日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
15 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第15巻 第1号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 沢内 節子, 須藤 隆之
    2013 年 15 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    緒言:当科では、医療の質向上を目的に、クリニカルパスを導入している。大腸癌に対する開腹下手術と腹腔鏡補助下手術で使用している結腸切除パスと低位前方切除パスに関するバリアンス分析を行い、主に周術期管理について検討を行った。

    対象と方法:当院で電子カルテ導入となった2006年2月から2011年11月までの244例(パス脱落27例を除外)を対象として、歩行開始日、初回排ガス日、初回排便日、退院日、退院可能日について検討した。

    結果:パスの完遂率は、88.9%(217/244例)であった。開腹下結腸切除術に比べて腹腔鏡補助下結腸切除術の歩行開始日は有意に早かった。開腹下低位前方切除術に比べて腹腔鏡補助下低位前方切除術の初回排ガス日は、有意に早かった。全症例における歩行開始日、初回排ガス日の平均は、約2日、初回排便日の平均は、約4日であった。開腹下手術と腹腔鏡補助下手術の退院日、退院可能日に有意差を認めなかった。退院可能日の平均は、開腹下手術で約13日、腹腔鏡下手術で約12日であった。

    結論:腹腔鏡補助下手術において離床、腸管蠕動の回復が良好なことより、食事開始時期を早めることが可能と思われた。退院可能日の分析により、退院日のアウトカム設定を短縮することが可能と思われた。バリアンス分析により、従来、経験論的に常識として踏襲されてきた術後管理法の問題点を明確にすることができ、より安全で効率的な周術期管理が可能になると思われた。

実践報告
  • 横山 映理子, 髙井 今日子, 松本 明子, 大出 幸子, 中山 圭太, 船崎 満春
    2013 年 15 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     東京東部脳卒中連携協議会における脳卒中地域連携パスの運用において、急性期病院退院時と回復期リハビリテーション病院入院時の日常生活機能評価点数の差異について調査したところ、差異が明確になった。その差異は、評価基準使用の遵守により改善できるものと、改善できないものに分類された。改善できない差異の理由は、「医師の安静度の指示の有無」、「施設設備などの環境の差」、「転院による日常生活及びその援助行為の変化」、「患者の状態の変化」の4点であった。日常生活機能評価は看護必要度の一部である。看護必要度は入院患者に提供されるべき看護の必要量であるため、施設や環境に差が出れば同じ患者でも差が出ることから、日常生活機能評価点数に改善できない差異が生じることは必至である。今後は、日常生活機能評価における評価基準使用の遵守と、それにより改善できない差異を考慮したパス運用のための対策が必要である。

  • 大塚 歩, 西山 陽子, 星山 弘子, 鈴木 克典, 曽川 正和
    2013 年 15 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     糖尿病教育入院の目標は知識、技術の獲得とともに自己管理への動機付けをすることにある。知識・技術の提供とその習得の確認のみであった既存の糖尿病教育入院クリニカルパスを改定し、自己管理への動機付けを促すために患者自らが自己管理の目標立案を行う項目を設けた。本研究では、自己管理への動機付けをすることで行動変容が起きたかどうかについて検討した。

     糖尿病教育入院し、従来のクリニカルパスを使用した66名と改定したクリニカルパスを使用した35名を対象とした。糖尿病コントロールの指標として入院時と退院後1 ヵ月、3 ヵ月のHbA1c変化と入院時と退院時の体重の変化を比較した。さらに改定したクリニカルパスで設定した目標についての記載内容の分析、退院後の目標達成度と入院前後での行動変化ステージの比較を行った。

     全員が自己目標を持ちながら入院生活を過ごし、9割の患者が目標を持って退院した。退院後外来で調査した全員が目標を達成し、行動の変化ステージにおいて熟考期・準備期から行動期に変化ステージが上がり、行動変容が起きていた。このことより自己目標の設定は自己管理を継続する動機付けになったと考える。また、その結果として糖尿病コントロールの指標である体重変化は有意差があった。短期間でのHbA1cは有意差がなかったが、今後の長期経過観察のなかで評価すべきと考える。今回の検討で行動変容に関する客観的評価尺度を盛り込むことが必要であることがわかった。

  • 岸本 健治, 春田 恒和, 中西 萌, 佐伯 和美, 岡本 紀子, 河田 妙子
    2013 年 15 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:医療内容の向上を図り、クリニカルパス(以下、パス)使用率上昇を目的として、小児急性疾患に対する入院パスを改定した。

    方法:消化管感染症、下気道感染症、インフルエンザ、気管支喘息発作の4疾患分野を対象として2008年より2年間をかけパス改定を行った。パスはすべて紙カルテ上で運用した。改定作業の効果はパス使用率、スタッフ意識調査を用いて評価した。

    結果:改定作業を経て、①パス形式の共通化、②予定経過を限定しないパス形式、③適応基準・除外基準・バリアンスの明確化、④患者観察項目の適正化、⑤保護者向け説明用紙の作成、⑥患者本人向けパス用紙の導入、の各点が盛り込まれた新しい小児急性疾患パスが整備された。4疾患分野全体では、改定開始後3年間のパス使用率は78.6%(1,133例/1,442例)と改定前3年間の使用率23.7%(347例/1,465例)と比して著しい上昇が得られた(P<0.001)。また各分野別にも改定後にパス使用率の向上を認めた。スタッフの意識調査では、改定後パスに対する肯定的評価が多数を占めた。

    結語:一連のパス改定作業は小児急性疾患パス使用率の大幅な向上を達成した。パス改定にあたっては現行パスの問題点、対象疾患と医療機関の特性を考慮し、パスに求める効果を十分に検討することが重要である。

  • 佐藤 光太朗, 鈴木 善明, 懸田 可奈子, 藤原 恵美子
    2013 年 15 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     岩手県中部地区における大腿骨頚部骨折地域連携パス(以下、パス)の活用状況と問題点について検討した。当院のパスは術後12~14日で連携病院に転院するように作成しており、連携病院は回復期リハビリテーション病棟を持つ2病院である。当院で手術治療を行った大腿骨頚部骨折患者169例を対象としてパス適応率、逸脱率、パス群と非パス群の在院日数を検討した。また、本パスの問題点について連携病院にアンケート調査(項目はパスにおける問題点、患者における問題点、パスサマリーにおける問題点)を行った。パス適応は109例(62.7%)、パス逸脱は7例(6.6%)であった。両群の在院日数に有意差は認めなかった。連携病院におけるアンケート調査からは、患者の情報が得にくい、リハビリテーションが進まない患者(重症患者、認知症患者)も受け入れているという問題があげられた。急性期病院では他の重症患者を管理して連携病院での積極的なリハビリテーションを可能にすること、また情報を適切に提供することが、連携病院の負担を軽減するために急性期病院としてすべきことであると考えられた。

セミナー報告(2012年教育セミナー:大阪)これでわかる!できる!クリニカルパス〜基本と実践
学会報告(第13回学術集会)シンポジウム1 電子パスに求められるバリアンス分析機能
学会アンケート
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