日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
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5 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第5巻 第3号 (Mar.10.2004)
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原著
  • 小森 淳二, 梅原 英太郎, 東山 元臣, 上原 徹也, 中山 裕行, 岡村 隆仁
    原稿種別: 原著
    2004 年 5 巻 3 号 p. 511-515
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     我々は、1999年4月より外来化学療法の系統化を図り、2001年4月よりクリニカル・パス(以下、パス)を導入した。パス導入の経緯を述べるとともに、パス導入による治療に対する患者の理解度およびコンプライアンスの変化について検討したので報告する。

     1999年4月から2002年6月までに延べ114例に外来化学療法を施行した。その中で、2002年4月から、胃癌に対するMTX/5FU交代療法、大腸癌に対する1-LV/5FU療法、乳癌に対するCEF、CMF療法にパスを導入し、2002年6月までに計12例にパスを用いた。パス導入前にも外来化学療法の系統化において種々の工夫を行ってきたが、医師を中心とした対策が主であった。そこで他職種との連携を強化し、さらにインフォームドコンセントの充実により治療の目的、効果および副作用についての患者の理解をより一層深め、コンプライアンスを上昇することを目的としてパスを導入した。

     治療に対する患者の理解度およびコンプライアンスについて、パス導入前の外来化学療法施行例10例とパス導入後の12例を比較検討した。アンケート調査の結果からパス導入により治療に対する患者の理解度が改善したことが示された。また両群間の比較によりパス導入群においてコンプライアンスが有意に高く、パス導入によるコンプライアンスの向上が示唆された。

  • 笠井 久豊, 山本 雄一, 小阪 幸保, 宮下 るり子, 保田 憲基
    原稿種別: 原著
    2004 年 5 巻 3 号 p. 517-520
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     クリニカル・パス(以下パス)は患者の満足度向上やインフォームドコンセントの充実をはかるツールとして各病院で導入されている。2002年8月20日より我々臨床検査技師は、冠動脈造影検査パスの中に採血結果の説明を取り入れた。これは患者のベットサイドに患者自身の採血データとそれら検査項目のパンフレットを持参し解説することである。

     そして約3ヵ月後、我々の説明が本当に理解され満足しているかを検証するため、採血結果を説明した患者にアンケート調査を行った。アンケート調査は2002年10月15日から2002年12月10日までの約2ヶ月間で、43名の患者に実施した。その結果89%の患者が我々の説明に対し理解を示しており、とりわけ動脈硬化性病変に関与している脂質検査4項目の理解度が最も高かった。また88%の患者が他の疾患に対してもこのような説明を望んでいることがわかった。

     このように患者自身が病気の成り立ちや将来の展望についての情報を希望していることから、検査結果の説明を通じて学習意欲の向上を促すことが、今後の我々医療従事者には重要と思われた。

  • 原口 淑子, 佐尾山 年美, 佐々木 あゆみ, 松田 千里
    原稿種別: その他
    専門分野: 原著
    2004 年 5 巻 3 号 p. 521-530
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     整形外科病棟においてクリニカルパス(CP)の医療ケアに対する効果の測定を行うため、臨床アウトカム、患者満足度、看護自己評価の三側面から測定する方法を考案し、頚椎・腰椎・股関節・膝関節に関する9つの術式の患者に対してCPの医療ケアに対する効果の測定を行った。その結果、導入効果として、早期離床、抗生剤の使用量減少、患者の治療やリハビリに対する理解度の改善、看護側の観察・ケアに対する自己評価の向上が観測された。一方、鎮痛剤使用量の増加、高齢の患者では退院時のADL獲得は改善されず合併症発生率の低下も見られないこと、指導に関する看護側の達成感が期待されたほどでないこと、などの問題点が明らかになった。これらの問題点に対する対策として、効果的な鎮痛剤の使用と痛みを増幅させない適切な移動方法の指導、術前の尿道カテーテル留置の見直し、術前期間の短縮、CPをコミュニケーション媒体としたメンタルケアの充実、指導の重要性についての看護側意識の向上などを提案することができた。従って、今回考案した測定方法は、CPの効果や問題点の数値化から改善すべきポイントを明確にすることができる有効なツールであると考える。

  • 新田 章子, 阿部 俊子, 今田 光一, 佐手 達男, 北村 公一, 岡田 晋吾, 池澤 康郎, 東野 恒作, 川渕 孝一
    原稿種別: 原著
    2004 年 5 巻 3 号 p. 531-537
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     4つの急性期病院で、平成12年から14年までに人工骨頭置換術を施行した患者の患者属性、医療経過、アウトカムデータを収集し、平成14年の診療報酬改定前後で比較検討した。4病院のうちの2病院は平成12年以前から当該術式に対しクリニカルパスを使用しており、残りの2病院は平成14年にクリニカルパスを使用し始めた。

     その結果、4病院すべてで平成14年に在院日数が短縮し、特に平成12,13年に在院日数が長かった病院ほど顕著だった。その一方で、患者の退院時の歩行能力・自宅退院率ともに低下しており、在院日数短縮を推進する診療報酬改定、および現在のクリニカルパスではかならずしも歩行能力の回復や長期的な費用対効果の向上に寄与していないことがわかった。

     しかし一入院あたりの総診療報酬点数は、平成14年の診療報酬改定前後で著変なかったが、リハビリテーションの診療報酬点数も2病院で増加していた。これは、クリニカルパスによる医療ケアの標準化が図られた結果、合併症が減り、早期のリハビリ介入が行えたことに関連していると考えられる。

  • 笹山 環, 森本 一美, 小柴 孝友, 山中 英治, 小切 匡史
    原稿種別: 原著
    2004 年 5 巻 3 号 p. 539-543
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     市立岸和田市民病院外科病棟では1998年10月よりクリニカルパス(以下パス)を導入し、その成果について報告してきた。しかし、バリアンスに関しては、報告が確実にされていないこと、変動や逸脱についての記載が無いことが多かった。このことはバリアンスに対する認識の甘さ、しいてはパスに取り組む姿勢の甘さを示すものであり、画一化した現状を象徴するものであった。

     今回、我々は胃癌、大腸癌の術後患者症例でその経過中に、創傷治癒、栄養管理面からアウトカムとなりうる、術後ドレーン抜去、抜糸、経口摂取開始と術後在院日数との相関について検討した。抜糸とドレーン抜去に関しては合併症症例を除き、ほぼ設定された期日に行われていた。しかし、経口摂取開始の遅れに関しては明らかな理由が無く患者側の要因よりむしろ指示の遅れ、認識不足、説明不足などの医療従事者側の要因で経口摂取開始が遅れたケースが多く見られた。

     そして、経ロ摂取開始の遅れが術後在院日数の遅れに繋がること、経口摂取開始後のバリアンスでは消化器症状によるものが多いことが判明した。

     今回の結果をふまえ、全治療過程に経口摂取開始を含めいくつかのアウトカムを設定しそれを評価し、これらの蓄積したデータを定期的に検討しパスを改訂していくことで、パスの標準化を目指していきたい。

実践報告
  • ―消化器外科パスにおいて―
    池谷 俊郎, 前田 陽子, 前島 和俊, 合田 司, 森村 匡志, 長沼 篤, 小山 透, 矢嶋 美恵子, 小沢 初美, 金子 京子, 中井 ...
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     平成11年クリニカルパスを本格的に導入後、これまで様々な試みを行ってきた。一般企業が質の改善に用いている「ベンチマーキング」手法が、医療の質の改善にも有効な手法であることを知り、この手法を学習してクリニカルパス(以下パス)を改善しつつパートナーを求めた。平成13年に国内では腹腔鏡下胆嚢摘出術、米国では開腹結腸手術のパスによるベンチマーキングを経験した。

     まずベンチマーキング施行前に、対象疾患、適応基準、治療目標の設定が準備として必須であった。施行後、施設により治療目標(アウトカム)の設定に差があり、自施設のみでは気づかない点を指摘し合えた。また、質の向上には概念的な治療方針からEBM(evidence based medicine)を重視したアウトカムの設定が重要であることを認識できた。

     面談形式の検討では時間的な問題があるものの、ベンチマーキングは医療の質を改善するうえで有効な手法である。今後はこの時間的な欠点を補えるITシステムでの普及が望まれる。

  • 石井 裕美, 宮本 美樹, 塩山 あけみ, 大平 裕子, 広津 千尋, 柴田 早苗, 大森 友子
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 553-558
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     循環器・呼吸器病棟では年間約800例の冠動脈造影(以下CAG)を行っている。その中で、経皮的冠動脈形成術(以下PTCA)を受ける患者は、約20%におよぶ。現在使用しているパスは、1997年に作成し2度の評価修正を加えたインサートデイ方式のCAGパスである。そのため、PTCAを受けた患者には適応されていなかった。PTCAでは、帰室後2時間集中治療室(以下CCU)での観察が必要となるため、患者は一般病床から、循環器撮影室、CCU入室、一般病床への転室という3つの看護単位を通過する。その間の記録は用紙や書式が異なり一貫性がなく、情報共有や継続看護の点において問題があった。そこで今回、CCUと一般病棟の2つの看護単位で共通使用できるPTCAパスの作成に取り組んだ。現在使われているCAGパスと同一書式のインサート列方式をとり、検査後にCAG、PTCAパスを選択する2ウェイ方式とすることで、適応基準を広げることが出来た。患者は重症度によりCCUか一般病床かに分けられる。そこで移動の際に病状の変化が正しく伝えられ、処置や治療が継続して実施されることが要求される。今回協同でパス作成をしたことで、観察内容や到達目標が明確になった。これら病棟間の協力によりパスを作成したことで、今後情報共有ができ継続看護につながると考える。

  • 西山 史恵, 本藤 のぞみ, 三隅 留美子, 石田 由紀子, 上杉 英之, 三隅 寛恭, 平山 統一, 本田 喬
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 559-564
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     従来使用していた冠動脈バイパス手術(以下CABG)クリニカルパス(図1・2)使用症例(22例)について検討した結果、ドレーン抜去が離床リハビリ開始日を規定するひとつの因子と考えられた。ドレーン抜去が遅れた要因としては、観察・アセスメントが不十分で、明確な抜去基準がなかったことや、医療スタッフ間の見解の相違によるスタッフ要因、休日の関与などのシステム要因などが推測された。

     ドレーン管理を標準化するために、従来のCABGクリニカルパス使用症例のデータをもとに、ドレーン管理基準・ドレーン排液性状スケールの作成を行い運用した。スタッフ間でアウトカムを統一することで、術後3日目までに全対象症例がバリアンスを生じず離床リハビリテーションを開始することができた。ドレーン排液に関する性状の記録は従来主観的な記録が多かったが定量的表現で統一することでCABGにおけるドレーン管理の看護の標準化をはかることができた。

  • ―コンピューターソフト連結応用の試み―
    石原 隆, 孫 徹, 岩倉 敏夫, 小林 宏正, 迎 とく子, 西岡 道代, 河田 妙子, 倉八 博之
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 565-570
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     糖尿病教育入院に使用しているクリニカルパスのバリアンスについて、File Maker、Excel、Stat viewと3つのコンピューターソフトを連結して分析を試みた。対象者86例での検討の結果、逸脱群10例(11.6%)、延期群19例(22.1%)戻り群16例(18.6%)、「なし」群41例(47.7%)であった。バリアンスの原因は、患者および家族の問題が45例中40例と大部分であり、医療チームの問題が5例であった。逸脱群は、高齢者で、罹病期間が長く、血糖コントロールが不良で、三大合併症や大血管障害などの併発症を高率に有していた。長期にわたる綿密な指導には耐えがたく、家族を中心に要点だけを指導するポイント指導のパスが必要と考えられた。延期群は入院回数が多く、自宅での血糖コントロールが困難な患者が多かった。

     本検討ではコンピューターに多くの成績を入力することにより、更に詳細な分析が短時間で可能であった。今後クリニカルパスに基づく糖尿病教育入院の症例が更に増加する事は明らかであり、バリアンスに対応できるプログラムの確立が必須と考えられる。

  • 小丸 智子, 芳賀 奈美恵, 武田 絵里, 辻村 ヒロミ, 三枝 芳彦, 井内 郁代, 大橋 弘嗣
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 571-575
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     われわれは1999年1月から人工股関節置換術に対してクリニカルパスを実施し、これまでリハビリテーションメニューの変更、チャートの改良などの改良を行ってきた。今回、「術後4週で入院時のレベル以上で歩行でき、自宅で自立した日常生活が行える程度の活動性を獲得して自宅へ退院できる」というアウトカムの設定は妥当であったのかについて検討した。対象は初回人工股関節置換術を受けた40例、40関節であり、クリニカルパス改良前後で①期、②期の2群に分けた。バリアンスとしては車椅子移動の開始が遅れたものが、①期では1例、②期では2例であり、歩行開始日が遅れたものが、①期では1例、②期では8例であった。手術日から退院までに要した日数は、①期では平均42.4日、②期では平均34.8日であった。入院時以上の歩行レベルまで回復できなった事例は①期の2例のみで、①期の1例を除いて全例で自宅退院を果たした。従って、現在使用している②期のクリニカルパスでは全例自宅退院を果たし、1ほぼ目標としている日に設定したアウトカムが獲得できており、われわれの設定したアウトカムは妥当であると考えられた。しかし、わずかながら退院予定日とのずれを認めることから、クリニカルパスをより現実に近いものに改良して、患者の理解を容易にし、設定したアウトカムにさらに早期に到達できて無理のない退院につなげていきたいと考えている。

  • 田嶋 千代恵, 伊藤 元博, 溝口 節子, 今野 孝彦
    原稿種別: 実践報告
    2004 年 5 巻 3 号 p. 577-583
    発行日: 2004/03/10
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     入院から在宅への早期復帰には、疾患の治療と同時に、在宅生活に必要な機能面、介護面のニーズの把握とそれらに対する援助が必要である。入院時に使用している問診票は主に医療面が中心となっており、一部機能面の評価が導入されている問診票もあるが、在宅生活に必要なニーズを全て網羅していない。筆者らは在宅生活に必要なニーズを全て盛り込んだ問診票と在宅ケアのクリニカルパスを作成し使用してきた。この在宅ケアのクリニカルパスと問診票のニーズ分析は基本的に一致しているため、在宅→入院→在宅の流れを訪問サービス提供者と病棟看護師が共通に理解することができ、チーム医療、チームケアの向上に貢献していると判断された。本論文では、新しく作成した問診票の内容と特色および、在宅ケアのクリニカルパスとの連動の実際例を報告した。

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