日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
11 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第11巻 第2号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
実践報告
  • -経ロ抗がん剤の円滑な薬薬連携を目指して-
    松久 哲章, 小暮 友毅, 野本 香, 田頭 尚士, 江口 久恵, 舩田 千秋, 菊内 由貴, 谷水 正人
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     今日のがん化学療法は入院治療から外来治療へ移行している。四国がんセンターでは、経口抗がん剤の院外処方について副作用のモニタリング機能を付加して、患者のセルフメディケーション及び生活の質(Quality of Life:QOL)の維持・向上を目的に患者日誌を試用した。また、本日誌は患者が保険調剤薬局へ持参することで当院との円滑な治療に関する情報共有を図ることも目的としているので、いわゆる院内外における治療の情報伝達を図るクリニカルパスであると言える。今回、日誌の作成に至るまでの経緯、問題点、試用した上での実践報告を行う。

  • -経過観察パスと長期入院パスの有用性-
    石黒 保直
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     岩手県立大槌病院は、岩手県三陸沿岸のいわゆる「地域の病院」であり、ある程度の診療能力が求められる一方で長期入院の高齢者の占める割合も多い。外科医は常勤1名で業務は多岐にわたり様々な科の疾患に対応する必要がある。そこで、術式は細分化せず、自宅(もしくは施設)への退院を最終アウトカムに設定したクリニカルパス(以下パス)を3種類(①疾患・術式パス、②経過観察入院用パス、③長期入院用パス)作成し、必要に応じて移行する運用を試みた。平成19年度の当科入院患者110名のパス適用率は81.8%で、うち離脱は2.2%であった。アウトカムを個別に作成する等工夫をしておおむね問題なく運用でき、看護計画を立案することなく、医師の指示も明確化されていることから看護師および他のコメディカルスタッフの受け入れも良好であった。小規模病院ならではのパスの利点を生かし運用する1つの方法と思われた。

  • ―がん診療の均てん化を目指して―
    長谷川 慎一
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     クリニカルパス(CP)は、診療の標準化を図ることにより質保証を得る有用なツールであり、安全性の面からがん診療の均てん化に寄与し得る。今回我々は、High-Volume Centerで有効性・安全性が確認されたCPをユニット化してCommunity Hospitalである当院で運用し、その1年間の運用結果を検証した。<患者背景の検証>High-Volume Centerである神奈川がんセンター(KCC)と地域基幹病院である当院の患者背景を比較した。当院はKCCに比べ、①平均年齢が高い ②PSが不良 ③併存疾患を有する患者の割合が高い、といった特徴があり、腫瘍の進行度も高い傾向を認めた。<ユニットパスの運用成績>適用率90.5%、完遂率84.2%、術後在院日数の中央値12日(導入前19日)、職員満足度97.7%と満足のいく結果であった。<まとめ>がん専門施設と地域基幹病院である当院では患者背景に差を認めたが、これを考慮したユニットパスは有用であり、安全性の観点からがん診療の均てん化に寄与し得ると考えられた。

学会報告(第9回学術集会)シンポジウム4 バリアンスがなくちゃパスじゃない ―バリアンス分析で何を変えられるか―
  • ―院内術後嘔気出現時アルゴリズム運用からの考察―
    原田 栄作, 向井 睦美
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)シンポジウム4 バリアンスがなくちゃパスじゃない ―バリアンス分析で何を変えられるか―
    2009 年 11 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院においてクリニカルパス(パス)の運用に関して、作成、施行までは進むが、分析、改訂については停滞しており、PDCAサイクルは必ずしもうまく回っていない。今回、我々は院内危機管理のひとつとして、術後嘔気出現時の虚血性心疾患(IHD)対応アルゴリズムを作成運用し、これに関しては分析、改訂までを約半年間の運用で可能とした。このことから、通常のパス運用と今回のアルゴリズムとを比較しPDCAサイクルを回すのに必要な要因を考えてみた。通常パスと今回のアルゴリズムを比較した場合、今回は必要性が非常に明確であった点、承認を早く行うことができ作成から運用までの時間的短縮ができた点、また記録が簡素であった点、改訂を望むスタッフが多かった点、雑務を担当できる人員があった点が違いとして挙げられた。これらから通常のパス運用においても、①目的の明確化ならびに共有、②重要度に応じたいくつかの承認制度の設置、③記録の簡素化、④人員の選定、⑤組織での専従者の確保、がPDCAサイクル回転には重要と考えられた。

  • 井上 聡, 渡辺 輝子, 本田 幸子, 橘 美登里, 高橋 礼子, 金内 幸子, 中島 歩美, 小谷野 圭子
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)シンポジウム4 バリアンスがなくちゃパスじゃない ―バリアンス分析で何を変えられるか―
    2009 年 11 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     パスのバリアンス収集・分析において、Excelテンプレートを用いて、バリアンスデータ集計の効率化を図った。その結果、以下の点を改善することができた。

     1)集計方法の標準化:Excelで集計用テンプレートを作成し、集計の項目や方法を標準化した。

     2)年次集計の自動化:Excelの機能を使って、パス使用患者数、バリアンス件数、バリアンス要因などを毎月入力することにより年次集計を自動化し、業務を効率化した。

     3)入力漏れ防止:1パス1病棟1年間1ファイルの原則を作り、病棟毎に使用するパス1つにつき1ファイル(1年分12シート)を用意して、毎月、入力漏れがないように工夫した。

     4)情報の共有・データ保存の標準化:院内LANを利用して職員間でPCデータを共有できるシステムを構築した。ファイルサーバーでデータを一元管理することにより、データ保存方法を標準化した。情報が必要なときには、ネットワーク上のパソコンのどこからでも閲覧することが可能となった。

     このように、集計方法、業務を標準化することより、パス推進委員の交代があっても円滑にデータの引継ぎができるようになった。副次的な効果として、各委員は、各自の作業、進捗状況が明らかになったので、毎月こまめにバリアンス集計をするようになり、データの精度も高まった。

  • 今中 和穂, 西田 梨穂, 山根 康子, 下村 好子, 岩野 直美, 柳川 のり子, 宮地 裕子, 杉本 直俊, 岸 健太郎, 垣本 健一, ...
    原稿種別: Annual Congress Reports (The 9th Annual Congress)
    2009 年 11 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では2007年より紙ベースによる日めくり型クリニカルパスを作成し、順次試用中である。C型慢性肝炎に対する「C型慢性肝炎に対するエコー下肝生検+PEG - IFN+Rib療法クリニカルパス」の日めくり型パスを作成導入し、その後一部を改良した。改良の前後でバリアンス分析を行うことにより問題点について検討し、改良の効果を明らかにした。導入後6ヶ月間の18症例において、患者の身体的状況の異常に関するバリアンスのうち、処置を要したバリアンスは半数以下であった。そこで「無・有」と選択肢が二つであった観察項目のアウトカムに「軽度」を追加し、「無・軽度・有」に変更し、「無・軽度」をバリアンスとして取り上げないように改めた。改良後9症例に使用しバリアンス分析を行った。患者一人あたりのバリアンス件数は改良前4.9件(89/18)に対し、改良後は4.1件(37/9)とわずかに減少した。処置を要したバリアンスの割合は改良前48%(43/89)、改良後75%(28/37)と上昇した。パス改良により症状に関する軽度・自制内の場合はバリアンスとしてあがってこなくなったため、患者一人あたりのバリアンスは減少し、何らかの対処を必要とする臨床上重要な症状がバリアンスとしてより多い割合で認められるようになった。本疾患に対する当初のパスのバリアンス分析を行い改良することにより診療上重要な情報を効率よく拾い上げることができるようになった。

学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション1 がん診療とクリニカルパス ―あらゆるがん診療はパスでカバーできるか?―
  • 藤田 博正, 野田 順子, 三浦 比呂子, 久留米大学クリニカルパス委員会
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション1 がん診療とクリニカルパス ―あらゆるがん診療はパスでカバーできるか?―
    2009 年 11 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     久留米大学病院のクリニカルパス使用率は60%であるが、がん診療クリニカルパスの使用率は35%と低い。がん診療クリニカルパスにたいする意識において医師と看護師に差はない。若手医師はがん診療クリニカルパスにも比較的適応している。一方、ベテラン医師はその必要性は大いに認めつつもなかなか適応できていないようである。今後、(外来)化学療法パス、地域連携パス、がん緩和ケアパス(がん疼痛緩和治療を含む)の導入が期待されている。

学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション2 電子カルテ・電子パスの功罪
  • 野口 康男
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション2 電子カルテ・電子パスの功罪
    2009 年 11 巻 2 号 p. 175-177
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では平成19年4月に大手ベンダーの電子カルテシステムをノンカスタマイズで導入した。それを機にそれまで紙のパスシートをさまざまな形で発展させて運用してきた現場から、電子カルテの未熟なパス機能に対して厳しい評価が下され、パスの運用が事実上大きく後退した。電子カルテ導入を控えた時期から、導入後1年半を経過した現在までの当院パス活動のたどった軌跡を紹介し、その過程で出てきた電子パスの機能を改善して行くための提案も合わせて報告する。

  • 杉田 登子
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション2 電子カルテ・電子パスの功罪
    2009 年 11 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     1989年よりシステムの中心にナビゲーションケアマップ(Navigation Care Map,以下NCMという)を中心に、診療プロセスの管理を行う機能を持たせた統合医療情報システムの開発に着手し、1995年亀田クリニックオープンをきっかけに電子カルテとしてその運用を推進してきた。診療プロセス管理はまさにクリニカルパスそのものである。よって病院の方針も電子カルテのNCMを使用することでクリニカルパスの作成及び運用を進める方針が出された。

     紙でのクリニカルパスを作成したことのない病院での電子クリニカルパスの作成・運用することは様々な困難をきたした。臨床側はシステムの未熟を理由に運用できない状況になり、開発側は臨床で使ってもらわないことには開発のしようがないという問題を抱えていた。そのためにごく限られた診療科での運用にとどまっていた。できるだけ多くの診療科でクリニカルパスの運用を推進するために、2006年に仕切り直し、紙でクリニカルパスを作成することから再スタートをした。ところが、既に臨床では電子カルテ運用が定着しており、院内のどこからでもアクセスできることで職種間を越えて情報を共有して医療を提供することが当たり前になっている状態であり、情報の共有ができないパスの運用は受け入れられない状況があった。そこで、紙のクリニカルパスをPDFファイルに変換(以下PDFパスという)し管理することで電子化を図り、PDFパスを使用することでNCMとの共有をし、運用に至った経緯を報告する。

学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション3 これならやりたいDPCとクリニカルパス
  • 中村 廣繁
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション3 これならやりたいDPCとクリニカルパス
    2009 年 11 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     DPCとクリニカルパス(以下パス)はともに医療の標準化を目指すが、経済性を意識しすぎると、医療の質を損なう可能性がある。パスの最大の特徴はエビデンスに基づくことであり、DPCはベンチマークが利点である。パスのエビデンスにそぐわないDPCは改定を求めて問題点を明確にするべきである。平成20年のDPC改定では入院期間の短縮、包括点数の削減に拍車がかかったが、一方で化学療法は新分岐ができた。パスがなくてもDPCを理解すれば、在院日数を入院期間ll未満に入れることは可能であるが、ここにパスがあればさらに医療の質が担保される。パスは画一的ではなく患者の個別性を意識することでDPCの不備が補える。明確な退院基準を有し、経営効率にも対応したDPC対応型パスを柔軟に使ってこそ病院は魅力的になると考える。

  • 田村 茂行, 久下 景子, 木谷 恵, 小幡 光子, 宇野 美花, 副島 彰典, 伊藤 敏文
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)パネルディスカッション3 これならやりたいDPCとクリニカルパス
    2009 年 11 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     積極的なクリニカルパス導入、治療の標準化を目指した取り組みにより在院日数は短縮されてきた。しかし一方では、病床稼働率が低下し、パスの経済性に重点をおいた議論・要望がパス委員会に向けられた。DPCもパスも本来は質の高い標準的な医療を目指すツールであるが、DPCは経済的側面に注目されることが多い。院内でもDPCが導入され、経済性を効率的に反映するためのツールとしてパスの重要性が再認識された。パス委員会では院内のパス基準を基本的には崩さないという方針を持ちつつ、この機会にDPCシステムを活用したパスマネージメントに取り組んだ。パス委員会での取り組みとしては、(1)旧パスの見直し時のDPCデータの提供、(2)DPCデータとリンクしたバリアンス集計システムの確立、(3)パスの委員会管理とパス使用薬剤のデータベース化、(4)医療の質の検証(ベンチマーク解析)と情報の配信、等である。

     現時点のDPCシステムをうまく活用するためには、DPCとパスの連携、情報の共有、ベンチマーク比較による医療の検証が必要と考えており、その点を重視した当院の取り組みについて報告する。

学会報告(第9回学術集会)ワークショップ1 がん化学療法標準化へのシステム構築
  • 平井 聡, 荻野 英朗, 高島 友紀子, 岸 三重子, 吉田 喬, 臼田 和生, 宮澤 秀樹
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ1 がん化学療法標準化へのシステム構築
    2009 年 11 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     【はじめに】当院は富山県がん診療連携拠点病院の指定を受けているが、その一方で3次救命救急センターを有する810床を有する急性期病院である。医療安全の見地から、各診療科外来で個別に化学療法を施行している体制を見直し、通院治療室で統一して管理して化学療法の標準化を目指した。【外来化学療法】各診療科の受診前に通院治療室にて看護師が通院患者の副作用をグレーディング評価するシステムや、すべての化学療法を薬剤師が安全キャビネットで調剤するシステムに移行した。【がん化学療法標準化】がん化学療法レジメン審査小委員会を立ち上げて診療科を超えて癌種別にレジメンを統一し、American Society Clinical OncologyやNational Comprehensive Cancer Networkの基準に基づいたステロイド量・制吐剤への変更、化学療法終了後に洗い流し用生食をレジメンに組み込むなどの介入もした。また、paclitaxel/carboplatin併用療法では、投与スケジュールを統一したレジメンを作成し、癌種を超えて標準化を進めた。【安全性確立】すべてのレジメンを電子カルテ上に登録し、適切な休薬期間と投与量でのみ使用できるシステムとした。また、化学療法クリニカルパスは当院で既動しているモジュール型Add-onパスから作成し、体重評価時の利尿剤投与と副作用対策指示を統一した。そのパス内には看護師の観察項目も定義され看護の統一が図られている。さらに院内全体のがん化学療法マニュアルを作成し、抗がん剤漏出時対策と副作用対策も統一してクリニカルパスにAdd-onできるように組み込み、職種の職務範囲を明確化した。【まとめ】外来化学療法室の設立を機会にして院内の様々なシステムを整備し、診療科や癌腫を超えて標準化・安全性確立を進めることができた。

  • 飯島 正平, 加藤 健志, 大島 聡, 三宅 泰裕, 間狩 洋一, 星 美奈子, 土井 貴司, 山口 充洋, 仲下 知佐子, 中谷 裕子, ...
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ1 がん化学療法標準化へのシステム構築
    2009 年 11 巻 2 号 p. 197-199
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     電子カルテを2002年に稼動した当院では、同時期より各科で別々に行ってきた化学療法の病院としての管理に着手し、実施の標準化と臓器別のプロトコール登録制を導入した。プロトコールは管理する委員会を病院組織に組み込み、当時電子カルテアプリケーションは存在しなかったが電子カルテに存在するツールを駆使して可能な限りの電子化を図った。同時に、実施にはその専門性に沿ったコメディカルの関与を必須とし、効率化と安全管理、患者への十分な説明と継続的な関与を行っている。しかし、いまだに電子カルテシステムでの魅力あるアプリケーションは存在せず、薬剤の単純計算にとどまるようなレベルであり、カルテ記録やコメディカルの関与などが管理できるシステムと一体化した開発はまだまだであり、これらのチーム医療としてのアプリケーションの開発が期待されている。

  • 中村 久美
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ1 がん化学療法標準化へのシステム構築
    2009 年 11 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では、がん化学療法においてレジメン登録制を導入。患者に安全で、適切な投与ができるように、レジメン毎にクリニカルパス(以下パス)を作成・利用して、(現在64の、がん化学療法パスを作成・稼働)医師・看護師・薬剤師が一丸となり治療に取り組んでいる。パスを利用する中では、作成したパスが最適なのかを様々な角度から、常に見直すことが、重要である。

     実際の見直しで行ってきた事項

    1)支持療法改善:患者から得た「どの時期に」「どんな症状」といった副作用データを蓄積する中で、支持療法を検討しパスに取り入れ、副作用回避に役立てた。

    2)チーム内の意見を取り入れた。

    3)後発薬剤採用:医師の納得を得るため、当院で先発薬剤と後発薬剤の比較を実施し、データを算出して切り替えを円滑に進めた。

     パスは作って稼働すればそれで終わりではない。常に最新の情報、バリアンス分析・検証、コスト意識などを取り入れ、患者によりよい医療を提供できるツールにしていくこと、それが本当の意味でパスを活用しているということだと考える。今後も相澤病院のがん化学療法パスを最善のものにすべく、努力したい。

  • ―がん化学療法パスを通し振り返る―
    乙守 篤, 岩満 章浩
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ1 がん化学療法標準化へのシステム構築
    2009 年 11 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     当院は2003年10月に介護療養型病床の一部を一般病床に変更し、消化器・肝臓病センターを設立した。介護環境の中に医療環境を作り上げるという開設当初の課題は、安全な医療を提供するシステムの構築であった。そこで当院はクリニカルパス(以下、パス)の導入でこの課題を達成することとした。当院のパスは治療レジメン別の紙パスで、現在までに46種類が稼動している。また、これらのパスを円滑に運用するため、当院独自のシステムであるoverview pathway system(以下、OP system)を導入し、システム自体の標準化にも取り組んでいる。

     当院の動注化学塞栓療法(以下、TACE)を除くがん化学療法においては9割以上がリザーバーを介しての動注化学療法である。開設から約1年間は化学療法パスを作成できていなかった。2004年の10月より携帯型ディスポーザブル注入ポンプ(以下、シュアヒューザー)の導入をきっかけにレジメン追加の必要性が生じ、化学療法に関してもパス化することとなった。レジメンの標準化は少人数の医師、看護師間ですみやかに進められた。また、標準化されたレジメンはOP systemの導入によって効率的に機能させることに成功した。

     当院のリザーバーを介するがん化学療法の奏効率は43%で、6割近い患者はしだいに終末期医療へ移行するという現状がある。パラメディカルへの患者からのニーズも大きいものがある。当院の化学療法パスの今後の課題は、治療そのものだけではなく終末期を意識したシステムの構築であると考える。

学会報告(第9回学術集会)ワークショップ2 医療従事者の業務分担と職域拡大
  • 飯島 正平, 黒川 英司, 吉川 宣輝
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ2 医療従事者の業務分担と職域拡大
    2009 年 11 巻 2 号 p. 211-212
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     電子化の遅れていた当院では、一気に電子カルテを稼動させ、その導入時に業務改革を行った。電子カルテシステムの不備はベンダーへ提言してゆくとともに、従来まで培ってきた当院ならではの運用から電子カルテシステムがうまく稼動できるような運用への転換も積極的に行った。その中で、情報の共有の実現からシステムが力を発揮できるよう、コメディカルが医師中心の指示待ちの受身の姿勢から積極的な関与による業務の効率化を目指すようになってきた。このように電子カルテ導入という大きな転機は業務転換を行うチャンスであり、従来の方法にこだわらず、最終目標の視点を職域内から広げることで、その拡大が可能となったと思われる。しかし、システム自体はまだ発展途上であり、より発展できる要素はありうると考えている。

  • ―診療情報管理士と医療情報技師による医師・看護師のパスへの業務負担軽減の試み―
    北村 臣, 石原 久美子, 西村 泰典, 仲野 俊成, 里井 壯平, 宮崎 浩彰
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ2 医療従事者の業務分担と職域拡大
    2009 年 11 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     近年、医療現場の多忙さが社会的問題となっている。本院でも同様であり、病院のクリニカルパス活動の停滞が危惧された。このため、医師ならびに看護師のパス業務負担を少しでも軽減させる目的で診療情報管理士と医療情報技師の有資格者が、パス作成や修正に対応した診療情報の抽出、新規パス作成と修正、患者用パス表の管理、といった業務補助を試みた。これらは、病院のパス活動推進に有用であった。

学会報告(第9回学術集会)ワークショップ3 いまさら聞けないクリニカルパスの疑問
  • 安東 立正
    原稿種別: 学会報告(第9回学術集会)ワークショップ3 いまさら聞けないクリニカルパスの疑問
    2009 年 11 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2009/06/10
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     ベンチマーキングは日本で品質改善のツールとして開発され、アメリカの会社によって紹介、導入され、評価発展していった代表的な経営手法の一つである。これはベストなものとの比較を行うことによりそのギャップを埋め、現状を改善する手段である。一般企業が質の向上を目指して採用するこの手法が、医療の質の改善にも有効な手法となりうる。クリニカルパス(以下パス)でいえば、各施設のパスを比較検討し、ベストなパスを作成実践していくための手段と言える。当院の公開パス大会で行った結腸切除術パスと帝王切開術パスのベンチマーキングの実際を述べる。それぞれベンチマーキングを行うことにより、自施設のみでは気づかない点を指摘し合うことが出来、食事の開始時期や処置、観察項目について再考を要することが判明した。このベンチマーキングをふまえて当院のパスの改訂を行った。ベンチマーキングはそれを行ったというだけで終わらせずに、パスの改訂を目指すことが重要である。また、ベンチマーキングの本質はベストとの比較、改善であり、コピー、簡単な手直し、アイデアの盗作でないことも理解する必要がある。

feedback
Top