日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
7 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第7巻 第1号 (May.31.2005)
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • ―循環器専門病院から働きかける医療連携とその基盤:「病」と「診」との共同作業―
    上嶋 健治, 鎌田 弘之, 瀬川 郁夫, 菊地 研, 平盛 勝彦
    原稿種別: 総説
    2005 年 7 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスは、患者と全ての医療従事者が検査や治療のスケジュールを共有するコミュニケーションツールである。しかし、このパスも実際に入院する患者があって始めて機能する。その意味で、クリニカルパスの実施前に効率的な患者紹介システムの開発など、機能的な医療連携が行われる必要がある。それには、医療連携に関わる医療従事者にお互いの一体感が必要である。すなわち、医療連携構築の基盤には相応の時間が必要であり、医療機関の相応の組織的かつ継続的な共同作業が不可欠である。したがって、専門病院は単に目前の患者だけを診て良しとするのではなく、救急救命のプレホスピタルケアからリハビリテーションまでも視野に入れた、医療・介護・福祉の中で、広範な医療連携に取り組むべきである。今後クリニカルパスも、このような医療連携によって患者紹介がなされた時点からスタートし、逆紹介によってゴールを迎えると考えるべきである。

  • ~胃切除クリニカルパスへの取り組みを中心に~
    伊勢 雄也, 萩原 研, 片山 志郎
    原稿種別: 総説
    2005 年 7 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     本稿では当院薬剤部における胃切除クリニカルパス(パスと略す)への取り組みを中心に論述した。まず、薬剤管理指導業務に胃切除パスを導入することの有用性について検討を行った。薬剤師が薬剤管理指導業務を通じてパスに携わることにより、医薬品の適正使用や患者QOLの向上により一層大きく貢献できると考えられた。次に胃切除パスの薬剤経済学的有用性について検討を行った。パスの導入により薬剤費が節減できることが明らかとなった。また、患者の術前併存疾患は入院時薬剤費を変動させる重要な因子であることも明らかとなった。次に、胃切除パス患者の術後感染発症因子について分析を行った。年齢、性別、手術時間、術中出血量の4因子が術後感染症の発症に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、術後感染の発症は入院日数の延長に関与していることが明らかとなった。さらに、パスに導入されている術後感染発症阻止薬であるCefazolin(CEZ)またはAmpicillin/Sulbactam(SBT/ABPC)の費用対効果について検討を行ったところ、CEZのほうが費用対効果が高いことが明らかとなった。このように我々薬剤師は、業務的にパスに携わるだけでなく、パスを薬剤師の観点から解析し、その情報を薬剤管理指導業務に導入する/他の医療従事者に情報提供することでパスの質的向上に重要な役割を果たすことができると考えられた。

原著
実践報告
  • ―当院の治療当日入院プロジェクトの一環として―
    伊藤 聡美, 富田 加奈子, 浦上 幸代, 村上 ゆかり, 戸田 久美子, 小田 聖子, 森 美雅, 小林 達也, 小田 京太
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 7 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では平成16年2月24日よりガンマナイフ治療を開始し、8月15日までに169症例に治療を行った。多くの施設にて行われているように2泊3日(治療前日入院)のクリニカルパス(以下パス)を主として使用しているが、在院日数の短縮・ベッドの有効活用を目的とし病院全体として治療当日入院を推進しており、1泊2日(治療当日入院)のパスも使用している。それぞれのパス(2泊3日154例、1泊2日15例)の使用経過につき分析した。その結果、1泊2日パスではバリアンスはみられなかった。1泊2日パスは入院日数が少なく、また、患者および家族の負担が少ないため好評であった。ガンマナイフ治療を行っている他施設の現況に関するアンケート調査の結果も報告する。

  • 岡本 泰岳
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 7 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     2003年9月より統合型電子カルテの全面運用を開始した。紙媒体のクリニカルパス(以下、紙パス)から電子カルテシステムと連動したクリニカルパス(以下、電子パス)への移行に伴って発生した問題点とその対策を、①電子カルテ運用前、②テストパス運用中、③全科展開後、に分けて報告する。①電子パスに求める基本コンセプトに基づいて、パッケージされていたパス機能を全面的に改良した。②改良した電子パス環境下にテストパス5種による臨床運用を行った。臨床現場での意見や不具合事象を取り入れさらに改良、機能追加を行った。その作業と平行して電子パス作成マニュアルと運用基準を作成した。③2004年3月より全科展開を開始した。クリニカルパス分科会で審査を行い認可された電子パスのみを適用可能とした。電子パス作成普及と運用基準の遵守のために定期的な講習会の開催と院内パス大会を利用した。2005年1月現在、52種の電子パスが稼動し、適用率は30%に達した。紙パスから電子パスへの移行に際しては、病院の電子パスに求める基本コンセプトを明確にし、それに基づいたパス機能の改良や開発を行うべきである。また運用に当たっては紙パス以上に教育と運用ルールの徹底が必要である。

  • 辻村 源司郎, 平田 正純, 竹下 秀之, 並河 孝, 本白水 博, 平田 順一, 松尾 洋史, 柴田 奈緒美, 槻本 康人
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 7 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     大腿骨頚部骨折の加療にクリニカルパス(パス)を用い、手術後理学療法におけるアウトカム評価を実施した。対象は、平成16年2月から6月に手術加療を行い、パスを使用した大腿骨頚部骨折患者11例、平均年齢75.8(62~88)歳、80歳以上は4例であった。パス通りに全荷重開始日から杖歩行可能であった症例、不可能であった症例を分類し、両群に対し創部痛の評価、下肢の筋力測定を行った。また受傷から手術までの期間、全荷重開始日までの術後訓練施行日数、既往症の悪化・術後合併症の有無についても調査した。パス通り杖歩行開始が不可能であった群は可能であった群より高齢で、術後創部痛が残存している傾向があった。80歳以上の4例は全例パス通り杖歩行開始が不可能であった。また、受傷前から股関節および膝関節に変形性関節症(OA)を有する症例には荷重時痛の増強を認めた。80歳以上で既往症の悪化や合併症のある症例には退院時アウトカム設定を今後検討する必要があると考えた。また、OAによる荷重時痛の増強等、個人差によるバリアンスを減少させるため、パスの日数設定に幅をもたせる工夫が必要と考えた。

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