日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
19 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第19巻 第2号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
研究報告
  • 長浜 幸子, 岡田 亜紀子, 佐々木 美穂, 松崎 政三
    2017 年19 巻2 号 p. 101-106
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:診療報酬改定に伴い、患者の満足度向上を目的とした記録内容の充実は優先すべき重要な課題である。本研究ではアンケート調査を行い、医療施設におけるクリニカルパス(以下、パス)の利用状況や栄養管理の記録法とその現状を把握することを目的とした。

    方法:113施設に郵送調査法によるアンケートを2015年6月に実施、90施設より回答を得た(回収率79.6%)。IBM SPSS Statistics22によりデータ解析し、検討を行った。

    結果:パスの導入は71施設であり、達成された点として「医療ケアの標準化」58施設(81.7%)、「業務改善」42施設(59.2%)であった。栄養食事療法に関わる記録として、90施設のうち86施設(95.6%)で栄養管理計画書が使用されていた。主な記録法としては、「POMR」、「簡易的記録」がともに43施設(47.8%)で使用されていた。チーム医療における記録内容の改善点として、90施設のうち60施設(66.7%)が「情報の共有化」、46施設(51.1%)が「スタッフ間のコミュニケーションへの活用」と回答した。

    まとめ:本研究において、パスの導入は普及してきており、医療ケアの標準化や業務改善がみられた。一方、チーム医療における記録内容の充実、情報伝達手段などを見直す必要性が示唆された。

  • 内平 貴大, 葉 清規, 宮﨑 寛史, 森久 梨絵, 大石 陽介, 村瀬 正昭
    2017 年19 巻2 号 p. 107-111
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:腰椎変性疾患患者の術後の健康関連QOLに関連する因子を調査し、当院クリニカルパス(以下、パス)の検討を行うことである。

    方法:2003年1月から2013年12月までに当院において腰部脊柱管狭窄症、または腰椎変性すべり症と診断され、腰椎椎弓切除術を施行された90例(男性61名、女性29名)、平均年齢66.56±8.84歳を対象とした。パスでは術後3週で退院し、2年間の定期的な診察で経過観察することになっている。本研究では退院後1年経過時のSF-36から算出した身体的健康度(Physical component summary:以下、PCS)、精神的健康度(Mental component summary:以下、MCS)、役割/社会的健康度(Role/Social component summary:以下、RCS)を従属変数とし、年齢、性別、在院日数、退院時の疼痛・しびれ・感覚障害の有無、SLRテスト、退院後の運動療法の有無を独立変数とし、重回帰分析を用いて関連性を検討した。有意水準は5%とした。

    結果:PCSでは性別、年齢が選択された。MCSでは退院後の運動療法の有無が選択された。RCSでは退院時の疼痛の有無、年齢が選択された。

    結論:腰椎椎弓切除術を施行された患者では、年齢や性別を踏まえたうえで、入院から退院後のフォローを含めて一貫したパスを検討していく必要があることが示唆された。

実践報告
  • 山川 直美, 長岡 由佳, 木村 夏実, 黒沼 ゆり
    2017 年19 巻2 号 p. 115-120
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:当院では、平成27年4月まで片側人工膝関節全置換術(以下、TKA)クリニカルパス(以下、パス)を術後21日間としていた。在院日数の短縮を目的として、同年5月より術後18日間へ修正した。その後の稼働状況、今後の課題について検討した。

    方法:平成26年5月~平成27年2月で片側TKA術後21日パス適応患者60例を単純無作為抽出法で抽出しバリアンス分析を行い、在院日数を検討した。また、正のバリアンスが多かった杖歩行開始のアウトカムを変更した。修正後、平成27年5月~同年6月で片側TKA術後18日パス適応患者30例を単純無作為抽出法で抽出し、パス稼働状況について調査した。

    結果:術後18日のパス全体のバリアンスは、パスどおり83.3%、正のバリアンス10%、負のバリアンス6.7%でその理由は、術前の日常生活自立度、術後疼痛であった。また、アウトカムを変更した杖歩行開始は、パスどおり15.4%、正のバリアンス57.7%、負のバリアンス26.9%でその理由は、パス全体のバリアンス理由と同様であった。

    考察:術後18日の期間は妥当であると考えられる。今後負のバリアンスを軽減するためには、術前の日常生活自立度に応じ、入院時より退院を見据えた個別的な支援が必要となる。また、術後の効果的な除痛を図るため、医師や薬剤師との連携が求められる。杖歩行開始の遅れは加齢による平衡感覚の低下が大きいと予測される。

    結語:術後18日間への短縮は妥当であるが、バリアンス分析を継続しパスの見直し・修正が必要と考える。

特集(第17回学術集会)
報告
  • 島井 健一郎
    2017 年19 巻2 号 p. 179-185
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスを用いた医療が、紙媒体から、電子化された運用に変わりつつある中で、クリニカルパス活動を支援する様々なシステムの現況を調査し、学会などから配布される標準マスターを用いた標準的な電子クリニカルパスシステムの実装を目指し、一医療機関内だけでなく複数医療機関・学会等でも、電子クリニカルパスシステムで蓄積されたデータが高次利用されるための標準データモデルを考案する。

     電子化されたクリニカルパスデータで、病院内と多施設間それぞれの視点での医療・診療の継続的質保証活動・サイクルを支援するためには、各疾病やまとまった診療行為群が記述・描画される、利用・適用前のクリニカルパスコンテンツの作成段階で、標準的な情報・データモデルに基づいて、管理されている必要があることがわかった。

     クリニカルパスコンテンツが持つ状況として、時間軸で見た「未来・現在・過去」の情報の存在状況に応じて、「Plan・Procedure・Pathway」の3種類に分類され、本研究のまずはじめの対象として、「Plan」状況のクリニカルパスの標準的なデータ・情報モデルを設計し、構成される要素を整理した。

     今後、学会・国などでオーソライズされたクリニカルパスを用いた、モデルの検証・改訂、電子クリニカルパスの実データをもとにした、標準的なデータ構造の検証、標準的電子クリニカルパスコンテンツが管理・改訂される仕組み・機構の必要性が示唆された。

  • 島井 健一郎
    2017 年19 巻2 号 p. 186-189
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     クリニカルパスを用いた医療が、紙媒体から、電子化された運用に変わりつつある中で、クリニカルパス活動を支援する様々なシステムの現況を調査し、学会などから配布される標準マスターを用いた標準的な電子クリニカルパスシステムの実装を目指し、一医療機関内だけでなく複数医療機関・学会等でも、電子クリニカルパスシステムで蓄積されたデータが高次利用されるための標準データモデルを考案する。

     電子化されたクリニカルパスデータで、病院内と多施設間それぞれの視点での医療・診療の継続的質保証活動・サイクルを支援するためには、各疾病やまとまった診療行為群が記述・描画される、利用・適用前のクリニカルパスコンテンツの作成段階で、標準的な情報・データモデルに基づいて、管理されている必要があることがわかった。

     クリニカルパスコンテンツが持つ「Plan・Procedure・Pathway」の3種類の状況のうち、「Plan」状況のクリニカルパスの標準的なデータ・情報モデルを設計し、構成される要素を整理した。

     今後、学会・国などで、モデルの検証・改訂、電子クリニカルパスの実データをもとにした、標準的なデータ構造の検証・改訂が期待される。

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