風土の醸成過程を確認しつつ進行期、前立腺、緩和医療へと適応病期・がん種を段階的に拡大した。事務局に集約された開発・維持・啓発機能と能動性は、連携一括届出制度の確立、がん診療連携の促進に貢献した。県内事情を考慮した地域連携クリティカルパスは、独自の構成、運用、段階的適応拡大によって整備され、円滑ながん診療連携システムの普及に寄与した。

  • 丸山 公, 北村 登, 河野 肇
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 110-113
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     地方と異なり、都市部ではリウマチ医が多いため、医療介入は容易な反面、治療法は多種多様で、特に生物学的製剤が用いられるようになってからは、有害事象や合併症の悪化で重篤となった患者搬送に難渋することがしばしばある。われわれは年間365日24時間何時でも搬送可能な中核病院を設定し、東京都城北地区を中心としたリウマチ膠原病治療を安心して行えるネットワークを構築した。また、年3回の講演会・症例検討会を通じ医療連携の強化に努めた。その結果、登録医や登録施設数も年々増加し、コメディカル参加者も増え、肝炎の劇症化や間質性肺炎など重篤な有害事象による中核病院への搬送が年々減り、搬送者救命率は100%であった。本ネットワークは、都市型リウマチ膠原病の医療連携のモデルとして相応しいものと思えた。

  • 電子カルテに連携する持参薬システムがない環境での多職種連携
    高橋 由紀, 井上 直也
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 114-118
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     2014年度の診療報酬改定において、DPC制度における持参薬使用が厳格化された。すなわち、予定入院患者に対し入院契機となった傷病(以下、入院契機病名)を治療する目的での持参薬の使用が原則禁止された。さらに2016年度改定では、2016年10月分からDPC入院EF統合ファイル(以下、EFファイル)への持参薬使用実績の出力が必須となった。

     社会医療法人石川記念会HITO病院では、電子カルテに連携する持参薬鑑別システムが未導入のため、EFファイルへのデータ出力や検証が困難と考えられたが、多職種で連携することで2016年10月以降も入院契機病名以外の治療に用いる持参薬を中止することなく使用できる体制を築くことができた。検証によって、入院契機病名への持参薬使用が少数見られたが、入院契機病名以外の治療に用いる持参薬を使用できたことで、コスト削減につながり、病院経営にも貢献できた。

  • シングルチェック導入前後の安全性と所要時間比較
    飯田 恵, 辻本 朋美, 山上 優紀, 大村 優華, 廣田 大, 柴田 佳純, 松村 由美, 山本 崇, 井上 智子
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 119-125
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     安全性の面から多くの病院で注射薬ミキシング時、全薬剤のダブルチェックを行うことが多いが、その効果は疑問視されている。今回特定機能病院の内科2病棟で注射薬の確認方法を、ハイリスク薬等を除いてダブルチェックからシングルチェックに変更した。本研究の目的はシングルチェック導入前後で安全性と所要時間から効果を比較検証することである。

     方法は安全性として注射薬ミキシング関連インシデント報告数、内容、レベルを変更前後の各8か月間で比較した。所要時間として2病棟にカメラ2台を設置し、照合業務を24時間撮影、動画解析により照合時間を算出し、ダブルチェック期間、シングルチェック導入後2週目、導入後4週目の各5日間で比較した。

     結果、インシデント報告数は1,000薬剤あたりダブルチェック期間0.09件、シングルチェック期間0.12件であり、インシデント薬剤数で比較すると有意差はなく(p=0.654)、内容とレベルも差はなかった。所要時間は1薬剤あたり照合時間の平均値がダブルチェック期間32.8秒、シングルチェック導入後2週目14.0秒、導入後4週目15.2秒で、ダブルチェック期間がシングルチェック期間に比べ有意に所要時間が長かった(p<0.01)。

     結論としてハイリスク薬を除いてダブルチェックからシングルチェックに変更し前後で比較した結果、安全性は差がなく、照合時間はシングルチェック導入後に半減した。

  • 森脇 睦子, 鳥羽 三佳代, 伏見 清秀
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 126-132
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     2016年10月より病床機能報告制度が開始された。医療機関は自院の機能を高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つから選択することになったが、明確な基準はない。そこで、病棟間の患者構成の違いに着目しDPC制度にある機能評価係数IIの複雑性指数を使い「高度急性期」、「急性期」の分類への活用可能性を検討した。

     2016年7月1日から2017年6月30日にA大学病院を退院した患者を対象に、16病棟の複雑性指数を算出した(ICU、NICU、HCU、PCUを除く一般病床)。算出には、CCPマトリックスをコード化したCCPM支払分類を使用した。医療費を使った算出法(COST法)と在院日数を使った算出法(LOS法)により病棟毎の複雑性指数及び相関係数を算出した。算出に必要な全国値はDPCデータ調査研究班の協力施設(約1500施設)の2016年度データを使用した。

     分析の結果、COST法とLOS法は相関を認めなかった(r=0.50、p=0.51)。病院全体では、COST法で1.28、LOS法で1.07であった。外科系病棟はCOST法1.34-LOS法1.04であり、内科系病棟ではCOST法1.10-LOS法1.23であった。病棟毎にみると両算出法の結果はほぼ類似していたが、2病棟の結果が乖離していた(COST法1.69-LOS法1.74、COST法2.41-LOS法0.91)。また、COST法とLOS法の両方の結果が1.0未満の病棟は5病棟であった。

     複雑性指数は患者の重症度を反映する指標であり、算出法が2種類存在する。双方の特徴を鑑み、両算出法が1.0未満を高度急性期/急性期の機能区分の参考値として活用できる可能性があると考える。

  • 志波 孝治, 宇宿 功市郎
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 133-138
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     手術が予定され抗血栓薬を服薬している患者において、誤服薬による手術延期などのインシデントが発生していた。今回、手術に同意し抗血栓薬服薬患者に同意を得て、 かかりつけ医やかかりつけ薬局に病院薬剤師が助言・介入した影響を、抗血栓薬の中断・再開に関連したインシデント発生率により評価することを目的とした。

     手術が予定された場合、手術予定日、服用薬などを病院薬剤師が確認し、休薬措置をかかりつけ医やかかりつけ薬局と調整し、適切に手術を行えるように病院薬剤師が介入した。介入群は、2014年12月24日〜2017年4月30日の期間の手術患者1466件のうち医師による抗血栓薬の中断に関する説明及び病院薬剤師による助言・介入を受けた患者85件である。対照群は、2012年1月1日〜2014年12月23日の期間の手術患者1844件のうち医師による抗血栓薬の中断に関する説明のみを受けた患者195件である。インシデントは、「誤服薬による手術延期」「医療者間の誤指示」「出血・血栓」とした。介入群と対照群は、傾向スコアマッチングにより調整した。11変数に基づき、1対1にマッチングし、81組がマッチングした。

     インシデントが認められたのは、介入群1件、対照群12件(P=0.139)であった。傾向スコアマッチングによる解析では、介入群1件(1%)で、対照群8件(10%)と比較して有意な差が認められた(P=0.040)。これにより病院薬剤師の介入は、手術が予定され抗血栓薬を服薬している患者に中断・再開でのインシデントを防ぐ役割を担える可能性があることが明らかとなった。

  • 交渉により保守内容を変更せずに保守費用減額
    西村 雅幸
    原稿種別: 事例報告
    2019 年20 巻3 号 p. 139-142
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2024/08/23
    ジャーナル フリー

     今日の医療機関は装置産業といえる。CT、MRI、発電機、ボイラーなどの大型の医療機器や設備機械を必要としているからである。医師、看護師、医療スタッフなどに依存している労働集約型産業であることは知られているが、現代医療はこうした高額装置を必要としていることは間違いない。また同時に、これらの高額装置は初期段階で投資が必要なだけでなく、毎年確実に保守費用の負担を強いられるのも事実である。この保守費用に着目することによりコスト削減が可能であることを本研究と我々の実績が明らかにした。契約相手との的確な交渉によって、保守内容を変えることなく、保守費用を抑制することができるのである。

     より良い医療サービスを提供し、かつ必要最低限の利益の確保を持続するためには、適切な中長期計画に基づいた機械設備への投資と、適正な削減努力でコストを抑制することが重要である。

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