日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
16 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第16巻 第1号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 高橋 梨紗, 水野 篤, 戸田 浩子, 宮坂 萌生, 能重 葉山, 竹嶋 千晴, 中村 加奈子, 山崎 麻里衣, 村田 千穂, 笠井 愛, ...
    2014 年 16 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    緒言・目的:当院では、低リスクの急性心筋梗塞(以下、AMI)患者に対する早期退院クリニカルパス(以下、パス)導入に向け、エビデンスに基づいた適切な適応基準の設定が不可欠であると思い至った。そこで、すでに海外で報告されているリスクスコアの予後予測能力を検討し、パスの適用基準として適切であるかを検討することを目的とした。

    対象および方法:2007年11月から2010年10月までに当院入院となったAMI患者全237名を対象とし、過去の患者記録から基礎情報、臨床経過を抽出し、Cadillac risk score(以下、Cadillac)とZwolle risk score(以下、Zwolle)にて層別化を行った。各リスクスコアで低リスクと同定された者の30日後/1年後死亡についてROC曲線を用いて比較した。

    結果:低リスク群はCadillac 36%、Zwolle 65%であった。これらの群における30日後/1年死亡率はそれぞれCadillac 0%/0%、Zwolle 2.6%/5.8%、AUCはCadillac 0.856/0.812、Zwoolle 0.776/0.734であった。また、Cadillac で低リスクと判定された者の在院日数は7.2±2.5日で、79名がパスを適応されていた。

    まとめ:AMI患者の層別化にはCadillacが予後予測指標として有用であり、早期退院パスの適用基準として適切である。

実践報告
  • 行元 誠子, 高田 恵美, 月森 翔平, 橋根 勝義, 舩田 千秋
    2014 年 16 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     がん診療連携拠点病院である当院泌尿器科では年間約70例の前立腺全摘除術を行っている。

     平成19年がん対策推進基本計画施行を受け、平成23年4月から地域において切れ目のない医療の提供を目的に前立腺全摘除術地域連携パス(以下、連携パス)の使用を開始し、地域医療連携(以下、連携)の充実と連携パス適応者数の増加に努めてきた。しかし開始当初は連携パスを適応する患者がいなかった。そこで現状把握を行い、連携パス適応者の増加に向け連携先の見直しや地域医療連携ワーキンググループの設立、連携業務の見直しなど病棟を中心とした取り組みを行ってきた。その結果連携パス適応者は増加し、がん治療連携計画策定料(以下、策定料)取得が可能となった。

     早期から積極的で統一した患者への関わりができるようになったことが連携の充実とともに連携パス適応者の増加や策定料の取得につながったのではないかと考えられる。

  • ~設定在院日数を超過した症例のバリアンス分析から~
    北田 大資, 石川 英一, 伊福 友里, 松永 留美子, 入江 克実
    2014 年 16 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院はケアミックス型病院の強みを生かして急性期リハビリテーションを含めた積極的な脳梗塞診療を展開している。病型毎に分類した3種類の急性期脳梗塞パスを利用しているが、設定在院日数を超過する率が高い。超過症例のバリアンス検討を通して現行パスの問題点を考察した。

    方法:対象は平成22年4月~平成23年9月の急性期脳梗塞パス使用256例。設定在院日数を超過する率が高いアテローム血栓性脳梗塞対象のBパスと心原性脳塞栓症対象のCパスについて、重症度毎に層別し超過率・超過の要因・超過症例の転帰を検討した。

    結果:設定在院日数の超過率についてBパスは重症度毎の差が小さいが、Cパスは軽症・中等症で超過率が低く重症は89%と高かった。超過症例のバリアンスに患者要因が占める割合はBパス全体で38%、Cパスは軽症で29%だが中等症・重症は6割を超えた。超過症例の転帰は、自宅退院がBパスで軽症中等症の39%、重症でも20%を占めたが、Cパスは軽症で57%に対し中等症・重症は0%。回復期病床転床はCパス軽症を除き両パスいずれの重症度も4割以上を占めた。

    結論:病型毎に分類した現行パスを重症度毎に分けて検討したことでパス利用症例の特徴や現行パスの問題点が明確となり、パス改訂の方向性が定まった。ケアミックス型病院で急性期脳梗塞クリニカルパスを作成する際には長期的な視点を持ち、重症度を加味し、リハビリテーション期間を見据えた在院日数設定が必要である。

  • 西江 宏行, 大倉 和代, 鉄永 倫子, 井上 真一郎, 太田 晴之, 小田 幸治, 日下 亜依, 宮脇 卓也, 福永 亜沙美, 石川 慎一 ...
    2014 年 16 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     慢性痛は、患者を苦しめるのみならず、医療経済、社会経済へも大きな損失をもたらすため、早急な対策が必要である。慢性痛は、心理・社会的な要因を含み複雑になるため、集学的に診療することが勧められている。しかし日本の医療体制では各科の壁を取り除いたチーム医療を行うのは困難な場合が多い。我々は、麻酔科、整形外科、精神科、総合リハビリテーション部、歯科麻酔科、看護部等で診察やカンファレンスを行い、診断治療を行う「痛みリエゾン外来」を2012年4月から開始した。痛みリエゾン外来は、複数の医療者で診療し、運動療法を通じて生活の質の向上を目指す外来である。しかし、複数での診療体制は複雑であり、患者、医療者側ともに混乱を生じた。そこで、「痛みリエゾン外来クリニカルパス」を作成した。クリニカルパスを通じて、痛みリエゾン外来の意義、診療の流れ、役割、目標などが明確になり、スムーズな診療ができるようになった。クリニカルパスは慢性痛の診療にも有効であると考える。

  • 伊藤 忠雄
    2014 年 16 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    はじめに:当院では2011年1月に電子カルテが導入されたが、紙パスでの運用が続いていた。紙パスでの運用ではオーダリングとリンクしていないこともあり、クリニカルパスの導入そのものが進んでいなかったが、2013年4月から電子パスを積極的に導入する方針とした。電子パス導入過程における問題点と対策を検証し、より簡便な電子パス導入に関する方策を提案する。

    導入過程:富士通HOPE/EGMAIN-GXが採用されており、パス委員のいる外科・泌尿器科で一部のパスを先行して電子化し、徐々に他科にも広げていった。電子パスの形態や指示簿など術式横断的に統一できるものは可能な限り統一し、ばらつきを少なくした。作成した電子パスは、仮運用を行い修正してからパス委員会に登録を申請した。

    導入結果:スタッフが電子パスに慣れる時間を考慮し、電子カルテ上でのパス承認後約1 ヵ月間を仮運用期間とし、徐々に電子化を進めていった。2013年4月末から電子パスを導入したが、8月末までに外科・泌尿器科ですべてのパス電子化が終了し、電子パス適用率も順調に上昇した。

    考察:電子パス作成というハードルを低くするため、電子カルテに電子パス作成見本例が収載されているなどの方策が必要であると思われた。また、電子化には保存・承認権限の付与や管理、看護記録とアウトカム記載の調整など様々な作業が必要となるが、現在の医療の質を検証する良い機会にもなると思われた。

セミナー報告(2013年度教育セミナー:大阪) クリニカルパスを役立てよう!広めよう!〜実践ノウハウ〜
学会報告(第14回学術集会)シンポジウム2 患者に優しいクリニカルパス
学会報告(第14回学術集会)シンポジウム3 地域連携パスと地域包括医療(ケア)
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