日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
6 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第6巻 第3号 (Jan.31.2005)
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原著
  • 津村 裕昭, 市川 徹, 香河 哲也, 西原 雅浩, 村上 義昭, 竹末 芳生, 末田 泰二郎
    原稿種別: 原著
    2005 年 6 巻 3 号 p. 421-426
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     【目的】救急疾患に対する効率的で重症例を見逃さない管理、さらに患者・医療者関係の円滑化を支援するパス(治療法選択パス、治療経過説明(IC)パス)の作成を試みた。【方法】穿孔性十二指腸潰瘍症例の検討から、保存療法、腹腔鏡下手術、開腹手術の選択基準をパス表に記載して方針決定を支援するパスを作成、前向きに試行した。腸閉塞では絞扼の危険因子を記載したパスを、急性胆嚢炎では患者から期待される低侵襲手術と早期退院からの逸脱する危険因子を記載したパスを作成した。【結果】穿孔性十二指腸潰瘍ではASA、腹部所見、CT画像による治療法選択基準が求められた。パスを使用した腹腔鏡下手術ではパス導入後に短期アウトカム(胃管留置期間,絶食期間,入院期間)が改善した。バリアンスは全体で26%に認められ、その要因は患者側43%、医療スタッフ側36%、病院システム21%であった。腸閉塞の絞扼危険因子はSIRS項目、腹膜刺激症状、CT上の腹水であった。急性胆嚢炎の開腹危険因子は上腹部手術既往、CRP、BMIであり、在院延長危険因子は上腹部手術既往、年齢、体温であった。【結論】周術期管理だけでなく、治療法選択や経過説明といった医療スタッフを支援する機能をパスに持たせて使用することが、救急医療における医療経済、質向上、危機管理、円滑な医療推進の観点からみて極めて重要と考えられた。

  • 平田 正純, 竹下 秀之, 田久保 興徳, 劉 和輝, 谷口 大吾, 渡邉 良子, 上田 静子
    原稿種別: 原著
    2005 年 6 巻 3 号 p. 427-429
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     大腿骨転子部骨折患者において、術前に年齢と痴呆の有無から退院時歩行能力を予測し、この歩行能力達成を退院時アウトカムとしたクリニカルパス(パス)を作成した。パス適用患者の受傷前、退院時の歩行能力を調査し、アウトカム設定の妥当性および歩行能力と在院日数の関係について検討した。70%の患者で退院時に受傷前の歩行能力が維持できていたが、痴呆合併患者では歩行能力が有意に低下していた。9割以上の患者で術前に予測した退院時歩行能力は実際の退院時歩行能力と一致していた。術後在院日数と歩行能力の回復に関連がないことが判明し、個々の患者で適切にアウトカムを設定することが重要と考えた。退院時歩行能力が低下した患者には、他施設に移った場合の医療連携パスが必要と考えた。

  • ―病院特性による原価の相違―
    小林 美亜, 池田 俊也, 阿部 俊子, 池上 直己
    原稿種別: 原著
    2005 年 6 巻 3 号 p. 431-438
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     医療費を抑制するために、入院医療の急性期や急性期以外の回復期リハ等・慢性期のいずれにおいても、医療機関のコストや機能等を適切に反映した総合的な評価として、包括払いの導入可能性が示唆されている。平成15年度より特定機能病院などでは、診断群分類別包括評価制度(DPC)が導入されており、医療機関の経営上、原価の把握は重要な課題となっている。本研究では、3病院を対象とし、各病院において白内障に対する標準的な医療の流れに則ったクリニカルパス(以下パス)を作成し、パスを雛形として標準原価と、出来高払いおよび参考値としての包括払いを想定した収益を算定し、収支状況の把握を行い、病院間で比較した。さらに病院間で医療内容の相違から生じる標準原価への影響を検討した。その結果、人件費や検査費の原価が高い病院では、収支差額が低くなる傾向にあった。患者への診療などの介入頻度や検査の種類・回数などの病院間の医療内容の相違が人件費や検査費の原価を変動させ、標準原価に影響を与えていた。DPCなどへの医療の標準化に対応するためには、パスを活用した原価計算を行い、医療の質を保障した経営資源の最適化を図ることが重要となることが示唆された。

  • 園田 昌毅, 池田 千恵子, 須賀井 雅子, 平林 君枝, 生田 謙二, 平野 彰一, 小松 義秀, 山本 義一
    原稿種別: 原著
    2005 年 6 巻 3 号 p. 439-441
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     膝前十字靭帯(以下ACL)損傷と半月板損傷の治療におけるパスの効果についてアンケートとレセプトから調査した。2002年8月から2003年1月までに、パスを使用した症例中アンケート回収可能であったACL群26例、半月板群51例について検討した。また、整形外科病棟看護師21名に対するアンケート調査の内容を検討した。さらに在院日数と医療費のレセプト調査はACL群・半月板群ともにパス導入前後各20例について施行した。その結果、患者アンケートで、ACL群・半月板群ともに約60%が「疾病と治療内容をよく理解できた」、90%以上が「パスが治療の役に立った」と回答した。「パスの内容をよく理解できた」は、ACL群96%に比べ半月板群78%と低く、入院期間の短い半月板群でパス内容の理解が劣る傾向にあった。看護師アンケートでは、86%が「看護業務の負担が減った」、95%が「パス導入は良かった」と回答した。しかし「看護の質向上に役立ったか」に対しては67%と約2/3のみが役立ったと回答した。パス導入前後の在院日数はACL群・半月板群ともに減少傾向にあった。1疾患1日あたりの医療費は、半月板群で有意に増加しACL群においても増加傾向にあった。今回の検討から、これら疾患へのパス導入が患者・看護師の満足度、在院日数短縮などに効果的であるが、患者理解度、看護の質などの注意を要する項目も示唆された。

  • 豊田 暢彦, 岩本 明美, 本坊 拓也, 前田 啓之, 池田 光之, 栗栖 泰郎, 岩永 幸夫
    原稿種別: 原著
    2005 年 6 巻 3 号 p. 443-446
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     消化器外科手術に対するクリニカルパス(以下、パスと略す)導入の効果につき検討を加えたので報告する。虫垂切除術、鼠径ヘルニア、痔核根治術、開腹および腹腔鏡下胆嚢摘出術、幽門側胃切除術および結腸切除術のパス施行症例をパス導入以前の症例と比較した。これらにつき在院日数、診療点数を検討し、さらにバリアンス評価を行った。パスの導入により術後入院期間の短縮を図ることができ、在院期間の短縮につながった。診療点数の総計は減少する傾向にあったが、在院期間の短縮により一日平均点数の増加がみられた。バリアンス評価にもとづき、輸液・抗菌薬の指示を統一した。以上より、パス導入により医療の標準化と効率化が図られ、在院日数、経済効果の点でもパスの効果が認められた。今後、さらに多くの症例および疾患に対してパスの導入を試みていきたい。

実践報告
  • 辻本 博明, 水谷 敏絵, 宇野 喜代美, 野田 鶴香
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 6 巻 3 号 p. 449-453
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当手術室は独自の医療用クリニカルパス(以下クリニカルパスをパスと略す)を使用してきた。しかし、病棟のパスと書式が違うために「情報が共有されていない」、という意見が手術室、病棟スタッフ双方から聞かれた。

     そこで今まで別々の用紙であった手術室と、病棟のパスを統合し、書式も縦軸に処置・観察・アウトカム・サイン欄などの項目、横軸に日時をいれたパス(術中期を含む周手術期パスを以下スルーパスと略す)にすることで病棟との情報の共有ができると考え、まず眼科白内障手術のスルーパスを作成した。

     特徴として、①周手術期のパスに術中期を含めた内容にした。②コ・メディカルが参加できるようチェックボックスや記載欄を設けた。③記録の重複をなくした。④医師指示を統一し、記載した。など総合的な治療経過の把握と記載が可能な包括化されたパスである。

     今回、眼科白内障手術のスルーパスを使用した手術室・3階西病棟の看護師16名にアンケート調査を行った。結果12名(75%)のスタッフが以前使用していたパスに比べてスルーパスの有用性を認めている結果になった。理由として、「転記がなくなった」、「入院から退院までの流れが一目でわかりやすくなった」、「連携が図りやすくなった」などの意見があった。

     スルーパスの導入により、手術室や病棟間だけでなくコ・メディカルとも情報の共有ができた。さらに記録の効率化もでき、チーム医療がより効果的になった。

  • ―クリニカル・パスを利用した血液データの測定―
    笠井 久豊, 小林 尚子, 佐久間 隆幸, 堀川 陽雅, 橋本 章, 清水 敦哉
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 6 巻 3 号 p. 455-459
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     近年増加しつつある胃瘻症例は、当院では栄養サポートチームにより管理されている。現在、栄養状態を把握するのに様々な検査項目が用いられているが、その測定は主治医によりまちまちであった。そこで我々検査課より、院内検査でリアルタイムに検査値が得られること、コストが安価で極力医療保険の適用を有することなどから、アルブミン、プレアルブミン、総リンパ球数の3項目を栄養アセスメントの項目として取り上げ、パスに組み込むことで業務の統一を図った。

     そして胃痩を施行する当日の朝と、胃痩が順調に機能していることを確認した2~5週後に、これら3項目を測定し推移をみることで、どの血液マーカーが最も栄養状態を鋭敏に反応するかを検討した。その結果、プレアルブミンの変化がアルブミンおよび総リンパ球数のそれに比し有意に上昇していた。プレアルブミンが栄養状態の変化を的確に捉え、早期の栄養評価の血液マーカーとして最も有用であると思われた。

     今回検査課より必要な血液マーカーを選択し、胃瘻造設術のパスに組み込むことで、業務の統一化を図りチーム医療の推進に貢献できたと思われた。

  • 鵜飼 順子, 西村 智子, 勝田 まり子, 古吉 めぐみ
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 6 巻 3 号 p. 461-466
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当センターの帯状庖疹クリニカルパス(以下パスと略す)は、2001年10月に導入し、2年間で100例に使用している。初期パスは70例に使用したが、診療録としての要件が満たされているか、アウトカムの設定は適切か、という問題点があった。そこで2003年2月、オーバービュー+日めくり式の新パスに改訂し、30例に使用した。そして、①パス用紙の形式、②アウトカムの設定と評価の方法、③患者の訴えを反映する情報項目、の3つの点から改訂後の評価を行ったので報告する。

  • ―薬剤師と看護師との共同指導パス作成の試み―
    脇坂 志保, 森 直美, 荒牧 晴美, 夏目 裕代, 出沼 利恵, 清水 保延, 松波 英寿
    原稿種別: 実践報告
    2005 年 6 巻 3 号 p. 467-471
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     臓器移植後患者にとって、免疫抑制剤療法の成功の鍵は患者のコンプライアンスを高める事にある。そのためには、患者がそれぞれの薬剤について十分な情報を持つと共に、服薬法についての適切な訓練が重要である。そこで、内服自己管理指導の現状の分析をし、指導時期と指導内容を検討した。その結果、薬剤の自己管理を目的とし、患者の行動変容を段階的にとらえ、5つのフェーズを設定しパスの横軸とした。それぞれのフェーズに薬剤師による薬の必要性、重要性を理解するための情報提供、看護師による内服行動の習慣付け、というタスクを縦軸に設定し、薬剤師、看護師が効果的に指導できる肝移植後の薬剤自己管理を達成するためのオプションパスの作成をする事が出来た。

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