日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
24 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第24巻 第1号 (Mar.28.2022)
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
実践報告
  • 谷島 和美, 高橋 有子, 横尾 実乃里, 上遠野 千夏
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     せん妄は身体疾患や薬剤により、脳の機能不全が生じることで出現する精神症状である。せん妄に対しては、患者のリスク因子を同定して発症の予防策を講じ、せん妄が発症した際には早期に適切に対応することが望まれている。当院では2016年2月より、食道がんに対する手術療法を受ける患者の、術後せん妄に焦点を当てた多職種介入プログラムを開始した。そのプログラムの一環として、看護師が患者の術後せん妄を早期に発見し、適切な医療と看護を提供するための「食道がん術後せん妄ハイリスクパス」(以下、せん妄ハイリスクパス)を導入している。

     2016年2月から2019年4月までに、81名の患者にせん妄ハイリスクパスが適用された。バリアンス分析、バリアンスの発生状況とクリニカルパスまたは看護記録に記載されたせん妄症状に不一致がある場面の抽出、看護師のへのアンケート調査を実施し、せん妄ハイリスクパスの稼働日数の短縮とアセスメント項目の修正を行った。引き続き、修正したせん妄ハイリスクパスの運用と評価を重ねる予定である。

  • 松本 由紀子, 酒井 早, 船橋 響介, 島田 裕子, 上島 成也
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当センターでは、クリニカルパス(以下、パス)の管理・改善促進を目的に、2013年4月よりパス委員会へ診療情報管理士を配置した。

     診療情報管理室が事務局を担い、管理台帳・申請フロー・マニュアル等を整備し、窓口の一元化を行った。パスに関する統計を定期的に作成し、電子カルテの院内掲示板でパス情報の発信を行うなど、基本的な管理体制を構築した。

     次に、質向上を促進する仕組みとして勉強会・パス大会の定例化を行った。また、新規作成の提案・マネジメントに加え、毎月1診療科に対し診療情報管理士が1~2件の既存パスの分析資料を作成することとした。分析資料を元に、関連する多職種が集まり問題点と改善案を検討し、定期的にパスの質向上を促進する「パス更新」の仕組みを構築した。

     分析資料では、診断群分類の内訳から適用基準の妥当性の検討、DPCデータ分析ソフトのベンチマーク機能を用いた設定日数や診療内容の経営的分析、アウトカム・バリアンス集計からの課題など、問題点の抽出と具体的提案を行った。

     この結果、パス数は2013年4月時点94種類から2020年4月時点130種類に増加。適用率は2013年度43.2%から2019年度49.0%に増加。分析提案により改定したパスは2013年7月~2020年4月で全体の約50%となった。

     現場の負担が大きく軽減し、多職種での円滑なパス作成や改善が可能となり、PDCAサイクルの仕組みを運用できた。今後は、さらなる質向上に向けて教育の充実が課題と考える。

  • 西中 巧, 髙志 賢太郎, 荒木 康幸, 管田 塁, 吉冨 香愛, 小妻 幸男
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では、心臓血管外科手術後の患者に対して人工呼吸器離脱ユニットパス(以下、呼吸器離脱パス)で標準化された患者管理を行っている。呼吸器離脱パスは、数時間ごとの短い時間間隔でタスクが進行する特徴があり、当院で用いているMegaOrk HR(日本電気株式会社、東京)の電子パスでは作成が困難であった。そのため、電子カルテ導入後もしばらく紙運用を続けた。紙記録を臨床工学技士が集計・分析し、診療現場へフィードバックしていたが、作業に時間を要し、数年に1回の報告が限界であった。また、用紙の紛失や入力漏れなどもあり、データ収集が困難であったため、文書管理システムであるYahgee(富士フイルムメディカルITソリューションズ株式会社、東京)を用いて電子化を行った。電子化するにあたり、BI(Business Intelligence)ツールとETL(Extract Transform Load)ツールを用いて自動可視化の仕組み(RPA: Robotic Process Automation)を構築したが、この工程では、データの構造化、収集方法の工夫が鍵となった。この取り組みの結果、臨床工学技士の業務負担軽減を行い、かつ診療現場への迅速なフィードバックを可能にした。術後管理のトレンドを分析することで、今後の患者管理に活かす仕組みが構築できた。呼吸器離脱パスのデータ分析プロセスを改善したことで、データ集計・分析の省力化により、PDCAサイクルを効率的に回すことができ、医療の質向上のスピードアップが図れた。

  • 日髙 淳, 山田 浩二, 西岡 智美, 小妻 幸男, 町田 二郎
    原稿種別: 実践報告
    2022 年 24 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     急性期リハビリテーション(以下、リハビリ)においてアウトカム評価は一般化しておらず、診療記録も叙述的となっている。今回、当院のクリニカルパス(以下、パス)に急性期リハビリに関する標準化されたアウトカム(以下、リハビリアウトカム)を設定し、日々の診療に伴うデータを蓄積するシステムを確立した。アウトカムは過去のデータや自験例、渉猟し得た報告、パス上の安静度等を勘案し、Basic Outcome Maste(以下、BOM)1)を用いて設定した。リハビリアウトカムではActivities of Daily Living(以下、ADL)・歩行の評価に加え、Functional Independence Measure(以下、FIM)による定期的な評価を行うこととした。バリアンス記録をデータとして収集、分析することを念頭に、構造化されたバリアンステンプレートを作成した。今回設定したアウトカムは評価からバリアンステンプレートの記載まで理学療法士および作業療法士(以下、セラピスト)が行うこととした。リハビリアウトカムを導入したパスの1つである大腸切除パスを分析した結果、リハビリアウトカムの評価結果は大腸切除術施行患者の転帰予測に寄与する可能性が示唆された。また、術前のADLが自立していてもフレイルである患者に対しては術前介入の必要性や、術後の個別的な介入が必要となる可能性が示唆された。リハビリアウトカムの導入はセラピスト間の介入のばらつきを制御するのみでなく患者の転帰予測や急性期リハビリの成果を評価するツールとなる可能性がある。

特集(第21回学術集会) 特別企画2 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療計画-当院ではこうしている-
報告
  • ―ePath事業におけるJSCP・JAMI合同委員会最終報告―
    副島 秀久, 河村 進, 白鳥 義宗, 松波 和寿
    原稿種別: その他
    2022 年 24 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2022/03/28
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     日本医療情報学会(JAMI)と日本クリニカルパス学会(JSCP)は2015年以来、合同委員会を設置し、クリニカルパスの電子化に関わる基礎的な議論を進め、その成果を両学会のシンポジウムなどを通して発表してきた。その具現化を目指すものとして、ePath事業「クリニカルパス標準データモデルの開発と利活用」が2018年10月にAMED(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)より採択され研究開発を開始し2021年3月終了した。本事業の目的は、1)アウトカム志向型パスの標準化、2)標準データリポジトリ規格の策定、3)アウトカムを含む診療プロセス解析基盤構築である。4病院と4ベンダーが参加し統合的にデータ収集し解析を実施したが、当報告ではその一連の成果をJSCPの立場として総括した。具体的にはOAT(Outcome-Assessment-Task)Unitの概念整理、BOMをベースにしたOATのセット化と8疾患のひな型パス作成、データモデルの作成、リポジトリ構築、機械学習やテキストマイニングの手法を用いた実臨床データの統合解析と結果などを例示した。COVID-19の影響で解析作業が遅れ途中経過の報告になるが、すでに臨床の質を上げ、働き方改革にもつながる有用な結果が得られつつある。医療機関やベンダーの垣根を越えてデータを収集することはできたが、今後この仕組みを普及させるには一層の医療の標準化と検査や処方などのマスターの整備および徹底が求められる。医療の無駄を省き、質を上げるうえで、こうしたビッグデータによるプロセス解析は今後とも重要になると考える。

学会アンケート
feedback
Top