日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
22 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
研究報告
  • 時岡 浩二, 河合 勇介, 赤澤 奈緒, 澁谷 諒, 勝部 晋介, 石川 光, 明石 玲子, 松本 将典, 藤井 攝雄, 植木 悠太, 黒田 ...
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 22 巻 3 号 p. 151-157
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     心不全患者において、リハビリテーション(以下、リハビリ)を早期に開始することで、心不全の予後を改善する。我々は平均111日のfollow up期間で心不全増悪での再入院や死亡に関連する因子を、リハビリ進捗におけるセンチネル方式のバリアンス分析を用いて後ろ向きに解析した。心不全治療クリニカルパスを適応した103 例を対象とし、退院後の心不全再入院ないしは死亡したイベント発生群22例と、イベント非発生群81例を2 群に分け比較検討した。入院5日目に「50 m歩行ができる」をアウトカムに設定した。栄養評価は、Controlling Nutritional Status(以下、CONUT値)、 Geriatric Nutritional Risk Index(以下、GNRI)、採血検査項目などを用いた。

     イベント発生群では入院5日目に「50 m歩行ができる」のアウトカム達成率が非発生群より低く、Brain Natriuretic Peptide(以下、BNP)とCONUT値が高かった。多変量解析にて、入院5日目の50 m歩行未達成はイベント発生の危険因子であった(p=0.027, OR 6.02, 95%CI 1.22〜29.66)。入院5日目の50 m歩行未達成は達成群と比較し、イベント発生が多いことをKaplan-Meier曲線で描出し、ログランク検定で示した(p=0.001)。多変量解析にて、入院5日目の50 m歩行未達成は入院時GNRIとBarthel Indexの低値と関連していた。

     クリニカルパスにおけるリハビリテーション進捗のバリアンス分析で心不全患者の予後不良因子を推定した。早期の離床を目指し、多職種チームによる入院時からの介入が必要である。

実践報告
  • 上田 将之, 赤田 直軌, 西村 美希, 武田 康平, 石田 哲士, 本城 誠, 川那辺 圭一, 山本 秀和
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    【目的】当院は、人工股関節全置換術(total hip arthroplasty、以下、THA)の3週間クリニカルパス(以下、パス)を用いている。今回、疾患や治療内容の理解を深め周術期医療や退院後生活、脱臼への不安を軽減することを目的に、患者用パスに則った教育動画(以下、動画パス)を作成し、タブレット端末として希望者に貸し出した。動画パスの紹介と効果を検証したので報告する。

    【方法】動画パスは、「手術や脱臼の知識」、「病棟生活」、「理学療法」、「作業療法」、「自主練習」から構成され、術前~術後日数に応じた内容を音声動画にて解説する。術前から退院まで貸し出し、ベッドサイドで好きな時間に好きな内容を選んで視聴できる。2017年10月~2018年3月にTHAを受けた97名を対象に、アンケート調査を実施した。

    【結果】アンケート調査の有効回答は90名で有効回答率は92.8%であった。動画パスの使用率は68.9%で、平均年齢は使用者64.3±10.3歳と非使用者70.1±12.8歳で有意差を認めた。動画パスは、「手術の不安軽減」に約73%、「入院生活の不安軽減」に約85%、「退院後生活の不安軽減」に約92%、「脱臼の不安軽減」に約95%が役立ったと回答した。

    【考察】動画パスの使用率は約70%とおおむね受け入れられた。タブレット端末は、70歳以上の高齢者は使用しにくい傾向があった。アンケート調査結果から、動画パスは特に退院後生活や脱臼の不安軽減に有効である可能性が示唆された。

  • 勝尾 信一, 吹矢 三恵子, 坂下 香苗, 渡邉 まどか, 出口 義信
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     クリニカルパス(以下、パス)を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない。そこで、パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した。対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で、転倒・転落は対象外とした。方法は、医療事故をパス適用中と非適用中に区別し、それぞれの医療事故発生頻度を算出した。また、医療事故内容を分類し比較した。結果は、パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日、非適用中事故は0.002714件/人・日であり、有意にパス適用中事故が少なかった。年度ごとの変化をみると、若干の減少傾向がみられ、パス適用率が大幅に増加した2016年度に医療事故発生頻度はパス適用中、非適用中とも大きく減少した。また、いずれの年度もパス適用中事故発生頻度のほうが低かった。医療事故内容別にみると、差はなかった。以上の結果より、パスを導入したことで短絡的に医療事故が減ったわけではなく、パスの内容や運用方法の改善といった日々の努力、長年の活動によるパスの風土化により、病院全体に標準化、チーム医療が浸透してきている結果とも考えられる。結論として、パスは医療事故減少を通して、医療安全に寄与している可能性が示唆された。

  • 松原 寛和, 竹内 直人, 澤田 佳克, 永田 純一, 炭竈 恵美子
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     2019年4月に電子カルテのベンダーが移行するのに伴い、紙パス56種類から電子パス101種類に増加させて運用開始した。電子パス導入に向けてのパス委員会の活動を報告、分析し、今後のパス委員会の課題を解決する方法を検討した。

     2018年5~6月にワーキンググループで運用規約を作成し、10月に外部講師による院内研修会と最近同じベンダーで新規に電子パスを作成した病院見学を実施した。11月に医局会で全医師に電子パス作成に向けての取り組みを説明、周知を行った。さらに、クリニカルパス(以下、パス)のアウトカムと観察項目を新規にBOMから選択して入れ替えた。12月にパス内の薬剤を各科で統一し薬剤師による承認を行った。2019年1月に最終のクリティカル インディケーター=終了基準として最短入院期間最終日に入れる運用を決定し、電子パス作成の操作研修を行った。2月の1ヵ月間で電子パスを作成、3月に承認委員会で電子パスを審査・承認し、4月に電子パス運用を開始した。

     今回、パス委員会の活動で良かった点は、全診療科からパス担当医師を選出して医師への周知、協力が得られたこと、パス担当医師に電子パス作成の操作研修をしたこと、使用薬剤の統一を病院決定事項として進めたこと、電子パス入力作成の負担軽減、DPCとパスの整合性をとったこと、パスの承認方法である。課題と感じた点は、パス担当医師へのパス作成の呼びかけ、看護師へのパス運用研修、パス教育のあり方であり、カンファレンスでの医師への働きかけ、ミニパス大会とパス大会を開催することにより解決していきたいと考えている。

  • 池永 康規
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     石川県には診療情報を地域の施設間で共有することができるID-Linkが導入されている。加賀脳卒中地域連携クリニカルパス(以下、加賀パス)をID-Linkに組み込んで運用した後に、看護師記録業務完了時刻が短縮しているかについて検証したので報告する。

     ID-Linkによる加賀パス運用前の2014年1月から2015年12月まで当院に転院し退院した患者、および転院当日に患者を担当した看護師の属性(以下、前ID-Link群)を、ID-Linkによる加賀パス運用後の2017年1月から2018年12月までに転院し退院した患者、および転院当日に患者を担当した看護師の属性(以下、後ID-Link群)と比較した。加賀パス閲覧可能時刻、看護師記録完了時刻を両群間で比較し、ID-Linkによる加賀パス運用の効果を検証した。

     前ID-Link群102例、後ID-Link群101例が対象となった。後ID-Link群で患者年齢が高く合併症が多く男性看護師が多かった。ID-Link使用有無と加賀パス閲覧可能となった時刻、および加賀パス閲覧可能となった時刻と看護師記録完了時刻には統計学的有意な相関が存在した。ID-Link使用有無、患者年齢、合併症数、看護師の男女比を独立変数として看護師記録完了時刻を従属変数としたステップワイズ線形重回帰分析では、患者年齢、合併症数、看護師男女比が棄却されID-Link使用有無が独立因子として寄与し、加賀パスをID-Linkを用いて使用することが約83分、患者転院時看護師記録業務完了時刻を短縮していた。連携パスをID-Linkを用いて地域施設間で運用することは、看護師の業務効率化に貢献できる可能性が高いと考えられる。

特集(第20回学術集会)シンポジウム2 経営思想に基づくクリニカルパスを用いた医療情報(コスト分析)の活用
特集(第20回学術集会)シンポジウム3 患者経験・患者報告アウトカム結果を医療の質改善に役立てるには
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