運動量が多い個人が直面する深刻な栄養問題の一つにエネルギー不足があり、その早期発見・早期治療は健康を守るために重要である。アスリート等のエネルギー不足に関しては「アスリートの三主徴」や「スポーツにおける相対的エネルギー不足」が知られており、どちらも原因は「利用可能エネルギー不足」である。利用可能エネルギーの概念では、食事による摂取エネルギーから運動によって消費するエネルギーを優先的に差し引き、運動以外の生理学的プロセスにつぎ込めるエネルギーがどれだけ残っているかを考える。利用可能エネルギーの実測は困難であるが、アスリート等のエネルギー不足を見逃さないためのスクリーニングツールも開発されている。この資料は、スポーツ栄養学における利用可能エネルギーの概念を紹介し、アスリートへの栄養指導等を行う可能性のある管理栄養士・栄養士へ広くこの概念の理解を促すことを目的とする。