日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
19 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第19巻 第3号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
実践報告
  • −臨床研究を利用したクリニカルパス活動−
    沖野 晋一
    2017 年19 巻3 号 p. 201-207
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:外来心臓カテーテル検査クリニカルパス(以下、パス)適用患者のその後の腎機能悪化の予測因子を調べる。また、その臨床研究を通じて現在のパスの妥当性と改訂の必要性を検討する。

    方法:対象は外来心臓カテーテル検査パスを適用した患者のうち腎機能が追跡された714名。平均観察期間は20.1±8.5ヵ月。観察期間中に血清クレアチニン値(以下、Cre)が術前から0.5 mg/dL以上上昇したものを腎機能悪化(WRF群)、その他をnon-WRF群と定義した。

    結果:WRFは23例でみられた。WRF群では年齢が高かった(72.4±8.2 vs. 67.8±10.0、p=0.027)。また、WRF群では術後初回のCreの上昇値(術前との差)が大きかった(0.14±0.20 vs. 0.01±0.08、p<0.001)。多変量ロジスティック解析では年齢(OR 1.07[1.01 – 1.13]、p=0.027)、術後初回のCre上昇値(0.1 mg/dL上昇あたりのオッズ比2.42[1.73 – 3.39]、p<0.001)が独立した予測因子であった。

    結語:年齢および術後初回のCreの上昇が、その後の腎機能障害と関連していた。外来心臓カテーテル検査パスを運用するうえで今後も注意が必要と考えられた。臨床研究を利用してパスの評価を行うことは有用である。

  • −患者用クリニカルパスを有効利用した患者の不安軽減と術後在院日数コントロール−
    仲田 紀彦, 侭田 敏且, 早坂 豪, 伊藤 直美, 橘 知子, 熊谷 幸恵, 岩本 麻弥, 田上 詩織
    2017 年19 巻3 号 p. 208-214
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     頸椎椎弓形成術では、術後の安静期間やリハビリテーション等により術後10日間を超える比較的長い入院期間を要するため退院計画が重要である。退院後の生活への不安や家族の迎えの都合など、治療と直接関係のない事象に起因する術後在院日数延長という負のバリアンス削減と周術期医療に対する患者満足度の向上を目的とし、極力文字数を減らし治療経過をわかりやすくデザインした患者用パスに改訂し、入院中にこれを積極的に使用するように運用を変更した。患者用パスに退院予定日を明示し、これを入院期間中ベッドサイドに掲示し、日々医療担当者が治療経過や到達目標の説明に使用した。その結果、患者の不安による術後在院日数に関する負のバリアンスが大きく減少し、二次的に平均術後在院日数も減少した。患者アンケートを行った結果、インフォームド・コンセントの充実、不安の解消の面で高い評価が得られた。また医療担当者にとっては、患者用パスを通したコミュニケーションにより、医療の標準化の中で置き去りにされがちな患者の心理面への対応や、個々の退院後の生活様式を考慮した指導が可能となり、退院調整への負担軽減や、指導・説明が標準化されるなどのメリットが生まれた。術前から退院基準と退院予定日を明示するなどの患者教育の充実と術後早期からの退院後の日常動作を意識した生活指導に加え、患者用パスの有効利用により円滑な退院調整とパスの運用が可能となった。

  • 安部 良子, 笠原 綾乃, 武井 光, 上谷 道子, 坂本 里美, 真壁 泰子, 兵頭 裕美, 小池 隆志
    2017 年19 巻3 号 p. 215-220
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     小児医療において病状、検査や治療に対する説明の対象者は、親と子どもの2者となる。クリニカルパスの使用により、親への説明は標準化され、親が子どもを安心して入院治療させることの手助けとなっている。しかし、実際に入院対象となる子どもには説明の機会がなく、不安や恐怖を感じながら入院生活を送っている。そこで我々は、患児を対象とした子ども用パスの導入を試みた。

     2014年に「スタンプラリー形式」の幼児用パスを作成し、2016年に「なぞなぞ形式」の学童用パスを作成した。看護師から患児にパスの説明をして、病室の枕元にパスを掲示した。1日の終わりに、患児が自分でスタンプを押す、あるいは、看護師がなぞなぞを出し、その際に、患児がパスに目を向け、日々のアウトカムや今後予定されている処置、検査などを再認識できるようにした。2017年3月までの使用実績は、幼児用パス309例、学童用パス34例であった。発達段階にあわせたパス形式にすることで年齢の違いにも対応できた。家族へのアンケート調査にて、患児に対するインフォームド・アセントや検査に対するプレパレーションの効果も確認できた。また、看護師の小児看護に対する意識変化がみられ、教育効果もみられた。

     発達段階にあわせた子ども用パスは、子どもが安心して過ごせる療養生活を提供し、インフォームド・アセントやプレパレーションとしても有用であり、患者参加型パスとして活用できる。

特集(第17回学術集会)
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