日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
3 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第3巻 第3号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • ~チーム医療のための作成計画と実践結果~
    今田 光一, 竹田 慎一, 高桜 英輔, 中陣 多津子
    原稿種別: 原著
    2001 年 3 巻 3 号 p. 5-11
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院は、1998年後半よりパスの導入の検討を開始した。いくつかのパス導入先駆病院の実例を参考に、導入にあたってはできるだけ合理的かつ全院的に取り組むことを計画し実践してきた。当院の導入計画の基本方針と約1年半の導入経過から、クリニカルパスの理想的な導入方法について考察した。

     クリニカルパスの導入は、導入を予定する病院あるいは病棟の導入目的を明確にし、この目的に一貫した組織編成、啓蒙、計画、作成を行うことが鉄則である。病病・病診連携、電子化、在宅医療といった方向に関しても、この鉄則を厳守することが円滑導入の重要なポイントである。

  • (看護婦の立場より)
    後藤 美紀, 仮屋 美喜子, 境 孝子, 谷口 正次
    原稿種別: 原著
    2001 年 3 巻 3 号 p. 13-18
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     カーデックス、体温表、看護記録およびオーダーセットを統合した腹腔鏡下胆嚢摘出術のクリニカルパス(以下、LCのパス)を作成し、200例の患者に対してこれを実施した。このパスを実際に使用した看護婦の満足度について検討する目的で看護婦39名を対象にアンケート調査を行った。同時にパス実施200例中のバリアンスを検討した。アンケート結果では業務の合理化について、使いやすさ(82%)、看護業務の均一化(90%)、記録時間の短縮(95%)、業務の整理(82%)すべてについて看護婦の8割~9割が職員用パスの有効性を認めた。一方、患者の満足度向上、闘病意欲や治療への参加意識については過半数の看護婦がわからないとした。インフォームド・コンセントに役立つは56%で、患者とのコミュニケーションが良くなるは26%であった。また、看護の質の向上に役立つとしたのは51%あったが、看護教育に役立つは28%と低率であった。LCのパスからの逸脱は術式変更した7例で、パス遂行したが負のバリアンスは31例、その内訳は社会的な要因が27例と大部分を占め、術後合併症によるものは4例(イレウス、炎症所見、胆汁漏れ、喘息発作)と少数であった。以上の結果から、LCのパス導入によって業務の合理化は達成できたが、看護の質の向上や看護教育については、今後さらに検討が必要と考えられた。患者満足度などについて多くの看護婦がわからないとしたのは患者とのコミュニケーション不足が一因と考えられ、その対応の必要性が示唆された。

実践報告
  • 飯田 さよみ, 中北 和夫, 泉 かよみ, 望月 龍馬, 山根 壽春, 丸山 千和子, 本間 進, 佐々木 道江, 林 靖二, 森脇 要
    原稿種別: 実践報告
    2001 年 3 巻 3 号 p. 21-23
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     国立南和歌山病院においては、平成10年2月に医師をはじめ、看護婦、薬剤師、栄養士、検査技師、放射線技師、理学療法士、事務職員など医療に携わるすべての職種の代表者からなるクリニカルパスウエイ委員会が設置され、同年10月からクリニカルパスが実践されている。その後、平成11年3月に病院情報システム(オーダリングシステム)が導入され、これを契機にクリニカルパスに盛り込まれた情報を電子化して電子的にオーダーを伝達、完結することを考えた。これを電子クリニカルパスウエイ(e-path)と呼んで活用してきた。e-パスの特徴として、カレンダー機能の付与、選択肢の設定、クリニカルパスの各種データの統計処理機能があげられる。尿検査、血液検査、心電図検査、薬の処方、各種放射線検査、食事指導項目を組み込んだ23のe-パスを作成し、活用した。検査および薬のオーダーは同時に看護支援システムに伝達される。利用状況は、平成11年11月から1年間で943例であり、なかでも正常分娩、白内障、糖尿病、単純子宮摘出術、大腸ポリープ切除術のe-パスが頻用された。「e-パス」のボタンーつをクリックすることで入院から退院までのオーダーを完結できる便宜性は利用者に好評である。

  • 泉 かよみ, 飯田 さよみ, 中北 和夫, 辻 孝, 池田 かおり, 和田 洋忠, 望月 龍馬, 山根 壽春, 高橋 勝也, 森脇 要
    原稿種別: 実践報告
    2001 年 3 巻 3 号 p. 25-27
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では、急性期入院医療定額払い方式の試行病院に指定されたのを契機に平成10年10月よりクリニカルパスの運用を開始した。当病棟では白内障手術クリニカルパスを作成し、活用してきた。

     使用当初は、表紙に病名を明示した患者用クリニカルパスを用いて説明し、そのまま手渡していた。しかし、病名が他の患者にもわかるという問題があり、患者のプライバシー保護という観点からクリニカルパス委員会で検討し、平成12年4月より「わたしの入院記録」と題したファイルに綴じて患者に手渡した。ファイルに綴じることで病名が他の患者に知られることなく説明が受けられ、保管できるようになった。

     使用後の満足度調査では、医師や看護婦の説明に対する患者の理解度が若干良くなっていた。患者への説明内容は同じであることから考えるとファイル使用によりプライバシーが保護され安心して説明が聞けたのではないかと考える。

     そして今までは計画書、説明書であった患者用クリニカルパスに記録という意義が付加された。ケア内容を聞いて、見るだけでなく、自分自身であるいは家族がそれを記録していこうという意識付けをこのファイルは与えていると思われる。患者固有の入院記録になることによってケア情報提供は充実していくと考える。

  • 菊本 牧子, 世良 優子, 志水 栄津子, 廣岡 美絵, 加瀬 清美, 田中 和美, 濱田 ゆかり, 高原 美貴, 出口 なをみ, 青江 尚 ...
    原稿種別: 実践報告
    2001 年 3 巻 3 号 p. 29-33
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院は、緊急を含めた年間分娩数、平成11年460件(平成12年456件)の約4割が帝王切開術での分娩である。経膣分娩経過中に緊急帝王切開術になることも多く、経膣分娩パスから帝王切開パスに移行できるのではないかと考えパスの移行を考えた。そこで経膣分娩パスからバリアンスとしてドロップアウトした症例を対象群、経膣分娩パスから帝王切開パスへと移行を試みた症例を移行群として比較検討した。

     その結果、対象群では、患者からの質問にはその都度スタッフが対応できており不安は感じられていなかった。反対に、経膣分娩には患者用パスがあるのに帝王切開には無いことが不満として聞かれた。移行群では、術後に再度説明を受けることで術後経過について理解しやすく、患者用パスの予定を確認しながらその日の目標を具体的に設定し、自主的な行動をとることができた。入院中に指導をいつ受けるかなど計画が立てやすくなったことで患者教育にもつながつた。

     通常バリアンスが生じた時点でパスは使用できなくなるが、今回の研究結果から経膣分娩パスから帝王切開パスへのパス間移行は可能であり且つ有用であることが分かった。

     今後の予定を患者に掲示することで、インフォームド・コンセントの充実につながりまた、術後経過について帝王切開パスを用いることで患者の行動に目標が設定でき、患者教育の効果があると考えられた。

  • 西本 愛, 林 周児, 入谷 照子, 槌井 悦子, 田辺 共子, 藤本 俊一郎
    原稿種別: 実践報告
    2001 年 3 巻 3 号 p. 35-41
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー
  • 三村 博美, 篠原 正彦, 世古 都, 古賀 祥栄子
    原稿種別: 実践報告
    2001 年 3 巻 3 号 p. 43-50
    発行日: 2002/07/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当病院外科病棟では、成人鼡径ヘルニアに対する手術・麻酔方法の変更による入院期間が短縮可能となった。それに伴い、1泊と4泊コースの患者用・医療者用のクリニカルパスを作成した。1年間の鼡径ヘルニアの手術患者に使用し、患者および医療者側からの声を基にパスに対する評価を行った。

     ヘルニア手術患者総数は210名であった。その内、1泊は141名と圧倒的に1泊での手術希望者が多かった。4泊の69名は全て予定通り退院可能であった。1泊は3名が退院延期となった。発熱と疼痛によるバリアンスの発生によるものである。

     発熱に対しては、抗生剤投与で改善が図られ、疼痛に関しては、今後検討の余地を残す。

     パス使用により、患者・医療者が共通の目標を持って治療・看護に積極的に参加することが可能となり、患者満足度の向上・チーム医療の充実に繋がっていることが考えられた。

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