日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
23 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • ―BI損失量分析による予後予測―
    三原 一郎, 茂木 招良, 武田 憲夫
    原稿種別: 原著
    2021 年 23 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2021/03/29
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:大腿骨近位部骨折で低下したactivities of daily living(ADL)の回復は、骨折前の状態や認知症の合併などに左右されることがわかっている。そこで、筆者らは骨折患者を骨折前のBarthel Index(BI)と「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準(認知症自立度)」の組み合わせで6群に分類し、予後予測に有用であることを報告してきた。今回の研究では、BIに加えてBI損失量(骨折前BIと観察時BIの差)という指標を用いて、各群の回復の推移の特徴を明らかするとともに、退院時のBI損失量を用いて退院時アウトカムを設定し、バリアンス発生に影響を与える因子を探索する。

    方法:2018年1月1日から2019年12月31日までに登録された大腿骨近位部骨折地域連携パス(以下、大腿骨パス)患者286例から必要なデータを抽出し、BI損失量の推移を分類ごとにグラフ化するとともに、バリアンス発生に影響を与えている因子について統計学的に検討した。

    結果:認知症自立度Ⅱ以上の群のBI回復曲線は認知症自立度Ⅰ以下の群の回復曲線に比して緩く、退院時のBI損失量も有意に高かった(p<0.01)。バリアンス群と非バリアンス群の比較では、バリアンス群の早期BI損失量は非バリアンス群に比し大きく(p<0.01)、退院までその差が縮まることはなかった。準ねたきり~寝たきり群の回復はより緩いものの退院時には骨折前のADL以上に改善する例が半数にみられた。

    結論:認知症はBI回復に負の影響を与えていた。早期の適切なリハビリテーションがBI回復のクリティカルインディケーターと考えられた。寝たきり群においてもリハビリテーションの継続はQOL向上に寄与する可能性が示唆された。

実践報告
  • 蓮見 勝, 清水 信明, 村松 和道, 木下 紫, 小沼 由依
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 23 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2021/03/29
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     前立腺がんに対する手術療法・放射線療法後の経過観察を目的とした前立腺がん地域連携クリニカルパス(以下、連携パス)を作成した。連携開始後、2年目、5年目、10年目に当院へ定期受診する循環型パスとし、患者アウトカムは、1.PSA値が再燃基準値を超えない場合、2.放射線治療後は直腸出血が3日を超えて認めない場合とした。

     2012年1月から2019年10月までに579例に連携パスを適用した。連携施設総数は193施設であった。カルテ調査により、定期受診予定を過ぎても当院を受診していない、経過不明症例が103例判明した。経過不明症例について、連携医に調査票を郵送、受診状況確認への協力を依頼した。郵送による追跡調査により、72例の現状が判明し、最終的に経過不明症例は31例(5.4%)であった。

     連携パス適用患者579例中、他院紹介となった11例、他臓器のがん合併などバリアンス以外の理由で当院再受診となった12例、死亡例8例を除いた548例におけるバリアンス発生は、16例(2.9%)であった。

     当院の連携パス運用7年での追跡調査で、連携後の受診状況が確認できない患者が少なくないことが問題となった。今後、未受診患者をできる限り減らし、確実な地域連携を行うためのシステムの改善が必要と考えられた。

  • 勝又 萌, 河野 雅人, 堤 あかり, 平間 隆太郎, 竹田 健一郎, 持塚 康孝, 三木 良浩, 橋本 大, 橋爪 一光, 中村 秀範
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 23 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2021/03/29
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     高齢者肺炎の大半は誤嚥性肺炎であり、再燃・再入院率が高く、入院期間が長期化する症例が多い。そこで、当院呼吸器内科と西山病院は連携し、高齢者肺炎地域医療連携クリニカルパス(以下、肺炎地域連携パス)の作成に取り組み、2016年3月から運用を開始した。今回、肺炎地域連携パス導入後3年間の有用性を評価した。2016年3月~2019年3月までの期間において、肺炎治療後に転院した連続188症例のうち肺炎地域連携パスは46症例(24.5%)に使用されていた。パス使用件数(および使用率)は、2016年度12件(17.4%)、2017年度13件(19.7%)、2018年度21例(39.6%)と増加傾向であった。また、パス導入に伴う連携施設間の取り組みによって、転院受け入れ体制が向上した。パス使用例の背景は、平均年齢87.8歳、男性25例(54.3%)、誤嚥性肺炎(DPC傷病名)36例(78.3%)、要介護1以上37例(80.4%)であった。パス脱落は10例(21.7%)に認め、患者要因が大半であった。転院後最終転帰(パス脱落除く)は、死亡退院20例(55.6%)、入院継続9例(25.0%)、自宅退院または介護施設入所7例(19.4%)であった。パス使用例は、非使用例と比較して有意に高齢であったが、パス介入により入院期間が有意に短かった(各20.1±3.0日、36.5±20.6日;p値<0.0001)。以上、肺炎地域連携パスの導入により、自宅退院が困難と予想された高齢者肺炎に対して早期から多職種による包括的介入が行われ、円滑な転院調整が可能となった。

指針と解説
  • 日本クリニカルパス学会「電子パスに関する適正な代行入力手順の指針作成」プロジェクト
    原稿種別: 指針と解説
    2021 年 23 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2021/03/29
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     近年、電子カルテへの入力は、医療資格を持たない事務職員などが医師に代わってオーダや記録を入力する代行入力操作が一般化している。電子カルテには、電子クリニカルパス機能も標準的に搭載されるようになり、この操作にも代行入力操作が行われるケースが増えてきた。電子クリニカルパスは、1回の操作で多くの投薬や検査など、患者の侵襲行為にあたるオーダが適用されるため通常の代行入力操作より厳格な手順が求められるが、今まで代行入力操作に関するガイドラインが明示されていなかったため、各種の法令、厚生労働省の通知、ガイドラインに抵触しかねない事例や医療安全上問題となる事例も散見され、当学会にも問い合わせがくるようになった。そこで当学会では、電子クリニカルパスへの代行入力操作が適正に行われるための指針を作成し公開した。本稿ではこの指針につき作成の背景と経緯、解説と合わせて提示する。

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