超音波医学
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42 巻, 6 号
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原著
  • 野竹 文章, 樋口 清孝, 林 光弘, 芹澤 博美
    2015 年 42 巻 6 号 p. 687-694
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/10/08
    ジャーナル 認証あり
    目的:非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ: DCIS)はエラストグラフィで低いスコアを示すことが多い.その要因について病理組織像を定量的に検討した.対象と方法:2012年1月から2013年8月の間に手術でDCIS と確定診断され,エラストグラフィでItohらによるスコアに分類した18例を対象とした.病理組織像から腫瘍の癌細胞密度,管腔密度を算出しスコアとの相関を検討した.スコア(1‐3)を低スコア群,(4‐5)を高スコア群とし癌細胞密度の差を検討した.腫瘤と非腫瘤性病変に分類し癌細胞密度の差を検討した.結果と考察:スコア2は9例と一番多かった.スコアと癌細胞密度には正の相関を認めたが,スコアと管腔密度には相関は認めなかった.低スコア群は13例で高スコア群とくらべ多数であった.癌細胞密度は,低スコア群の方が低く両者の間に有意な差を認め, 非腫瘤性病変は11例と腫瘤とくらべ多数であった.そして,組織亜型分類ではコメド型が4例,乳頭型が3例,低乳頭型が2例,充実型が2例であった.癌細胞密度は,非腫瘤性病変の方が低く両者の間に有意な差を認めた.DCISは癌細胞密度の低い症例が多く,癌細胞密度が低いと低いスコアを示すことがわかった.結論:癌細胞密度の差はDCISがエラストグラフィで低いスコアを示す要因の一つであると推察できた.
  • 加茂 健太, 西野 聖吾, 松田 夕子, 川島 朝子, 吉本 智子
    2015 年 42 巻 6 号 p. 695-699
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/10/26
    ジャーナル 認証あり
    目的:脊椎関節炎(SpA)の早期診断と活動性の評価に腱付着部炎の超音波検査が用いられている.当科では下肢腱付着部炎の超音波検査スコアであるGlasgow ultrasound enthesitis scoring system(GUESS)を用いて,スクリーニング,活動性の評価を行っている.GUESSでは腱肥厚の閾値が設定されているが,日本人における腱の厚さの正常値が不明である.日本人における大腿四頭筋腱付着部,膝蓋腱付着部(膝蓋骨側,脛骨側),アキレス腱付着部,足底腱膜付着部の腱の厚さの正常値を明らかにすることを目的とした.対象と方法:2014年6月から2015年5月の間に,SpAのGUESSによる評価を目的として超音波検査を施行した77名(770部位)の中で,圧痛のない部位を対象とした.炎症性腸疾患,乾癬,SpAや関節リウマチなど膠原病,X線靭帯骨棘を認める症例を除外した.結果と考察:大腿四頭筋腱付着部41膝,膝蓋腱膝蓋骨付着部では58膝,膝蓋腱脛骨腱付着部53膝,アキレス腱付着部24足,足底腱膜付着部39足が健常群となった.大腿四頭筋腱付着部の厚さは,5.11 mm(95%CI 4.88‐5.34,p<0.01),膝蓋腱膝蓋骨付着部の厚さは,3.25 mm(95%CI 3.08‐3.43,p<0.01),膝蓋腱脛骨腱付着部の厚さは,3.84 mm(95%CI 3.64‐4.05,p<0.01),アキレス腱付着部の厚さは,4.16 mm(95%CI 3.90‐4.43,p<0.01),足底腱膜付着部の厚さは,2.69 mm (95%CI 2.46‐2.92,p<0.01)だった.結論:本調査結果は目安の1つとして有用であるが,日常生活の活動性,体格,疾患,X線靭帯骨棘など腱肥厚に影響を及ぼす因子を考慮し,日本人における正常値を検討する必要がある.
  • 長谷川 英之, 本江 和恵, 金井 浩
    2015 年 42 巻 6 号 p. 701-709
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/04/20
    ジャーナル 認証あり
    目的:脈波速度(pulse wave velocity: PWV)は心拍に起因する動脈に沿った圧力波の伝搬速度である.PWVは動脈硬化の進行に伴って上昇するため,動脈硬化の診断指標として用いることができる.PWVの測定は動脈硬化の診断に対する非侵襲的アプローチとして知られており,臨床の場で広く用いられている.従来のPWV測定法では平均PWVは2点間,すなわち頸動脈と大腿動脈の間の数十cm 間隔で算出する.しかしながら,PWVは動脈系の部位に依存する,すなわち遠位部動脈のPWVは近位部動脈のものよりも速くなる.したがって,局所PWVを測定する方がより好ましい.方法:本研究で局所PWVを評価するために,3,472 Hzの高時間分解能で位相差トラッキング法により動脈の長軸方向の0.2 mm間隔72ヵ所でヒト頸動脈壁の微小振動速度を測定し,これらの波形にヒルベルト変換を適用することによってPWVを推定した.結果:本研究では3名の健常被験者の頸動脈をin vivoで測定した.動脈長軸方向の14.4 mmという短区間におけるPWVはそれぞれ5.6,6.4および6.7 m/sと推定され,文献値とよく対応していた.さらに,被験者の1人に関しては,末梢から心臓の方向に伝搬している成分が認められたが,これはすなわち末梢動脈により反射された成分として知られているものである.我々の提唱した方法を用いて,反射成分の伝搬速度は-8.4 m/sと推定された.反射成分のPWVが高い原因は,進行波および反射波到達時の血圧の差であると考えられた.結論:このよう方法は(異なる部位の動脈を含む平均PWVではなく)特定の動脈で局所PWVを測定することにより,動脈硬化の進行による弾性の変化をより鋭敏に検出するのに有用であると考えられる.
症例報告
  • 中川 雅美, 岡田 昌子, 長谷川 新治, 山口 慧, 横山 建二, 森 智美, 北田 弘美, 小川 恭子, 寺本 美穂, 内藤 雅文
    2015 年 42 巻 6 号 p. 711-718
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
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    58歳,男性.2004年他院にて特発性肥大型心筋症と診断され,同時期に尿蛋白を指摘されていた.腎機能悪化にて2011年3月かかりつけ医より当院へ紹介となり,慢性腎臓病ステージIV期と診断された.腹部CT検査では,腎臓の萎縮所見を認めたため腎生検は見合わせ,保存的加療を受けることになった.初診時の心臓超音波検査では左室中隔壁厚16 mmの求心性左室肥大と拡張障害を認めた.2012年12月より全身倦怠感を理由に通院を自己中断した.2013年4月嘔気,食欲低下症状のため当院受診した際には末期腎不全の状態であり,血液透析が導入された.心臓超音波検査では左室中隔壁厚18 mmと左室肥大が進行し,拡張障害を呈していた.姉がFabry病であったため患者も同じ疾患が疑われた.白血球αガラクトシダーゼA活性の欠損と遺伝子異常がありFabry病と診断された.酵素補充療法導入6ヵ月後の心臓超音波検査では左室中隔壁厚21 mmと左室肥大は進行性で,拡張障害が持続していた.Fabry病は稀な疾患であるが,左室肥大に慢性腎臓病を合併する症例に潜在している可能性がある.早期診断の重要性を痛感した1症例について報告する.
  • 神野 大輔, 讃岐 英子, 小坂 祐未, 児玉 美千世, 杉山 真一郎, 谷本 達郎, 吉良 臣介, 小林 博文, 隅井 浩治, 角田 幸信
    2015 年 42 巻 6 号 p. 719-724
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/10/08
    ジャーナル 認証あり
    症例は70代女性.下腹部違和感のため当院を受診した.下痢の訴えはなかった.胃食道逆流症のため3ヵ月前からランソプラゾールを継続内服していた.腹部CTでS状結腸の壁肥厚を認めた.腹部超音波検査ではS状結腸の軽度の壁肥厚を認めた.粘膜下層のエコーレベルはやや低下し,粘膜層や固有筋層との境界は不明瞭だった.大腸内腔と粘膜面の境界エコーが明瞭に同定できた.大腸内視鏡ではS状結腸に約5 cmにわたる縦走潰瘍を認めた.潰瘍は浅く,潰瘍周囲に軽度の粘膜浮腫を認めたが,その他の粘膜には異常を認めなかった.潰瘍近傍の粘膜からの生検で,上皮直下のcollagen bandの沈着,粘膜固有層内の慢性炎症細胞浸潤を認め,collagenous colitisと診断した.ランソプラゾールの中止により症状の消失を認め,腹部超音波検査を再検したところ,S状結腸の壁肥厚は消失していた.
  • 根本 芳広, 石川 浩史, 川瀧 元良
    2015 年 42 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/09/29
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    動脈管早期収縮(premature constriction of ductus arteriosus: PCDA)は,早期に胎児診断し適切に対処されれば比較的予後が良い疾患である.しかし,完全閉鎖例で対応の時期を誤ると胎児の肺血流が増加し,肺動脈平滑筋層を肥厚させるようになり,胎児右心不全や胎児水腫,新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn: PPHN)などを合併して死に至ることもある.今回我々は,胎児診断により救命し得たPPHN合併の重篤で非典型的なPCDAを経験したのでここに報告する.症例は27歳の1回経妊1回経産婦で,過去の妊娠分娩歴に特に異常はなく,在胎36週からnon-stress test(NST)で軽度変動一過性徐脈を認めていた.胎児心エコー検査では,three vessel view(3VV)~three vessel trachea view(3VTV)にかけて,大動脈に比較して拡大した動脈管を認めたが,動脈管内の血流は描出できず在胎38週4日に高次医療施設に転院となった.本症例では,通常のPCDAと同様に右室内腔は拡大,右室駆出率の低下(24%),右室面積変化率は低下(3.6%)し,Tei indexは1.16と高値を示したが,逆に右室壁の菲薄化と低い右室圧が特徴でPCDAとしては非典型的であった.動脈管が完全閉鎖していなかった本症例においてこのような状態になったことは,いわゆる右室の「後負荷不適合」だけでは説明できず右室への冠潅流障害などの可能性などを考慮する必要があるが,直接説明できるだけの所見はみられず不明な点が多い.ただ,逆にPCDAとして非典型的な右室心筋の菲薄化,低い右室圧という所見は,PCDA症例における重症化の指標となり得るかもしれないと思われた.
  • 川邊 絢香, 松村 英祥, 馬場 一憲, 五味 陽亮, 成田 達哉, 高井 泰, 齋藤 正博, 関 博之
    2015 年 42 巻 6 号 p. 731-736
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/10/19
    ジャーナル 認証あり
    【緒言】今回,羊水過多を呈し無下顎耳頭症の診断に至った1例を経験したので,報告する.【症例】29歳,0回経妊.喘息を合併しておりフルチカゾンプロピオン酸エステルで加療中であった.初期より前医で妊婦健診を受診し,問題なく経過した.妊娠28週5日に腹部膨満感と嘔気を主訴に受診した際,著明な羊水過多を認めたため,妊娠29週0日に当院へ紹介となった.初診時,AFI (amniotic fluid index)35 cmの羊水過多と胎児の顔貌異常を認め,子宮収縮頻回のため,切迫早産の診断で緊急入院となった.3次元超音波診断装置を用いて精密検査を行うと,眼間狭小,鼻と上唇が挙上,頸部まで至る耳介低位があり,重症無下顎耳頭症の診断となった.積極的な治療や胎児新生児の救命は行わない方針となり,29週6日に一時退院した.妊娠30週3日に陣痛が発来し,同日分娩に至った.児は1,304 g,Apgar Score(1/5分値)は2/1点,生後21分で早期新生児死亡となった.【考察・結語】耳頭症は1/70,000ほどの発症頻度で,原因物質としてテオフィリン,ベクロメタゾン,サリチル酸塩などの報告もあるが,ほとんどは突発的である.非常に予後不良であり,小顎症と併せて鑑別する必要がある.3次元超音波検査は診断に有用であり,早期発見のためには妊娠18~20週頃に系統的なスクリーニング検査が望まれる.
  • 有吉 平, 伊藤 智子, 中村 圭李, 岡崎 史子, 小林 聡子, 堀田 紀子, 立石 浩, 大倉 隆弘, 河崎 正裕, 内田 正志
    2015 年 42 巻 6 号 p. 737-741
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    [早期公開] 公開日: 2015/10/19
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    Meckel憩室は小児期に下血をきたす代表的疾患のひとつであり,確定診断には99mTcシンチグラムが行われるが,偽陰性例も存在する.今回99mTcシンチグラムは陰性であったが,腹部エコー所見が手術の手がかりとなった症例を経験したので報告する.症例は3歳の女児で,入院当日に嘔吐と多量の黒色便を認めたため当科外来を受診した.腹部エコーで臍下部に約11 mm大の内部が低エコーで血流豊富なtarget sign様の腫瘤を認めた.また,浣腸でブルーベリー様の血便を認めたためMeckel憩室を疑った.入院4日目に施行した99mTcシンチグラムは陰性であったが,その後のエコーでも同様の所見を認めるため手術を施行したところ,Meckel憩室が腸管内腔に反転し,腸重積を起こしていた.本症例の経験から99mTcシンチグラム陰性であっても,症例によっては腹部エコーでMeckel憩室の診断は可能であることが示唆された.
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