超音波医学
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44 巻, 5 号
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総説
  • 小松 篤史
    原稿種別: (第15回教育セッション)(産婦人科)
    2017 年 44 巻 5 号 p. 423-434
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/19
    [早期公開] 公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    腹部領域には消化管疾患のみならず泌尿器科疾患および産婦人科疾患も含まれ,指導検査士(腹部領域)には当然ながらそれらの臨床の知識と高度な超音波検査技術が求められる.産婦人科は産科と婦人科に分けられ,産科に関するものは指導検査士(腹部領域)には必要ないと考えがちであるが,全く妊娠に気が付かず腹部膨隆で内科を受診する患者もおり,やはり産婦人科全体の知識が必要であると考えられる.産婦人科で扱う臓器は子宮および子宮付属器(卵巣・卵管)であり,頻度として高いものは子宮筋腫および卵巣腫瘍である.いずれも時に臍上まで大きくなっていることがあり,腹部超音波検査で偶然にみつかることもある.子宮筋腫は一般に充実性の硬い腫瘤で正常筋層よりもやや低輝度で円形もしくは卵円形を呈する.卵巣腫瘍は多くは嚢胞性腫瘤としてみとめられ,内部に充実部分を有する場合には境界悪性もしくは悪性の可能性を考慮する必要がある.卵巣腫瘍には良性,悪性,境界悪性含めて多くの組織型があり,全てを記憶する必要はないが,頻度の高い子宮内膜症性嚢胞,成熟嚢胞性奇形腫の超音波所見や,悪性を疑う所見に関しては理解していただきたい.妊娠中の超音波は胎児が正常に発育しているかをみるものである.全身臓器の細かいスクリーニングに関しては割愛するが,胎児推定体重や羊水量評価,well-beingに関する知識は修得してもらいたい.
シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 伊藤 浩司, 福光 梓, 秋光 起久子, 村田 眞知子, 奥田 知世, 黒川 佳代, 小川 明希, 毛利 正博, 山本 英雄
    2017 年 44 巻 5 号 p. 439-445
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/19
    [早期公開] 公開日: 2017/08/07
    ジャーナル 認証あり
    目的:左室駆出率は,必ずしも心機能を鋭敏に反映しているわけではなく,実際に左室駆出率が正常に保たれている心不全患者も多い.そのような患者でも心不全マーカーである血中brain natriuretic peptide (BNP)は高値であり,左室駆出率での心不全リスク評価には限界がある.また,血中BNPは,器質的心疾患を有さず左室駆出率が正常でも加齢に伴い上昇することが知られている.そこで,本研究では組織ドプラを用いた心エコー指標であるglobal function index (GFI)=E/E′/S′が,左室駆出率が正常な患者において血中BNP同様に加齢性変化を示すか否か,また,どのような因子がGFI上昇に関連するか検討した.対象と方法:2015年4月から2016年3月の間に当院生理検査室において心エコーを行った患者のうち,器質的心疾患を認めない症例(770例)を対象とした.まず,GFIと年齢の相関を検討し,さらに各年代におけるGFIを求め,年代間で差を認めるか検討した.またGFI高値(対象患者の75パーセンタイル以上)にどのような因子が関連するかを多変量解析で検討した.結果:GFI平均値(標準偏差)は,1.70(0.95) s/cm,中央値(四分位範囲)は,1.49 s/cm (1.04, 2.10),年齢平均値(標準偏差)は,67.1(16.5)歳,男性は355人(46.1%)であった.GFIは,年齢と有意な正相関を示し(r=0.567, p<0.001),10歳ごとの隣接する年代間でも有意差を認めた.また,GFI高値を目的変数とする多変量解析の結果,年齢(オッズ比2.650, 95%信頼区間(CI) 2.070‐3.410),性別(男性オッズ比 0.386, 95%CI 0.249‐0.598),高血圧(オッズ比 1.730, 95%CI 1.070‐2.800),糖尿病(オッズ比 1.660, 95%CI 1.020‐2.700),左房径(オッズ比 1.050, 95%CI1.020‐1.090)の各因子が,GFI高値に関連した.結論:器質的心疾患を認めない症例において,GFIは,血中BNP同様に加齢に伴う変化を認めた.また,GFI高値に関連する要因は,年齢,女性,高血圧,糖尿病,左房径であった.いずれも,心血管病リスク因子であり,GFIが左室駆出率が正常な患者における簡便な予後予測因子となり得る可能性が考えられた.
症例報告
  • 岩井 孝仁, 西田 睦, 表原 里実, 薮崎 哲史, 小川 浩司, 岡村 圭祐, 平野 聡, 三橋 智子, 加畑 馨, 清水 力
    2017 年 44 巻 5 号 p. 447-455
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/19
    [早期公開] 公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳代女性.主訴なし.前医にて肝S6の孤立性壊死性結節を経過観察中であった.造影CTにて,肝S6結節は経時的にほぼ消失したが,新たに肝S5に早期濃染を伴う10 mmの腫瘤性病変を指摘された.超音波検査(US)とGd-EOB-DTPA造影MRIを施行し,悪性病変を否定できず,切除希望のため当院紹介となった.当院での初回USにて,肝S5に境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,Sonazoid®造影超音波検査(CEUS)では,動脈相で微細点状の豊富な造影効果を認め,その後,結節状に強く造影された.門脈相で造影効果は遷延し,後血管相で造影効果は認めなかった.半年後のUSにて,肝S5腫瘤に増大はみられず,CEUS動脈相,後血管相に著変はなかったが,門脈相で早期の造影効果減弱を認めた.造影CTでも門脈相,平衡相の洗い出しが明瞭化した.これらの変化は肝細胞癌の脱分化など悪性病変を否定できず,腹腔鏡下肝部分切除術が施行された.病理組織学的所見では,被膜を有さない境界明瞭な腫瘤で,炎症細胞浸潤を背景に小血管の増生を伴っていた.免疫染色でαSMA陽性,ALK陰性,EBER陰性,IgG4陽性細胞をほとんど認めず,炎症性偽腫瘍(IPT)と診断された.IPTは特徴的な画像所見に乏しく,CEUSでIPTを経過観察し得た報告は少ない.今回,経時的にCEUS所見が変化したIPTの1症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.
今月の超音波像
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