2018年、九州女子大学は一般財団法人平成紫川会小倉記念病院とプロトンポンプ阻害剤が胃酸の分泌を低下させ、ペクチン含有経腸栄養剤の粘性が低下するか否か、人工胃液Ⅰ(pH1.2)、人工胃液Ⅱ(pH6.8)を使用し、経腸栄養剤の投与方法を再現した共同研究を行った。ペクチン含有経腸栄養剤は胃酸分泌によりゲル化し、下痢の発生を抑制するとの報告があり、人工胃液Ⅰ(pH1.2)では粘度が約500mPa・sまで上昇した。このことから、下痢や胃食道逆流のリスク予防のためには500mPa・s以上の粘度が必要と考えられた。また、経腸栄養剤と人工胃液は均一に混合されずに分離していたことから本研究では濾液の粘度を測定し、リスク予防のための粘度指標として検討した。経腸栄養剤注入後の人工胃液Ⅰ(pH1.2)では、濾液が約68~81%、人工胃液Ⅱ(pH6.8)では約88~99%を占めた。それらの粘度は2.1~415.1mPa・sと500mPa・s以下であったが、今回の測定方法は時間経過に伴う粘度上昇を考慮できていない。実際のヒトの胃内では分離した濾液の粘性が増してゆっくりと腸管に流れている可能性も考えられ、今後、臨床における検証が必要であると考える。